開業に当たってはしなければならないことが山のようにあります。関係各所に提出しなければならない書類のリストを見ただけでうんざりするでしょう。また初めての経験であるため、何事も試行錯誤を繰り返しながら行わなければなりません。
医療コンサルタントに開業を手伝ってもらうというのも選択肢の一つです。しかし、依頼すると少なからぬお金がかかります。
コンサルタントに頼むか頼まないか。これは難しい問題です。
そこで、実際に医療コンサルタント業務を行っている『株式会社レゾリューション』の柳 尚信代表にお話を伺いました。
同社は医療コンサルタント業務を提供する「メディカルタクト」を運営しています。また、柳代表は、長年にわたって医業のコンサルタント業務に携わり、豊富な経験と知識を持っている「プロ中のプロ」のお一人です。
目的は「開業後の成功」であるはず
――開業に当たってコンサルタントはいた方がいいのでしょうか?
柳代表 私は使っていただいた方がいいと思います。
これは先生の時間の使い方に関わる問題です。開業するのに必要な作業で、お金を支払えば人に頼める仕事は人に行ってもらい、先生が本来しなければならないことに注力した方がいいと考えるからです。
本来の目的は開業ではなく、クリニックが成功することであるはずです。ですから、先生が時間を割いて考えるべきは「開業後の経営」です。
そのために地域の医療サービス機関とコミュニケーションを取ったり、つまりは営業ですが、そこに時間を割いたり、開院後にどのような医療サービスを行えば集患できるのかを考えたりする方が有意義な時間の使い方ではないかと思います。
――なるほど。
柳代表 これは普通の起業でも同じですね。毎日あくせくしていても売り上げは上がらないです。やはり腰を据えて、どうしたらお客さんが増えるんだろうか、どのようなサービスを提供したらいいんだろうかとじっくり考える時間が必要です。
そうしないと長く続けるというのはなかなかしんどいことだと思います。
医業も同じです。しっかりと考える時間を作ってもらうためにコンサルタントを使う意義があるのではないか、私はそのように考えます。手間仕事に先生の時間を使うべきではありません。そこはコンサルタントを使った方がいいでしょう。
――コンサルタントを使わない先生もいますね。
柳代表 医師の先生は器用な方が多いので、自分でできると考える方は自分で行うといいでしょう。実際に、私がお付き合いしている先生の中にもお一人で開業準備を行っている先生がいらっしゃいます。
「メールや電話で連絡を取るのは手間でもなんでもないので」とお伝えしてあって、その先生からはご相談を受けることが多いですが、「先生はご自分でできるのでそのままおやりになったらいいでしょう」とお話ししています。
先日も「銀行に行くので税理士に同行してもらった方がいいかな」と相談されましたが、自分で勉強して詳細な事業計画書を作成していらっしゃったので、「税理士なしでも大丈夫でしょう。先生の思いの丈をぶつければいいんです」とお話ししました。
本屋さんに行けば開業マニュアルといった本はたくさん出ています。もちろんそのとおりできるかというのはまた別の話ですが、手順も分かりますし、それでできれば全くコンサルタントは必要ありません。
――なるほど。
柳代表 ただ、皆さん初めてなので分からないのですが、開業1、2カ月前にしなければならないタスクが山のように押し寄せます。まじめな先生が朝から晩までクリニックにいて、深夜まで電子カルテのつなぎ込みをしていらっしゃるとか、そういった光景を見ることになります。
――初めてなので開業にどのくらいの労力がかかるか分かりません。後になって頼んでおけばよかった、となるかもしれないわけですね。
柳代表 それは本来先生のしなければならないお仕事ですか?という状況になってしまうのです。
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開業に当たってコンサルタントに依頼するメリットとデメリット
――開業に当たってコンサルタントに仕事を依頼するメリットはなんでしょうか。
柳代表 先生にしかできないことに注力する時間をつくれること、です。先生以外でもできることは他の人に頼めばいいのです。
――ではデメリットはなんでしょうか。
柳代表 特にデメリットはないと思います。デメリットが生じるとすれば、担当者にはそれぞれ力の差がありますから、ヘンなコンサルタントに当たったケースでしょうか。また先生のフィーリングに合わない人の場合ですね。感性が合う・合わないは大きな要素です。
ただ、平均以上のコンサルタントなら、まずおかしなことにはならないでしょう。もし自分が先生の立場であれば、一部だけでも依頼した方がいいと考えます。
――柳さん自身の経験で何かクライアントに嫌がられたことなどありますか?
柳代表 そうですね……すぐに答えを出してしまうことでしょうか(笑)。先生は初めてのことなので考えながらいろいろと試行錯誤したい場合もあるかと思うのですが、コンサルタントは最短距離で開業まで持っていくのが仕事ですので、この場合はこうすべきというのが経験上分かっているわけです。ですから、すぐに答えを出すのを嫌がられることがないわけではありません。
コンサルタントに依頼する相場は?
――開業に当たって医療コンサルタントに仕事を依頼する場合、いくらくらいかかるのでしょうか?
柳代表 関東・関西で相場感は異なっています。
関東:300万円~
関西:200万円くらい
といったところでしょう。
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いいコンサルタントを選ぶ方法は?
――いいコンサルタントを選ぶにはどうすればいいでしょうか? 例えば、ネットで検索してもたくさん表示され、どこがいいのか判別できないと思われます。
柳代表 そうですね。似たようなことが書いてあったり、それだけで見分けるのは難しいでしょう。3、4社ぐらいの複数の医療コンサルタント業の会社にまず話を聞いてみることをお勧めします。
自分が疑問に思っていること、不安なことをぶつけてみて、それにすらすらと答えられるかどうかを見てください。いいコンサルタントなら、さまざまなケースに遭遇して解決策を練ってきた経験がありますから、大概のことにすぐ解答できます。
もしそういった経験がないなら5分、10分ほど話せばメッキははがれると思います。一つでも答えられないものがあったり、ごまかしたりしたら、そこはやめておかれるといいでしょう。
先生とご一緒して開業を二人三脚で行うことになりますから相性も大事です。これは話してみないと分かりません。なんでも聞ける・話せる、それにすぐ答えてくれる人を選ぶのがいいでしょう。
「自分が本来しなければならないこと」に時間をかけましょう
――これから開業する医師にアドバイスをお願いいたします。
柳代表 「コンサルタントを使ってほしい」というのが大前提ですが、それは先生に「先生にしかできないこと」をしていただくためです。
開業だけ手伝って欲しいのであれば、そのような業者を選ぶべきですし、もし開業後も経営についてのアドバイスがほしいというのでしたら開業前から二人三脚で努力してくれる業者を選択してください。
自分が何を考えているかを明確にして、自分に合った業者を選んでいただけば失敗はないかなと思います。
――ありがとうございました。
まとめ
開業に当たって「医療コンサルタントに仕事を依頼するかどうか」を悩む医師は多いことでしょう。とにかく開業には多くの労力が必要です。柳代表のお話にもありましたが、開業1、2カ月前になるとまさに山のようなタスクが押し寄せます。後になって「誰か助けてくれ」となるかもしれません。
開業に当たってコンサルタントに依頼するかどうかは、自分の労力を何に振り分ければいいのかを熟考した上で判断してください。
柳 尚信 氏 - 医療コンサルタント
会計事務所系コンサルタンティング会社にて、医療機関のコンサルティングを行う。経営戦略立案、管理会計、人事労務ほか事業承継(M&A)も手掛ける。また、各地区医師会やハウスメーカー、医療機器メーカーなどで、セミナー講師として講演を行い、『日経メディカルオンライン』でコラム「開業の落とし穴」を第51回まで執筆するなど、セミナー講師・原稿執筆の実績も多数。
特徴
対応業務
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診療科目
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この記事は、2021年10月時点の情報を元に作成しています。