地域連携、多職種連携を可能にする!メディカルケアステーション

日本では高齢化によって在宅・介護医療の利用が増加しています。そのため、医師、看護師、ケアマネジャーなど、その患者さんの診療、ケアに携わる医療関係者の緊密な連携が求められており、これを実現するためにIT技術の活用が始まっています。

日本の医療介護現場で多く活用されているコミュニケーションツールが『MedicalCare STATION(メディカルケアステーション)』(以下『MCS』と表記)です。今回は、『MCS』の提供元である『エンブレース株式会社』に取材し、『MCS』の特徴、使い勝手、導入方法などをご紹介します。

目次
  1. 『MCS』の特徴
    1. 『MCS』は地域連携、多職種連携を可能にする
    2. 『MCS』は誰でも使えるように設計されている
    3. 招待することができる
    4. 監督省庁のガイドラインに準拠したセキュリティー
  2. 『MCS』の導入
    1. ネット上ですぐにアカウントを発行
  3. 『MCS』の費用
  4. 医療現場で評価される『MCS』
  5. まとめ

『MCS』の特徴

『MCS』は地域連携、多職種連携を可能にする

『MCS』は、ユーザーを医療介護従事者に限定した「非公開型医療介護専門SNS」サービス。「非公開」というのは、コミュニティーが「閉じている」という意味で、『MCS』を使ってコミュニケーションできるのは、そのコミュニティーに参加を許された人だけです。

例えば、『MCS』でAさんの在宅診療に当たる医療従事者のコミュニティーを作ったとします。担当医師、看護師、ケアマネジャー、患者さん自身やその家族がそこに参加し、Aさんの診察結果、検査結果、容態などを書き込んで情報を共有します。しかし、メンバー以外の人は閲覧もできません。

↑『MCS』の利用図のイメージです。このように医療に携わるメンバーの情報共有を可能にします。

至極簡単にいえば、参加メンバーを限定できる電子掲示板のようなものです。閲覧できるのは参加を許可されたメンバーだけですので、外に情報が漏れることはありません。『MCS』を使えば、現在電話やFAXで行っている通信を全てパソコン、タブレット、スマホ上で行えるようになります。

『MCS』は重要となっている「医療の地域連携・多職種連携」を可能とするコミュニケーションプラットフォームなのです。

『MCS』は誰でも使えるように設計されている

このようなITツールはとにかく使い勝手が大事です。医療関係者の中にはITリテラシーが低い人もいますし、患者さん自身、患者さんの家族もコミュニティーに参加できますので、高齢者でも使えるものでなければなりません。

その点、『MCS』はシンプルで直感的に操作できるものとなっています。『エンブレース株式会社』によれば、特にその点に留意して制作したとのこと。

『MCS』の見た目は皆さんが普段使っているようなSNSサービスとほとんど変わりませんし、基本的に「見る」「伝える」という2つの機能に特化しています。

『MCS』では文章(テキスト)だけでなく、写真、ファイル、動画などのデータを共有可能です。

↑患者さんごとにメンバーが書き込んだ情報がこのようにタイムラインに沿って表示されます。見た目はよくあるSNSアプリなどと同じです。そのため、使い方は直感的に分かります。

↑『MCS』では医療介護従事者と患者さんの書き込む場所を分けることが可能です。これにより、医療介護従事者でとどめておくべき情報が患者さんや家族に伝わらないようにできるのです。

↑『MCS』では書き込まれた情報を確認した際には「サムアップ(了解ボタン)」を押します。これで「見た」「了解」の意思表示になります。

招待することができる

SNSの中には「招待する」機能を持つものがありますが、『MCS』も装備しています。

↑招待ボタンを押します。

↑招待ボタンを押すとこのように一度でもやりとりしたことのある人が表示されます。この中からコミュニティーに招待することができます。

↑『MCS』を使っていない「外」の人であれば、その人のメールアドレスを入力することで招待を送ることができます。ただし、管理者がその招待を承認しないと中には入れない「招待承認制」になっています。確認アクションが入ることで、情報が漏えいしたり、よく知らない人が入ってきたりするのを防ぐことができます。

監督省庁のガイドラインに準拠したセキュリティー

医療情報を扱うため、『MCS』は厚生労働省「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」、経済産業省・総務省「医療情報を取り扱う情報システム・サービスの提供事業者における安全管理ガイドライン」の3省2ガイドラインに準拠した高いセキュリティーを備えています。

厚生労働省が推奨する「TLS1.2」の中でも「TLS 暗号設定ガイドライン3.0.1 版」に規定される最も安全性水準の高い「高セキュリティー型」。情報の改ざんや盗み見を防止するため通信は暗号化して行い、本人認証・端末認証として「クライアント証明書」の発行機能も提供しています。これによってクライアント証明書がインスト-ルされた端末でしか利用できなくなります。つまり、第三者の不正使用の可能性を軽減することができるのです。

『MCS』の導入

『MCS』の導入にはインターネットに接続できるPC、タブレット、スマホがあればOK。ブラウザー上で動作しますので特にほかに用意するものはありません。また、アプリ版(iOS対応)もありますので、こちらを利用することもできます。アプリ版には、新着メッセージがすぐに分かる「プッシュ通知機能」、電話帳を利用した「招待機能」が搭載されています。

ネット上ですぐにアカウントを発行

『MCS』を利用するための手順も簡単です。『MCS』のサイトにアクセスしてユーザー登録を行えばアカウントが発行され、一般のSNSサービスと同じくすぐに使い始めることが可能です。

『MCS』の費用

医療介護従事者は『MCS』を無料で利用できます。

「医療の地域連携・多職種連携」を達成するためのツールは、多くの人に利用してもらうのが理想です。しかし、ユーザーの中には費用負担が重荷になる人もいるでしょう。また、例えば在宅介護の現場などでは「ひとりケアマネジャー」は珍しくありません。本部の承認がいるので費用負担ができないといった状況があり得ます。これでは医療に当たる人の連携ができなくなってしまいます。『MCS』であれば無料ですから、費用を理由に連携の輪が欠けるということはありません。

『エンブレース株式会社』によれば、『MCS』のマネタイズについては連携する企業にスポンサーになってもらうことで行っているので、ユーザーには無料で提供できるとのこと。コミュニケーションプラットフォームが無料で使えるというのは、『MCS』のユーザーを拡大する大きな原動力になっています。

現在『MCS』は全国で16万人のユーザーを獲得しており、医療介護従事者のコミュニケーションツールとして都内でも多く活用されています。

医療現場で評価される『MCS』

厚生労働省は「医療の地域連携・多職種連携」を推進すべきとしていますが、これはそう簡単に進むものではありません。旗を振ったからといって盛んになるものではないのです。やはり、コミュニケーションを密にして医療の質を高めようという意志と実行力が必要です。『MCS』はそのような気持ち・実行力を持つ医療介護従事者の力強い相棒となる有用なコミュニケーションプラットフォームです。『MCS』が日本最大のユーザーを持ち、多くの医師会、行政でも採用されているのはそのためなのです。

まとめ

『MCS』は非常に有効なツールです。在宅診療、介護のみならず、地域内の医師の連携、例えば「COVID-19の情報を共有するためのコミュニティー」を作って最新情報、知見を交換し合う、といった使い方も可能です。実際、『MCS』を用いた医療情報の交換も活発に行われています。

特に若い医師の間では『MCS』を積極的に用い、実際の医療の現場に生かすという動きが盛んになっています。IT技術の有効な利用例といえるでしょう。これから開業する医師の皆さんもぜひ『MCS』に注目してみてください。

取材協力:『エンブレース株式会社』

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執筆 コラム配信 | クリニック開業ナビ

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