クリニックでスタッフを雇うにあたって、スタッフに条件を提示するのは当然です。提示された条件に応募者が納得して初めて採用となるわけですが、条件のひとつには「雇用期間」もあります。正社員として雇う場合は「雇用期間の定めなし」と契約書に記されている場合もありますが、一方で期間が定められた「有期雇用契約」もあります。有期雇用契約に関して気になることといえば、「更新できるか」「契約期間終了時にトラブルなく雇用を終了できるか」などでしょう。そこで今回は、有期雇用について詳しくみていきます。
有期雇用とは?
有期雇用とは、労働期間に関して定めがある雇用です。労働基準法14条1項によって、有期雇用契約の期間の上限は原則3年と定められています。ただし、場合によっては5年間の契約期間が認められることもあります。労働者が高度な専門知識や技術、経験を有する場合か、もしくは満60歳以上である場合です。また、有期雇用の場合、給与は原則、契約時に決めた金額のまま昇給しないことがほとんど。そのため、資金面のことを考えて、有期雇用での採用を導入するというクリニックもあるでしょう。
有期雇用契約の種類は?
有期雇用契約の種類は以下の通りです。
「契約社員」のかわりに、「パートタイム」「アルバイト」「非常勤」「嘱託」「臨時」の言葉が使われる場合もあります。
有期雇用のスタッフが無期雇用を申し入れることはできる?
スタッフを有期雇用のまま更新し続けたいと考えているクリニックは注意が必要です。タイミングによっては、スタッフの申し入れによって無期雇用への転換を認めざるを得ない場合があるからです。
契約期間が1年の場合、5回目の更新後の1年間、スタッフには無期雇用への転換申し込みの権利があります。契約期間が3年の場合、1回目の更新後の3年間、スタッフには無期雇用への転換申し込みの権利があります。スタッフからの申し込みに対して、クリニック側が断ることは禁じられています。
有期雇用のスタッフに契約を更新してもらいたくない場合は?
クリニック側が有期雇用のスタッフの契約更新を希望していない場合、雇止めすることになります。「雇止め」とは、事業主が有期雇用契約の更新を拒否して、契約期間の満了により雇用契約を終了させることです。雇用形態によっては「派遣切り」と表現されることもあるでしょう。
雇止めも派遣切りも、それ自体は違法行為ではありません。ただし、一定の条件は満たしている必要があります。クリニックがスタッフを雇止めするために必要となるのは、以下のいずれかの条件を満たしていることです。
また、いずれの場合も、契約期間満了の30日までに雇止めをするとの予告をしなければなりません
雇止めは無効となる場合もある
雇止めは無効となる場合もあります。具体的には、何度も契約を更新していて実質的に無期雇用契約している状態と変わらない場合や、スタッフ側が「契約が更新されるに違いない」と思うに足るだけの理由があった場合などです。
雇止めに合意が得られなかった場合どうなる?
雇止めのルールをきちんと理解しておらず、雇止めされたスタッフが不満を抱いた場合、どういうことが起こり得るでしょうか? 「周囲にクリニックの悪口を言われたり誹謗中傷の書き込みをされたりする」なども考えられますが、法的な観点からすると、地位確認請求を起こされたり、損害賠償請求されたりする可能性があります。
地位確認請求とは自分の地位を確認するための訴訟ですが、この訴訟によって雇止めが無効と判断されたら、雇止め自体が法的に無効になります。地位確認請求によってスタッフが地位を回復したとなると、お互いにその後気持ちよく働けそうにないですよね。一方、損害賠償請求が認められると、雇止めがなかった場合に得られたはずの給与を支払う義務が発生することがあります。
有期雇用契約に関して気を付けるべきことは他にもある
スタッフを有期雇用する場合、更新や雇止めのルールを把握しておくことはもちろん大切ですが、有期契約の際の雇用条件に関しても理解を深めておくことが必要です。併せて、雇用に関する条件を働き手に対して事前にしっかりと提示してくこともとても大切。提示した結果、納得してもらえた暁には、合意書にサインをもらうこともお忘れなく。提示する条件を決めるにあたっては、有期雇用契約者と無期雇用契約者の雇用条件に大きな差があるとスタッフから不満が出やすいことを念頭に置いておきましょう。また、そもそも不合理な労働条件の相違は禁止されています。職務内容や福利厚生などにもしっかりと気を配りながら、すべてのスタッフが気持ちよく働ける環境を整えましょう。
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この記事は、2022年2月時点の情報を元に作成しています。