新型コロナウイルスの感染とともに、早急なPCR検査を必要とする人も多くなっています。
診療科によっては、患者の受診控えによる減益も問題となっていますが、例えば「PCR検査」を行うことにより、経営面での悪影響が比較的少なくなる可能性はあるのでしょうか?
今回は、事前予約なしでPCR検査が受けられる「新宿駅前クリニック」を運営する、医療法人社団SEC理事長・蓮池林太郎医師に、PCR検査がクリニック経営に及ぼす影響、利益となり得る具体的な金額を教えていただきました。
また本メディアでは、蓮池医師からクリニック経営に役立つ情報を教えていただく記事を「教えて蓮池先生!」と題し、シリーズ化してお届けします。本記事は、その第一回目となります。
参考:公益社団法人 日本医師会「新型コロナウイルス感染症の診療所経営への影響-2021 年 2 月~4 月分-」
PCR検査の金額と保険適用について
新型コロナPCR検査をおこなうには、自費と保険適用の2つに分かれます。
自費でおこなっているのは、クリニックや病院などの医療機関だけでなく、民間のPCR検査センターや郵送検査キット会社などです。安いところであれば2,000~3,000円ほどの低価格で提供できるようになりました。
風邪症状があり新型コロナ感染が疑われる方や濃厚接触者は保険適用となったことにより、自己負担3割で2,000円ほど、自己負担1割で700円ほどで、クリニックでも受けやすくなりました。
患者さんが支払う費用が2,000円ほどになる仕組み
まずは、保険適用でなら患者さんは自己負担3割の場合2,000円ほど、自己負担1割の場合700円ほどの支払いになる仕組みについて確認しておきましょう。
保険診療においてPCR検査本体の費用(外部検査会社に依頼の場合)が18,000円、検査の判断料が1,500円、計19,500円と設定されています。
保険適用で自己負担3割の場合は19,500円×0.3=5,850円、自己負担1割の場合は19,500円×0.1=1,950円を支払う必要がありますが、検査本体の費用と検査の判断料は国が負担している(公費負担となる)ため、5,850円もしくは1,950円を患者さんが支払う必要はありません。
風邪症状の診察と同じように、診察料、処方せん料、算定要件を満たせばトリアージ加算がかかりますので、合計6,600円ほどとなり、保険適用で自己負担3割の場合、支払いは2,000円、自己負担1割の場合の支払いは700円ほどになります。
上記について正確には、処方せん料やトリアージ加算の有無、追加で血液検査をおこなうかどうかによって変わります。
クリニックが外部検査会社に支払う新型コロナPCR検査費用は検査会社によって異なりますが、1万円前後が相場ですので、外部委託や判断料にかかる19,500円に、診察料などの6,600円が加わった26,000円ほどから1万円前後を引いても、16,000円ほどがクリニック側の利益になります。
陽性であった場合、ゾーニングや発生届を書くなどの手間もかかりますが、インフルエンザ検査に比べても診療報酬がかなり優遇されている現状があることが分かるかと思います。そのため、受診控えが目立つ中で、PCR検査の実施により患者数・医業収益がある程度戻ってきたクリニックもあると聞いています。
ホームページ上では新型コロナPCR検査を掲載せず、実際に風邪症状で来院された患者さんのみを診療しているクリニックもあります。
特徴
対象規模
オプション機能
提供形態
診療科目
この記事は、2021年9月時点の情報を元に作成しています。
執筆 医療法人社団SEC 理事長/新宿駅前クリニック 院長 | 蓮池 林太郎
2009年に新宿駅前クリニックを開設。現在は自院経営を通じて培ったネット集患の知見をもとに、クリニックの開業支援およびコンサルティングを実施。多数の書籍執筆やセミナー、メディア出演も行っている。著書に『競合と差がつく クリニックの経営戦略ーGoogleを活用した集患メソッド』(日本医療企画)、『患者に選ばれるクリニック: クリニック経営ガイドライン』(合同フォレスト)など。
他の関連記事はこちら