クリニックの院長になったら、診療だけではなく「経営」のかじ取りについての判断も行わなければなりません。しかし、これは実はかなり手間がかかることです。というのは、経営判断用のデータを準備しないといけないからです。
売り上げだけではなく、患者数や初診・再診数、リピーターの数、収益の推移などのデータが必要です。しかし、これを院長が診療の合間にそろえるのは困難でしょう。
そこで、良いツールをご紹介します。『株式会社エムティーアイ』の『CLINIC BOARD(クリニックボード)』です。『CLINIC BOARD』は、クリニック院長を強力にサポートしてくれます。
『CLINIC BOARD』の特徴と機能
↑『CLINIC BOARD』のダッシュボードに表示される「主要サマリー」。「収益」など重要な経営指標がすぐに分かります。
『CLINIC BOARD』の概要
『CLINIC BOARD』は重要な経営指標を見やすい形に一覧表示してくれるツールです。
『CLINIC BOARD』はクラウド型のサービスで、クリニックのレセプト(診療報酬明細書)データをアップロードして使用します。アップロードするファイルは、毎月レセコンで作成するもの(RECEPTC.UKE)ですから、特にこれ用の手間は要りません。
また、アップロードするといっても個人を特定できる部分は削除し、整形してから用いますので個人データがクリニック外へ漏れる心配はありません。このデータの整形作業も専用のツールが用意されていますので、クリニックで特に作業は不要です。
非常に見やすい画面
『CLINIC BOARD』の特徴はなんといっても整理され、見やすい画面です。クリニック院長が必要とする主要なKPI(Key Performance Indicatorの略:重要業績評価指標)が一目で把握できるようになっています。
↑ダッシュボードではこのようにKPIのデータを確認できます。
『CLINIC BOARD』はインターフェースのデザインがとてもよくできています。これは、「クリニック院長が欲しい情報」「どのように表示してほしいのか」などを医師に徹底的にヒアリングして制作されたためです。
見やすく使いやすい『CLINIC BOARD』は『GOOD DESIGN AWARD 2018』を獲得しています。
データの切り口も複数準備されています。大きなところでは収益、将来予測、延べ患者数、診療単価、新患数、初再診、傷病名、年代、リピート率などです。
↑ダッシュボードに表示される「診療単価」「新患数」「初再診」。
↑ダッシュボードに表示される「傷病名」「年代」「リピート率」。
↑ダッシュボードに表示される「継続来院チェック」「定期検査チェック」。
欲しい情報をすぐ入手できるのが『CLINIC BOARD』の大きな特徴ですが、さらに細かくデータを見ることもできます。
↑診療単価の推移グラフ。「自費診療の単価が上昇してきた」などが一目瞭然です。
↑このようなデータの深掘り表示も可能です。
↑「延べ患者数」の推移グラフでは、棒グラフにカーソルを置くと詳細情報が表示されます。
↑「リピート率」の推移グラフです。
特筆すべきは、クリニックの診療圏マップを表示できる機能です※。自院を中心にして来院した患者さんをプロットしてくれます。この機能は、クリニックのプロモーション戦略立案などに役立てることができるでしょう。
↑「診療圏マップ」です。自院を中心に患者さんがどこから来院しているのかが分かります。
これは実際にあった例ですが、このマップ表示で「大規模な集合住宅がある住所から全く患者さんが来院していないことが分かった」そうです。このような課題が見つかれば、「なぜ」かを考え、仮説を立て、集患のための施策を行うことができます。『CLINIC BOARD』で可視化しなければ、課題を見つけることすらできなかったでしょう。
さらに「ベンチマーク」という機能を使うと、自院の業績を全国平均のデータと比較することができます。自分のクリニックが他と比較していいのか悪いのかは、どの院長でも気になるところ。これを使うことで経営を改善していこうというモチベーションを得ることができるでしょう。
※診療圏マップを使うためには患者さんの郵便番号データの取り込みが別途必要です。また、自由診療分は「収益額・延べ患者数」の手入力が必要となります。その他、日計表などの取り込みを行うと、特徴分析や集患支援機能がより充実した内容で利用できます。
『CLINIC BOARD』の機能まとめ
『CLINIC BOARD』は以下の分析を行うことが可能です。
基本分析
収益、1日当たりの収益、診療行為別(収益内訳)、延べ患者数、1日当たりの延べ患者数、新患数、初再診、来院頻度、診療単価、診療行為別(診療単価内訳)
特徴分析
年代、保険種別、曜日・時間帯、診療行為詳細、リピート、傷病名
集患支援
年代、保険種別、曜日・時間帯、診療行為詳細、リピート、傷病名
総じていえば、『CLINIC BOARD』は院長が必要とする経営指標を的確に、分かりやすく可視化してくれる機能を有しています。自分でエクセルなどを用いて、データを制作する手間も省いてくれます。
サービス提供元の『株式会社エムティーアイ』によれば、院長だけが見るのではなく、スタッフにも開放しているクリニックもあるとのこと。そうすることで、「スタッフが院長先生と同じような経営の視点を持つことにつながる」そうです。
また、「非常勤医師のインセンティブの設定」に活用しているクリニックもあるとのこと。『CLINIC BOARD』では「日計表」の担当医のデータが取り込めます。すると、その医師がどのくらいの患者数をどのくらいの時間で診ているかが分かります。これが非常勤医師のインセンティブの設定に使えるというわけです。
『CLINIC BOARD』はクリニック院長の経営への取り組みを加速させるツールなのです。
『CLINIC BOARD』の導入準備
『CLINIC BOARD』の導入に必要なのはインターネット環境とパソコンです。
という条件を満たせば、導入可能です。
『CLINIC BOARD』は、レセプト情報を基に、個人情報に関わる部分を除いてから『CLINIC BOARD』に表示する仕組みになっています。データの整形はそれ用のツールを使って行いますので、クリニック側は「電子レセプトファイル(RECEPTC.UKE)」を用意するだけでOKです。
ただし、このツールはWindowsパソコンのみ対応ですので、Windowsパソコンが1台は必要になります。データの表示自体はブラウザーを使いますので、スマホでも可能です。
『CLINIC BOARD』の導入にかかる時間
『CLINIC BOARD』を導入するのにかかる時間は1週間ほどです。
① 導入希望を伝え、②申込書を作成・送付、③アカウント発行という流れで導入できます。申込書送付から1週間ほどでアカウントが発行されます。
『CLINIC BOARD』の電子カルテ・レセコンとの連携
『CLINIC BOARD』は電子カルテ、レセコンの種類に依存しません。診療報酬請求作業で作成される「電子レセプトファイル(RECEPTC.UKE)」を利用するからです。このファイルは厚生労働省指定の共通フォーマットで、どの機種でも共通して出力できるようになっています。そのため、『CLINIC BOARD』はどんな電子カルテ・レセコンを使っているクリニックでも利用できるのです。
『CLINIC BOARD』の導入費用
『CLINIC BOARD』の導入費用は以下になります。
※年間契約が必要です。
現在は1~2カ月の無料トライアル期間があります。実際に使用することになったらそこから契約となります。
『CLINIC BOARD』のサポート体制
『CLINIC BOARD』では電話・メールでのサポートを行っています。
電話サポート:平日10:00~18:00
まずは「現状の把握」から
『CLINIC BOARD』は非常によくできたツールです。経営改善といってもどこから手をつけていいのか分からないという場合には、まず「現状の把握」からです。現在の診療報酬はどのように推移しているのか、患者さん1人当たりの平均売り上げはいくらなのかといったデータを把握することから始めましょう。
今回ご紹介した『CLINIC BOARD』はこれらのデータを簡単に分かるようにし、医師・クリニック院長の強い味方になってくれます。
『株式会社エムティーアイ』に伺ったところ、
「クリニックも競争の厳しい時代に入っていますので、基本的にこれから開業される先生方には経営に対するしっかりした視点が求められます。『CLINIC BOARD』は経営のKPIを回していくために必携のツールです」
とのことでした。
すでに開業している医師の皆さんのみならず、これから開業するという方も『CLINIC BOARD』の導入を検討してみてはいかがでしょうか。
特徴
対象規模
オプション機能
提供形態
診療科目
この記事は、2022年3月時点の情報を元に作成しています。