1999年の誕生以来、少しずつ普及してきた電子カルテ。
厚生労働省によると、今から4年前の令和2(2020)年の時点では、一般病院における電子カルテシステム普及率は57.2%となっていました。
一般病院 | 400床以上 | 200~399床 | 200床未満 | 一般診療所 | |
---|---|---|---|---|---|
平成20年 | 14.2% | 38.8% | 22.7% | 8.9% | 14.7% |
平成23年 | 21.9% | 57.3% | 33.4% | 14.4% | 21.2% |
平成26年 | 34.2% | 77.5% | 50.9% | 24.4% | 35.0% |
平成29年 | 46.7% | 85.4% | 64.9% | 37.0% | 41.6% |
令和2年 | 57.2% | 91.2% | 74.8% | 48.8% | 49.9% |
現在ではその普及率も拡大していると思われますが、今年はどのようなトレンドがあるのでしょうか?
この記事では、クラウド型電子カルテに注目し、オンプレミス型との機能比較や、各メーカー製品の特長をまとめてみました。
電子カルテ「クラウド型」と「オンプレミス型」の違い
まずは、電子カルテのタイプ別に、それぞれの特徴やメリット・デメリットを比べてみましょう。
「クラウド型」と「オンプレミス型」のもっとも大きな違いとしては「データの保存先」が挙げられます。
クラウド型電子カルテは、事業者(電子カルテベンダー)の持つサーバーにデータをアップして管理するのに対し、オンプレミス型電子カルテは、サーバーなどの設備を院内で保有し、ローカルネットワークにて接続します。
そのため、クラウド型電子カルテは使用する端末がインターネットにつながっていればどこでも利用可能です。また、サーバー導入費がかからないぶん初期費用が安価です。
一方、オンプレミス型電子カルテは、データを院内のサーバーに保管します。そのため、初期費用が高額となるうえ、サーバーの設置スペースを確保することも必要です。
その他の特徴については、以下の表をご覧ください。
比較項目 | クラウド型 | オンプレミス型 |
データ保存 | 外部(電子カルテベンダー)の サーバーで管理 | 院内のサーバーで管理 |
ネットワーク・ 使用可能な場所 | ネット環境があれば どこでも使用可能だが、 ネット環境が切れると 使用不可になる。 | 院内ネットワークが 必須のため、 院内でしか使用できない |
システム アップデート/ 保守 | 基本的に電子カルテを 提供するベンダーが行う。 ベンダーが訪問することは まずない。 | 基本的には自院で行う。 ベンダーの訪問時には その対応も必要。 |
バックアップ | データを保存するサーバーを 分散させていることが多いため、 災害時の復旧対策などは 基本的に行う必要がない。 | データは自院のサーバーに 保存されているため、 災害時の復旧対策などは 自発的に行う必要がある。 |
セキュリティ | データは セキュリティー要件を 満たした外部のクラウド サーバーで保存・管理。 データへのアクセスには IDやパスワードに加え、 指紋やメールアドレスなど 2段階認証を行うこともある。 | データは院内サーバーに 保存されているため 外部漏洩のリスクは低くなる。 サーバー室の管理、 ウイルス対策などを自院で 行う必要がある。 |
価格/ 初期費用 | 比較的安価 | 比較的高価 |
カスタマイズ | ベンダー側で設定 されたもの以外は 追加料金が発生する | 自院に必要な機能を 好きにカスタマイズ可能 |
クラウド型、オンプレミス型それぞれに特徴があり、クリニックによってはメリットにもデメリットにもなりえるものかと思います。
電子カルテ導入の際には、自院で求めるものはなにか?を明確にしたうえで検討されることをお勧めします。
クラウド型電子カルテの2024トレンドは?
続いては、クラウド型電子カルテの機能に関するトレンドをみていきます。
レセコンとの連携が容易もしくはレセコン一体型
2024年は、医療、介護、障害福祉サービスの3つが改定となる「トリプル改定」の年です。3つすべてが重なるのは6年に一度のことで、医療機関側も例年以上に対策に力を入れる必要があります。
対策のひとつとしてぜひやっておきたいのが、クラウド型電子カルテとレセコンの連携です。連携している、もしくは一体型のタイプを使っている場合、トリプル改定への対応が多少なりともスムーズになります。
訪問診療向け機能
2025年問題への対策として、地域包括ケアシステムの確立の必要性がますます高まっている昨今、訪問診療向け機能を備えたクラウド型電子カルテの人気も高まる一方です。
訪問診療向け機能とは具体的にはどのような機能かというと、「タブレットでの利用を前提としていて、タブレットで訪問記録を入力できる」「文書作成支援機能」などが挙げられます。
各種医療機器などとの連携実績が豊富である
地域包括ケアシステムに対応していくためには、検査結果などを地域の医療機関や訪問看護ステーション、薬局などとスムーズに共有できる体制を整えておくことが不可欠です。検査結果なども簡単に取り込むことができれば、よりスピーディに必要な情報を共有することができます。
Web予約管理・問診システム
Web予約管理・問診システムは、2024年のトレンドというより、「クラウド型電子カルテを導入するなら、必ずこの機能付きのものを選んでほしい!」というほど患者のニーズが高いものです。
予約・問診システムのいずれも、事前に来院時間を設定することでの待ち時間の短縮や、受付時にトリアージなどで役立つシステムですが、電子カルテと連携させるとより新型コロナをはじめとした感染症対策にも役立ちます。
連携によって、患者さんが入力した問診内容などの基本情報が、電子カルテに自動的に反映されます(反映方法はシステムによります)。これにより、院内での問診入力時間を大幅に削減できたり、電子カルテに取り込まれた問診内容を確認しながら診察・カルテ記入ができたりと、結果的に受付時間・待ち時間の短縮につながります。
「待ち時間の長さ」はクリニックのクレーム要因としても大きなものとなっていますので、コロナ禍が落ち着いた後でも、十分にクリニックの運営を助ける機能となるでしょう。 ※以下参照
満足していない項目 | 比率 |
待ち時間 | 44.4% |
医師の説明 | 43.4% |
治療費 | 41.4% |
医師の態度や言葉使い | 29.3% |
医師の知識や技術 | 25.3% |
診察日や診療時間 | 25.3% |
検査や画像診断 | 14.1% |
看護師の態度や言葉使い | 8.1% |
オンライン診療システム
オンライン診療システムの導入は、患者の通院に関わる負担の軽減はもちろん、感染対策にもつながりますし、緊急時のサポートに活かせることもメリットですコロナ禍においては、コロナ患者の経過観察に利用したり、慢性疾患の患者に対してオンライン診療を実施して、薬を処方したりに活用されていましたが、現在では普及が進み、たとえば美容皮膚科やAGAクリニックなどでもオンライン診療システムを活用するケースが増えています。
また、薬局がオンライン処方に対応していれば、患者は自宅にいながらお薬を受け取ることができます。
セルフ精算機
精算機などの会計に関わるシステムについては、電子カルテそのものとの連携ではなく、電子カルテと紐づいているレセプトコンピューターなどとの連携が一般的です。
連携させることの主なメリットとしては、会計ミスの予防や釣銭補充の負担軽減、受付人数の削減などが挙げられます。
近年はキャッシュレス化も進んでいるため、患者さんの会計方法も様々になってきました。そのため、場合によっては受付スタッフが調べながら会計業務をすることも多いのではないでしょうか。
自動精算機を導入して連携させておくと、そうした会計業務の手間やストレスから解放されるとともに、患者さんの待ち時間もなくすことができるのです。
こうした連携の数々は、2023年以降の電子カルテにとっても欠かないものとなっていくことでしょう。次の項では、そうしたトレンドを押さえたクラウド型電子カルテの代表的なものを5つ、ご紹介します。
2024年トレンド機能を備えるクラウド型電子カルテ5選
CLIUS(クリアス)
ウェブブラウザ型でOSを選ばない「CLIUS」は、使い慣れたパソコンで診療したい医師に最適。画面遷移や画面の見やすさにもこだわって設計されているのは、ゲームや勤怠管理システムも手掛けているメーカーならではです。
予約システム、web問診、電子カルテ、オンライン診療もセットで提案、業務効率向上を応援。経営分析機能も標準装備しています。
M3 Digikar
初期費用0円、月々の利用料9,800円~のコストが魅力の「M3 Digikar」は、最新AIによる自動学習とシンプルな画面設計によって、カルテ記入時間の大幅な削減を実現してくれる電子カルテです。
iPadやスマホでも使える予約や会計システムなど、使い勝手のよさも追及。ORCA連動型とレセコン一体型の2種類から選べるところも魅力です。
CLINICS
「予約」「問診」「受付」「診察」「会計」「予約促進」の6つの視点からクリニックの業務を応援してくれる「CLINICS」。
業務効率向上を実現しながら集患にも力を入れられるよう、経営分析機能も標準装備しているうえ、WEB予約、WEB問診、オンライン診療、レセコンもすべて内包。患者側の通院負担軽減にもつながる、クラウド診療支援システムです。
きりんカルテ
日医標準レセプトソフト「日レセクラウド」連動の「きりんカルテ」は、日レセクラウド利用料+保守・サポート費用のみで利用可能。カルテそのものの利用料は発生しないため、導入コストを抑えることができます。保守・サポートには、操作説明やオンライン体験が含まれているほか、クリニックごとの運用希望も聞いてもらえます。
MAPs for CLINIC
ORCA連動型とレセコン一体型から好みのタイプを選べる「MAPs for CLINIC」。
アプリケーション型の電子カルテであるため、万が一、ネットワーク障害が起きたとしても、その間、過去カルテの参照やカルテ入力、処方箋の発行は問題なく行えます。
まとめ
今後も様々な医療機関に普及していくであろう電子カルテ。
中でも「クラウド型」ならではの低価格や、場所を選ばない利便性、各種連携機能の強化などは今後もさらに進化していくことが予想されます。
電子カルテの導入を検討されている場合は、各ベンダーにご相談ください。
特徴
オプション機能
対象規模
提供形態
診療科目
特徴
提供システム
予約・受付機能
システムとの提携
対応言語
その他機能
診療科目
この記事は、2024年3月時点の情報を元に作成しています。
執筆 CLIUS(クリアス )
クラウド型電子カルテCLIUS(クリアス)を2018年より提供。
機器連携、検体検査連携はクラウド型電子カルテでトップクラス。最小限のコスト(初期費用0円〜)で効率的なカルテ運用・診療の実現を目指している。
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