【専門家に取材】「コロナが不安でクリニックを辞めたい」と話すスタッフにはどう対応すべき?

2020年から新型コロナウイルス感染症が蔓延し、2022年3月までに、東京をはじめとする各都道府県で最大4回の緊急事態宣言が発令されました。さらにまん延防止等重点措置により、緊急事態宣言解除後も、新型コロナウイルス感染症を予防するための生活が最優先されています。

そのような中での医療従事者への負担は常に大きく、医療機関での従業員の辞職が増加する事態も起きました。(参考:読売新聞「コロナ対応限界、看護師退職止まらず…「命を危険にさらしてまでできない」」)
病院に限らず、クリニックの院長がスタッフから「コロナが不安でやめたい」「コロナ感染を家族に心配されているので辞めたい」と相談されるケースも少なくありません。

本記事では、新型コロナウイルス感染症により退職を検討するスタッフへの対応について、社会保険労務士法人アミック人事サポート代表社員、社会保険労務士、医療労務コンサルタントの高橋友恵さんにお話をうかがいました。

目次
  1. コロナへの不安でクリニックの退職を希望するスタッフには、まず「説明」を
  2. 濃厚接触者になった場合の対応、休業を要請した場合の手当について周知する
  3. スタッフがコロナに感染した場合に利用できる助成金なども確認する
  4. 働き続けてくれるスタッフを、面接時に見極めるには?

コロナへの不安でクリニックの退職を希望するスタッフには、まず「説明」を

開業医からの質問

コロナの不安から「クリニックを辞めたい」と申し出るスタッフが増えたことがあり、対応に困りました。話し合いの結果、本人の希望通り退職となりましたが、何かできることがあったのかと今になって思います。高橋さんがサポートされているクリニックでも同様の事例があれば教えてください。

ーー高橋さんがサポートしているクリニックの院長先生から、コロナが原因で辞めたいスタッフへの対応について相談されたことはありますか?

高橋
そもそも感染症の不安から応募数が減っているというのもあるのですが、「コロナが怖いから出勤日数を減らしたい」「コロナが怖いから辞めたい」との相談があるというお話はうかがっています。

こういった方は正直、クリニックから離れていく線が濃厚ですね。

その中でできることのひとつは、どれだけそのスタッフの存在や役割が大事なのかをお伝えすることです。看護師さんや医療事務の方々はこのご時世、そして患者さんに対しても必要な職種であることは間違いありません。

もちろん、クリニックが万全な感染対策をしていることは大前提です。そして、コロナに感染した場合、濃厚接触者となった場合のルールも決めていることも大事ですね。

濃厚接触者になった場合の対応、休業を要請した場合の手当について周知する

ーーコロナに感染した場合、濃厚接触者となった場合のルールというのは例えばどのような内容でしょうか?

高橋
私なりに5つにまとめました。

1)濃厚接触者になった場合、検査をした上で(陰性の場合)出勤させるのか休ませるのかを決めておく
2)濃厚接触者になった場合や、子供の休校等に伴って休ませる場合の休業手当の率を決めておく
3)家族に発熱者が出た場合の連絡方法を決めておく
4)休みになった場合に、業務が回るのか、シミュレーションを実施して確認する
5)スタッフルームが密にならないよう、感染予防対策なども実施して万全を期す

特に、2の休業手当については、労働基準法第26条で「使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の百分の六十以上の手当を支払わなければならない。」と定められています。

つまり、陽性になった場合等ではなく、濃厚接触者になった場合など“クリニック(使用者)のルール・都合によってスタッフを休ませる”場合、平均賃金の6割は必ず支払うことになっています。それを6割とするのか、はたまた8割、10割とするのか事前に決めてスタッフに周知しておくことをおすすめします。

スタッフがコロナに感染した場合に利用できる助成金なども確認する

高橋
また、コロナに感染した場合、例えば協会けんぽ(全国健康保険協会)に入っていれば、傷病手当金が受けられます。
新型コロナウイルス感染症に係る傷病手当金の対象となる方

「傷病手当金の支給要件」とは
1)業務外の事由による病気やケガの療養のための休業であること
2)仕事に就くことができないこと
3)連続する3日間を含み4日以上仕事に就けなかったこと
4)休業した期間について給与の支払いがないこと

参考:全国健康保険協会 協会けんぽ「病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)

ーーひとつの例ですが、休ませるときは休業手当で6割以上、休まなければならない時は協会けんぽの傷病手当金…などと決まっていればスタッフも安心ですね。

高橋
そうですね。さらに、コロナ以外で例えばうつ病になった場合も協会けんぽの傷病手当金は受け取れますから、従業員のあらゆる不安を軽減できると思います。

このように、外部の仕組みも活用して自院でのルール・対策を実施しておけば、退職を考えるスタッフにも、「クリニックではこれだけ万全な感染対策をしているし、こういう形で休業手当も払うから、そこは安心してほしい」と話せますね。

その上でクリニックに残れる人は問題ないと思いますが、それでも退職したいのであれば、今回無理に残ってもらったとしても、この先も何かあるたびに不安に感じるかもしれません。もしくはご家族が止める可能性もあります。
スタッフ自身が納得できない状態で働かせたり、家族の協力を得られないまま働き続けたりするよりは、退職をしていただく方がそのかたのためでもあります。

クリニックでは、新たに働いてくれる方を探した方がいいかもしれません。

働き続けてくれるスタッフを、面接時に見極めるには?

ーークリニックに長期間勤務してくれるスタッフがなかなか見つからず、悩んでいる人も多いと思います。高橋さんが院長先生にアドバイスしている、面接時の注意点はありますか?

高橋
先生方に、面接時にどのような質問をしているか伺ったことがあるのですが「明日から来られる?」「残業できる?」「何曜日働ける?」といった内容しか聞いていない人もいるようでした。これでは問題社員を招き入れることになりますので、「先生が育てたいと思う人材かどうか分かるまで話してください」とご説明しています。

そのため、最低でも30分ほどのコミュニケーションは必要になると思います。

ーー優秀なスタッフだとしても「育てたいと思うかどうか」はそれ以上に重要なのでしょうか?

高橋
一概にそうだとは言えませんが、先生方が関わりたい、育てたいと思わないと、どうしても「合わない」と感じて辞めさせたくなってしまうこともあります。そうすると、そのスタッフとの間にトラブルが生じたりとリスクに繋がります。だから、育てたいと思うかどうかがひとつのリスク回避になるんです。

また、クリニックの雰囲気に合うかどうか、他のスタッフと円滑にコミュニケーションがとれるかどうか、そして前職の退職理由も聞いてください。
前職の退職理由について、「残業時間が多かったから」との返答があったらそれで終わりにせず、さらに聞いてください。「1日に何名の患者さんが来ていましたか」と。それでもし「30人」などと言われたら、自院の患者数に対応できる人かどうか判断できますね。

もしくは、元同僚や元院長について悪く言う人にも要注意です。
もちろん人間関係には合う、合わないがありますが、「その問題を自分で変えようと何か行動しましたか?」と聞いて「なんで私がそんなことしなきゃいけないんですか?」と返ってくることもあります。

人間性が分かる、Yes/Noでは回答できない話をたくさんして見極めてほしいですね。

面接時のポイント まとめ
1)Yes/Noでは回答できない会話で、その人を深堀りする
2)クリニックの雰囲気に合う人か検討する
3)先生が育てたいと思う人かどうか考える

ーーありがとうございました。最後に、クリニックの院長先生へ、ひと言アドバイスなどあればお願いします。

高橋
先生方にお願いしたいのは、医局時代のことは忘れて、ぜひスタッフの不安を軽減したり、トラブルが発生しない対策を立てたりして、医療業に集中できる体制を整えていただきたいです。

もちろんひとりで整備することは大変ですし、今回の質問にもあったように、このご時世ならではのイレギュラーも発生します。その場合は専門家に相談することもひとつの手だと思います。

ぜひスタッフも先生方も快適に働ける環境を心がけていただければ幸いです。
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診療科目

全て

高橋 友恵

取材協力 社会保険労務士法人アミック人事サポート 代表社員 | 高橋 友恵

社会保険労務士法人アミック人事サポート
代表社員/社会保険労務士/医療労務コンサルタント

2004年アミック労務管理事務所を開設。
2010年に株式会社日本医業総研にて人財コンサルティング部マネージャーとして人事コンサルティング・接遇講師・院内業務改善コンサルティング等を実施後、2016年に社会保険労務士法人アミック人事サポートを設立。医療機関特有の人事労務に精通し、これまで300件の関与実績がある。


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執筆 CLIUS(クリアス )

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