患者の「かかりつけ化」を促進する予約システム『kakari for Clinic』

予約システムは、診察に至るまでの時間を短縮できるため、クリニックと患者さんにとって非常に有用なツールです。実際に導入されているクリニック、また今後導入しようと考えている先生も多いでしょう。予約システムはさまざまな企業が提供していますが、その中の一つに「予約システムを通してかかりつけ化を促進する」というコンセプトのサービスがあります。それが『kakari for Clinic』です。同サービスを展開する『メドピア株式会社・日医工株式会社』に取材しました。

目次
  1. 2025年以降は既存患者のキープが課題になる
  2. 「予約という患者との接点」がかかりつけ化につながる
  3. 『kakari for Clinic』の機能
    1. 診療予約機能
      1. 予約台帳
      2. 患者さんへのリマインド
      3. 患者さんからの予約許可設定
    2. 患者接点を活用する3つの機能
      1. お知らせ配信
      2. チャット機能
      3. オンライン診療
  4. 『kakari for Clinic』の導入費用
    1. かかりつけプラン
    2. フリープラン
  5. 『kakari for Clinic』のサポート
    1. サポート対応時間
  6. 『kakari for Clinic』導入で必要な準備
  7. 他ツール・サービスとの連携
  8. 『kakari for Clinic』の評価
  9. まとめ

2025年以降は既存患者のキープが課題になる

『メドピア株式会社』プライマリケアPF事業部の岡本健次さんに、「かかりつけ化」が求められる背景や、医療業界の現状、『kakari for Clinic』開発の経緯を伺いました。

――なぜ「かかりつけ化」が求められるのでしょうか?

その理由には「市場の変化」が挙げられます。外来患者数は2025年をピークに減っていくと予測されています。これまで医療機関に訪れる人の数は右肩上がりだったため、多くの医療機関が「新規患者の確保」を中心に取り組んできました。しかし、2025年以降は状況が変わり、従来の方法で患者を得るのは難しくなります。そのため、新規患者獲得だけでなく、今来てくださっている患者さんを「いかにキープするか」が重要になるのです。

――いわゆる「リピーターを増やす」ということですね。

そうです。患者さんに「また利用したい」と思ってもらうには、患者さんとの接点を大事にしないといけません。しかし、今後はオンライン診療の普及により、来院という物理的なつながりだけでなく、「オンライン」での接点が増えることが予想されます。

従来は、来院時にコミュニケーションを図り、患者さんの信頼を得ていました。オンライン診療が一般的になると、そうした機会が失われます。患者さんの「かかりつけ医」になるためにも、「実際にクリニックに訪れていない時間でのコミュニケーション」を、どのように取っていくのかが今後の課題になります。

「予約という患者との接点」がかかりつけ化につながる

――『kakari for Clinic』はどのような経緯で生まれたのでしょうか?

『kakari for Clinic』を立ち上げる以前に、私たちは「かかりつけ薬局を作っていく」というコンセプトの薬局向けのサービス『kakari』を開発しました。処方せんを先に送って待ち時間を短縮する、お薬手帳を電子化するといった機能を持っており、患者さんに「かかりつけの薬局にしてもらう」のを支援します。

これまでは医療機関に隣接している薬局に行く時代が続いていましたが、今後は「薬局のかかりつけ化」が求められるということで、同じように、患者さんへのアプローチを考えていた『日医工株式会社』と提携して立ち上げました。

その後、薬局だけでなく、プライマリ・ケア全体を追うようなサービスを作りたいと思い、今度は日医工株式会社と共同で、クリニック向けの『kakari for Clinic』を開発しました。

――『kakari for Clinic』の特徴を教えてください。

コンセプトとして引き継いでいるのは「かかりつけ化」です。先ほどもお話ししたように、来院しているときにしか接点ができない時代ではなくなるため、継続的に患者さんとコミュニケーションを取ることが重要になります。しかし、患者さんとの大事な接点である「予約」が、現状では「時間短縮」を目的にしか活用されていません。

予約は患者と医療機関の最初の「接点」です。我々は「予約をきっかけに患者さんにまた来てもらうツールにしたい」と考えました。例えば、アプリを通してお知らせを配信する、チャットでのコミュニケーション、オンライン診療など、「一度来院された患者さんへのその後のアプローチ」を考えた機能が備わっています。患者さん側は待ち時間の削減、情報や経過管理ができるようになります。

――細かなアプローチがクリニックの価値をさらに高めてくれるのですね。

そうですね。結果的に治療離脱防止や再来院の機会を増やし、「かかりつけ化」につながります。

『kakari for Clinic』の機能

『kakari for Clinic』は、上述のとおり「一度来院された患者さんへのその後のアプローチ」を支援し、かかりつけ化に貢献するツールです。大きく「診療予約機能」と「患者接点を活用する機能」の2つがあります。

診療予約機能

予約台帳

最大5つの診察室ごとに10の予約種別を作成可能です(診療科・医師別、ワクチン枠、検査別など)。クリニックの運用に合わせて設定、切り替えをすることができる自由度の高さが特徴です。予約枠は15分ごとに予約枠、担当医を設定できます。例えば、15分ごとに3名、30分ごとに5名など予約時間と予約人数を変えるといった、クリニックの状況に応じた自由なカスタマイズ性も本ツールのポイントです。また、予約種別ごとに「注意事項」を表示することも可能です。

患者さんへのリマインド

予約完了の通知を行うほか、予約前日に自動でリマインドします。『kakari for Clinic』のアプリ利用者にはアプリで通知し、 WEBで予約された患者さんにはメールで通知します。

患者さんからの予約許可設定

予約種別ごとに患者さんからの予約許可設定ができます。例えば、トリアージが必要な予約、検査枠として利用するといった形で活用できます。

患者接点を活用する3つの機能

お知らせ配信

アプリ登録している患者さんのスマートフォンに「お知らせ」を一斉配信できます。例えば、ワクチンの入荷状況や予約開始時期を一斉配信するなど、多数の患者さんに知っておいてほしい情報発信で役立ちます。

チャット機能

患者さんと個別にやりとりすることが可能で、時間の関係で電話が難しい患者さんに対して事務員がアプローチするといった使い方ができます。治療離脱防止のほか、電話対応の削減、業務効率化に貢献します。

オンライン診療

「予約」から「保険証提示」「診療実施」「クレジット決済」「処方せん画像の共有」までオンライン診療の一連の流れを一気通貫で行えます。ビデオカメラのツールも組み込まれており別途用意する必要はありません。

『kakari for Clinic』の導入費用

『kakari for Clinic』は以下の2つのプランを提供しています。

かかりつけプラン

初期費用:9,800円[税別]

月額費用:9,800円[税別]

予約システム、オンライン診療など、全ての機能を利用可能。

フリープラン

初期費用:0円[税別]

月額費用:0円[税別]

オンライン診療機能のみ利用可能。

また、稼働開始までに要する時間は最短で2週間。長くても1カ月程度と考えておけばいいとのこと。そのほか、『kakari for Clinic』を導入する際、患者さんに渡すチラシ(『kakari for Clinic』導入を知らせる)などの宣材も『メドピア株式会社』から提供されるため(1,000部)、こちらの作成に時間が必要です。チラシはクリニックごとにカスタマイズされたもので、デザインデータも納品されるため、クリニック側で印刷することも可能です。チラシ費用もかかりつけプランの初期費用9,800円[税別]の中に含まれています。

『kakari for Clinic』のサポート

基本はメールと電話でのサポートとなります。

サポート対応時間

平日:10:00~17:00まで(土日祝日を除く)

スタッフへの説明や導入支援のサポートも行います。こちらはオンラインで実施するほか、日医工株式会社による対面サポートも提供しています。有料ですが、初期設定代行プラン(10,000円~20,000円[税別])もあるので、機器設定に不安がある場合はこちらを頼むのもいいかもしれません。

『kakari for Clinic』導入で必要な準備

『kakari for Clinic』はクラウド型の情報システムです。そのため、専用端末は不要ですが「インターネットへの接続環境」が必須です。また、「1,280×1,024以上の解像度のディスプレー」も必要になるとのこと。

他ツール・サービスとの連携

『kakari for Clinic』は、薬局向けの姉妹サービス『kakari』と連携し、薬局への処方せん画像共有や疑義照会等に活用できる施設間チャットにより、医薬連携を支援します。また、電子カルテ、レセコンとも連携することで、シームレスな診療業務が可能となります。現在は『富士フイルムヘルスケアシステムズ』の電子カルテと連携済みとなっており、連携先電子カルテ・レセコンも拡大予定です。

また、オプションサービスですが、『kakari for Clinic』と連携した『kakari for Clinicホームページ制作』も提供しています。両者が連動しているので、例えば患者さんへのお知らせをアプリとホームページ両方で同時に更新といったこともできます。通常はホームページの制作・管理会社に依頼してお知らせの更新を行いますが、そうした手間は必要なくなります。

『kakari for Clinic』の評価

実際に導入されているクリニックからは、

  • 待ち時間短縮につながった
  • 電話業務の削減につながった
  • 患者の再来促進につながった
  • という声が多く寄せられているとのこと。例えば、コロナワクチンに関する電話での問い合わせが多くあったクリニックでは、『kakari for Clinic』でお知らせを発信したことで、電話での問い合わせが減ったとのこと。診察の効率化で予約対応できる患者さんの数が増え、満足度向上につながったと高く評価されています。

    そのほかには、「使いやすさ」も高く評価されているポイント。実際、「使い方が分からない」という問い合わせはほぼない状況。『メドピア株式会社』の岡本さんによると、「クリニック側だけでなく、患者さんが使うアプリ側もシンプルに使いやすい設計です。高齢者の方でも安心して使ってもらえると、導入しているクリニックから評価いただいている」とのこと。

    最後に『メドピア株式会社』プライマリケアプラットフォーム事業部長の後藤直樹さんと、『日医工株式会社』の北尾太一さんから、次のようなコメントをいただきました。

    後藤さん コロナワクチン接種用に使うなど、部分的に利用されている先生もいます。我々のサービスは後発ですが、導入費、月額費用も従来のサービスと比べて安価ですので、まずはどんなものか使ってもらえるとうれしいです。

    北尾さん 診療予約機能については、クリニックの状況によって予約枠や時間をカスタマイズできるなど、非常に自由度の高い設計になっています。後藤部長と同じになりますが、試しに利用してもらい、使い勝手の良さを感じてもらいたいですね。

    まとめ

    新規患者の獲得が難しくなる2025年以降は、これまで以上に「かかりつけ化」が求められるようになります。従来のように来院時のみのアプローチでは、患者さんからの信頼は得られにくくなるかもしれません。『kakari for Clinic』は、患者さんとの来院時以外の接点を増やし、新たなクリニックの資産を生み出すサービス。今後を見据え、導入を検討してみてはいかがでしょうか。

    取材協力:メドピア株式会社・日医工株式会社

    『kakari for Clinic』

    クリニック開業ナビ

    執筆 コラム配信 | クリニック開業ナビ

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