開業するときに医師会に加入すべき?加入メリットと調査方法を解説

医師会に入るべきか、入らなくてもよいか。勤務医時代にはあまり気にしなかったテーマかもしれません。

医師会の会員となることで、休日診療の割り当てや各種の会合に参加するなど、さまざまな義務が発生することを敬遠する考えもあります。

また開業医同士の横のつながりや、先輩医師との人脈作りなどの意味は新規開業時には想像しづらいでしょう。

お金の面に注目しても、地区医師会、都道府県医師会、日本医師会への入会費、年会費は決して小さな金額ではないため、見合う価値が得られるかも気になるところ。

この記事では、診療科目や医院の状況によって異なる医師会加入の効果を解説するほか、加入を検討する段階での具体的な方法を紹介します。

※本記事に記載の情報は取材を行った2022年4月13日現在です。

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関西学院大学社会学部卒業後、大手證券会社、外資系生命保険会社を経て医療経営に特化したコンサルタントとして独立。経営顧問、開業支援を20年以上続けてきた。相模原市や町田地区の介護医療圏多職種連携の場をコーディネートも行う。「医療現場の課題を、デザインで解決する」ため、日本医療デザインセンターの理事としても活躍中。

目次
  1. 日本医師会の会員数は増加、ただし開業医は微減
  2. 医師会の考え方には地域差と個性がある
  3. 誰でも実践できる!周辺の開業医への相談
  4. 経済的なメリットも内科系には多い
  5. まとめ:相談できる先輩を探しましょう

日本医師会の会員数は増加、ただし開業医は微減

まず日本医師会の会員数の動向を確認すると、総会員数は9年連続で増加を続けています。

内訳では、開業医の会員数は微減、勤務医の数が開業医の減少分を上回るペースで増加していることが分かります。かつて日本医師会の会員は開業医が半数以上を占めていましたが、2016年以降は勤務医、研修医の会員数が逆転しており、差は拡大してきました。

総会員数 開業医※1 勤務医+研修医 開業医のうち診療所開設者
2015年12月 167,029 83,604 83,425 71,776
2018年12月 171,150 83,414 87,736 70,915
2021年12月 173,895 82,946 90,949 69,900

※1日本医師会発行「ドクタラーゼ」記載内容をもとに分類

勤務医、研修医向けの会費を引き下げるなどの対策が奏功している部分もある一方、新規開業する際に医師会入会を見合わせるケースもあり医師会離れを指摘する声も上がっています。

医師会の考え方には地域差と個性がある

日本医師会への入会は、地域単位や市区レベルなど地元の医師会を通じて行います。各地域の医師会は独立した組織であり、入会金や会費はそれぞれが設定。入会金だけで100万円以上、さらに年会費がかかるほか、医師会会員の中で推薦人を確保しなければならない場合もあります。

地域別の医師会への評価は、新型コロナウイルス感染症への対応時に大きく分かれました。日経メディカルが各都道府県の医師会会員に対して行った調査によると、「医師会の対応は満足だったか」という質問に満足と答えた会員の割合は大きく差がつきました。トップの福井県と最下位だった山梨県の割合の差は6倍以上です。都道府県によって、コロナ対応を巡って評価を落とした医師会があったと言えるでしょう。

出典:都道府県医師会のコロナ対応、医師の満足度に差(日経メディカル)

2021年夏には、日本医師会の横倉前会長が雑誌に寄稿し「コロナという『国難』がつづくなか、日本医師会が国民から信頼を失いつつあります」「なぜ日本医師会はここまで嫌われてしまったのでしょうか」というコメントは話題となりました。

参考:《前会長激白》日本医師会はなぜ嫌われるのか〈病床確保、ワクチン接種……コロナ対策の最前線に立つべきだ〉(文春オンライン)

しかし村口氏は一律での議論ではなく、地域間の個性に目を向けるべきと指摘します。

――ある市の医師会で理事をつとめる40代の先生は「若い世代を中心に変わりつつある」と言っていました。

村口:一律で何歳以上が良い、悪いという話では全くありませんが、1980年代に生まれたY世代(ミレニアル世代)の医師が開業するようになってきました。一般的に「金銭的な豊かさよりも、心の豊かさや社会的な貢献度を重視する」と形容される世代です。こうした価値観を持った医師が共鳴できる医師会もあるでしょう。もちろん執行部の世代は上ですが、尊敬できる先輩が多数いる医師会は経済的な価値以外にも加入メリットが大きいと言えるはずです。医師として地域のため、国民の安心や健康のためにがんばりたいという若手医師が増えているのは頼もしく感じますね。

しかし、地元の医師会がどのような組織なのか、開業前・加入前に実態を知るのは困難です。村口氏が推奨する「一石二鳥」の調査方法を紹介します。

誰でも実践できる!周辺の開業医への相談

――「加入してみて嫌だったら辞める」のは現実的ではないかと思います。地元の医師会について詳しく知る方法はありますか。

村口:工事着工前後のタイミングで「開業前のご挨拶」という名目で、近隣の開業医に訪問できると理想的ですね。もし医師会に加入する場合の推薦人の候補でもあるドクター1名と、ライバル視されない程度の距離がある開業後3年くらい経過した若手ドクターに忌憚のないご意見を聞ければ最も効果的だと思います。ご自身の開業コンセプトと地元医師会の価値観が一致するかで意思決定していただければと思います。

――飛び込んでみるのは勇気がいるかもしれません。

村口:新たに開業するこちらの動向が気になるのは、距離が近く、かつ同じ診療科のクリニックですよね。だからこそ開業後ではなく、事前にアポイントを取ったほうが印象がよくなるはずです。その際に「ここの医師会ってどうなんですかとか、会長さんはどんな方ですか」と率直に質問すればいいと思います。

――違う診療科目の先生では意味がないですか。

村口:もちろんいろんな先生の話を聞くことに意味はあります。ただ開業前で忙しいのに何件もよそのクリニックを訪問する時間はそうそう取れないでしょう。だからこそ、同じ診療科の先生をあえて優先的に訪問してほしいのです。

――挨拶もできて、医師会の調査もできるのは一石二鳥ですね。

村口:もっと言えば、周辺の先生の人となりも早めに分かりますよね。そのクリニックがどんな医療を大切にするのか。またどのくらいこちらの開業を警戒しているのか、それとも協力関係を築けそうか。医師会の情報を集めつつも、周囲で関わる先生方とのネットワーク作りは意識しておくのがよいと思います。

経済的なメリットも内科系には多い

最後に経済的なメリットについても解説を加えてもらいました。とくに経済的な部分にだけ注目すべきでないというのが村口氏の指摘ですが、内科系のクリニックは収入面のメリットも重要な要素でしょう。

村口:昔も今も、内科、小児科は医師会加入のメリットが大きいとされます。理由は健診や予防接種など地元自治体が行う医療の行事に加われるからです。メインの科目でなく、サブで小さくても内科を標榜しているクリニックは全体の6割ほど。健診や予防接種は内科の大切な業務なので医師会加入の恩恵は大きいわけです。収入面に加えて、小児科なら地元の小学校でクリニックの名前と先生の顔が売れるという広告、広報的な価値は見逃せません。

――開業まもない時期は、知名度アップは重要ですね。

村口:とはいえ、広報的なメリットは初期に限定されるかもしれません。ただ似た価値観を持った開業医や他の診療科との医療連携効果は永続的に続く財産となります。昔のようにゴルフ仲間作りではなく、地域医療課題を一緒に解決していくモチベーションを大切にされるのであれば、医師会への加入はとても大きな人的財産作りの場になります。

――自治体健診は売上の源としても魅力的ということですね。

村口:地域住民の数は限られているため、過去には新規開業を妨げようと医師会の入会金を数百万円と高額に設定したケースもあったのです。これは独占禁止法違反に当たると判断されました。それくらい影響力があるということです。

――デメリットもありますか。

村口:入会後に割り当てられる可能性が高い夜間休日診療当番や分科会への出席などは負担感を感じるかもしれませんが、どこのコミュニティに属しても貢献度合いを示すことは極めて重要で「入会金の費用対効果だけ」を念頭に置くという発想は間違いかと思います。医師としての大切な価値観を共有できるかを優先し、損得勘定はその次でよいのではないでしょうか。

まとめ:相談できる先輩を探しましょう

医師会への加入は任意ですが、健診への参加などの経済的なメリットのほか、先輩開業医とのつながりを作る機会も得られます。

自身になじみのないエリアで開業する場合は、とくに近隣クリニックへの挨拶を兼ねて訪問するのはさまざまな情報取材としても有効です。「地域医療に貢献したい」という熱意をもった仲間が地元医師会で得られるかを見極められる可能性があるからです。

仮に同じ地域に、価値観の合う先輩や仲間がいない場合には地元に限定する必要はありません。オンラインの勉強会やサロンなども多くあります。取材に協力いただいた村口氏も日本医療デザインセンターで志の高い開業医と交流されているそうです。

参考:(一社)日本医療デザインセンター

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執筆 執筆者 藤原友亮

医療ライター。病院長や医師のインタビュー記事を多く手がけるほか、クリニックのブログ執筆やSNS運用なども担当。また、法人営業経験が長く医療機器メーカーや電子カルテベンダーの他、医師会、病院団体などの取材にも精通している。


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