昨今の働き方改革推進もあって、残業が多い職場は働き手に嫌われがち。より働きやすい環境を求めて、早期に転職する人も多いことが考えられます。では、残業を減らすことによってスタッフの離職率を下げることができるのでしょうか? 早速みていきましょう。
スタッフがクリニックを辞めたいと思う主な理由は?
まずは、職場が働き手に嫌われる要素としてどんなものが考えられるかみていきます。
残業が多い、長時間労働である
残業が多いことはもちろん、そもそも拘束時間が長いというのも問題です。なかには、午前と午後の診療時間の間に3時間ほどの休憩時間を設けているクリニックもありますが、その時間も拘束時間となると、「休み時間は1時間でいいからそのぶん早く帰りたい」と思ってしまうでしょう。また、毎日のように残業がある状態だと、プライベートの予定が立てられなかったり家族との時間を充実させられなかったりするため、スタッフの心身には疲労が蓄積されていくことでしょう。
休みたいときに休めない
心身に疲労が蓄積されているのに休めないとなると、早々に「退職」の二文字が脳内に浮かぶようになるでしょう。クリニックとしても休ませてあげたい思いはあるものの、人手不足で融通がきかないということもあるかもしれません。しかしスタッフはスタッフで、子育てや介護で家族のケアを怠れないなどの事情もあるでしょう。
業務量が異常に多い
こちらも人手不足が原因なことがほとんど。ひとりではこなすことが難しい業務量を押し付けられると、誰だって嫌気がさすものです。その日に終わらせなければならない業務が終わらないことから、やむなく残業しているというパターンも多いでしょう。
人間関係がよくない
クリニックに限らず、人間関係がギスギスしている職場では誰も働きたがりません。いじめやハラスメントのほか、仕事を人に押し付けてくるスタッフがいる場合なども、他のスタッフは精神的にも辛く感じるでしょう。
院長や経営者に問題がある
パワハラはもちろん、「人間的に信頼できない」「医療に対する考え方に納得できない」などもスタッフにストレスを与えます。場合によっては、「残業代をきちんと払ってもらえない」などということもあるかもしれません。
仕事にやりがいが感じられない
仕事にやりがいを感じられないことから転職を考える人も多いものです。キャリアアップ思考のスタッフだけでなく、「子育ての合間にできる範囲で仕事したい」と思っているスタッフであっても、こなした仕事をきちんと評価してもらえなければ、「やりがいを感じられないから辞めたい」と思って当然です。
仕事を丸投げされる、丁寧にやりかたを教えてくれない
新人スタッフやブランクが長いスタッフは、「丸投げされてもやりかたがわからない」という場合が多いでしょう。また、教育体制が整っていないと、不安に感じるスタッフも多いはずです。
「辞めたい」と言われる前に「辞めたい理由」を把握しよう!
上記は、「クリニックのスタッフが辞めたいと思う理由」のいわゆる“あるある”ですが、これ以外の理由がある場合ももちろんあります。では、「辞めたい」につながる不満を事前に知るためにはどうすればいいかというと、定期的に1on1などのコミュニケーションの機会を持つことです。週に一度などのペースで1on1の時間を持っていれば、小さな不満が出てきた時点で改善に向けて動き始めることができます。
離職率が高いことのデメリットは?
「辞めたい」と思うスタッフが多く、結果的に離職率が高くなった場合、クリニックには次のようなデメリットがもたらされます。
求職者から選ばれにくくなる
求職者のなかには、離職率をチェックしている人も多いです。クリニック側で離職率を公開していないとしても、たびたびスタッフを募集していたら離職率が高いことはバレバレ。「スタッフを採用してもすぐに辞められてしまうなんて、なにか問題があるに違いない」と思われてしまいます。
業務が回らない
常に人手不足の状態だと、必然的に一人ひとりの業務量が多くなるだけでなく、残っているスタッフで一生懸命終わらせようとしても、その日のうちに仕事が終わらないこともあるでしょう。また、その日の仕事を終わらせるだけでいっぱいいっぱいの状態であれば、新しいことにもチャレンジしにくくなります。
患者からの悪い口コミが増える、クレームが増える
業務が回らなくなった結果、患者の待ち時間が増えたり、スタッフのミスが多くなったりすると、そのぶん、患者の不満は大きくなります。悪い口コミを書きこむ人やクレームを入れる人が増えたら、クリニックにとっては大きな痛手となるでしょう。
採用コストがかかる
辞めたスタッフの代わりに新しくスタッフを採用するとなると、それだけ採用コストがかかります。さらに面接には時間をとられるので、クリニックの負担が増えます。
企業文化が醸成されにくい
クリニックの理念を理解して、みんなで同じ方向を目指している仲間がいなくなり、新たな人材が加わることを繰り返すと、一体感が生まれにくく、独自の文化が醸成されにくいといえるでしょう。
残業を減らす方法、離職率を下げる方法は?
「人間関係の改善」や「スタッフのモチベーション向上」などには時間がかかる場合がありますが、「残業時間削減」は比較的確実に実現しやすいでしょう。
では、どうすれば残業時間を削減できるかというと、いくつか方法が考えられます。
ツール・制度などのハード系を活用する方法
電子カルテや自動応答電話、自動精算機などを導入する
検査結果の取り込みなどもスムーズにおこなえる電子カルテ、電話業務を削減できる自動応答電話、受付・会計がスムーズになる自動精算機などを導入することによって業務を効率化できるので、そのぶん、一日の仕事が早く終わります。
予約システムを導入する、予約日時を分散させる
特定の時間や曜日に患者が集中すると、患者は待ち時間が長くなりがち、クリニックスタッフは残業が多くなりがちです。予約システムを導入して、空き時間に積極的に予約を入れることで、特定の日時に予約を集中させないようにしましょう。
人材・スキルなどのソフト系を活用する方法
アルバイト・パートの人材を採用する
人手不足だけど新規スタッフ採用もできていないなら、次のスタッフが見つかる間だけでも、アルバイトやパートを雇うのも一手です。焦って雇う必要がない状態であれば、求職者をじっくりと見極めることができるのでミスマッチが起きにくいでしょう。
レセプト業務を外注する
クリニックの毎月の業務のなかでももっとも時間をとられるのがレセプト業務。これを外注することで、残業時間を削減できるだけでなく、レセプトの精度を上げることもできます。
業務の無駄についてスタッフと話し合う
業務に改善できるポイントはあるのか? どんなことをスムーズにおこなえるようになると業務が楽になるかなどをスタッフと十分に話し合うことはとても有効。院長目線では気付かなかったポイントも見えてくるに違いありません。また、業務を改善するためにはどうすればいいかも全員で話し合い、ルールを設けることも大切です。
マニュアルを作成する
新しいスタッフが入ったときに少しでも早く業務を覚えてもらえるよう、マニュアルを用意しておくことも大切です。これによって、教育にかかる時間を削減することもできるので、クリニック全体の業務が滞って残業が増えやすいということがなくなります。
スタッフのモチベーションを向上させるためにできることを考える
たとえば、「患者ひとりあたりの待ち時間を●分減らすことができた月は全員に賞与を出す」などと決めると、スタッフがいつも以上にてきぱきと仕事をして、結果的に残業時間を大幅に削減できる場合があります。
残業時間削減、離職率削減は、スタッフにも患者にも院長にもメリットをもたらす
残業時間削減やスタッフにとってメリットが大きいことのように思えますが、業務を効率化すれば、結果的に待ち時間が短くなり、患者からの評価が上がりますし、クリニックの評価が上がれば院長もうれしいことは間違いありません。まずは30分の削減を目標にして、翌月は1時間の削減など、具体的な数値を決めて着実に実現していくことがおすすめですよ!
特徴
対象規模
オプション機能
提供形態
診療科目
この記事は、2022年6月時点の情報を元に作成しています。