クリニック経営のためには一定の患者数を確保し続けることが大切です。そのためには新規患者ではなく、再来患者に注目する必要があります。とはいえ、どうやって再来患者を増やせばいいのでしょうか。
結論、まずは患者がリピートしてくれない理由を把握し、ひとつずつ改善していくことが大切です。
そこで今回は、自分がクリニックを受診したときに感じた体験談や、実際に患者さんから聞いた話をもとに、通院先を変えたくなる理由について考察していきます。
患者が感じる不満について
令和2年厚生労働省の「受療行動調査」(参考:令和2(2020)年受領行動調査(概数)の概況)によると、クリニックに対して「満足している」と回答した人の割合は64.5%でした。
患者が不満を感じる具体的な理由として「診察までの待ち時間」「診察時間」が多いようです。
受療行動調査・待ち時間に対する不満緩和対策については以下の記事も参考にしてみてください。
参考:患者の受診満足度を調べる「受領行動調査」とは?結果から見えてくる「これからのクリニック」
通院先を変えたくなる理由
調査の結果に加えて、自分が患者の立場になった体験談や実際に患者さんから聞いた話をもとに、通院先を変えたくなる理由を8つあげてみました。
1. 待ち時間が長い
2. 診察・診療内容が合わない
3. 医師とのコミュニケーションに不満がある
4. 医師以外のスタッフの対応が悪い
5. プライバシーが守られていない
6. 診察時間が短い
7. 清潔感がない
8. 立地条件が悪い
ひとつずつみていきます。
1.待ち時間が長い
まず1つめは、待ち時間が長いことです。
長いと感じる時間は人それぞれですが、体調がすぐれない場合、患者は早く診察してもらいたいものです。
私がこれまで働いてきた中で、整形外科や呼吸器外科領域の権威と呼ばれる医師が在籍するクリニックがありました。遠方からでもその医師に診察・手術をしてもらいたい患者が多数訪れ、待合室はいつもいっぱいでした。そのため、受診する時間枠はキープしているものの、手術の書類作成・予約外患者の診察が臨時で入ってしまうとで、どうしても待ち時間が長くなってしまいます。
とはいっても、患者には事情は分かりません。「もう2時間も待ってるけどあとどれくらいで呼ばれます?」「まだですか?」と声をかけられることもしばしばあります。そのため、待たせている患者に対する思いやりのある声かけ、優先順位を理解して診察の順番を調整できるようなスタッフの質は大切でしょう。
また、予約システムの導入も有効です。私が受診したクリニックは、診察までの残り人数や目安時間をメールでお知らせしてくれました。メールが届いたらクリニックに向かえばいいので、待ち時間を短縮できました。
こういった予約システムを導入することで患者の離脱を防ぐ工夫が今後は必要です。
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2.診察・診療内容が合わない
2つ目は、診察・診療内容が合わないことです。
患者がクリニックに通う目的は、体調不良による苦痛・悩みや不安を解消してもらいたいからです。そのため、医師が症状に対して的確な診察や治療をしてくれないと通院先を変えたくなってしまうものです。
私は血圧が急に上がり、胸がキューッと締め付けられる症状に不安を感じ、クリニックを受診した経験があります。しかし、心電図やカテコラミンなどの採血をして欲しいと伝えても必要ないと言われてしまいました。看護師としてある程度原因を予測して受診したつもりです。しかし、自分が求めている診療をしてもらえなかったため、通院クリニックを変えてしまいました。
逆に、こちらから依頼しなくても「こういったことが考えられるので検査しておきましょう」と不安要素を解消してくれる医師には安心感がありました。今はインターネットで必要な検査や治療を検索できる時代です。患者が求める前に医師が先回りして必要な検査や治療を行えば、「この先生に任せておけば安心」と信頼につながるでしょう。
すべて患者のいう通りにする必要はありませんが、競合の激しい地域で患者の離脱を防ぐためには、インフォームドコンセントの一環としてしっかり説明することが求められるでしょう。
3.医師とのコミュニケーションに不満がある
3つ目は、医師とのコミュニケーションに不満があることです。
先ほどもお伝えしたように、患者はそれぞれ悩み・不安・不調を抱えています。体調が弱っているときほど繊細になるものです。そのため、医師が話を充分聞いてくれない・否定的・高圧的だったりすると、このクリニックにはもう通いたくないと感じてしまうでしょう。実際、看護師として働いていたクリニックでは、患者から「別のクリニックを紹介してください」と言われたケースもありました。
これまで勤めてきた中で人気のある医師の特徴として、
といった点が挙げられます。
電子カルテを導入している場合、対策としてクラークをつけることも効果的です。診療内容や次回予約、処方箋の発行もクラークが行ってくれるので、医師は診察だけに集中できますよ。
クラークについては
「電子カルテのスムーズな運用にはクラークが必要?」
の記事も参考にしてみてください。
4.医師以外のスタッフの対応が悪い
4つ目は、医師以外のスタッフの対応が悪いことです。
クリニックの顔ともいわれる外来看護師や受付スタッフの対応が悪いと、患者は「雰囲気が悪い」と感じてしまいます。逆に、親切で思いやりのある対応をされると、細かいところまで教育され、配慮が行き届いていると感じるものです。
例えば、私が働いていたクリニックでは検査や手術の場合、準備する物品だけでなく不安を軽減するシーンでの具体的な声かけまでマニュアル化されていました。スタッフが変わっても同じ対応ができるので、目立ったトラブルにはつながりにくいのではないでしょうか。
5.プライバシーが守られていない
5つ目は、プライバシーが守られていないことです。
例えば、精神科・心療内科・不妊治療といったクリニックでは、ほかの人には聞かれたくない事情が多いものです。診察室の壁が薄い・パーテーションで仕切られているだけというような場合、医師と患者の会話が別の患者に聞こえてしまいます。プライバシーが守られていなければ、通院先を変えたくなってしまいます。
可能な限り個室に移動する・診察室に入るタイミングをずらす、といった配慮が大切です。施設の構造上、どうしてもむずかしい場合、心配りのできるスタッフを配置したり、診察時間を最後にしたりしてみるのもいいでしょう。
6.診察時間が短い
6つ目は、診察時間が短いことです。
患者はしっかり話を聞いて診察して欲しいと感じています。診察時間が短く納得できなければ、通院先を変えたくなってしまうでしょう。実際の現場では「あんなに待ったのにちょっとで終わっちゃった」と言われることが大半です。
とはいえ、限られた時間内に多数の患者を診察しなければならないため、どうしても対話は短くなりがちです。
先に述べたように、話を充分に聞いてますという気持ちを伝えるために、目を見て話す・適度に相槌をうつといった態度を示しましょう。
ほかにも、
といった対応をすれば、限られた診察時間を有効に使えます。
7.清潔感がない
7つ目は、清潔感がないことです。
トイレや洗面所に水が飛び散っていたり、手を拭いたあとのペーパーがゴミ箱からあふれていたりすると、不信感を抱いてしまうかもしれません。
クリニックはさまざまな疾患を持つ患者が集まる場所です。そのため、感染リスクを心配する患者も多いでしょう。
クリニックによってはかなり築年数が経っており、ハード面では対応できない場合もあります。しかし、キレイに掃除をする、廊下に車椅子やストレッチャーなどの物品を置かない、エントランスに花や植物を飾るといった工夫はできるはずです。
トイレ掃除などは数時間に1回、きれいにするようなシフトを作成するなどすることで、患者の目につく場所は特に、清潔を保つようにしましょう。
8.立地条件が悪い
8つ目は、立地条件が悪いことです。
家や駅からの距離が遠い、坂を登らなければいけない、など立地条件が悪ければ、通い続けることが難しくなるかもしれません。
実際、駅から徒歩20分以上、坂の上にあるクリニックで働いていた際、整形外科の患者は「通院が負担」「バスは揺られて転びそうになるから怖い」「タクシーは金銭的に負担」などと口を揃えて話していました。
また、呼吸器疾患を持つ患者を訪問したときには「移動に酸素を運ばないといけないから、いっぺんに回れる建物があるといいんだけどね」との声も聞かれました。
これから開業を検討されている方は、患者の年齢層や疾患も考慮し、無理なく通い続けられる立地を十分調査してみましょう。すでに開業して立地を変えられない方は、これまで述べてきた7つの不満を緩和するためのサービスを一つひとつ極めてみましょう。そうすることで患者の満足度は高くなり、今後も通いたいと思えるかかりつけ医を目指せます。
まずは患者がリピートしてくれない要因を把握し、改善点を見極めることが大切
今回は、自分の体験談・実際に患者さんから聞いた話や厚生労働省の調査結果をもとに、通院先を変えたくなる理由について考察してみました。
「また通いたい」「通いやすい」と感じてもらうために、まずは患者がリピートしてくれない理由を把握し、ひとつずつ改善していく必要があります。例えば受診後のアンケートで患者の不満やクリニックの改善点を尋ねたり、定期的にスタッフとミーティングを開催し、看護師や事務スタッフの意見に耳を傾けたりするのも有効です。患者に満足していただけるシステムの分析・提案をしてくれる企業などについて知りたい方は、ぜひクリニック開業ナビにお問い合わせください。
特徴
対象規模
オプション機能
提供形態
診療科目
この記事は、2022年8月時点の情報を元に作成しています。
執筆 現役看護師 髙橋マキ
正看護師歴26年。総合病院や個人病院の脳外科・循環器内科・ICUなどで勤務後、出産と子育て・転居をきっかけにフルタイムからパート勤務へシフト。クリニック・訪問看護・地域包括病棟などで実績を積んでまいりました。現在は、看護師パートをしながら在宅Webライターとしても活動しています。これまでの経験をもとに、皆さまに分かりやすい記事を提供させていただけたらと思います。
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