循環器内科クリニックを経営しているドクターの中には、
「新規採用看護師の能力不足のために他のスタッフの負担が増えてしまった」
「採用してもすぐに辞めてしまって困る」
「どんな看護師だったら定着してくれるのか分からない」
と悩んでいる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
看護師の仕事内容や役割は、診療科によって異なります。そのため、人によって得意・不得意があります。
これまで看護師として26年働いてきた中で「心電図がよく分からない」「病態がよく分からない」などの理由で循環器内科に苦手意識を持っている看護師を多くみてきました。その反面、循環器内科が好き・働きたいと思っている看護師も存在します。
実際、私も循環器内科で15年ほど働いた経験を活かしたいと考え、循環器内科クリニックへ転職しました。しかし、入職後のギャップが解消できず、試用期間が終わった3ヶ月で退職してしまった経験があります。
そこで今回は、看護師が循環器内科クリニックで働きたいと思う理由と、採用後のミスマッチを防ぐためのポイントをお伝えしていきます。
循環器内科の看護師の仕事内容と役割
内科・外科に共通する看護師の仕事内容は、おもに医師の診察介助・準備片付け・検査介助・患者のバイタルサインチェックです。
上記以外に、循環器内科ならではの仕事内容や役割には、心電図・心エコーなど医療機器の取り扱い方や結果を読み取りアセスメントすることが挙げられます。
加えて、心不全や不整脈など慢性疾患を持つ患者・家族への生活指導も行います。命に直結する疾患を抱えている患者の心理的サポートも、看護師の大事な役割です。
病状が変化するケースがまったくない、といえないのが循環器内科の特徴です。実際、「なんだか変なんだよねぇ」と受付にカードを出した瞬間、心筋梗塞を起こして亡くなってしまった患者にも遭遇しました。排便時に迷走神経反射が優位になって気を失う患者も少なくありません。
急変時の対応は、循環器内科で働く上で必須のスキルだといえるでしょう。
循環器内科クリニックで働きたいと思う理由
先ほども述べましたが、看護師の中には循環器内科に苦手意識を持つ人がいます。とくに、循環器内科の経験がない看護師にとっては、ハードルが高いと感じることも少なくないでしょう。
その反面、看護師が循環器内科クリニックで働きたいと思う理由は、
1.これまで身につけた知識や技術を活かしたい
2.知識や技術を身につけたい
3.患者家族をサポートしたい
の3点が挙げられます。
では、1つずつみていきましょう。
1.これまで身につけた知識や技術を活かしたい
1つ目の理由は、これまで身につけた知識や技術を活かしたいからです。
循環器内科では、検温の数値には現れていなくても患者の状態から異常を判断したり、今後起こりうる状況を察知しなければなりません。心臓だけでなくさまざまな症状が複雑に絡み合っていることも多く、全身状態をアセスメントする能力も必要とされます。
患者の変化を察知し、最終的に患者の命を救った経験をしたり、他の看護師が苦手意識を持つ心電図の波形を判読できたりする看護師は、少なからず自信を持っています。
中には、急変対応が得意な人もいます。ICUやCCU、循環器内科の病棟で患者が急変した時には、われ先にと看護師が一斉に集まります。わずかな遅れが患者の命に直結することを知っているからです。
こういった循環器ならではの知識や経験を、転職先でも活かしたいと思っている看護師は少なくないでしょう。
2.知識や技術を身につけたい
2つ目の理由は、先に述べた理由とは反対に、他の診療科や職場でやりがいを感じられなかったため、知識や技術を身につけたいと思うからです。
慢性期・回復期リハ病棟に新卒で配属されたり、転職して訪問看護や療養型病院に勤務したりしたケースでは物足りなさを感じ、やりがいを求めて未経験でも循環器内科クリニックに転職する看護師がいます。
のんびり働ける職場に新卒が配属されると、経験の長い看護師は「若いうちにいろいろ経験積んだほうがいいよ。選択肢が増えるから」と声をかける傾向があります。
もちろん「忙しいところは苦手なんです」と働き続ける看護師も一定数いますが、転職を決める人もいます。
3.患者家族をサポートしたい
3つ目の理由は、患者家族をサポートしたいからです。
特に循環器疾患の場合は命に直結する病状や症状が多く、検査や治療の内容・結果には非常にナーバスになる傾向にあります。しかし、医師の診療時間内では患者家族の想いは伝えきれないでしょう。そんな患者家族のフォローをすることは、看護師の役割のひとつでもあります。
症状に対する不安に耳を傾け感謝されると「看護師やっていてよかった」と感じられます。また、検査や治療、処置に対する不安や疑問に対し、自分が持っている知識を活かしてサポートできた時には、やりがいを感じられるものです。
採用後のミスマッチを最小限にするポイント
クリニックに入職後、上記理由とのギャップが大きければ大きいほど、離職の原因となることがあります。
ここでは、採用後のミスマッチを最小限にするポイントをご紹介します。
ミスマッチを防ぐための採用ポイントとして、求人を出す段階で以下の項目を確認しておくと良いでしょう。
高度医療を経験している看護師の場合
高度医療を経験している看護師の場合、採用面接では、あらかじめ求人で提示しておいた
などについて、具体例や細かなところのすり合わせをすると良いでしょう。
クリニックは高度医療を提供する病院に比べ、緊急度の低い患者が多いものです。日々の業務は採血・心電図などのルーチンワークがほとんどなので、物足りなさを感じて離職につながるケースも少なくありません。
私が入職した循環器内科クリニックは患者数が想像以上に少なく、ゆったり働けるのはありがたかったのですが、物足りなさを感じました。
「こんなに少ないとは思ってなかった」
「もっとテキパキ時間を忘れるくらい働きたい」
「このままでは自分の看護師としてのモチベーションが下がってしまう」
と感じ、結果的に退職につながってしまいました。
自院についてあらかじめ説明しておけば「こんなはずじゃなかった」というギャップを埋めやすくなるでしょう。
また、試用期間を設けるのもいいかもしれません。試用期間経過後、時給や給料をアップすることが前提にあれば「あと1ヶ月働いたら給料上がるし、もう少し続けてみようかな」と検討できます。
これまでのキャリアに自信を持っているようであれば、存在意義を感じられる配慮をしてみるのもひとつの手です。
たとえば心電図の判読が得意な看護師の場合、優先的に心電図の検査を担当してもらうと良いかもしれません。緊急性の有無を判断し、診療の順番を調整してもらうことで「自分の知識が役に立っている」と感じられます。
本人に意欲があるようであればスキマ時間を利用し、心電図や急変対応など、知識共有の場を設けるといいかもしれません。「人に教えるだけの知識がある」と自己承認欲求が満たされ、本人のモチベーションをキープできるでしょう。
循環器内科の経験がない看護師の場合
循環器内科の経験がない看護師の場合、業務に慣れるまでは経験がある看護師をフォローにつけることが大切です。
とはいえ、規模が小さかったりスタッフの人数が少なかったりすると、フォローに回せるだけの余裕がないかもしれません。高度医療の経験がある看護師と同様の対応を普段から行い、離職の可能性があるようなら余裕を持って教育する心構えが必要でしょう。
フォローをつける場合は、クリニック内に精通したスタッフを担当にすれば相談しやすくなります。ただし、人には相性があるので担当につける人材は充分注意が必要です。
私の場合、循環器内科の経験があったからか、クリニックに入職してフォローについてくれたのは医療事務でした。看護師1人体制のクリニックとはいえ「初日の段階で看護師がフォローしてくれないの?」と不安を感じてしまいました。
また、コロナ禍ではスタッフが一同に集まって勉強会や研修を行う機会が減っています。そのため、オンラインでの勉強会や研修といったフォロー体制を構築しておくと良いでしょう。
人材紹介サービスを活用し相互意思の共有を
人事採用に時間をとられ、本来の業務が進まないのは本末転倒です。人材確保でお悩みの場合は、人材紹介サービスを活用しましょう。
自院が求める人物像をしっかりと伝えておくことで、採用後のミスマッチを最小限にしてくれるでしょう。
人材確保については以下のサービスでも気軽に相談できますので、ぜひ参考にしてみてください。
看護師さんのお仕事探し・転職サポートなら「ナースのしごとら」
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この記事は、2022年10月時点の情報を元に作成しています。