
クリニック開業を周辺の住民に知ってもらう方法として「チラシ」を活用することが挙げられます。チラシは単なる開業の告知だけでなく、どんなクリニックなのか、何が特徴なのかも伝える大事な役割を果たします。しかし、チラシはただ配ればいいものではありません。大事なポイントを外せば、宣伝効果は低くなり、思ったような成果を上げることはできないのです。では、「チラシ作り」ではどのようなポイントを意識すればいいのでしょうか? ネット印刷大手の『ラクスル』に取材しました。
チラシの効果や有用性は?
――まずはチラシを配布することの効果や有用性を教えてください。
チラシによる宣伝には以下のような有用性があります。
①商圏単位でターゲティングできるエリア特性
クリニックのような商圏が存在する業態であれば、その商圏に限定して訴求できます。一般的なWeb広告と比べて値段を押さえながらターゲットに広告を届ける点で優れています。
②手元に残存、家族間で回覧されるなどの残存特性
Web広告やTVCM、交通広告などは、広告を目にした後は情報が流れてしまいます。しかしチラシ広告であれば、目にした後にも残存する可能性があります。最も興味を持たれた場合、冷蔵庫にマグネットで貼るなど、長期間残存する効果もあり、家族間での回覧によって1枚の配布で複数人へのアプローチも期待できます。
③埋もれにくい視界の独占性
検索エンジンのリスティング広告や専門メディアへの出稿をしたとしても、広告料を多く払える事業者に上位の表示を独占されてしまうことが多々あります。一方で、チラシ広告の場合は手に取ってもらえさえすれば、紙一面分の視界を自社の訴求情報で独占できます。リスティング広告のように表示される文字数に制限もなく、クリックした先で情報を取得するというような行動をさせることなく、多くの情報を届けることが可能です。
チラシ配布はトライアンドエラー
――チラシを配布する上で意識することを教えてください。
まず前提として、1回のチラシ配布でうまく周知できる可能性は低いので、複数回のトライアンドエラーが必要であることを覚えておいてください。「チラシを受け取る側」にも、認知しやすいタイミングとそうでないタイミングがあるため、認知してもらうには複数回配布する必要があるのです。
――なるほど。1回チラシを配布するだけで簡単には効果が得られるわけではない、ということですね。
一度だけでは、その地域の反響が得られやすいデザインや適切な配布エリアを理解するのは難しいですね。しっかりと周知できるチラシ配布を行うには、トライアンドエラーを繰り返しながらデザイン・配布エリア・配布タイミングを理解する必要があります。
「響くチラシ」を作るには?
――できるだけ多くの人に響くチラシを作るにはどんな点に注意すればいいでしょうか?
デザイン面では、チラシを受け取った人を導きたい「ゴール」を必ず明記すること。例えば、クリニック周辺の地図やWebサイトURL、アプリダウンロードのQRコードなどです。また、チラシを見た人の大半は、興味を持ったらスマートフォンで検索してサイトで情報収集を行います。そのため、チラシとサイトの写真・トンマナ(コンセプトや雰囲気)をそろえることも大事です。
クリニックの近辺にお住いの人に情報を届けたい場合は、クリニックの外観写真をチラシに載せることで、手に取った人に「あのクリニックか」と具体的に想像させることができます。具体的に認識してもらうことで、Webサイトにアクセスしてもらいやすくなり、実際にクリニックの近くを通りかかった際に「調子が悪くなったらここに来ようかな」と思ってもらいやすくなります。
チラシ Web ⇒ 現地といった流れをうまく連動させることが、「響くチラシ」を作る上で重要です。
――配布するエリアや配布の方法も意識すべきですか?
訴求するサービスと配布エリアの生活者セグメントの相性が合うと反響が得られやすくなります。加えて、一軒家指定・集合住宅指定など、配布方法を指定することで、ターゲティング精度を上げることもできます。一人暮らしの人に多く来てほしいのか、ファミリーに周知したいのか、クリニックの方向性によって配布方法を工夫してもいいかもしれません。
配布タイミングも意識する
――認知してもらいやすい配布タイミングはありますか?
新聞折り込みの場合は、一般的に土曜日の折り込みが家族で新聞が開かれてチラシも回されるため、高反響といわれています。一方で、折込枚数が多くなるとほかのチラシに埋もれるため、逆張りで他曜日に折り込んで高反響を出している事例もあります。
クリニックの場合、メイン患者層の生活タイミングを意識して配布曜日を設定するアイデアがあります。例えば小児科など、働いている若い世代が来られることの多いクリニックでは、週初めで忙しい月曜日より週末に配布する。整形外科など、ご高齢で在宅時間の長い方が来られることの多い場合は、週末だと他のチラシなども多く入るため逆に平日に配布するといった工夫をすることで、目に留まる可能性が高くなるかもしれません。これらを踏まえつつ、何度か配布する曜日を変更し、そのエリアで一番相性のよいタイミングを見つけることも重要です。
変わった工夫としては、わざとポスティング件数が少なくなる「雨の日」にチラシをポスティングし、ほかのチラシに埋もれないようにする事例もあります。ただ、これらはあくまで仮説であり、全ての地域に全く同じ事情が当てはまるわけではありません。配布エリア・季節によって最適な配布タイミングを試行錯誤するなど、クリニック毎に勝ちパターンを見定めていくプロセスが必要です。
――効果的なチラシの内容、タイミングを調べるにはどうすればいいのでしょうか?
「反響測定」を行うことが大事です。定量評価しないと施策の改善ができないため、デザイン・配布エリア・配布タイミングなどの施策単位で反響測定を実施しましょう。また、チラシに掲載したQRコードへのアクセス数、チラシを見て来院された患者さんの数、アプリダウンロード数など、反響指標を調べることも重要です。
チラシでの告知で注意することは?
――チラシを用いて告知をする上で注意すべきことはありますか?
以下2点が挙げられます。
導きたい「ゴール」を入れていない
上でも話したように、チラシには受け取った人を導きたい「ゴール」を明記することが大事です。しかし、チラシに地図を入れ込まなかったり、地図が分かりにくかったりすると、受け取った人がアクセスを諦めてしまいます。
反響測定以外の検証をしない
「なぜこのチラシの反響が大きかったのか」の理由は、反響測定をしただけでは分からりません。そのチラシのデザイン・配布エリア・配布タイミングが他の施策との優劣がつけられないのです。そのため、反響測定だけでなく、チラシデザイン・配布エリア・配布タイミングの各観点で条件を変えながら施策を繰り返すことが求められます。その上で、結果が出た条件を次回以降に採用してさらに検証するといった、地道なABテストを実施する方法が、結局は最も高い成果に繋がっています。
――勝ち筋を見つけるのはそう簡単ではないのですね。
チラシを作る場合のプロセス
――クリニック用のチラシを作る場合、どのようなプロセスになりますか?
弊社の場合、まずは販促戦略の企画を立てた上で、チラシのデザインを行います。デザイン経験のない人でも、オンラインで簡単に制作できるサービスがあります。医療業種向けデザインのベースとなるテンプレートも用意しているので、テンプレート通りに情報を入力するだけでチラシが作成可能です。デザインデータをお送りいただくことで、チラシを作ることも可能です。
『ラクスル』チラシ・フライヤーの無料デザインテンプレート一覧
――チラシを発注したい場合はどうすればいいでしょうか。
デザインが決まったら、チラシ仕様の設定をします。用紙のサイズ、厚さ、加工などを選んでいただき、次に発注部数・納期の設定。ポスティング・新聞折込手配の場合は配布エリアの設定を行います。
――依頼からチラシ配布までどのくらいの時間を要しますか?
弊社では以下のようになっています。
――チラシを作成する際の費用を教えてください。
例えば、A4で100部だと印刷+配布で1枚2.99円からご提供しています。弊社サイトからお見積りができるので、ぜひ参考にしてみてください。
――ありがとうございました。
チラシはクリニック開業の告知に貢献する大切な要素です。うまく認知してもらうためにも、今回挙がった「大事なポイント」を外さないようにしましょう。その上で、どこが効果的だったのか、何が失敗の理由なのかを分析していけば、効果的なチラシ配布ができるはずです。
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診療科目
この記事は、2023年1月時点の情報を元に作成しています。