どんな業界においても、ミスを防ぐためにダブルチェックをおこなうことは大切ですが、小さなミスでも命に関わる可能性がある医療機関においては特に対策を強化することが求められます。では、具体的にどんな対策をとることで、ダブルチェックの精度を高めることができるのでしょうか? 早速みていきましょう。
医療機関におけるダブルチェックの意義
前述の通り、医療機関での業務は命に関わることがあるため、ミスが許されません。処方箋の間違い、薬の量の間違い、処置の間違い、処置をおこなう患者の間違いなど、ミスしてはいけないことは多岐にわたります。それだけではなく、会計に関すること、提携している医療機関とのやりとりに関わること、患者へのメール連絡など、ミスをすると周囲に多大な迷惑がかかることもたくさんあります。そのため、日ごろから確実にミスを防ぐよう心がけることが大切。そのために役立つひとつの方法がダブルチェックですが、「2人以上でチェックすれば絶対に大丈夫」とダブルチェックの有用性を過信すると、かえってチェックの姿勢が疎かになることがあります。そのため、まずはダブルチェックを目的ととらえるのではなく、手段ととらえることで、有効に活用することを意識することが大切です。
シングルチェックとダブルチェックの違い、効果
「ダブルチェック」と聞くと、「ひとりがチェックした後、次の人が再度チェックする」というスタイルを思い浮かべる人がほとんどでしょう。しかし、実は1人で2回チェックしても「ダブルチェック」ですし、3人でおこなう「トリプルチェック」も、ダブルチェックの1種ととらえられることがあります。
シングルチェック | ダブルチェック | |
1人 | 1人の人が一回のみチェックします。メリットとしては時間が少なくて済みます | ●1人連続型 1人で、2回連続でチェックする方法です。チェックを担当する人が、ミスである箇所を「正しい」と思い込んでいる場合、2回以上チェックしてもミスが見付かることはないため、精度は低いといえますが、人件費を抑えられるなどのメリットはあります。 ●1人双方向型 ●1人時間差型 |
2人以上 | ― | ●2人連続型 1人1回のチェックを、2人連続でおこないます。多くの人は、この方法でダブルチェックをおこなっているのではないでしょうか。 ●2人連続双方向型 ●トリプルチェック ●クロスチェック |
ダブルチェック機能が低下する理由とは?
ダブルチェック機能は、主に以下のような場合に低下しがちです。
なんのためにチェックが必要かを考えていない
前述の通り、医療機関でのミスは大きな事故につながるため、一人ひとりが意識を高く持つことが大切です。同時に、「そのチェックにはどんな知識が必要なのか」を考えたうえで、チェックの適任者、ベストなチェック方法を選ぶことも大切。単に「手が空いている人に頼もう」だと有効な成果が出せない場合があるからです。
ベストなチェック方法を選択していない
2人以上でチェックすると、ときとして、「自分が見落としても他の人が見付けてくれるだろう」という意識が働くことがあります。そのため、場合によってはひとりでおこなうダブルチェックのほうが有効なこともあります。
必ずしもダブルチェックしなくてもミスは無くせる
チェックする人が意識を高く持てば、ひとりでのダブルチェックでもミスを無くすことが可能ですが、それ以前に、ダブルチェックの業務そのものを減らすことも大切です。どういうことかというと、一度目のチェック時にしっかりと確認するクセをつければ、ダブルチェックが不要となる業務はたくさんあるということです。
多くの業務は、指差し確認などの「シングルチェック」でミスを無くせる
ダブルチェックが必要なものと必要でないものの選別においてポイントとなるのは、「ひとりでのチェックだと不安があるか」ということです。たとえば、初めての業務に当たるときや、担当する患者を引き継いだときなどは、お互いに確認しあったり、前任者に確認してもらったりすることが望ましいでしょう。一方、毎日おこなっている業務であれば、指差し確認などのシングルチェックでも十分にミスを無くせるといえます。
ダブルチェック時の注意点
続いては、ダブルチェック時の注意点を説明します。
「思い込み」をなくす
チェックする際に一番不要なものは、「ミスはないだろう」という思い込みです。特に、自分が担当した仕事、もしくは自分が尊敬している先輩や上司が担当した仕事をチェックするときは、「ミスはないはず」との思い込みがあるため、ミスを発見しにくいものです。とはいえ、簡単にその思い込みを自分のなかから無くすことはできないので、ここはひとつゲーム感覚で、「ミスをひとつ見つけるたびにコーヒー一杯無料」などのルールを設けてチェックし合うとミスが見付かりやすくなるかもしれません。
緊張感を持つ、集中力を保つ
ダブルチェックの作業は、業務全体のなかで意外と大きな割合を占めるものです。毎週、毎月などのスパンで続けていると、だんだんと集中力が欠けてきて、「なんとなく作業している」というような状態になってしまいます。緊張感、集中勅を保つためにも、ダブルチェック業務をひとりの人に任せることなく、全員に回していくことが望ましいといえます。ただし、性格的にどうにもチェック業務に向いていない人はいるので、何回か配置してみてまったくミスを見付けられない人などはチェック業務から外したほうがいい場合もあります。
チェックの時間をきちんと確保する
ダブルチェックをおこなう時間を十分に確保できていないと、本来なら見つかるミスも見つかりません。ダブルチェックの時間をしっかり確保するためにも、「業務に追われている」という状況に陥ることは避けたいものです。
ダブルチェックの精度を上げる方法とは?
続いては、ダブルチェックの精度を上げる方法を紹介していきます。
電子ツールの導入
エラーがある際にアラートが出る電子ツールを導入すれば、ミスを回避しやすくなります。たとえばレセコンひとつとっても、紙で請求するよりも圧倒的にミスを見つけやすいといえるでしょう。
ミス発覚時に原因を追究する
ミスが起きた際、その原因を確認する作業を怠れば、また同じ理由でミスすることが多くなります。ただし、「誰がミスしたか」のみを追究して、その人を責めることはよくありません。注意することはもちろん必要ですが、叱るよりも「次から同じミスを繰り返さないためにはどうすればいいか?」を一緒に考えることが大切です。
ミスが起きた場合のルールを決めておく
ミス発覚時の原因を追究するだけでなく、場合によっては、「同じミスを3回繰り返したら減給」などのルールを設けておくことも有効です。ただし、前述した通り、そもそもダブルチェックに向いていない人は必ずいるので、一人ひとりに同じ責任を課すのではなく、連帯責任とするほうが望ましいでしょう。
チェック表を作る
たとえばトイレの清掃に関するチェックなら、「トイレットペーパーの補充」「洗面台に飛び散った水の拭き取り」など、チェックしてほしいポイントを一つひとつ書き出しておき、そこにチェックを入れていく方式にすると、チェックの精度は飛躍的に上がります。
必ずしも、ミスした人が悪いとは限らない
ダブルチェックの精度がいつまでたっても上がらず、たびたびなんらかのミスが起こる場合は、ミスした本人に原因があるのではなく、ダブルチェックの指示をおこなっているほうに原因があることが考えられます。つまり、指示の仕方が悪いということ。今回紹介した「ダブルチェックの方法」や「ダブルチェックの精度を上げる方法」を参考にしながら、自院のダブルチェックをより有効にするには、何から始めるといいのかを考えてみてくださいね。
特徴
対象規模
オプション機能
提供形態
診療科目
この記事は、2023年4月時点の情報を元に作成しています。