整骨院が「価格競争に巻き込まれない強み」を作るには?|現役院長が自院の実例で解説

近年、整骨院業界は保険請求の厳格化が進んでいます。それに伴い自由診療を導入する整骨院も増えています。ただ、整体・リラクゼーションなどの競合も増えていることによって価格競争が起きているのが実態です。

とくに60分2980円などの激安マッサージを提供する店舗も目立ってきているため、顧客の中に「施術=低価格」という認知が広まってきています。

他店舗展開で薄利多売が可能であれば問題ありませんが、少人数で経営している整骨院は低価格で勝負すると利益に限界が出ます。余裕を持った経営をするために価格競争に巻き込まれない戦いは必要不可欠です。

そこで今回はどのように他社よりも強い部分を作り、価格を高めていくのかを解説していきます。

目次
  1. 差別化・ポジショニングの重要性
    1. 差別化された強みを作るためにまずやるべきこと
    2. 独自の治療法や専門性の高い知識をアピールする
    3. 専門特化型も手段の一つ
  2. 患者へのカスタマーケアの徹底
    1. 「小さな特徴」を掛け合わせる
    2. 地域密着のイベントを開催する
  3. まとめ

差別化・ポジショニングの重要性

他社よりも高単価であることはわかっていても選ばれる状態にしなければならないため、わかりやすく強み・特徴を伝えなくてはなりません。そのためには、「どこで戦うのか?」ということを明確にしたあとに、差別化されたサービスを構築していく流れがオススメです。

そこで、どの分野で戦うのかという「ポジショニング」が大事になってきます。「なんでもできます」「技術に自信があります」という抽象的なスタンスでは顧客にとって何が強みなのか伝わりにくいため、価格が安い方が選ばれてしまいます。

そこで価格競争に巻き込まれない方法としては、「施術単価をアップさせること」があります。

まずは30分5,000円、60分9,000円など、分単価150円以上の価格でコースを作成することが望ましいです。短時間の施術であれば15分2500円などもいいでしょう。

一般的な整骨院・リラクゼーションなどは分単価100円以下でサービス提供しているところが多いため、まずは分単価を高くしていくことが大切になります。

このとき注意しなければならないのは、やみくもに単価を上げただけでは顧客から選ばれないということです。他社よりも単価が高い明確な理由がなければ、顧客はより低単価の整骨院に流れてしまいます

 

差別化された強みを作るためにまずやるべきこと

繰り返しますが、一般的な整骨院のように保険診療をメインに打ち出してしまうと価格競争に巻き込まれます。それは、保険診療で継続通院している層の大半は「低価格で施術を受けられること」を理由にしている可能性が高いからです。

そこで、価格競争に巻き込まれないためにはまずポジショニングを明確にする必要があります。ポジショニングの決め方は自社の強み・近隣エリアの需要を基準に考えていきましょう。

例えば、スポーツ障害に対する施術に自信があれば、急性のケガを保険診療で回復させ、その後のメンテナンスを自費診療で継続するなどです。近隣に学生が多いエリアであれば需要は十分にある可能性は高いです。

ちなみに私は産後の骨盤矯正に特化した技術を強みにしていて、近隣エリアは子育て世代が多くいるエリアだったので強みと需要がマッチしました。それにより、価格競争に巻き込まれずに済んでいます。

また、近隣の競合が強みにしているジャンルも調査しましょう。

自社がやろうとしている取り組みをすでに近隣でやられていた場合、先に認知を取られていると不利になるケースが多いです。価格競争に巻き込まれず自社の経営基盤を強くするために、他社の強みとズラすことが理想です。

ただ、全てが上手く噛み合うわけではないので、他社の強みと自社の強みが類似しているケースはさらに戦略を練っていく必要があります。

立地や、競合との差別化については、こちらの記事も併せてご覧ください。>>整骨院開業で重要な物件・立地選び!失敗しない5つのポイントを解説

 

独自の治療法や専門性の高い知識をアピールする

差別化するのに最も効果的なのは技術・知識面です。治療家自身が独自の治療法を持っていたり、専門性の高い治療や診察ができることをアピールすることで、患者に選ばれやすくなります。

「○○のような重症案件をこなしています」など、他社にはマネできない強みがあると高単価であっても顧客から選ばれやすくなります

わかりやすい強みをすでに持っている場合、Web上でその強みの部分を前面に出すようにすれば集客をしやすくなります。

 

専門特化型も手段の一つ

ただ、このような独自技術・専門知識で差別化するのはハードルが高いです。大きな強みをすぐに打ち出せない場合、症状に特化させたスキルをアピールするのも一つの手です。

例えば、「肩こり専門」「腰痛専門」などです。近隣で同じ訴求をしているところがないことが条件ですが、専門特化型は一定の効果が見込めます。このとき、「専門特化にしたら他の症状の集客が難しいのでは?」と考える人が多いと思います。もちろん、反応する客層に偏りは出ると思います。

しかし、現状で他社と比較して強みを明確に打ち出せない状態であれば、間口を広げて集客しても価格競争に巻き込まれる可能性が高いです。そうであれば、ジャンルを絞って専門特化することで、顧客に刺さりやすい訴求をした方がいい場面もあります。

実際、専門特化方の訴求をしても「○○ができるなら○○の対応はしていただくことはできますか?」など、違った角度からの相談は一定数あります。

集客ができれば顧客に対して別部位のメンテナンスを提案したり身近にいる人の紹介を促す対策など、利益を出す手段は増えていきます。もし、明確な強みを訴求できない場合は専門特化型も視野に入れていきましょう。

 

患者へのカスタマーケアの徹底

「小さな特徴」を掛け合わせる

「差別化」というと、“独自の技術”など、強い訴求がないといけないと思いがちです。もちろん、そのような差別化ポイントがあれば理想ですが、なかなかそうはいきません。その場合特徴を組み合わせることをオススメします。

例えば、次のようなポイントです。

  • 早朝からオープンもしくは夜遅くまでの診療
  • 子連れOKでさらにキッズスペースあり
  • おしゃれで清潔な内装
  • 土日祝日診療
  • 完全予約制で待ち時間なし
  • 女性治療家が担当
  • バキバキするorしない
  • 無料相談
  • 診療時間外も相談受付
  • 医学的知識をもった治療家がダイエットサポート

これらの項目は技術や知識レベルに関係なく作れる「差別化ポイント」です。

単体で見ると大きな差別化ポイントにはなりませんが、2つ以上組み合わせると魅力的なものになります。

例えば、当社の事例で言いますと、産後骨盤矯正に特化した技術を強みにしています。

サービス提供した当初はバキバキしない技術を前面に出した訴求をしていました。その後、「子連れOK」「完全予約制」「女性治療家もいます」というポイントも加えたサイトに修正していったところ、反応数は徐々に増えていった経験があります。

その他の事例で言いますと、当社は交通事故に関するサポートにも力を入れていました。

そこで、サイトに24時間対応の電話番号・公式LINEのリンクを貼るという取り組みをしました。電話番号は自分の携帯ではなく「050〜」の番号を別途取得し、相談専用ダイヤルにした形です。こうすることにより、他スタッフへの負担をかけずにカスタマーケアの徹底をしていきました。

実際、作業量は増えてくるので、どこまで労力をかけることができるのか?という部分を明確にした方がいいです。

例えば、無料電話相談であれば「23時まで」、LINEであれば「24時間以内に返信します」という文言を入れておくことで消耗を抑えることができます。このように、提供する技術・サービスは同じでも小さな差別化ポイントを組み合わせることで、他社と大きな違いを生み出すことも可能になります。

地域密着のイベントを開催する

整骨院選びの際、顧客目線で考えたとき「知っている人に施術して欲しい」という感情があります。そこでオススメなのは「肩こりにオススメのストレッチ体験会」「産後のセルフケア方法の体験会」など、無料イベントを開催することです。

そこで悩みを聞き、専門家としてのアドバイスをすることで信頼を得やすくなります。自分のことを理解してくれている人に施術してもらいたいと考えている人は、信頼があれば他社よりも価格が高くても来院してくれやすいです。Web上だけの対策ではなく、上手くオフラインでの交流を組み合わせると効果的です。

 

まとめ

価格競争に巻き込まれないために、自社の強みとなる部分をまず分析する必要があります。

近隣の競合と比較して、明確な強みを打ち出せるのであれば理想です。ただ、そのような整骨院は少数派だと思います。

もし、大きな強みを出すことが難しい場合、小さな特徴を掛け合わせたり、イベントを開催して地元の人たちと交流をするなどして集客をしていくことがオススメです。

価格以外の部分で選ばれる要素を作り上げた整骨院が単価をアップさせやすくなります。

今後は保険診療をメインにしていくのは消耗するわりに利益が少ないやり方になるので、今のうちから差別化できるポイントを作っていきましょう。

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執筆 株式会社Progress代表取締役 飯島 真吾

整骨院・パーソナルジム・レンタルスペースなどを経営。
併せて、自らの経験を活かした整骨院関連のマーケティングを手助けする事業も行っている。
元プロボクサーという経歴を持つ。


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