整骨院開業で重要な物件・立地選び!失敗しない5つのポイントを解説

整骨院・整体院などを開業しようとするとき、立地(および物件)選びは非常に重要です。いくら技術に自信があったとしても、認知されにくい立地に開業してしまったときは集客するのが困難になります。

そこで今回はこれから開業を考えている方が立地選びで失敗しないためのポイントを5つご紹介します。

目次
  1. まずは最寄駅周辺の調査
    1. 人口(年齢層・昼夜の違いに注目)
    2. 最寄り駅の1日の利用者数
    3. 近隣の競合店
  2. 整骨院開業の「理想の立地」三原則とは?
    1. 理想の立地1.「人通りが多い」こと
    2. 理想の立地2.「駅徒歩5分以内」であること
    3. 理想の立地3.「目立つ場所」であること
  3. 2階以上の店舗(空中店舗)に出店する場合
    1. あえて2階以上(空中店舗)にした方がいい場面
      1. 1.女性をターゲットにする場合
      2. 2.スタッフ数が限られる(人件費を抑えたい)場合
  4. 駅から離れている場合について
    1. 地方での出店は駐車場への導線も考えるべき
  5. まとめ

まずは最寄駅周辺の調査

整骨院を開業する際、まずはどれだけの売上が必要なのか?それを達成するにはどれだけの料金設定にして、1日何人の施術をしなければならならないのか?を算出する必要があります。

これをなるべく正確に割り出すために調査すべきことは、出店したい立地の最寄駅周辺の情報を集めることです。これは首都圏や地方都市でも共通するポイントになります。具体的には以下の項目に注目しておきましょう。

 

人口(年齢層・昼夜の違いに注目)

人口は市町村レベルで調査する形で大丈夫です。市全体で20万人以上いるエリアであれば集客しやすい傾向にあります。人口が20万人以下の場合は、最寄駅付近に競合がどれくらいあるのかを把握しましょう。

人口20万人以下の市で開業する場合、最寄り駅付近の競合が10社以内であることが望ましいです。少ない人口の中で競合が多いと、技術が優れていても集客できる母数に限りがあるので苦戦しやすくなります。

市の人口が10万人以下の場合、最寄駅付近の競合数が5社以内など、さらに少ないエリアを選ぶべきです。

また人口に関しては、昼と夜とでの人口区分の違いも見ておきましょう。人口に関しては「○○市 人口」と検索すれば、そのエリアの統計データをチェックできます。年代別の人口も一緒に調べられますので、ターゲットにしたい年齢層がどれぐらいいるのかも併せて確認しておきましょう。

昼夜の人通りの違いですが、住宅街・オフィス街で大きく変わります。住宅地に開業をする場合、日中は会社に出勤している人が多い(家にいないことが多い)ので、夜間人口を基準にした調査が最適です。反対に、オフィス街や居住人口が少ない立地(ショッピング施設・レジャー施設が近い など「お出かけ」で行くことの多いエリア)で開業する場合は、昼間人口を基準に調査を行うといいでしょう。

調査方法としては、国勢調査もオススメです。「国勢調査 昼間人口 ○○市」などで検索すると、開業をする診療圏の人口がわかります。

私が整骨院を開業した神奈川県藤沢市は当時人口42万人いて、最寄り駅周辺には整骨院・整体・リラクゼーション含めて25社以上ありました。これだけの市場があればターゲットを絞ったコンセプトにすれば、十分に集客できると判断しました。実際、開業すると隣の市からも来院があったので予想以上の集客になりました。

ただ、初めての開業時は狙った客層のシェア率が低くなっても利益が出る価格設定で出店するのが望ましいです。一般的な整骨院であれば高齢者やスポーツによるケガをした人の来院が多いため、後期高齢者数や周辺の学校数などを調査するといいでしょう。

 

最寄り駅の1日の利用者数

学校数を調査をする場合、「○○市 中学」「○○市 高校」などと検索をすれば、エリア内の学校数を正確に把握できます。駅の利用者数も「○○駅 利用者数」と検索すれば統計データのサイトから細かい数値情報を得られます。

車移動が多いかどうかは正確な統計データはありませんが、基本的に徒歩圏は500m〜1km、それ以上離れると車移動をメインにする人が増えます。都心部では駅から駅が近いですが、郊外になると駅周辺から1km以上離れたところになると店舗が急激に少なくなることがあります。駅間が2キロを超えるようであれば車移動がメインの客層が多いと考えていいでしょう。

また、駅がほとんどない地域もあります。この場合はバス停を基準に考えてもいいですが、駅がない立地は車移動をメインにする人が多い可能性が高いです。こちらは正確なデータ・規準を出すことが難しいので、駅がない立地で開業を予定している場合は現地に出向いて調査した方がいいでしょう。

 

近隣の競合店

競合の数を調査するのにオススメなのがGoogle検索です。「○○市 整骨院」というキーワードで検索すると近隣の競合数を簡単にチェック可能です。

Googleマップに登録していない整骨院もあるため正確な数は把握できないですが、全く問題ありません。基本的にGoogleマップに登録していない整骨院は競合としてカウントしなくて大丈夫です。集客活動をほとんどしていないと思いますので。

私自身は「交通事故によるむち打ち施術」「産後骨盤矯正」をコンセプトに強く打ち出した整骨院を神奈川県藤沢市で開業しました。

そのため、市内の交通事故件数が全国平均と比較してどれくらいあるのか?年間の出生数はどれくらいか?を徹底的に調査しました。開業当時の神奈川県は年間で交通事故負傷者が3万人を超えていました(全国平均約3倍)。全国で7番目の負傷者数とかなり多い部類に入っていました。出生数は年間6万人を超えており(全国平均約3倍)、全国では東京に次いで2番目という数字でした。

そのうち交通事故・産後骨盤矯正ともに、シェアを2〜3%取れれば十分利益が出る計算でした。

また、競合店のコンセプトや価格帯なども全て調査しました。コンセプトが似たような競合は同じエリアに複数ありましたが、需要の多さを考えると問題なく集客が可能という判断になりました。

開業後に狙った数字を出せたのも、調査をしっかりとやっておいた結果だと思います。

 

整骨院開業の「理想の立地」三原則とは?

1人で開業する場合であれば1日の来院数は10〜20名ほどが一般的な目安になりますので、「集患しやすい条件を満たす」ことよりも、「(家賃などの)コストの低さ」を優先してもいいとは思います。

ただ、常時3〜4名ほどのスタッフで運営する方針の場合は、1日に50名以上の来院数がないと利益を出すのは難しいです。

例えば、東京都23区内で開業する場合、ベッド1台置くのがやっとの10坪程度の広さでも家賃10万円以上になることは珍しくありません。そこに広告費・医療機器のリース代、その他固定費がかかると、おおよそ開業後の経費は20万円前後もしくはそれ以上になります。

融資を受けている場合はさらに返済も含まれてくるので、1人治療院でも月の売上は70万円くらいは欲しいところです。健康保険をメインにした施術では客単価1,000円〜2,000円になるため、1人で開業するときは安定して15名ほどの来院数を確保できれば経営が安定しやすくなります。

もちろん、1回の施術が5,000円以上の高単価の施術料金であれば1日の来院数は上記人数よりも少なくても問題ないと思いますが、1人の顧客単価が数百円〜3000円ほどであれば、多くの来院数が必要です。

顧客単価5,000円を超えるようであれば1日5名でも利益は出しやすくなります。1日の売上25,000円前後を確保できれば、月間60〜70万円の売上を安定して出しやすくなります。

店舗集客においては認知の取りやすい立地が理想です。整骨院開業で失敗しないために、次のポイントを意識しましょう。

 

理想の立地1.「人通りが多い」こと

「人通りが多い」の定義としては、開業予定地周辺で一番栄えている場所を規準にして、開業したい立地の人通りをチェックしてみてください。そこよりも多いか、少ないか、同等か、で判断するといいと思います。

またはその立地に住んでいる人の多くが利用する道を規準にするのもいいでしょう。もし、駅周辺に商店街があれば日中の人通りは多い傾向にあるので、商店街の有無も調査した方がいいでしょう。ただ、商店街であってもシャッター街になっているところもあるので、実際に行ってチェックをするべきです。

 

理想の立地2.「駅徒歩5分以内」であること

首都圏で開業を視野に入れた場合、駅から徒歩5分以内であれば気軽に徒歩で行ける範囲になりますが、それ以上遠くなると人の心理としてはどうしても「ちょっと面倒だな」と足が遠のきやすくなります。

車移動が主流のエリアではそこまで気にしなくて大丈夫ですが、首都圏エリアは徒歩で通院する客層が多いこともあり、やはり駅チカの立地は有利になります。

 

理想の立地3.「目立つ場所」であること

車が多く通る道で、なおかつ歩道が広めな道沿いに開業できれば認知を得やすいです。具体的には1日に車が4,000台・歩行者は500人ほどであれば十分な交通量となります。大通りに開業する場合はこの数字を基準に考えましょう。

目立つ場所で開業を狙う場合は大通りの交差点部分がオススメです。この立地は車でも歩行時でも視覚に入りやすく、日常的に使う人も多くなるため認知度を得やすいです。

また、大型店舗・有名チェーン店(とくに飲食店など)の近くもオススメです。大企業が経営する店舗は入念な立地調査をしているため、人が集まりやすいところに出店している可能性が非常に高いです。利用者数も多い傾向にあるので自然と認知度を高めやすい状態になります。

 

2階以上の店舗(空中店舗)に出店する場合

基本的に2階以上の立地に出店する場合、1階部分に比べて認知されにくいです。理由は単純で、人が歩くときはなかなか上を見ないからです。ただ、2階以上の店舗はメリットもあります。

まず最大のメリットは家賃を抑えやすいことです。駅から近くであっても空中店舗を候補に入れることで、良い立地の選択肢が広がります。

また、1階部分はいわゆる「飛び込み客」の来院が一定数あります。それに対して空中店舗は目立つ看板を取り付けるなどをしない限り、飛び込み客はほとんど来ません。

 

あえて2階以上(空中店舗)にした方がいい場面

2階以上の店舗は基本的に患者さんの「目に留まりにくい」ものではあります。しかし、「あえて」2階以上の空中店舗を選んだ方がいい場合が、大きく2つあります。理由も添えて解説します。

1.女性をターゲットにする場合

もし、時間が長くて単価の高い施術(美容整体など)を中心に提供したい場合は、あえて空中店舗を選んだ方がいいケースもあります。例えば、60分10,000円などの単価であれば、1日に3名〜5名の施術でも十分に利益が出せます。

美容整体など、時間をじっくりかけて施術するようなコンセプトであれば相性がいいでしょう。こうした施術を受けるのは基本的に落ち着いた雰囲気でサービスを受けたい客層が多く、通行人から店舗内が見えたり、頻繁に患者が出入りするような雰囲気を嫌う傾向にあります。年代はあまり関係なく、女性が多いですね。

そのため、女性をターゲットとしている美容系(そうでなくても高単価な)メニューを提供するコンセプトであれば、むしろ空中店舗は都合がいいといえます。

とはいえ、やはり空中階の店舗は「目に留まりにくい」のは変わりませんので、集客の方法をより一層しっかりと考えなければいけないことには変わりません。

2.スタッフ数が限られる(人件費を抑えたい)場合

駅から近くて見通しのいい1階部分で営業をすると、飛び込み客への対応が頻繁にあります。専門の受付スタッフがいれば問題ないですが、施術スタッフだけで対応をする場合は施術を中断する機会が増えます。

施術中断回数が増えるとそれに比例してリラックスできている時間も中断されます。また、会話も中断されてしまうので、当然ながら顧客満足度は下がってしまうものです。そのため、できる限り施術中断は避けたいです。

私が経営する整骨院では受付スタッフがおらず、完全予約制で30分以上の施術がほとんどであるため、飛び込み客への対応はなるべく減らしたいと考えていました。実際、空中店舗にすることでほとんど飛び込み客がこないので、施術中断する頻度が少なく済んでいます。

 

駅から離れている場合について

新規開業をする場合の理想的な立地条件は、駅から近い・人通りが多いなど、目に留まりやす通いやすいことです。ただ、経営的な面を見ると、運転資金を多く残すことも重要になります。そのため、開業費はできるだけ低く設定したいものです。

開業費用では店舗の保証金や内装費用・備品購入で多くのお金が必要です。さらに固定費として重くのしかかるのが家賃です。経営リスクを軽減させるためには、ある程度駅から遠くても家賃を低く抑える、という考え方もあります。

1人で運営していく場合、広さは5〜10坪でも大丈夫だと思います。地域によって家賃・保証金などが違うので一概にはいえませんが、店舗契約・内装で150〜200万円は想定した方がいいでしょう。その他、医療機器をどれだけ導入するかによって変わります。

ちなみに私は店舗保証金200万円・内装150万円のトータル約350万円ほどかかりました。

都心部では最寄り駅から徒歩7分以上の場合、集客しにくい立地になりますが家賃を抑えやすいです。もし、駅から遠くてもわざわざ行く価値のあるサービスを提供できる自信があれば、あえて駅から離れた場所に開業するのもいいでしょう。

筆者は、都心部で駅から7分の立地で整体院を出店しましたが、他社よりも少ない回数で骨盤周囲を細くする産後骨盤矯正をコンセプトに展開した結果、問題なく集客できています。

「出産後のカラダの不調を改善」というコンセプトが多い中で、サイズに着目したコンセプトで展開したことが、差別化をアピールできたポイントではないかと感じています。

このように明確な強みを持つことや、明らかな差別化を図っておくことも、固定費を抑えるためには必要だと思います。逆に、他社にはない差別化されたサービスがない場合は、駅から離れた立地で開業するのは避けた方が無難です。

 

地方での出店は駐車場への導線も考えるべき

東京・神奈川などの都心部では電車移動をする層が多いため、駅からどれだけ近いかということが立地選びで重要になります。ただ、地方都市では車移動がメインの層が多いため、駅からどれだけ近いかよりも駐車場スペースがどれくらいあるのかが集客に影響しやすいです。

都心部であれば店舗に専用駐車場がなくても近くにコインパーキングがあることが大半になるため、駐車場自体がなくても集客に影響しないことが多いです。

実際、私は東京・神奈川で整骨院・整体院2店舗を経営していますが、どちらも駐車場自体がありませんが問題なく集客できています。

車移動が日常の人たちは駅から多少離れていても気にならないことが多いため、「駅から徒歩○分」と同じくらい駐車場に何台車を停めることができるかも意識した方がいいでしょう。

1人で整骨院を経営するのであれば、同時対応ができないこともあり駐車場は一台で問題ないと思いますが、スタッフを複数人揃えて1日に多くの来院数を目指すのであれば複数の駐車スペースを確保できる立地を優先しましょう。

 

まとめ

ここまでの通り、良い立地の基本原則はありますが、ターゲット層・施術人数や出店エリア(首都圏なのか地方なのか)によって最適な立地は変わります。

圧倒的な技術・サービスではなく、ある程度他社と同じ価格帯やコンセプトである場合は徹底して立地を調査すべきです。少しでもいい条件で物件を選ぶために調査に対する時間と労力は惜しんではいけません。

まずは自身が提供するサービス内容・スタッフを増やしていくのかどうかなどを含めて候補地を探していきましょう。

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執筆 株式会社Progress代表取締役 飯島 真吾

整骨院・パーソナルジム・レンタルスペースなどを経営。
併せて、自らの経験を活かした整骨院関連のマーケティングを手助けする事業も行っている。
元プロボクサーという経歴を持つ。


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