※本記事は著者の原稿をもとに編集部で加筆しています。
クリニックスタッフの主な退職理由のひとつにカウントされるのが、医師のパワハラ。
医師本人が自身の言動をパラハラだとは認識していないとしても、接した相手が「パワハラを受けた」と感じたらパワハラになることもあるので、十分に注意することが必要です。
では、どういった言動がパワハラととらえられやすいのでしょうか?また、その対策法としては、どんなものがあるのでしょうか?
医師のパワハラ問題パワハラととられやすい言動
まずは、パワハラととられやすい言動にはどんなものがあるのかをみていきましょう。
話しかけても無視する
話しかけても無視する、あるいは薄い反応しか返さないようだと、スタッフから嫌がられて当然です。
場合によっては、「考え事をしていて聞いていなかった」ということもあるかもしれませんが、それならそうで、我に返ってからでもいいので、「さっきはごめん」と謝るようにしましょう。
挨拶しない
朝の「おはようございます」や退社時の「おつかれさま」など、最低限の挨拶ができていないと、スタッフから「無視されている」と思われる可能性が高いでしょう。
また、「スタッフから挨拶されたら返すけど自分からは挨拶しない」というのも印象がよくありません。「看護師より医師のほうが偉いと思っているの?」「お高くとまっている」と思われて当然。
自分から積極的に挨拶するのが苦手という人も、意識して続けて習慣にしましょう。
話しかけると怒る
考え事をしているときや処置に集中しているときに話しかけられると、思わずカッとなってしまうタイプの人もいるでしょう。しかし、話しかけたほうには邪魔をする意図があるわけではありませんし、いきなりキレられたら驚いてしまうのが普通です。
話しかけられてイラッとしたときは、まずは「こういうときは話しかけないでほしい」と相手に伝えましょう。
何度も伝えているのに話しかけてくるようであれば、相手に問題があると言えるので、その場合は、仮に「パワハラだ」と訴えられてもドクター側の非は認められないことが多いでしょう。
意見すると「お前には関係ない」などと発言する
クリニックの方針や患者の治療法に関して意見されると、「お前には関係ない」と言いたくなることもあるでしょう。
しかし、スタッフは自分の考えを主張するためではなく、一意見として聞いてほしいと思っている場合が多いもの。
最終的な決定権はもちろん経営者である医師にありますが、対等に意見を出し合える関係を構築することはとても大切だということは頭に刻んでおきましょう。
看護師による処置の介助を断る
医師によっては、患者の処置をすべて自分でやりたいという人もいるでしょう。
しかし、看護師は看護師で、これまでの勤め先では処置の介助を任されるのが当たり前だったことから、さっと介助に入ることが習慣づいている人もいます。
それでも自分でやりたい場合は、処置に対してこだわりがあって自分でやりたいのだということを、看護師にしっかり伝えることが大切。理由を言うことなく断ったら、看護師によっては「自分のことを信頼されていない」と勘違いしてしまうこともあるかもしれません。
できないことや下手なことを詰める
「そんなこともできないのか!」「看護学校で何を学んできたの?」などの言葉は、パワハラととらえられる可能性がとても高いです。
もちろん、本当にそう言いたくなるくらい仕事ができないスタッフもなかにはいるでしょう。場合によっては、スタッフのミスで患者を危険な目に遭わせたことから、思わずそのようなセリフを吐いてしまうこともあるかもしれません。
しかし、実際にスタッフ側に問題があったとしても、攻撃的な言動をしてしまうと、その後、スタッフがクリニックを訴えた場合、圧倒的に不利になります。
そうした事態を防ぐためにも、「なぜそのようなミスをしたのか」「どう改善していけばいいのか」を一緒に考えることが大切。ただし、何度も同じことを繰り返すスタッフに対しては、最終的に解雇を告げなければならないこともあるでしょう。
過度な要求をする
業務時間内に終わらせるのが不可能な量の業務を課したり、経験値的にも難題となる指示を与えたりすることも、パワハラに該当することがあります。
こうした要求の結果、残業を余儀なくされるも、それ相応の給料をもらえていないとなると、労働基準法違反で訴えられることもあるでしょう。
過小な要求しかしない
過度な要求の反対に、やりがいのある仕事を任せてもらえないことも、スタッフにとっては大きなストレスとなり得ます。裁量に任せてもらないどころかチャンスさえ与えられないことを、屈辱的だと感じるスタッフも多いでしょう。
プライベートに関して聞く
仕事と関係ないプライベートのことを詮索するのは「個の侵害」です。
SNSでの発信に制限をかけるなどもこれに当たります。ただし、「クリニックの内部事情を発信するのは禁止とする」などはもちろん当然のことです。
実際にあった、パワハラ医師が改心した話
ここからは、筆者が実際に勤めていた病院でのパワハラ体験談を紹介します。
私が勤めていた病院の勤務医Aは、「看護師が話しかけても無視」「指示を仰ぐために電話しても“電話してくるな”と恫喝」などのパワハラでよく知られていました。
ほとんどの看護師がこの医師と仕事したくないと思っていましたし、病院側もそのことを認識していましたが、医師不足が原因でなかなか辞めさせることができない状況でした。そのため、Aのパワハラはエスカレートする一方。
そんなAのパワハラが問題視されはじめて10年後、遂に病院全体での会議が開かれました。看護師一同は「次にAのパワハラ行動が見られたら全員で一斉に退職しよう」と一致団結。
病棟責任者が事務室に赴き、全員分の退職届をもらって全看護師がサインしたことで、事務長や院長も事の重大さを理解して、Aに対して「次にパワハラの報告があれば即解雇」と告げたのです。
さらに、病棟責任者はその事実を正面にして、常にAの目に入る位置に貼りだしました。
これによって、Aは翌日から激変。最初のうちはみんな「いつまた元のAに戻るかわからない」と怯えていましたが、1年が経過してもパワハラを受ける看護師は現れず、全員が気持ちよく働けることとなりました。
最初のパワハラ発覚から実に10年以上ですから、なんとも長い時間がかかったものですが、看護師たちの勇気ある行動によって、病院全体がよりよい環境へと変わることができたと思っています。
パワハラと言われない・パワハラをしないためには
少し前と比べると、今は“なにかと「ハラスメント」になりやすい時代”なのかもしれません。
いくら「ちょっとしたことなのに」「これぐらいのことで?」と感じられるものでも、「ハラスメントだ」と言われてしまっては元も子もありません。
クリニックを開業するということは、「経営者になる」ことともイコールです。
従業員への考慮を忘れず、かつ締めるところはしっかりと締める。バランスが難しいと感じられるかもしれませんが、時には人事の専門家の意見などもうかがいながら、健全なクリニック経営を進めていってください。
特徴
対応業務
診療科目
特徴
対応業務
診療科目
この記事は、2021年7月時点の情報を元に作成しています。
執筆 男性看護師ライター | ベル
看護師歴14年目。救急、ICU、外科、内科を経験トラブルも多い看護の世界でいろいろいあってもこの仕事が好きな男性看護師。 現在、管理職として働きながらブログなどでも経験を活かしたノウハウを執筆しています。
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