2019年からの新型コロナウイルスの流行によって、人に会わない生活が続いたことや、マスク着用の影響もあり、美容クリニックに通う人が増えたことはたびたびニュースでも取り上げられていました。
そんな中、自由診療クリニックは増加の傾向にあり、廃業・閉院が増える保険診療クリニックとは真逆の動きを見せています。
一見盛況に見える自由診療領域ですが、開業数の増加による患者の取り合いや、人員不足などの問題があることも確か。
今回はそんな自由診療クリニックが抱える課題やその解決法、自由診療クリニックのこれからについて、自由診療に特化したクラウド型電子カルテ「B4A(ビーフォーエー)」を提供する株式会社B4A Technologiesの代表取締役CEO・植松正太郎様にお話を伺いました。
株式会社B4A Technologies
代表取締役CEO 植松 正太郎
大学卒業後、インターネット金融や医療IT企業を経ていく中で、製薬企業向けマーケティング事業の管轄やゲノム医療の会社設立・CEOを経験。
その後、複数社の経営を経験し、自由診療領域でのプラットフォームを創出すべく、2021年にB4A Technologiesを設立し、代表取締役に就任。
自由診療と保険診療との違いについて
ーー美容クリニックの開業数が増えていますが、この状況は今後も続くと思いますか?
しばらくは増えていくと思いますが、次第に淘汰されていくのではないでしょうか。その要因としては、これまで美容クリニックの集患の要だった「医師によるマーケティング」の効果が薄れていることが挙げられます。
今は患者様自身もSNSなど通して美容の知識を付けています。宣伝や広告の効果についてもそのまま信用せず、「自分に合ったものはなにか?」「本当に効果があるのか?」などをしっかりと調べた上で通うクリニックを決めていることが、その要因になっていると思います。
そのあたりはクリニックの皆さんも重要視するようになってきていて、顧客体験プロセスや口コミへの対策などを、自然と考えるようになっている印象はあります。
またこれには、保険診療と自由診療の性質の違いもあると思います。
保険診療の場合、緊急性が高いことが多く、インフラ的な役割を担っていますよね。そのため、患者様は予約した上に待ち時間が長くても、ある程度は我慢して診療を受けることもあるかと思います。
ただ、自由診療は全く違います。緊急性が高いことはあまりないし、サービスの側面が強いこともあって、クリニック全体の考え方としては「顧客体験」や「サービス」を重要視するところがあります。
こうした影響によって、今後は「患者様を大事にしているクリニック」か「技術力があるクリニック」だけが生き残っていく二極化が起きるのではないか、と感じています。
前者はたとえばCRM(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント。意味としては、すべての顧客に定型サービスを行うのではなく、顧客一人ひとりに対してサービスの内容を考慮し、それを実行すること)を重視していたり、安価で、技術力をそこまで必要としない脱毛や肌管理などの施術を行うクリニックが当たります。
後者でいうと、形成外科や大学病院などで手技の研鑽を積んで、確かな技術力をもとに美容外科を標榜しているクリニックですね。この場合は高価格帯でも、特別マーケティングに力を入れなくても集患が可能だと思います。
ーークリニックを開業する際、まずはじめに立地や物件を探す医師も多いです。土地選びや物件探しにおいて、二極化の影響含め、保険診療と自由診療の違いはあるのでしょうか?
あくまでも個人的な意見にはなりますが、基本的には駅から近いなど、「良い立地」であるに越したことはありません。ここは保険診療と同じかなと思います。
ただ、美容外科(美容整形)の手術を行うクリニックの場合、一番の訴求ポイントは「医師の技術力」なので、そこを担保できれば立地はあまり重要視されません。実際、私の知り合いの医師には、都市部から電車で1時間半ほどの立地で開業した方もいらっしゃるのですが、いつも予約が埋まっています。
ーー医師の技術力があれば場所は関係ないというのは、保険診療も同じかもしれないですね。
一口に「美容クリニック」と言っても、技術力を売りに美容外科として手術をどんどん行うところもあれば、美容皮膚科として「通いやすさ」を重要視しているところもあるので、そういった面で言うと、立地や物件の選定基準もさまざまになるのかなと思いますね。
とはいえ、美容クリニックの場合は、開業を目指す医師の「この場所で働きたい!」という思いが強い側面もまだまだあるのも事実です。表参道や銀座がいい例ですが、多くの医師がそういった場所での開業を目指したり実際に開業したりしているので、競合過多になっているところもありますね。
こうした場合、特徴を出せる医師が開業するのであれば良いと思うのですが、そうでない場合は、思っていたほどの集患ができないケースも少なくないと思います。
俗に言う「良い立地」ですと、クリニックを運営していくための維持費も高くなると思うので、コンセプトがはっきりしない場合はあまりお勧めはできないかな、というのが正直なところではあります。
反面、地方はまだまだクリニックの数が少なくニーズが満たされていない地域もあるので、あえて地方での開業も狙い目ではないかなとは思います。維持費も都心部よりも抑えられるうえ、競合に左右されずに自分のスタイルを貫けるところもメリットですね。競合が少ない・またはいない分、開業当初からの収益もある程度は見込めるのではないでしょうか。
今までは特定の人気な地域での開業が多かったですが、今後はこうした色々な地方・地域での開業に分散していくのではないかなと感じますね。
ーー自由診療クリニックと保険診療クリニックでの、システムに求められる機能の違いはどんなところにあると思いますか?
これについても、先程お伝えした各診療の性質の違いが大きく関わってくると思います。
電子カルテを例にとって説明すると、保険診療の場合は「正確な点数計算ができる」ことなど、ミスなく患者様と相対できて、診察を振り返れる機能が重要になっていると思います。
対して、自由診療の場合は診療点数がないため、しっかり会計ができることや、「サービス」ならではのCRMが重要視されます。
一般的なクリニックの場合、予約のプロセスを例にとって説明すると、Webだけで予約を完結させようと思っても第1~3希望まで入れることになった上に、折り返しの連絡を待ったり、電話しても希望の日時では予約できず、診療までの期間が長くなってしまったりすることがあるかと思います。
対して自由診療は、サービス業的な側面も強いので、「予約のしやすさ」をはじめとした顧客体験が重要です。
実際に我々が美容クリニックの患者様を対象として行ったアンケートでも、多くの方がクリニックを選ぶ理由として「予約のしやすさ」を挙げていました。
これには患者様の「行きたいと思ったときに行きたい」という心理が働いているのかなと思います。美容院などと同じで「キレイになる」ために行くところではあるので、思い立ったときに行ける点が重要視されるところはあると思います。
また、保険診療と違う点としては、自由診療は患者様の中途キャンセルが多い現状があります。
準備に時間をかけたものの実際の施術を受けてもらえないケースが、クリニックにもよりますが大体2~3割程度の患者様であるようです。
美容クリニックの場合1人の患者様が占める1日の売り上げの割合が大きく、施術を行えないとなるとかなりの損失になるケースも多いので、よりCRMに力を入れているクリニックも増えてきました。
そうしたニーズに応えるためにも、B4Aではステップ配信や、セグメント別のメッセージ配信機能、LINEと連携できる機能、予約情報のリマインドを促す機能をご提供して、患者様それぞれのお悩みに応えながら、顧客離れが起きないようにしています。
B4A代表が考える「電子カルテ」の今後
ーー自由診療をメインで行うクリニックが保険診療を取り入れたり、その逆もあると思います。そうしたクリニックが増えてきた際に、電子カルテの機能が統合されたり、競合しあったりといったことはあると思いますか?
たしかに、今後も保険と自費の両方を行うクリニックは増えていくと思います。ただ、システムを一本化する必要はないとも考えています。
我々のシステムを導入してもらっているクリニックにも保険と自費の両方をしているところはありますが、保険診療の際には保険診療に適した電子カルテを使用し、自由診療の際には我々の電子カルテ「B4A」を使用して、それぞれの領域に特化したシステムを使い分けています。
「電子カルテ『B4A』に保険診療向けの機能を追加しないのはどうして?」という声もありますが、自由診療に特化にしている理由としては、例えばここにレセコンのコントロールなどが入ってくると、それだけでかなり大規模な開発になると思うんですよね。そうなったときに、保険診療・自由診療どちらに対しても「イケてない」ツールになってしまう可能性が高いと判断しています。
そのため、今は戦略的に「自由診療特化」として、使いやすい予約機能などのCRMを重視した部分に力を入れています。
それに併せて、今後は経営に関わる情報の管理・分析に力を入れていきたいと思っています。後は先程もお話に挙げたような、施術前の患者様の離脱を防ぐような機能をリリースしていきたいですね。例えば来院前に決済が完了できる機能を近日リリース予定です。ここはクリニックのニーズも大きいところなので。
ーー最後に、他社との差別化やクラウド型電子カルテ「B4A」導入のメリットについてお伺いします。
機能とサービス、2つの側面があります。
まず機能的な面で言うと、CRMを考慮した「予約のしやすさ」や、様々なツールが1つのシステムの中に入っていることなどが挙げられます。
他社との違いでいうと、これまでは予約機能だけに力を注いでいるシステムが多くありました。ただ、それだけだとどうしてもリピートにつながりづらい現状もあったんです。
そこで、「B4A」ではCRMができるよう、個別メッセージ機能やLINE連携などを行い、従来の電子カルテの設計思想とは異なるところで勝負しています。
そこを認めていただいて、いまでは約200院のクリニックに導入いただいています。
サービス的な面では、機能開発のスピードの速さや、カスタマーサクセスによる手厚いサポートなどがあります。
クリニックで働く方々のITリテラシーは、皆が同じレベルではありません。しかし、同じシステムを使って業務を行っていく必要があります。
ですので、「誰でも使いやすいシステムをいかに作っていけるのか?」が重要だと考えています。
この点については、導入先クリニックで実際に働かれているスタッフの方々から日々様々なフィードバックをいただき、それを開発に活かしていくことで実現しています。
社内的なコスト効率は良くないのかもしれませんが、そういった真摯な姿勢がクライアント様にも伝わっているのかなと感じます。
ーーありがとうございました。
特徴
対応端末
システム提携
提供形態
種別
診療科目
この記事は、2023年5月時点の情報を元に作成しています。
取材協力 株式会社B4A Technologies 代表取締役CEO | 植松 正太郎
大学卒業後、インターネット金融や医療IT企業を経ていく中で、製薬企業向けマーケティング事業の管轄やゲノム医療の会社設立・CEOを経験。
その後、複数社の経営を経験し、自由診療領域でのプラットフォームを創出すべく、2021年にB4A Technologiesを設立し、代表取締役に就任。
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執筆 CLIUS(クリアス )
クラウド型電子カルテCLIUS(クリアス)を2018年より提供。
機器連携、検体検査連携はクラウド型電子カルテでトップクラス。最小限のコスト(初期費用0円〜)で効率的なカルテ運用・診療の実現を目指している。
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