整骨院経営においてWeb集客は重要です。無料でできるSEO・MEO・SNSでも集客することは可能ですが、成果を出すのにかなり時間と労力が必要です。
ですので、自力での集客のみではなくWeb広告を上手に活用することで、安定した集客が可能になります。
ただ、広告はお金を使うという理由から抵抗を感じる経営者は非常に多いです。もちろん、やみくもに広告費をかけてしまうと費用対効果が合わずに赤字になるリスクがあります。
そんなWeb広告では、どのようにすれば成果を出せるのか?について、筆者の経験談をもとに、運用法や活用方法について解説します。
■広告の目標値の設定
Web広告を出稿する前にまず把握しておくべき数値があります。それはリピート率・LTV(顧客生涯価値)の2つです。まず、リピート率ですが新規集客をしたときにどれだけの顧客がリピーターとなるのかを数字として出しておくことが重要になります。また、LTVというのは新規顧客が平均してどれくらいの利益を出すのかというものですが、3ヶ月・6ヶ月などの期間を区切って数値を出しておきましょう。リピート率・LTVを割り出しておくことで、掛けた費用に対してどれだけのリターンがあったのかを明確に把握することができます。
●広告の目標値を決める
例えば、当社では「産後骨盤矯正」のWeb広告を出しています。数字を分析すると、リピート率80%・LTV34,000円です。この数字であれば1人の顧客を獲得するのに1万円かかったとしても利益は大きくなっていく計算になります。このような形で出稿前に自社のデータを割り出し、大まかな目標値を定めておくことが望ましいです。自社の数字を把握していない状態で広告出稿しても修正ポイントがわからない状態になるので注意しましょう。
●広告配信設定について
Web広告のメリットは、以下の項目を細かく決められる点です。
・性別
・年代
・エリア
・金額
・期間
このような設定を詳細に行えるため、ターゲット層が明確であれば、Web広告を導入するメリットは大きいと言えるでしょう。例えば、次のような使い分けができます。
▲ぎっくり腰患者を集客したい場合
・「今すぐ客」を集めやすいGoogle広告で出稿
・キーワードは「ぎっくり腰」で設定
・広告文の作成
→「○○駅徒歩○分 ぎっくり腰でお悩みなら」など
・自宅からすぐ近くで探す層が多いと予想されるため配信エリアは3キロで設定
・金額は毎月3万円で設定
・1日1,000円ずつ出稿
▲中高年の慢性腰痛の患者を集客したい場合
・「40〜60代」
・「店舗から半径5キロ以内に広告配信」
・「10日の配信」
・「総予算20,000円」
・「中高年がよく使うFacebookで出稿」
・タイムラインで表示される画像を選定
→症状名・最寄駅などに加え、イメージしやすい写真を使用するのがポイントです
このような形で出稿できるため、いわゆる「広告の無駄打ち」を極力抑えることが可能です。これはポスティングチラシとは大きく異なる点です。
ポスティングは対象エリアに満遍なく配布できることがメリットですが、ターゲットとは異なる層にも配布してしまう点がデメリットです。Web広告はオフライン集客の弱点を補ってくれる媒体といえるでしょう。このように、自社の強みや狙いたいターゲット層に応じて設定することでWeb集客がスムーズになります。
●広告の改善方法
Web広告は出稿してからの修正が最も重要です。数値を分析してより精度を高めていく対策をしていきます。数値の分析は細かくやるとたくさんチェックポイントがありますが、最初はハードルが高いです。そこで、Web広告を初めて導入したときは次の3つの項目をチェックしていきましょう。
▲①クリック率
広告が表示された回数を「リーチ数」と呼びますが、表示された回数のうちどれだけクリックされたかという数値です。こちらはジャンルによって差はありますが、おおよそ1〜3%ほどの数値であれば割といい数値です。もし、クリック率が0.3%以下であれば広告の文章もしくは画像に問題があると考えていいため、それぞれ修正をした方がいいでしょう。
修正方法に迷った場合は競合他社をチェックすべきです。反応が取りやすい広告は出稿され続けている傾向にあるので、修正時の参考にするといいでしょう。
▲②クリック単価
表示された広告がクリックされた場合に費用が発生する仕組みであることがほとんどです。クリック単価が高いかどうかを判断する際、まずは100アクセス集めるのにどれくらい費用が掛かったかを基準にしましょう。基本的に「肩こり」「腰痛」など、検索される回数が多いワードや、競合他社が多く参入しているジャンルはクリック単価が高くなる傾向にあります。大雑把な認識ではありますが、クリック単価が200円を超えていたら高い部類だと考えていいです。すなわち、競合が多いジャンルであるということです。まれにクリック単価が500円を超えるジャンルがありますが、その場合は質の高いサイトがないと反応が取れず費用対効果が合わなくなる可能性が高いです。
▲③アクセス数
広告が表示された数に対してどれだけ自社サイトへ誘導できたかを示す数値です。アクセス数を分析するときに重要なのは、「成約率」です。要は、アクセス数に対しての来院率を割り出すことです。これをCVR(成約率)とも言います。大まかな目安として、アクセス数に対して2〜3%ほどの成約があれば反応が取れているサイトだと考えて問題ありません。もし、成約率が1%以下であれば広告設定の修正をするよりもサイトを修正すべきです。反応率の低いサイトにいくらお金を掛けてアクセスを集めても費用対効果が合わない可能性が高いです。この数値を出すことで1人の顧客を獲得するための単価がわかります。広告の用語でCPA(顧客獲得単価)とも言います。
上記①〜③の項目はGoogle・Facebookなど全ての広告に共通します。基本的にWeb広告は一発目から大きな成果を出すのは難しいです。そのため、まず5,000円〜10,000ほどの少額からスタートしてデータを蓄積していくことが重要になります。まずは100アクセス集める金額・100アクセス集めたときの集客数がある程度わかるまで少額テストを繰り返しましょう。そこで、新規顧客がどれだけの利益を残していくかの数値が把握できてきた段階で、徐々に広告費をアップさせていく形が理想です。自社の強み・ターゲット層によって最適な広告媒体は異なります。まずは複数の広告を試して、自社に合った媒体を探していきましょう。
●広告の費用対効果の考え方
広告費を使った場合、損益の判断基準を間違えてしまうことが多いです。よくある間違いは広告費を使った月の利益で広告の良し悪しを判断してしまうパターンです。
例えば、広告費を3万円使った月に、新規患者5名からの売上が2万円だったとします。目先の利益だけ見れば赤字1万円になります。
このとき重要なのは顧客がトータルどれだけに売上を出してくれるのかが重要です。
前述したLTV(生涯顧客単価)がどれだけあるかで広告の良し悪しを判断すべきです。先の例で言いますと、1人の顧客が3ヶ月で平均2万円の売上を出すのであれば5名×2万円=10万円となるので、3万円の広告費に対して10万円のリターンという形となります。
そのため、広告日を使った月の売上が赤字であったとしても、最終的には広告費の3倍以上の売上という成果になります。Web広告を導入するときは使った広告費に対して最終的にどれだけのリターンがあるかという観点で数値を分析することが重要です。
■整骨院経営に効果的なWeb広告の種類
Web広告と一言に言っても種類はたくさんあります。広告媒体によって出稿の仕組みが変わるため、まずはそれぞれの特徴を理解しておくことが重要です。
基本的にどの媒体も、自社サイトへ誘導すると費用が発生します。各プラットフォームに費用を払い、自社サイトの認知を広げる対策になるため、宣伝用のサイトは必須です。
もし、簡易的なHPしかないようであれば、広告出稿よりもランディングページという広告用のサイトを制作することから始めていきましょう。
以下では、様々なWeb 広告媒体の中から、筆者が運用した中で最も費用対効果の高かったものを挙げてご紹介します。
●Googl・Yahoo広告
Web広告で最も反応が取りやすいのがGoogle・Yahooです。Google・Yahooともに検索したときの表示として、一番上が広告枠になっています。出稿企業が多ければ3〜4社ほど掲載されます。広告枠の下にMEO・Yahooロコがあり、さらにその下に表示されるのはSEOで上位のサイトという仕組みとなっています。広告出稿時は顧客が悩みのキーワードを検索したときに表示される設定にすることが重要です。例えば、「肩こり」「腰痛」などのキーワード検索をしたときにトップに表示されることで自社サイトへ誘導できる確率は高くなります。このとき、顧客がクリックした段階で初めて費用が発生するため、「いますぐ行ける整骨院を探している」という層にアプローチが可能です。
ちなみに私の経営している整骨院で最も効果のあるジャンルは「交通事故によるむち打ち」です。事故に遭った被害者というのは、すぐに治療を開始できる医療機関を探しています。その際、「整骨院」というワードで表示される設定ではなく「地域名 病院」「地域名 整形外科」と検索したときも表示される設定にすることが重要でした。
一般的に交通事故でケガをしたときは整骨院ではなく病院(整形外科)が真っ先に浮かぶからです。
このように、顧客の思考から逆算して設定することで反応を取りやすくなります。基本的にサイトやSNSを通じて徐々に教育していくような客層ではないので、すぐに反応を取れると言う意味ではGoogle広告との相性は抜群です。
●Facebook・Instagram広告
前述したGoogle・Yahoo広告は顧客が自分でキーワードを入力して検索するのに対し、Facebook・Instagramの広告はタイムライン上に流れるというものになっています。顧客が自分で検索をしなくても認知を取れるメリットがあり、Web上でのチラシのようなイメージを持つといいかもしれません。
Google・Yahooは「今すぐ客」が多いのに対して、Facebook・Instagramは「興味はあるけど検索してはいない」という層を狙うことになります。
将来的な顧客を狙うという戦略にもなりますが自分で検索をしていないため、他社と比較していない層にアプローチできるメリットがあります。そのため、興味を引くことができれば集客できる確率が高まるという一面もあるのが特徴です。
当社の整骨院では「産後骨盤矯正」の広告を出稿しています。「なんとなく興味はあった」という層が多くいるSNSなので、非常に相性がいいです。出稿の設定時に「25〜35歳」「女性」 「こどもがいる(1歳)」という層に配信されるようにすることで、ピンポイントでターゲットに出稿できます。
当社ではこの設定によって毎月安定して集客できている媒体です。「産後骨盤矯正」については、どちらかというとFacebookよりもInstagramの方が反応がいい傾向にあります。フェイシャルや美容鍼のような広告はInstagramとの相性がいいですし、40代以降の男性を狙ったサービス(慢性腰痛など)はFacebookがオススメです。
■広告代理店に依頼するときでも知識は持っておくべき
ここまでの通り、Web広告は集客を安定させることができますが、ある程度の専門知識が必要になります。そのため、広告代理店に運用をしてもらうのも効果的です。ただ、注意ポイントがあります。それは、しっかりと広告運用をしてくれる業者は意外に少ないということです。上記で解説した広告の構成〜流れや用語などを知らないと代理店に足元を見られます。理由として、広告代理店の仕組みが関係しています。
●広告代理店の仕組み
運用する広告費の20%が代理店の手数料となることが多く、代理店からすると広告費が大きければ大きいほど利益を出せる仕組みとなっています。例えば、広告費10万円の予算で代理店に運用してもらうと、2万円が運用代行料となります。すなわち、10万円+運用代行手数料2万円=12万円という形になります。そのため、広告代理店からするとクライアントにはより広告費を掛けさせたいと考えます。
●代理店に広告を依頼するときにチェックするポイント
基本的に広告内部の詳細情報は代理店にとって重要なノウハウなので、いくらクライアントであっても教えてくれないことがほとんどです。また、細かい指示を出すためには専門知識がないとできないのでハードルが高いです。
そこで、広告代理店が無駄に広告予算を消化しないようにチェックすべきポイントは「配信距離」です。
「店舗から半径○キロまでの範囲で出稿してください」などのように、自社の商圏内だけに広告が出るようにしましょう。出稿範囲を明確に指示しない場合、ひどいときには隣の県に広告を出稿されるケースもあります。
出稿範囲を広げれば広告予算がすぐになくなってしまうため、担当者が「効果を出すためにもっと広告予算をアップさせませんか?」という提案をしてくるケースもあります。
要は、代理店の手数料額を増やすための提案になります。そのため、集客効果が高まっていない段階で広告予算をアップさせるのは避けるべきです。
もし、広告の成果がイマイチであった場合は前述した広告の改善ポイントをチェックしていきましょう。安易に広告予算をアップしてしまうと、代理店からすると「カモ」として扱われます。
広告に関して細かい専門知識はなかったとしても、まずは出稿範囲は明確にしておくべきです。
■まとめ
ここまでの通り、Web広告は細かい知識が要求されるのでハードルは高いです。ただ、仕組みを構築することができれば集客を自動化に近い状態にできます。
予算だけでなく反応の取れるサイトも必要になるので大変ですが、十分に導入する価値はあります。
もし、広告代理店に依頼する場合であったとしても最低限の知識は持っておきましょう。経営者が全てのマーケティングを行うのはかなり大変です。その際は最低限度の知識は勉強しつつ、運用〜分析はプロに任せるのもいいでしょう。
特徴
対応業務
その他の業務
診療科目
この記事は、2023年7月時点の情報を元に作成しています。