クリニックで必要経費に計上できる費用とは?正しく知って節税に役立てよう

クリニックを開業すると、ただの「医師」ではなく、「経営者」や「個人事業主」といった肩書も持つこととなります。

そこで大事になってくるのが「お金の話」です。

今回はクリニック開業、さらに運営や経営に関わる「お金の話」のうち、「必要経費」についてご紹介します。

目次
  1. クリニックの「必要経費」とは?
    1. 概算経費について
  2. クリニックで必要経費に計上できるもの一覧
    1. 材料費
    2. 人件費
    3. 福利厚生費
    4. 設備費
    5. 交際費
    6. 出張費
    7. 会議費
    8. その他、必要経費として計上できる可能性があるもの
      1. 車・ガソリン代
      2. テレビなどの家電製品
  3. 必要経費として認められないケース
    1. ケース1.家族をアルバイトとして雇った場合の給与
    2. ケース2.クリニックに勤務する家族との出張
  4. 必要経費の算入時期
  5. 必要経費の割合
  6. 必要経費を正しく理解しよう

クリニックの「必要経費」とは?

必要経費とは、簡単に言うと「所得を得るために必要になったお金」のことを指します。

必要経費として扱えるのは、総収入金額に対応する売上原価(収入を得るために必要だった原価)、その他収入を得るために直接必要になった費用、その年に生じた販売費、一般管理費など業務上の費用が該当し、クリニックの場合は、薬剤費やスタッフの給与、リース料などが当てはまります。

収入から必要経費を差し引いて残った金額が「所得」となるため、何が必要経費として計上できるのかを把握しておくと、クリニックの事業所得の計算が楽になります。

クリニック開業医などの個人事業主が納める所得税などは、事業の利益(所得)に対してかかるため、利益が減れば税金も減ります。

かなりざっくりした説明をすると「必要なモノを買って、その分の税金は払わなくて良くなる」…つまり節税ができる、というわけです。

しかし、あくまでも「事業に必要なモノ」でなければ、必要経費としては認められず、税金もかかってきます。

そこで、「必要なモノでした」と税務署などに認めてもらうには、その時期ごとにかかった費用を、領収書などもとにまとめて「経費精算」を行う必要があります。ただ、数が多かったり、定期購入などで毎月同じものを買っている場合(クリニックの場合、待合室のウォーターサーバーの水代など)には、毎回同じ作業を行わなければなりません。

そうした負担は、とくにクリニックを開業したばかりの医師にとっては大きなものかと思います。

その負担を軽減するのが、次にご紹介する「概算経費」という考え方です。

 

概算経費について

「概算経費」とは、租税特別措置法第26条(参照・引用元:『e-GOV』「租税特別措置法)に定められている、医師または歯科を営業する個人事業主が経費計算の事務作業に煩わされないようにと導入されている経費の計算方法です。

例えば、クリニックの待合用に毎月購入している雑誌代などを計算する場合、毎月のレシートを集めて集計する作業が発生します。これを逐一行うと時間がいくらあっても足りず本業に影響しかねません。

そこで「売上の○パーセントを経費とする」という仕組みを設け、そのような作業を行わなくてもよいようにした、というわけです。

概算経費が適用できるのは、その年の社会保険診療報酬が5,000万円以下の場合と、医業(及び歯科医業)の収入金額、つまり社会保険診療と自由診療の合計額が7,000万円を超えない場合のみとなります。

社会保険診療報酬の額に応じた概算経費の割合については、以下の速算表を参考にしてください。

※年間の社会保険診療報酬=A

年間の社会保険診療報酬(A)概算経費
2,500万円以下A×72%
2,500万円超 3,000万円以下A×70%+50万円
3,000万円超 4,000万円以下A×62%+290万円
4,000万円超 5,000万円以下A×57%+490万円

上記の速算表をもとに、以下に例を出してみます。

(他に収入がなく)社会保険診療報酬が3,000万円で実際の経費が1,500万円だった場合で計算すると、実経費では、売上3,000万円 - 実経費1,500万円 = 1,500万円 となり、1,500万円が所得となってこれに税金が掛かります。

しかし、概算経費で計算すると、売上3,000万円 × 70% + 290万円 = 2,390万円 ですので、3,000万円 - 2,390万円 = 610万円 となり、税金は610万円分のみでよくなるため、実に890万円分もお得です。

このことからも、クリニックを立ち上げたばかりの頃や、まだ売り上げがそこまで大きくない時期に利用しやすい制度であると言えるでしょう。

 

クリニックで必要経費に計上できるもの一覧

それでは改めて、クリニックでの必要経費にはどんなものがあるのか?をご紹介します。

材料費

注射器などの医療材料費、血液検査などで使用する試薬費や医薬品費などを指します。

人件費

スタッフの給料や社会保険料など、人にかかわるお金。クリニックの経費のなかでは大きな割合を占めています。

福利厚生費

歓送迎会の会費など、スタッフへの福利厚生に関する費用。健康診断を行った場合の減免額やなどの事業主負担も含まれます。

設備費

クリニックの土地代や建物代、家賃、水道光熱費、リース料など、クリニックの設備にかかわるものがこれに当たります。

交際費

ほかのクリニックの先生との食事代や、他のクリニックの先生方にあてた手土産やお中元、お歳暮などがあれば、交際費として計上可能。税務調査でチェックされることが多いため、領収書には、

  • 誰との食事なのか
  • 人数
  • 相手の会社名、住所
  • 会った理由など

などをメモしておくことが重要です。

出張費

学会参加のための費用は、出張費として計上可能。新幹線代や飛行機代、宿泊が伴うのであればホテル代などが当たります。

会議費

ミーティングに関わる経費は会議費として計上可能。貸し会議室の使用料や、お茶、コーヒー、お菓子、軽食、資料代などもその中に含まれます。

ただし、夜に営業するスナック、バーなど、アルコールを提供している店は認められません(場合によってはレストランなども対象になるケースも)。

その他、必要経費として計上できる可能性があるもの

家事関連費として経費計上可能なものの例を、いくつかご紹介します。

車・ガソリン代

プライベートで購入した車を、そのままクリニックの業務(訪問診療など)でも使いたいと考えるケースもあるでしょう。

その場合、「家事関連費」として、支出の額をプライベートと事業との2つに分け、事業に関連する費用だけを経費にできます。

テレビなどの家電製品

待合室のテレビ、スタッフルームの電子レンジなども、事業に関連するものとして経費計上が可能です。

 

必要経費として認められないケース

では反対に、必要経費として認められないケースにはどんなものがあるのかについても、いくつか例を挙げてご紹介します。

ケース1.家族をアルバイトとして雇った場合の給与

ご自身のご家族を一時的にアルバイトとして雇ったりするケースも珍しくはありません。

この際、そのご家族に支払う給与を経費として計上したい先生方もいらっしゃるようですが、こちらは認められませんので注意しましょう。

所得税法では事業主の「事業に専従」する家族従業員については一定の条件のもとに必要経費(青色専従者給与または専従者控除)に算入することを認めていますが、このケースでは「事業に専従」には該当せず、したがってご家族に支払ったアルバイト料は必要経費とすることはできません。

ケース2.クリニックに勤務する家族との出張

先ほど、「計上できるもの一覧」の項にて、「出張費」は必要経費として計上できる、とお伝えしました。

しかし、これには例外があり、たとえばクリニックの従業員として働いているご家族を一緒に連れて行った場合などには、「私的な家族旅行」として認識され、そのご家族の分の費用は経費として認められないケースがあります。

こちらは、専従者であっても、アルバイトであっても変わりません。

 

必要経費の算入時期

必要経費にできるのは、「その年に債務(特定の人に対して金銭を払ったり物を渡したりすべき法律上の義務)が確定した金額」となっています。

具体的には、以下の3つの条件があります。

  • その年の12月31日までに債務が成立している
  • その年の12月31日までにその債務に基づいて具体的な給付をすべき原因となる事実が発生している
  • その年の12月31日までに金額が合理的に算定できる

※減価償却費など、債務の確定によらないケースもあるため注意が必要です。

 

必要経費の割合

必要経費の割合については、厚労省によると、一般診療所の場合、およそ4割弱(37.5%)が経費の割合として適正な値となっているようです。

参考: 厚生労働省/医療機関等の課税経費率推移 (平成24年度~28年度)

 

必要経費を正しく理解しよう

クリニックで必要とする経費を増やすことで節税は可能ですが、それは同時に、事業の所得、ひいては自らの手取り額を減らす……という方法でもあります。

ただその面だけを見ると損した気持ちになるかもしれませんが、結局は「事業に必要なモノ」を買ったり使ったりした代金ですし、中には、自宅で使用するPCやデスクが経費として認められる場合もあります。

必要経費については正しく理解して、違反なく、収入とのバランスを見ながら、クリニックの運営・経営の助けにしていきましょう。

税金のことや、節税、クリニックの資金繰りについて詳しく知りたい方は、以下でいくつかの税理士事務所をご紹介していますので、お問い合わせください。

立地選定から事業計画書作成、建築・内装設計の提案から医療機器の選定支援まで開業サポート

特徴

★3つの特徴★ 1. 「税務・会計」だけにとどまりません! <ワンストップサービス> 同グループ内に「開業コンサルティング」「経営コンサルティング」「人事労務」「行政書士業務」等を持ち、トータルでお客様のサポートができるような体制をとっております。 2. 知識が豊富!   これまで積み上げてきたノウハウに加え、スタッフは年20時間以上の研修を受講し、常に新しい知識を取り入れることで、先生方の経営のサポートへ活かしております! 3. 充実の情報提供!   ★ご提供業務★ <診療所開業支援> 開業をお考えのドクターを成功に導くためのさまざまなご提案を致します。 ・立地提案・診療圏分析 ・事業計画策定・資金計画・資金調達 ・建築・内装設計提案 ・医療機器・什器備品選定 ・スタッフ採用・事務局機能 ・宣伝広告・印刷 ・官公庁への書類作成 <税務> 経営や将来の事業展開について、経営計画の策定から資金管理、経営コンサルティング などあらゆる側面から親身かつトータル的なサポートを致します。 ・税務会計 ・税務申告 ・資産税対策 ・経営コンサルティング ・記帳代行

対応業務

開業コンセプト決め 開業予定地調査 物件選定サポート 事業計画書作成 金融機関との交渉 設計・工事業者選定サポート 医療機器導入サポート 現場工事打合せ参加 その他広報戦略サポート 保健所・厚生局届け出サポート 職員研修サポート 開業後のマーケティングサポート 医療法人化サポート

その他の業務

経理・税務顧問 経営分析 継承案件紹介

診療科目

内科、精神科、神経科、神経内科、呼吸器科、消化器科、、循環器科、小児科、外科、整形外科、形成外科、美容外科、脳神経外科、呼吸器外科、心臓血管科、小児外科、皮膚泌尿器科、皮膚科、泌尿器科、性病科、肛門科、産婦人科、産科、婦人科、眼科、耳鼻咽喉科、気管食道科、放射線科、麻酔科、心療内科、アレルギー科、リウマチ科、リハビリテーション科、、、、
クリニック開業から医業経営・資金調達計画・償還計画・事業承継までワンストップでサポート提供

特徴

医業経営業務・医業経営に精通した経験豊富な専門スタッフがクリニック開業から医業経営、医療法人設立、事業承継、財産承継までワンストップでご支援。 ドクターにとって、かけがえのない「オンリーワンパートナー」として、手厚いサポートを実践いたします。

対応業務

会社設立 助成金対応 月次面談・監査 経理代行 記帳代行 税務相談・申告 相続税・資産税 融資・資金調達 給与計算 年末調整 社会保険 人事・労務手続き 資金繰り相談 経営計画・経営指導 経営コンサルティング 事業計画 節税対策 M&A 事業継承 財務分析

その他特徴

医療業界に強い

診療科目

内科、精神科、神経科、神経内科、呼吸器科、消化器科、、循環器科、小児科、外科、整形外科、形成外科、美容外科、脳神経外科、呼吸器外科、心臓血管科、小児外科、皮膚泌尿器科、皮膚科、泌尿器科、性病科、肛門科、産婦人科、産科、婦人科、眼科、耳鼻咽喉科、気管食道科、放射線科、麻酔科、心療内科、アレルギー科、リウマチ科、リハビリテーション科、、、、
医療経営に特化したクリニックの税務・会計顧問

特徴

地域医療を支えるクリニックとしての良質な医療サービスの実現と継続性、 さらには院長の描く将来像やスタッフの充実した生活を守るために わたしたち税理士法人日本医療総研は、医療経営に特化したエキスパートとして、 クリニックの税務・会計顧問を支える叡智と、 日本医業総研グループのコンサルティングチームと連携した分析力・提案力の両輪での 「成功サポート」をお約束いたします。

その他特徴

レセプトに強い 医療業界に強い 事業承継に強い

対応業務

月次面談・監査 経理代行 記帳代行 税務相談・申告 相続税・資産税 融資・資金調達 給与計算 社会保険 人事・労務手続き 電子申告 資金繰り相談 経営計画・経営指導 経営コンサルティング 事業計画 節税対策 M&A 事業継承 財務分析

診療科目

内科、精神科、神経科、神経内科、呼吸器科、消化器科、、循環器科、小児科、外科、整形外科、形成外科、美容外科、脳神経外科、呼吸器外科、心臓血管科、小児外科、皮膚泌尿器科、皮膚科、泌尿器科、性病科、肛門科、産婦人科、産科、婦人科、眼科、耳鼻咽喉科、気管食道科、放射線科、麻酔科、心療内科、アレルギー科、リウマチ科、リハビリテーション科、、、、

執筆 CLIUS(クリアス )

クラウド型電子カルテCLIUS(クリアス)を2018年より提供。
機器連携、検体検査連携はクラウド型電子カルテでトップクラス。最小限のコスト(初期費用0円〜)で効率的なカルテ運用・診療の実現を目指している。


他の関連記事はこちら