デジタル技術を社会に浸透させることで、社会や暮らしをよりよいものへと変革させることを「DX(デジタルトランスフォーメーション)」といいます。これは、2004年にスウェーデンのエリック・ストルターマンという大学教授が考えた言葉で、みるまに世界中で使われるようになりましたが、近年、医療の世界でもDXの重要性に目が向けられるようになりました。こうした風潮に対して各クリニックはどんな対応をとればいいのでしょうか? 早速みていきましょう。
医療DXとは?
日本において、医療の分野でDXが重視されるようになったのは2022年のこと。医療現場におけるDXを推進すべく、政府によって「医療DX令和ビジョン2030」の施策が掲げられました。
このビジョンにおいて政府が定義した「医療DX」は、「保健・医療・介護の各段階において発生する情報やデータを、全体において最適化された基盤を通して、保健・医療や介護関係者の業務やシステム、データ保存の外部化・共通化・標準化を図り、国民自身の予防を促進して、より良質な医療やケアを受けられるよう、社会や生活の形を変えること」。
「保健・医療・介護の各段階において発生する情報やデータ」には、特定健診の情報や資格情報、電子カルテ情報、処方情報、調剤情報、診療情報提供書などが含まれ、オンライン資格確認や電子カルテの導入によって、これらの外部化・共通化・標準化が可能となるということになります。
また、NDB(レセプト情報・特定健診等情報データベース)、介護DB、公費負担医療DBなどの医療ビッグデータ分析も、医療DXに含まれます。
参照:厚生労働省「医療DXについて」PDF4ページ目より一部抜粋
クラウド型電子カルテ「CLIUS」
クラウド型電子カルテ「CLIUS」は、院内DXに対応できる予約・問診・オンライン診療・経営分析まで一元化できる機能を備えています。効率化を徹底追求し、直感的にサクサク操作できる「圧倒的な使いやすさ」が、カルテ入力業務のストレスから解放します。
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なぜ医療DXが推進されるようになったのか?
医療DXが推進されるようになったもっとも大きな理由は少子高齢化です。かねてより2025年問題として取りざたされているように、あと2年足らずで日本国民の4人に1人が後期高齢者になるとされています。後期高齢者の割合が増えて労働人口が減ったとき、医療分野のデジタル化が進んでいなければ、必要としているすべての人に医療を届けられない可能性が考えられます。
また、新型コロナウイルスの席巻も、医療DX推進を加速化させた大きな要因です。平時からデータ収集の迅速化や収集範囲の拡充に努めておくことで、次にまた感染症等の危機が訪れたとき迅速に対応できるとして、体制の構築が急がれることとなったのです。
参照:厚生労働省「医療DXについて」PDF4ページ目より一部抜粋
「医療DX令和ビジョン2030」具体的な取り組みは?
続いては、医療DX令和ビジョン2030の具体的な取り組みをみていきます。医療DX令和ビジョン2030では、以下の3つの取り組みを同時に進めていくことを重要としています。
1.「全国医療情報プラットフォーム」の創設
2. 電子カルテ情報の標準化(全医療機関への普及)
3.「診療報酬改定DX」
それぞれ具体的にどのようなものであるのかを説明していきましょう。
「全国医療情報プラットフォーム」の創設
オンライン資格確認システムのネットワークを拡充して、レセプト・特定健診情報のみならず、予防接種、電子処方箋情報、電子カルテ等の医療機関等が発生源となる医療情報について、自治体や介護事業者等間を含め、必要なときに必要な情報をクラウドで共有・交換できる全国的なプラットフォームを作ることを提言しています。
これが実現すれば、マイナンバーカードで受診した患者の情報は、本人の合意があれば他院の医師や薬剤師も閲覧可能なため、よりよい医療を提供できるようになります。
ただし、こうしたシステムを安全に活用するためには、万全なセキュリティ対策が不可欠です。また、連日報道されている通り、現状はマイナンバーカードのセキュリティ自体に問題がある状況であるため、プラットフォームが十分に機能するまでには時間がかかることが予想されます。
参照:厚生労働省「医療DXについて」PDF6ページ目より一部抜粋
電子カルテ情報の標準化(全医療機関への普及)
電子カルテ情報を標準化して、医療機関同士や自治体、薬剤師などとスムーズに情報交換するためには規格をそろえることが不可欠です。そこで、webサービスの技術を用いて医療情報を交換する際の国際標準規格である「HL7 FHIR」を交換規格と定め、さらに、交換する標準的なデータの項目および電子的な仕様を定めたうえで、これらの標準規格化を進めています。
具体的な取り組みとしては、診療情報提供書、退院時サマリー、健診結果報告書の「3文書」、傷病名、アレルギー情報、感染症情報、薬剤禁忌情報、検査情報(救急時に有用な検査、生活習慣病関連の検査) 、処方情報の「6情報」を厚生労働省標準規格として採択。つまり、これら3文書6情報を共有する際には、標準規格にそろえる必要があるということです。
参照:厚生労働省「医療DXについて」PDF7ページ目より一部抜粋
また、2023年6月2日に開催された「医療DX推進本部」第2回会合においては、2030年までの全医療機関への電子カルテ導入を目指して、政府の主導によってクラウドベースの標準型電子カルテの整備を進めることも公表されています。この実現のために、2024年度中に医療機関同士での情報共有を開始するとの報告もあり、今後は急速に電子カルテ情報の標準化が進むことが予想されます。
参照:日経XTECH「政府が医療DX工程表、クラウド標準電カルを2030年までにおおむね全医療機関へ」
「診療報酬改定DX」
診療報酬改定DXとは、診療報酬改定のたびに、ベンダや医療機関等に大きな業務負荷が生じている状況を改善すべく、毎年の改定施行日である4月1日からの患者負担金の計算に間に合うように、ソフトウェアを改修することです。
具体的には、各ベンダ共通のものとして活用できる「共通算定モジュール」を導入することによって、診療報酬改定の際に、モジュールの更新をおこなえば、ベンダごとに対応しなくてよくなることを目指しています。
参照:厚生労働省「医療DXについて」PDF8ページ目より一部抜粋
各クリニックは医療DXにどう対応すればいい?
「医療DX令和ビジョン2030」の具体的な取り組みがわかったところで、各クリニックはどんなことをすればいいのかをみていきます。
電子カルテを導入する
医療DXが推進されることによって、避けて通れなくなるのが電子カルテの導入です。また、前述の通り、電子カルテ情報の標準化が推進されているため、既に導入しているクリニックも、自院が標準化に対応できているのかについてメーカーに確認することが望ましいといえるでしょう。
オンライン資格確認を導入する
オンライン資格確認の導入は、原則として令和5年4月から義務付けられているため、ほとんどのクリニックは既に導入済であるはずですが、やむを得ない事情によって経過措置が適用となっている場合も、医療情報プラットフォームに対応するために、早めに導入することが望ましいといえます。
地域の薬局や自治体と連携体制を整える
医療情報プラットフォームに対応するためには、システムを導入することに加えて、日ごろから、各連携先との連携体制を整えておくことも大切です。
院内のパソコンのセキュリティを強化する
患者の大切な個人情報を守るためにも、院内のパソコンのセキュリティを強化することは不可欠。医療情報プラットフォームを活用するうえでも、マルウェアなどのセキュリティの対策およびセキュリティに対する意識を高めることが求められます。
医療DXへの対応が難しいなら専門家に相談しよう
ITに対して苦手意識が強いドクターにとって、医療DXへの対応はかなりハードルが高いと感じられるかもしれません。しかし、国が一丸となってDXを推し進めている以上、避けて通ることはできない道ですし、なにより、DXを進めることは患者にとっても大きなメリットとなります。わかってはいても理解が追い付かず対応が難しいという場合は、専門家に相談するのがおすすめ。まずは、自院が使っている電子カルテのメーカーに訊くなどもありなので、詳しい人に教えてもらいながら、うまく乗り切ってくださいね。
特徴
対象規模
オプション機能
提供形態
診療科目
この記事は、2023年8月時点の情報を元に作成しています。