どんな業界で仕事するにしても言えることですが、時代を先読みして未来に備えることはとても大切です。1年先、2年先の未来に目を向けることさえなく、日々のノルマをこなすのに手一杯では、時代の変化についていけず、あっというまにライバルたちに置いて行かれます。では、2023年時点において、医療業界関係者が見据えるべき近未来のキーワードはなにかというと、「超高齢化社会」や「人手不足」などいくつか考えられますが、そのすべてを総括している言葉が「2025年問題」です。そこで今回は、2025年問題に対して医療関係者が考えるべきことをみていきます。
2025年問題とは?
2025年問題とは、1947年4月2日~1950年4月1日生まれの「団塊の世代」が75歳以上の後期高齢者となることで起こるとされている問題のこと。高齢者人口の推移を示すデータによって、2025年には、日本国民の4人に1人が後期高齢者になることがわかっており、そのためにさまざまな問題が生じることが予想されます。
具体的にどんな問題が起こることが予想されるのかをみていきます。
医療費および介護費の増大
2025年には、後期高齢者の医療費は47.8兆円、介護に必要な金額は15.3兆円になるとされています。この額が過去と比べてどのくらい大きいかというと、たとえば医療費に関しては、2018年度は約39兆円だったため、約1.2倍に膨れ上がる計算になります。
現役世代の社会保険料負担の増大
高齢者を支えるために必要な社会保障費の必要額も大幅にアップします。前述の医療費および介護費に年金も加えると、約140~140.6兆円が必要とされていますが、これを現役世代がまかなうことになるため、一人当たりの負担が大きくなります。
働き手不足
若い世代が減ることで、どの業界も慢性的な人材不足に陥ることが考えられます。医療・介護業界では既に人材不足が叫ばれていますが、今の時点からさらに働き手が少なくなると深刻な事態に陥る可能性があります。
2025年問題に関して医療従事者が考えなくてはいけないことは?
続いては、2025年に起こるとされている問題に対して、医療業界が考えなくてはならないポイントをみていきましょう。
医療費および介護費増大への対応
まずは、医療費および介護費増大への対応について考えていきましょう。
地域包括システムの構築
高齢者が安心して暮らせるためには、医療機関や自治体が手を取り合って、地域包括システムを構築していくことが不可欠です。地域全体で高齢者を見守るために、場合によっては、クリニックが把握している病状などを、他の医療機関や自治体にシェアすることも求められます。そのため、電子カルテを導入して、情報をシェアしやすい体制を整えておくことが不可欠です。また、こうした体制を整えることは、高齢者を地域全体で見守ることにつながるので、そのぶん、医療費を抑えることができると考えられます。
医科歯科連携
近年、医科と歯科の連携が大切だとする意見が増えています。糖尿病をはじめとする疾患は、口腔の健康と関連していることがわかっていますし、内科での処置の際に口腔内に異常が見つかることなどもあるためです。いずれのケースも、患者が若い場合もあり得ることですが、高齢者になるほど、身体を総合的にケアしていくことが重要になっていくので、医科歯科で連携がとれていると、患者に安心してもらうことができます。また、早期に異常を発見できる可能性が高まることから、医療費の削減にも貢献できます。
現役世代の社会保険料負担の増大
続いては、現役世代の社会保険料負担の増大への対応について考えていきます。
訪問医療、オンライン診療の導入
国民の4人に1人が後期高齢者になるということは、それだけ要介護者が増えるということです。75歳以上の被保険者の23.3%に介護が必要で、その半数に認知症の症状が認められるとされていますが、そうした患者をサポートする家族も、気軽にもしくは頻繁に医療機関まで同行できない場合が多いでしょう。そのため、おのずと訪問診療やオンライン診療のニーズが大きくなることが考えられます。
特に、交通機関が充実しておらず、医療機関数が少ない地方などでは、これまで訪問医療やオンライン診療を導入していないクリニックに対しても、要望が上がってくることがあるでしょう。
これらの要望に応えることで、現役世代の社会保険料負担を減らせるというわけではありませんが、少なくとも、家族の生活を支えながら働く現役世代の日々の負担を減らすことには貢献できます。
働き手不足への対応
続いては、働き手不足への対応について考えていきます。
IT化促進
電子カルテ以外に、レセコンや自動精算機などさまざまなツールを導入して、業務効率化を図ることはとても大切です。なぜなら、少子高齢化が進むにつれて労働人口が少なくなるのはもちろん、若い世代であっても、家族の介護などで働き方の選択肢が狭まる可能性があるためです。常勤が難しい人材でも採用せざるを得なくなった場合に、少ない人手でクリニックを回していくためにITを活用することが役立ちます。
人材の確保
将来的に働き手が減る可能性を考えて、今のうちから優秀な人材の確保に努めておきたいところです。もちろん、採用に力を入れるだけでは「確保」になりません。離職率を減らすこと、長く働き続けてくれる人材を見つけることを考えることが大切です。
そのためには何が必要かというと、なんといっても「長く働き続けたいと思ってもらえるような体制を整えること」です。たとえば、一人ひとりのがんばりに応じた賞与を用意したり、福利厚生を充実させたりはもちろん、人間関係に悩んで離職するスタッフが出ないよう、日ごろからスタッフの声に耳を傾ける機会を設けることも大切です。
事業継承をどうするか
将来的にクリニックを継ぐ予定の身内などがいない場合、早い段階から事業承継についても考えておくことが大切です。院長がまだ若ければ、2025年までに考えなければならないということはありませんが、2025年問題の課題のひとつとして、世の中的にも事業承継問題に目を向けているこのタイミングで、将来の事業承継に関するいいアイディアを得ようと視野を広げておくといいでしょう。
2025年問題のゴールは2025年ではない!
「2025年問題」ときくと、2025年までに対策を打って実行しなければならないように感じられるかもしれませんが、2025年を乗り切ったらそれで終わりというものではありませんし、患者に医療を提供していくうえでの課題は、その後も尽きることがありません。そのため、持続可能なクリニックであり続けるためには何が必要なのか? を考えて戦略を練ることがとても重要です。長く、患者の役に立つクリニックでいるために、何を変えていけばいいのか? 何に注力していけばいいのかを、この機会にぜひじっくりと考えてみてくださいね。
特徴
対象規模
オプション機能
提供形態
診療科目
この記事は、2023年8月時点の情報を元に作成しています。