クリニック開業時の保健所立入検査に備えてどんな準備をすればいい?

クリニックを開業するにあたっては、事前に「診療所開設届」を保健所に提出することが必要です。診療所開設届は、クリニックの開設から10日以内に提出することが定められていますが、提出後、保健所がクリニックに立ち入って検査を行う場合があります。

この検査は必ず行われるものではありませんが、実施された場合に備えておくことはとても大切です。そこで今回は、保健所の立入検査をクリアするための備えについて解説していきます。

目次
  1. 保健所立入検査で指導を受けないことはほとんどない!
  2. 保健所立入検査のチェック項目は?
  3. 大分類ごとにどんな点に気を付けて当日に備えればいいのか?
    1. 人事関係
    2. 診療体制関係
    3. 個人情報の取り扱い関係
    4. 管理関係
    5. 給食関係
    6. コメディカル関係
  4. 保健所立入検査当日の流れ
  5. 保健所立入検査をクリアするコツ

保健所立入検査で指導を受けないことはほとんどない!

保健所立入検査では、ほとんどすべてのクリニックが指摘や指導を受けることになります。たとえば、東京都保健医療局が公表している、令和3年度立入検査の実施状況をみても、立入検査が行われた67の医療機関のうち、指摘・指導事項なしの医療機関は0軒です。

指摘・指導区分医療機関数割合
指摘3044.8%
文書指導3552.2%
口頭指導23.0%
指摘・指導事項なし00.0%
67100.0%

ちなみに、「指摘」とは、医療法に係る法令不備に対して文書で改善を指示することで、「文書指導」とは、法令不備のうち軽微なもの、通知に対する重大な不備、そのほかの法令不備に対して部署で改善を指導すること。「口頭指導」は、通知に対する不備等に対して口頭によって改善を指導することです。

同年度の立入検査において「指摘」がもっとも多かった項目は「医療安全管理体制の整備」で、立入検査が実施されたクリニックのうち14.9%のクリニックに医療法上の不備が見られたことが報告されています。続いて、「医療用放射線に係る安全管理体制」(11.9%)「検査精度管理関係」(11.9%)、「医療品の安全管理体制の整備」(9.0%)「医療従事者数」(9.0%)も指摘されています。

「文書指導」がもっとも多かった項目は「施設・設備管理および衛生管理」(61.21%)で、「院内感染予防対策の体制整備」(38.8%)「医薬品の安全管理体制の整備」(34.3%)と続いています。

参照: 令和3年度 東京都福祉保健局医療政策部医療安全課「医療法第25条第1項に基づく定例立入検査の実施状況 報告書」p.3(PDF4枚目)より一部抜粋

 

保健所立入検査のチェック項目は?

これから開業するクリニックにとっては、ワースト3以外の項目も気になるところでしょう。そこで続いては、立入検査におけるチェック項目を一覧で紹介します。

大分類立入検査項目
人事関係医療従事者数
雇い入れ時の確認
および手続き
就業規則、
労働時間の把握等
診療体制関係医療安全管理体制の整備
特定機能病院における
安全管理等の体制
院内感染予防対策の体制整備
医薬品の安全管理体制の整備
薬剤関係
(現場確認事項)
医療機器の
安全管理体制の整備
医療機器関係
(現場確認事項)
高難度新規医療技術および
未承認新規医薬品等を用いた
医療の提供
診療用放射線に係る
安全管理体制
診療放射線関係
診療放射線関係
(現場確認事項)
看護体制
病院等管理
看護に関する業務基準、
手順等の整備・活用
分野別安全管理体制
(救急外来の診療体制)
分野別安全管理体制
(新生児の管理)
分野別安全管理体制
(透析医療における適切な管理)
分野別安全管理体制
(リハビリテーション医療における適切な管理)
分野別安全管理体制
(輸血療法等の安全対策・適正使用)
分野別安全管理体制
(麻薬の管理体制)
帳票・諸記録の運用・管理
個人情報の取り扱い関係利用目的の特定・公表
安全管理措置、
従業員の監督
委託先の監督
個人データの取り扱い
個人情報に関する相談・
苦情対応
管理関係防火・防災体制
施設・
設備管理および衛生管理
感染性廃棄物等処理
業務委託
職員の健康管理体制
病院管理・
施設使用・
院内掲示等
給食関係給食業務の運営
給食施設・
設備等の管理(現場確認事項)
コメディカル関係検査関係
検査精度管理関係

一覧をざっと見たらわかる通り、たとえば医療放射線関係の機器や給食業務など、クリニックによっては有していない医療機器やシステムに関してのチェック項目もあるので、自院に関係ある項目のみクリアすることを考えたらOKです。

参照: 令和3年度 東京都福祉保健局医療政策部医療安全課「医療法第25条第1項に基づく定例立入検査の実施状況 報告書」p.4(PDF5枚目)より抜粋

 

大分類ごとにどんな点に気を付けて当日に備えればいいのか?

続いては、それぞれの分類ごとにどんな点に気を付けたらいいのかを説明していきます。

 

人事関係

医療従事者の項目では、医者、看護師などの人数が患者数に対して適切であるかがチェックされます。これをクリアするためには、医師の員数の標準計算方法に則って正しく計算して、必要な人員をそろえておくことが必要です。

参照: 令和3年度 東京都福祉保健局医療政策部医療安全課「医療法第25条第1項に基づく定例立入検査の実施状況 報告書」p.6~(PDF7枚目~)より抜粋

 

診療体制関係

診療体制に関しては、医薬品、医療機器などの項目ごとに適切に管理されているかがチェックされます。たとえば、医薬品や薬事法に基づいて取り扱われているかどうか、医療機器は清潔な状態に保たれていて、保守管理が十分かどうか、院内感染防止対策が十分であるかなどを細かく確認されます。

医薬品に関しては、薬事法に従って毒薬または劇薬が他のものと区別され、毒薬が貯蔵配置されている場所に施錠がされているか、毒薬の場合、黒地に白枠白字で品名および「毒」の字が記載されており、劇薬は白地に赤枠赤字で品名及び「劇」の字の記載があるかなどもチェックされます。

放射線関係の機器を取り扱っているクリニックであれば、管理区域について適切な措置をとっているか、敷地の境界等における防護について適切な措置をとっているか、放射線等取扱施設に患者及び取扱者に対する放射線障害の防止に必要な注意事項の掲示を行っているかなども厳しくチェックされます。

参照: 令和3年度 東京都福祉保健局医療政策部医療安全課「医療法第25条第1項に基づく定例立入検査の実施状況 報告書」p.8~(PDF9枚目~)より抜粋

 

個人情報の取り扱い関係

個人情報の取り扱いは、医療機関のDXが進んでいる昨今、もっとも気を付けたいポイントです。個人データの保存・廃棄についてや事故発生時の対応についてまで細かく確認されるので、質問されたときにしっかり答えられるよう、知識を深めておくことも大切です。

参照: 令和3年度 東京都福祉保健局医療政策部医療安全課「医療法第25条第1項に基づく定例立入検査の実施状況 報告書」p.18(PDF19枚目)より抜粋

 

管理関係

管理関係の項目では、防火・防災体制から職員の健康管理体制、院内掲示までチェックされます。防火・防災体制とは、消防法に則って防火管理者を定めて、適切な消防計画が立てることです。

また、クリニック内にスプリンクラーや適当数の消火器を設置がされているかなど、防火・消火上必要な設備が整っていることも判定項目です。職員の健康管理に関しては、定期健康診断の実施に関してなども確認されます。

「院内掲示」に関しては、管理者名および医師の氏名、診療日時、各部屋の使用用途、個人情報の管理体制などの定められた事項が、院内の見やすい位置に記載されていることが必要です。

参照: 令和3年度 東京都福祉保健局医療政策部医療安全課「医療法第25条第1項に基づく定例立入検査の実施状況 報告書」p.20~(PDF21枚目~)より抜粋

 

給食関係

給食関係に関しては、無床のクリニックの場合、考える必要がありませんが、お産を扱っている産婦人科などはきちんと対策をとることが必要です。配膳時間、献立表、原材料などの基本項目のほか、食中毒発生時の対応を決めているかなども確認されます。

参照: 令和3年度 東京都福祉保健局医療政策部医療安全課「医療法第25条第1項に基づく定例立入検査の実施状況 報告書」p.26(PDF27枚目)より抜粋

 

コメディカル関係

コメディカル関係に関しては、院内で行う検体検査に関わる設備や管理組織、作業日誌、台帳などもチェックされます。

参照: 令和3年度 東京都福祉保健局医療政策部医療安全課「医療法第25条第1項に基づく定例立入検査の実施状況 報告書」p.27(PDF28枚目)より抜粋

 

保健所立入検査当日の流れ

保健所立入検査は、1~2名の担当者がクリニックを訪れます。来院後は、院内を回りながら項目に沿って検査していきます。不備がある場合はまず口頭で指摘されますが、指摘事項の数が多いと、後日、文書が送られてきます。

 

保健所立入検査をクリアするコツ

最後に、保健所立入検査でなるべく指摘や指導を受けないようにするためのコツを紹介します。

先に紹介した前例を見てもわかる通り、保健所立入検査で指摘および指導を受ける可能性をゼロにすることは難しいもの。

しかし、診療所開設届を保健所に提出する前に、保健所の担当者に「どんなことに気を付けて準備を進めればいいのか」を確認しておくと、比較的スムーズに検査をクリアしやすいといわれています。

また、立入検査の際、行政書士などの専門家に立ち会ってもらうことも大変有効。

指導や指摘があったとしても、その後の改善をスムーズに進めることができるので、ストレスフリーで開業まで漕ぎつけやすくなります。

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