薄毛治療のニーズは年々高まっています。薄毛に関する研究が進んで、一昔前より高い治療効果が期待できるようになったことも、ニーズを加速させているのかもしれません。
ニーズが高まっていることは、これから開業を考えている医師にとっては成功のチャンスといえますが、チャンスをものにするためには、それなりの対策をとっていくことが重要です。
では、AGAクリニックを開業するうえではどのようなことに気をつけたらいいのでしょうか? 早速解説していきます。
薄毛治療の市場動向は?
アデランスが2019(令和元)年に実施した調査によると、同年の薄毛対策市場は約6,000億円という結果でしたが、将来市場規模(=今から薄毛治療に使ってもいいと思う金額)は1兆2,000億円強と約2倍。
調査から4年経っている現在では、AGA関連のCMや広告も倍増しているので、自分事と捉えてクリニックへの来院を検討している人も増えていることが考えられます。 参照:アデランス「日本人男性の髪と“メタモルフォーゼ”に関する意識調査」
こうした市場の背景にあるのが、2005年以降、AGA治療薬が国内で承認されたことです。
これを皮切りに、薄毛治療を行うクリニックが増えると、街中でもTVやインターネットでも盛んに広告が展開されることになるわけですが、昨今では、男性のみならず女性で薄毛に悩む人も増えてきたことなどから、クリニックによってターゲット層がマチマチとなってきています。
AGAクリニックの開業に必要な費用は?
続いては、AGAクリニックの開業費用をみていきましょう。
AGAクリニックの開業費用は、立地および物件の広さ、内装によって大きく異なります。怪我や病気の治療ではなく、審美面におけるコンプレックス解消のための治療です。
大きくカテゴライズすると美容クリニックと同じ枠に分類することもできますが、美容クリニックとは異なり高額なレーザー機器などを導入する必要がないため、開業費を算出するうえでは、開業したいエリアの相場が頼りになります。
また、薄毛解消効果が期待できるとされる「エクソソーム(=細胞から放出される細胞外小胞の1種)」や「高濃度成長因子」を特殊機器を用いて頭皮に直接挿入する「LHDV頭皮注入治療」などを行わず、飲み薬やヘアケア剤を処方するだけなら、オンライン診療のみで開業することも可能。ですので、開業費を最低限に抑えることを重視したい人にはうってつけです。
ただし、オンライン診療のみで開業する場合も、対面診療を行えるよう体制を整えておくことは必須です。なぜなら、オンライン診療を行うためには、地方厚生支局長に対してオンライン診療の施設基準を満たしていることを証明する届出を提出する必要があり、その施設基準のひとつに「対面診療を行える体制である」という項目が含まれているからです。
ちなみに、厚生労働省は、オンライン診療を行うクリニックが最低限遵守すべき事項を次のように定めています。
- オンライン診療を行う医師は、医療機関に所属し、その所属及び当該医療機関の問い合わせ先を明らかにしていること
- 患者の急病急変時に適切に対応するため、患者が速やかにアクセスできる医療機関において直接の対面診療を行える体制を整えておくこと
- 医師は、騒音により音声が聞き取れない、ネットワークが不安定であり動画が途切れる等、オンライン診療を行うに当たり適切な判断を害する場所でオンライン診療を行ってはならない
- オンライン診療を行う際は、診療録等、過去の患者の状態を把握しながら診療すること等により、医療機関に居る場合と同等程度に患者の心身の状態に関する情報を得られる体制を整えなければならない。ただし、緊急やむを得ない場合には、この限りでない
- 第三者に患者の心身の状態に関する情報の伝わることのないよう、医師は物理的に外部から隔離される空間においてオンライン診療を行わなければならない
- オンライン診療を実施する医療機関は、ホームページや院内掲示等において、本指針を遵守した上でオンライン診療を実施している旨を公表するものとする
参照:厚生労働省「オンライン診療の適切な実施に関する指針」p.21(PDF22枚目)より一部抜粋
AGAクリニック開業時の注意点は?
続いては、AGAクリニック開業時の注意点を解説していきます。
通院を周囲に知られたくない患者が多いことを念頭に
薄毛治療を受けたい患者の多くは、薄毛に悩んでいることや、治療を受けていることを誰にも知られたくないと思っています。そのため、立地を考えるうえでは、駅前や人通りが多いエリアなどは避けたほうが無難です。
また、内装に関しては、診察室および治療室を個室にするのはもちろん、待合室は他の患者と極力顔を合わせずに済むよう設計したいところです。
オンライン診療を上手に活用するのが得策
AGAクリニックに通っていることを周囲の人(家族など)に知られたくない患者の多くは、「オンラインでも処方してもらえるならそのほうがうれしい」と思っています。
そのため、“オンライン診療のみ”にしない場合も、オンライン診療にも対応できるようにしておくことが望ましいといえます。オンライン診療にも対応しておけば、エリア外の患者にも受診してもらえるので、高収入を狙いやすいというメリットもあります。
競合との差別化を考えることが大切
冒頭で紹介した通り、AGAクリニックのニーズはここ数年でぐっと高まっています。そのため、クリニックを選ぶ側も、「よりよいクリニックを選んでより確かな効果を得たい」と各クリニックの施術内容や価格、口コミなどをよく比較しています。
そのなかで、“選ばれるクリニック”になるためには、差別化を考えることが必須。価格を手ごろにするのか、リラックスできる内装にこだわるのか、オンライン診療のみにして全国の患者をとりこむのかは各クリニック次第ですが、アプローチ法を考えるうえでも、他院が出している広告などをチェックすることは参考になるでしょう。
最近は、InstagramやTwitterで広告を出しているクリニックが増えているので、キャッチコピーや使用している写真なども参考にしましょう。
開業に関してわからないことがあるなら、早めにプロに相談しよう
資金繰りや物件選びをはじめ、開業に向けた準備は、思うようにいかないことも多々あるものです。
その際、開業コンサルタントや税理士、医業専門不動産など相談する先はたくさんあるので、スムーズに準備が進まないなと感じたら、ぜひ利用を検討してみてくださいね。
この記事は、2023年11月時点の情報を元に作成しています。