2016(平成28)年10月3日以降に保健所へ届出を出した薬局のうち、2015(平成27)年9月に公表された「健康サポート薬局」の基準に適応している 薬局は、看板や入口、店頭などに「健康サポート薬局」と表示することが可能とされています。具体的にはどのような要件を満たしていたら、「健康サポート薬局」であると認められるのでしょうか? 詳しくみていきましょう。
健康サポート薬局とは?
健康サポート薬局とは、薬局を利用する地域住民や患者が健康で豊かな生活を送れるよう、積極的にサポートする機能を備えた薬局のことです。処方箋を持参した患者に対して薬を提供するだけでなく、市販薬や健康食品に関することや、食事・栄養摂取に関することから介護に関することまで気軽に相談してもらえる存在であることが求められています 。
健康の保持および増進に関する相談を受け付け、必要に応じて専門機関を紹介したり、地域の薬局に対して情報を発信したりすることもあります 。
健康サポート薬局と認められるために満たすべき要件は?
健康サポート薬局と認められるために満たすべき要件は、「かかりつけ薬剤師・薬局の機能」と「健康サポート機能」の両方を有していることです。つまり、薬に関するあらゆる相談に応じることと、薬以外の健康に関する相談に応じることの2つともが必要だということです 。
さらに詳しく説明すると、下記の要件を満たしている必要があります。
かかりつけ薬剤師・薬局の機能について
服薬情報の一元的な把握とそれに基づく薬学的管理・指導ができること
1.患者がその薬局においてかかりつけ薬剤師を適切に選択できるような業務運営体制を整備していること
2.患者がかかっているすべての医療機関を把握して、一般用医薬品等を含めた服薬情報などを一元的・継続的に把握するよう取り組み、薬歴に適切に記録していること
3.残薬管理や確実な服用につながる指導を含め、懇切丁寧な服薬指導や副作用などのフォローアップを実施するよう取り組むこと
4.患者に対してお薬手帳の意義・役割を説明して、その活用を促していること。また、ひとりの患者が複数のお薬手帳を所持している場合には、一冊化・集約化に努めること
5.自局以外をかかりつけ薬局としている患者に薬剤を交付することになった場合には、患者の意向を確認したうえで、かかりつけ薬剤師・薬局による服薬情報の一元的・継続的な把握とそれに基づく薬学的管理・指導の実施に適切に協力することが望ましいこと
6.かかりつけ薬剤師・薬局を持たない患者に対して、薬剤師が調剤や医薬品供給などをおこなう際の基本的な役割(薬歴管理、疑義照会、服薬指導、残薬管理等)の周知に加えて、かかりつけ薬剤師・薬局の意義・役割や適切な選び方を説明して、かかりつけ薬剤師・薬局を選ぶよう促していること
24時間対応、在宅対応
1. 開局時間外であってもいつでも、かかりつけ薬剤師(かかりつけ薬剤師が対応できない時間帯がある場合にはかかりつけ薬剤師と適切に情報共有している薬剤師を含む)が患者からの相談や、必要に応じて調剤に対応する体制を整備していること
2. 在宅患者に対する薬学的管理および指導の実績があること
かかりつけ医をはじめとした関係機関などとの連携強化
1.医療機関に対して、患者の情報に基づいて疑義照会をおこない、必要に応じて、副作用・服薬情報のフィードバック、それに基づく処方提案に適切に取り組むこと
2.かかりつけ薬剤師・薬局として、地域住民からの一般用医薬品などの使用に関する相談や健康の維持・増進に関する相談に適切に対応して、そのやり取りを通じて、必要に応じて医療機関への受診勧奨をおこなうこと
3.地域包括支援センターや居宅介護支援事業所、訪問看護ステーションなどの地域包括ケアの一翼を担う多職種と連携体制を構築していること
健康サポート機能について
医療機関への受診勧奨やその他の関係機関への紹介
1.一般用医薬品等に関する相談を含めた健康の維持・増進に関する相談を受けた場合は、利用者の了解を得たうえで、かかりつけ医と連携して状況を確認するなど受診勧奨に適切に取り組むこと
2.1のほか、健康の維持・増進に関する相談に対して、地域包括支援センター、居宅介護支援事業所、訪問看護ステーションのほか、健診や保健指導の実施機関、市町村保健センターその他の行政機関、介護保険法における介護予防・日常生活支援総合事業の実施者などの連携機関への紹介に取り組むこと
3.地域の一定範囲内で、医療機関その他の連携機関とあらかじめ連携体制を構築して、連絡・紹介先リストを作成していること
4.利用者の同意が得られた場合に、必要な情報を紹介先の医療機関等に文書またはメールなどによって提供するよう取り組むこと
地域における健康の維持・増進のための各種事業への参加
地域の医師会、歯科医師会、薬剤師会、看護協会、栄養士会、介護支援専門員協会等に連携・協力して、地域の行政や医師会等が実施・協力する健康の維持・増進その他の各種事業などに積極的に参加するよう取り組むこと
健康サポートに取り組む薬剤師の研修と人的要件
一般用医薬品や健康食品等の安全かつ適正な使用に関する助言や健康の維持・増進に関する相談、適切な専門職種や関係機関への紹介などに関する研修を修了して、一定の実務経験を有する薬剤師が常駐していること
個人情報に配慮した相談スペースの確保
薬局内に、パーテーションなどで区切られた相談窓口を設置していること
健康サポート機能を有する薬局であることの表示
1. 健康サポート機能を有する薬局であることや、一般用医薬品や健康食品等の安全かつ適正な使用に関する助言や健康の維持・増進に関する相談を積極的におこなっている旨を薬局の外側の見えやすい場所に掲示すること
2. 薬局で実施している健康サポートの具体的な内容について、薬局内でわかりやすく提示すること
要指導医薬品等の取扱い
1. 要指導医薬品等、衛生材料、介護用品等について、利用者自らが適切に選択できるよう供給機能や助言の体制を有していること。その際、かかりつけ医との適切な連携や受診の妨げとならないよう、適正な運営をおこなっていること
2. 要指導医薬品等や健康食品等に関する相談を受けた場合には、利用者の状況や要指導医薬品等や健康食品等の特性を十分に踏まえて、専門的知識に基づき説明すること
開局時間の設定
平日の開局日には連続して開局(午前8時から午後7時までの時間帯に8時間以上が望ましい)していること、さらに土日どちらかにも一定時間開局していること
健康の維持・増進に関する相談対応と記録の作成
1.一般用医薬品や健康食品等の安全かつ適正な使用に関する助言や健康の維持・増進に関する相談に対応すること
2.販売内容や相談内容(受診勧奨や紹介の内容を含む)を記録して、一定期間保存していること
健康サポートに関する具体的な取組の実施
1.積極的に健康サポートの具体的な取り組み(たとえば、薬剤師による薬の相談会の開催や禁煙相談の実施、健診の受診勧奨や認知症早期発見につなげる取り組み、医師や保健師と連携した糖尿病予防教室や管理栄養士と連携した栄養相談会の開催など)を実施していること
2.地域の薬剤師会等を通じて自局の取組を発信して、必要に応じて地域の薬局の取り組みを支援していること
(健康の維持・増進に関するポスター掲示、パンフレット配布)
3.国、地方自治体、関連学会等が作成する健康の維持・増進に関するポスターの掲示やパンフレットの配布により、啓発活動に協力していること
こうしてみると満たすべき要件はとても多く見えますが、服薬管理や医療機関との連携など、条件の大半は、健康サポート薬局でなくとも、クリアしている薬局が多いといえます。ただし、24時間対応や相談スペースの確保などは、薬局の体制や広さによっては遵守が困難となる場合があるでしょう。
参照:厚生労働省「健康サポート薬局のあり方について」より一部抜粋
健康サポート薬局研修とは?
満たすべき要件のひとつである「健康サポートに取り組む薬剤師の研修と人的要件」に記されている“研修”とは、研修実施期間が開催する「健康サポート薬局研修」のことで、健康サポート薬局と認定されるためには、研修を受講・終了した薬剤師が常駐している必要があります。
研修は、技能習得型研修(集合研修)と知識習得型研修(e-ラーニング)の2種類を受ける必要があり、すべての講義を受けるには30時間を要します。
技能習得型研修(集合研修) | 知識習得型研修(e-ラーニング) |
1. 健康サポート薬局の基本理念(1時間) 2. 地域包括ケアシステムにおける多職種連携と薬剤師の対応(3時間) 3. 薬局利用者の状態把握と対応(4時間) |
1. 地域住民の健康維持・増進(2時間) 2. 要指導医薬品等概説(8時間) 3. 健康食品、食品(2時間) 4. 禁煙支援(2時間) 5. 認知症対策(1時間) 6. 感染対策(2時間) 7. 衛生用品、介護用品等(1時間) 8. 薬物乱用防止(1時間) 9. 公衆衛生(1時間) 10. 地域包括ケアシステムにおける先進的な取組事例(1時間) 11. コミュニケーション力の向上(1時間) |
参照:公益社団法人日本薬剤師会・公益社団法人日本薬剤師研修センター「健康サポート薬局研修」実施要領p.4~5より一部抜粋
健康サポート薬局の認定制度が生まれた理由は?
冒頭で述べた通り、健康サポート薬局の認定制度が誕生したのは比較的最近です。
なぜこのような制度ができたかというと、少子高齢化が進み、医療や介護のニーズが増加していることから、政府が「地域包括ケアシステム」の体制構築を推進しているからで す。
地域包括ケアシステムとは?
地域包括ケアシステムとは、団塊の世代が75歳以上となる2025年を目途に、重度な要介護状態となっても住み慣れた地域で最後まで自分らしく生きることができるよう、住まい・医療・介護・予防・生活支援を一体的に提供するシステムのこと。
保険者である市町村や都道府県が、地域の自主性や主体性に基づいて、地域の特性に応じて作り上げていくことが必要とされています。
健康サポート薬局もそうでない薬局も、地域住民や患者の健康を守る役割を担っている
健康サポート薬局の認定数は、令和5年3月31日時点で全国3,077軒です。この数は、厚生労働省が目標として掲げている15,000軒の約2割にしか満たないので、今後は普及を目的に新たな施策が講じられることが考えられます。
また、そうでなくとも、健康サポート薬局に認定されると、認定を受けていることを標榜して患者からの信頼を得たり、薬以外に健康食品や市販薬も積極的に販売したりできるなどメリットが大きいので、認定を目指して研修を受ける薬局が増加することが考えられます。
ただし、要件を満たすことができず、認定を受けられない薬局も、地域包括ケアシステムの一翼を担う存在であることに変わりはありません。健康サポート薬局とそうでない薬局とがお互いに連携をとりながら地域住民や患者の健康を守っていくことがもっとも大切であることを忘れないでくださいね!
特徴
対象規模
オプション機能
提供形態
診療科目
この記事は、2023年12月時点の情報を元に作成しています。