
クリニック開業にあたっては、診療科にもよりますが、さまざまな医療機器が必要になります。医療機器を購入するうえでは、その医療機器をいつまで使えるのかを確認することが不可欠ですが、何を持って判断すればいいのでしょうか? 早速解説していきます。
各医療機器がいつまで使えるのかを表す言葉は数種類ある
医療機器がいつまで使えるのかを表す言葉は数種類あります。ただし、それらの言葉は似た意味であるものの、正確には意味が違います。どんな言葉があって、それぞれどんな意味であるのかを説明していきます。
耐用年数
「耐用年数」とは、減価償却資産が使用に耐えうる年数のことです。ただし、実際にその年数以上使えない可能性が高いかどうかというより、“固定資産の税務上の減価償却に際して、減価償却費の計算の基礎となる年数”ととらえるほうが適格です。
耐用年数は国によって定められています。減価償却資産は、使用年月を経るほどに価値が落ちていき、最終的に使用価値が0円となります。
また、前述の“計算”にはどんな方法があるかというと、「価値がある間=耐用年数の期限まで」ととらえて、その間、毎年同額の減価償却費を計上する「定額法」と、使用年数が立って価値が減るにつれて減価償却費が減っていく「定率法」があります。原則として、個人事業主には定額法が、法人には、建物、建物附属設備、建築物、ソフトウェアの導入にかかる費用を除いて定率法が適用されます。
耐用期間
「耐用期間」とは、消耗品の交換・修理・オーバーホールをおこないながら、標準的な使用方法と保守方法を守ったものの、機器の安全性を維持できなくなると予想されるタイミングまでの期間のことです 。
医療機器の添付文書や取扱説明書には、その医療機器の「耐用期間」が記載されています。これはなぜかというと、2001(平成13)年、行政通知によって、医療機器の製造販売業者は、適切な日常点検・保守点検・予防捕手がなされることを前提としたうえで、有効性・安全性を維持して使用できる標準的な期限を記載することが求められることとなったためです。
参照:医機学vol.83 「医療機器の耐用期間について」PDF1枚目より一部抜粋
耐用寿命
「耐用寿命」とは、物理的、経済的、医療技術的、企業戦略的など条件などのさまざまな条件によって、結果的に当該機器が使用できなくなるまでの寿命を指します。
使用期限
「使用期限」とは、未開封かつ適切に保管されている医薬品の品質が保持される期限のことを指します。食品や化粧品などには必ず賞味期限・使用期限が記されているので、この言葉が一番意味を理解しやすいという人は多いかもしれません。
保証期間
「保証期間」とは、当該機器に不具合が生じた場合で、かつ使用者側に過失がない場合に、メーカー側が無償修理などの保障に応じる期間のことです。一般的に、保証期間は耐用期間より短く設定されています。これは、一般的な電化製品などをイメージしてもらうとわかりやすいかもしれません 。
医療機器の耐用年数一覧
続いては、医療機器の耐用年数を一覧で紹介します。上記に説明した通り、医療機器の耐用年数は国によって定められています。保証期間などはメーカーごとに定められているため、同じ医療機器であってもメーカーによって異なりますが、耐用年数に関しては医療機器ごとに決まっているため、メーカー問わず一律です。
医療機器の細目 | 耐用年数 |
消毒殺菌用機器 | 4年 |
手術機器 | 5年 |
血液透析または血しょう交換用機器 | 7年 |
ハパードタンクその他の作動部分を有する機能回復訓練機器 | 6年 |
調剤機器 | 6年 |
歯科診療用ユニット | 7年 |
光学検査機器 ①ファイバースコープ | 6年 |
光学検査機器 ②その他の物 | 8年 |
レントゲンその他の電子装置使用する機器 ①移動式のもの、救急医療用のもの、自動血液分析機 | 4年 |
レントゲンその他の電子装置使用する機器 ②その他のもの | 6年 |
その他のもの ①陶磁器製・ガラス製のもの | 3年 |
その他のもの ②主として金属製のもの | 10年 |
その他のもの ③その他のもの | 5年 |
参照:国税庁「主な減価償却資産の耐用年数表」2ページ目より一部抜粋
耐用年数を過ぎた医療機器はどうすればいい?
耐用年数が過ぎたからといって、その医療機器はもう使えないというわけではありません。標準的な使用状況と保守状況であれば、耐用年数を超えても通常通り作動する場合が多いでしょう。そのため、利用者が「まだ使える」と判断してそのまま使い続けるケースも多いですし、使い続けたからといって罰せられるということなどはありません。ただし、耐用年数が過ぎた医療機器を使い続けることにはデメリットがあります。
耐用年数を過ぎた医療機器を使い続けるデメリットは?
耐用年数を過ぎた医療機器を使い続けるデメリットはいくつか考えられます。
まず、突然故障したり徐々に動かなくなっていったりする可能性が高いといえます。毎日のように使っている医療機器であれば、突然故障して代わりがない場合に困ることもあるでしょう。
また、医療事故につながるリスクが高まります。さらに、臨床的有効性が下がることも大きなデメリットです。
ちなみに、前半で説明した通り、耐用年数の期限終了とともに減価償却費の精算が終わることになるので、そのぶん経費を計上できなくなるため、経費計上できなくなることで税金が増えることもあるかもしれません。ただしそのケースに関しては、新しい機器を買ったほうがお得なのか、該当機器の経費計上ができなくなるものの新規の出費を抑えられるほうがお得なのか、よく考えたほうがいいでしょう。
買い替えの負担を軽くするために中古医療機器も検討したい
耐用年数が過ぎた医療機器のリスクを回避するためにも買い替えを検討したいという思いはあるものの、高額ゆえになかなか踏ん切りがつかないということもあるでしょう。そうした場合には、中古医療機器の購入を視野に入れるのも一手です。「中古ということはさらに状態が悪くなるのでは?」と思うかもしれませんが、実は中古医療機器として販売されているもののなかには、耐用年数が過ぎていないものも存在します。ただし、中古医療機器のなかには、不正・違法に販売されているものもあるので、販売店の免許などに関してはしっかりとチェックするようにしてくださいね!
特徴
対象規模
オプション機能
提供形態
診療科目
この記事は、2024年1月時点の情報を元に作成しています。