追徴課税の支払いを命じられることは、クリニックにとって大きな痛手となります。不足しているぶんを納税しなければならないのはもちろん、それ以外にも追加で支払わなければならない可能性があります。具体的にどんな支払いが生じるのか説明していきます。
追徴課税とは?
追徴課税とは、本来納めるべき税額を納付していなかった場合などに、差額分の徴収を受けることです。追徴課税の内容によっては、差額分に加えて、延滞税や利子税、加算税などの「附帯税」が課される場合があります。
なぜ、本来納めるべき税額を納付していないとバレやすいのかいうと、税務署は基本的に、「申告が間違っている可能性が高い」「脱税している可能性が高い」人に目星をつけて、入念にチェックしようとするからです。税務署としても、税務調査に訪れてまったく税金をとれなかったとなると単なる時間のロスとなってしまうため、確定申告で提出された書類をもとに、予めターゲットを絞ってから税務調査しています。
追徴課税の附帯税とは?
追徴課税の附帯税は、大きく、前述の3つにわけられます。
延滞税とは
まず、延滞税とは、本来の納付期限から税務申告を延滞した日数に応じて加算される税金です。延滞税は、以下の計算式によって算出されます。
(納税額×延滞税の税率×延滞した日数)÷365日=延滞税
「延滞税の割合」は、延滞した年によって異なり、令和6年1月1日~令和6年12月31日にかけては、基本的には8.7%です。ただし、納期限後2か月以内などであれば、早期納付を促す観点から2.4%と設定されており、事業廃止などによって納税猶予となっている場合などは0.9%と設定されています。また、災害や病気が理由の延滞の場合、延滞税は全額免除となります。
利子税とは
利子税とは、税務申告手続きが間に合わないなどの理由で、所轄の税務署に税務申告の延長を申し出た場合に、延長した日数に応じて貸される税金です。申告が遅れることを自分から申し出ていることから、延滞税よりも税率が低く設定されており、租税公課として損金に算入することも可能です。利子税は、以下の計算式によって算出されます。
(納税額×利子税の税率×延長した日数)÷365日=利子税
令和6年1月1日~令和6年12月31日の利子税は0.9%に設定されています。
参照:財務省「延滞税・利子税・還付加算金について」
加算税とは?
加算税は、「過少申告加算税」「無申告加算税」「不納付加算税」「重加算税」の4種類にわけられます。
過少申告加算税
納める税金が少なかった場合や、還付された税金が多かった場合、修正申告が必要ですが、税務調査を受けるまでの間に自ら修正申告をおこなわなかった場合や、税務署から申告税額の構成を受けた場合、追加で徴収される税額に10%を乗じた「過少申告加算税」を支払う必要があります。
ただし、追加で徴収される税額が、「当初の申告納税額」または「50万円」を超えている場合、超えている部分に関しては、税率は10%ではなく15%となります。
たとえば、当初申告していた納税額が70万円で、税務調査の結果、追加で100万円の徴収を課されたとすると、過少申告加算税は以下の通りとなります。
70万円×10%+100万円×15%=220,000円
無申告加算税
期限内に確定申告を済ませられなかった場合や、税務調査を受けた後に申告する場合、追加で徴収される税額に5%または15%または20%を乗じた金額を支払う必要があります。どんな場合にどのパーセンテージとなるかは以下の通りです。
期限後~税務調査を受ける前の期間での申告 5%
税務調査によって決定した追加の納税額のうち50万円までの部分 15%
税務調査によって決定した追加の納税額のうち50万円を超える部分 20%
たとえば、税務調査によって80万円の徴収を受けることになった場合の金額は以下の通りです。
50万円×15%+30万円×20%=135,000円
ただし、以下の要件をすべて満たしている場合は、無申告加算税が課されることはありません。
① 法定申告期限から1か月以内に自主的に期限後申告をおこなっている
② 以下の2つに該当していて、期限内申告をする意思があることが認められる
不納付加算税
源泉所得税を脳期限までに納付しなかった場合、本税に5%または10%を乗じた金額を「不納付加算税」として支払う必要があります。ただし、税務調査を受ける前に徴収高計算書などを提出した場合は、原則として不能附帯加算税を支払う必要はありません。
また、納期限から1か月以内に納付した場合で、過去1年間に期限後納付がなく、さらに不納付加算税の金額が5,000円未満の場合、不納付加算税を支払う必要はありません。
不納付加算税の税額は以下の通りです。
税務調査を受ける前に修正した場合 | ― |
追徴税額と50万円のうち、いずれか多い額までの部分 | 5% |
追徴税額と50万円のうち、いずれか多い額の超過部分 | 10% |
重加算税
納める税金が少なかったり、期限内申告ができなかったりした理由として、隠ぺいや仮装などの不正事実がある場合、過少申告加算税や不納付加算税、無申告加算税の代わりに「重加算税」が課されることになります。どういった場合に、隠ぺいや仮装であると判断されるかというと、二重帳簿の作成、帳簿書類の破棄、隠匿、改ざんなどがあった場合です。
重加算税の税率は、過少申告加算税または不納付加算税の代わりとして課される場合は35%、無申告加算税の代わりとして課される場合は40%となります。
追徴課税の対象期間
追徴課税の対象期間は過去3期分です。なぜかというと、一般的に税務調査においては過去3期分の税務申告が調べられるからです。ただし、過去にも追徴課税を課されたことがある場合や、多額の申告漏れが想定される場合、5期または7期分の税務申告について調べられることもあります。
税務申告について調べられるタイミングははっきり決まっているわけではありませんが、例年、8月~12月が多いようです 。
また、追徴課税が課された場合、原則としてすぐに一括で納付する必要があります。ただし、納税額が高額であることなどから一括納付が難しい場合、分割納付または納税猶予が認められることもあります。
追徴課税を支払わないとどうなる?
分割納付や納税猶予が認められることはあっても、基本的には、「払わない」ということは認められません。もし追徴課税を支払わずに納税通知書をシカトし続けたら、財産が差し押さえとなる場合があります。納期までに支払わなければすぐに差し押さえられるということはなく、督促状や財産調査などを経て差し押さえとなることが一般的ですが、いずれにしてもできるだけスピーディに支払うに越したことはありません。
追徴課税の注意点
続いては、追徴課税に関する注意点を解説していきます。
追徴課税は損金として計上できない
前述した通り、税務申告の延長を申し出る利子税に関しては損金として計上することが可能ですが、それ以外に関しては、追徴課税は損金として計上できません。なぜかというと、申告漏れや無申告に対するペナルティとして課される税金だからです。ただし、会計上は、追徴課税を費用として計上できます。たとえば、申告漏れによって200万円の過少申告加算税が課された場合、以下のように仕訳処理をおこないます。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
過少申告加算税 | 2,000,000円 | 現金 | 2,000,000円 |
内容に納得いかない場合、不服申し立てすることができる
追徴課税を課されて、その内容に納得がいかない場合、不服申し立てすることが可能です。
内容に納得がいかない場合、不足税額の修正申告はおこないません。そうすると、所轄の税務署が更正処分をおこない、納税通知書を送付してくるので、その段階で不服申し立ての手続きをおこないます。不服申し立てをおこなって追徴課税の再審査を要求した結果、不服申し立てが認められれば、追徴課税が課されることはありません。
追徴課税を課されないよう、適切な税務申告を心がけよう
追徴課税が課されると、不足納税分を支払わなければならないだけでなく、ペナルティとして余計にお金がかかることがおわかりいただけたかと思います。しかも、前述した通り、会計が複雑になるなどデメリットだらけ。故意ではなかったとしても、一度、追徴課税が課されると、税務署から目をつけられて毎年必要以上にしっかりチェックされる可能性も高いので、日ごろから正しく納税することを大事にしてくださいね。
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この記事は、2024年3月時点の情報を元に作成しています。