クリニックの予定納税額の計算方法は? いつ支払えばいい?

納税は国民の義務です。雇用する側でもされる側でも、一定額以上の収入がある人はみんな納税していますが、これまで勤務医として働いた経験しかなければ、「予定納税」についての知識が乏しいこともあるかもしれません。そこで今回は、「予定納税」とはどんな制度であるのかを説明していきます。

目次
  1. 予定納税とは?
  2. 予定納税基準額とは?
  3. 予定納税額はいつ支払う?
  4. 予定納税額は場合によっては減額申請できる
    1. 予定納税額の減額申請ができるケース
    2. 予定納税額の減額申請はいつまでにおこなえばいい?
  5. 日ごろからこまめに帳簿をつけておくことが肝心

予定納税とは?

まずは「予定納税」の言葉の意味から説明します。

予定納税とは、前年度の所得金額や税額などをもとに計算した「予定納税基準額」が、その年の5月15日時点において15万円以上となることが確定している人に関して、税金を納付した際の本人の負担感を軽減するため、そして国の歳入を平準化するために、その年の所得税および復興特別所得税の一部をあらかじめ納付しなければならないとする制度です。

確定申告の際には、計算したその年度の税額から予定納税額を差し引くことで、税額の過不足分を精算することとなります。

なお、勤務医など給与所得者は給与から所得税が源泉徴収されているため、基本的には予定納税をおこなう必要はありません。ただし、不動産所得や農業所得などがあり、その年の5月15日の時点で確定している所得金額や税額などをもとに計算した結果、予定納税基準額が15万円以上とされる場合は、予定納税をおこなう必要があります。予定納税基準額については、このあと詳しく解説します。

予定納税基準額とは?

予定納税基準額は、原則、その年の5月15日時点で確定している、前年分の所得税等の申告納税額と同じ金額です。ただし、次の3つのケースの場合は、予定納税額の通知書の「予定納税額基準額の計算の基礎」において計算した金額が、予定納税基準額となります。

1. 前年分の所得金額のうち、山林所得や退職所得などの分離課税の所得、譲渡所得、一時所得、雑所得、平均課税を受けた臨時所得が含まれている場合
2. 前年度の確定申告において外国税額控除の適用を受けている場合
3. 前年度の確定申告に置いて災害減免法に基づく所得税の軽減免除の適用を受けている場合

予定納税額はいつ支払う?

予定納税額は、第1期分、第2期分の2回にわけて納付します。それぞれの期日までに支払う金額は、予定納税基準額の3分の1の金額で、原則、第1期分=7月31日、第2期分=11月30日が期日と設定されています。つまり、第2期分を払い終えた時点で、予定納税額の3分の2を払い終えることになり、前年度と所得が概ね変わっていないなら、残りの3分の1を確定申告が終わった後に精算することになります。

参照:国税庁「予定納税」

参照:国税庁「令和5年分 予定納税について II予定納税額の納付について」

予定納税額は場合によっては減額申請できる

予定納税をしなければならない対象者には、税務署から「予定納税額の通知書」が届くため、自分がいくら支払わなければならないのかがわかります。場合によっては、通知書を見て、「こんなに払えない」と困ってしまうことがあるかもしれません。なぜなら、対象者が払うことになるその年の納税額が、事情によって前年より少なくなると見込まれるとしても、税務署側は事情を把握していないため、前年度の所得金額や税額などをもとに計算するしかないからです。

そこで利用したいのが、予定納税額の減額申請制度です。

ただし、予定納税額の減額申請をおこなうためには理由が必要です。たとえば以下のような理由がある場合、予定納税額の減額を申請することができます。

予定納税額の減額申請ができるケース

  • 廃業や休業、失業している
  • 業績不振などにより、本年分の所得が明らかに前年分の所得より少ないことが予想される
  • 災難や盗難、横領などによって事業用資産が損害を受けた
  • 次の①~⑤のように、本年分の所得控除額や税額控除額が前年分と比べて増加する
  • ① 災害や盗難、横領などによって住宅や家財に損害を受けたなどの理由から雑損控除を受けられる
    ② 多額の医療費を支払ったため、医療費控除を新たに受けられる場合や、前年より医療費控除額が増加する場合
    ③ 配偶者控除、配偶者特別控除、扶養控除、障害者控除、寡婦控除、ひとり親控除を受けられる場合や、これらの控除の対象となる人が増加した場合
    ④ 社会保険料控除や小規模企業共済等掛金控除、生命保険料控除、地震保険料控除の控除額が増加する場合や、一定の寄付金を支出したため寄付金控除を受けられる場合
    ⑤(特定増改築等)住宅借入金等特別控除や政党等寄附金特別控除、認定NPO法人等寄附金特別控除、公益社団法人等寄附金特別控除、住宅耐震改修特別控除、住宅特定改修特別税額控除、認定住宅棟新築等特別税額控除などを受けられる場合や、これらの控除額が増加する場合

    上記には当てはまらなくても、国税庁に申請が認められれば減額の対象となります。

    参照:国税庁「A1-3 所得税及び復興特別所得税の予定納税額の減額申請手続」

    予定納税額の減額申請はいつまでにおこなえばいい?

    予定納税額の減額申請書提出期限の目安は、第1期分=7月中旬、第2期分=11月中旬です。令和5年は以下のようなスケジュールに設定されていたので、こちらを目安としてもいいでしょう。

  • 予定納税額の通知:6月15日
  • (第1期分納期:7月1日~7月31日)

  • 第1期分減額申請書の提出期限:7月18日
  • 第1期分納税期限:7月31日
  • (第2期分納期:11月1日~11月30日)

  • 第2期分減額申請書の提出期限:11月15日
  • 第2期分納税期限:11月30日
  • 参照:国税庁「令和5年分 予定納税について III予定納税額の減額申請について」

    日ごろからこまめに帳簿をつけておくことが肝心

    本年分の所得が前年分と比べてどのくらい増減することが見込まれるのかは、きちんと帳簿をつけていなければ、すぐにはわからないはずです。「肌感としてなんとなく減っている」ということもあるかもしれませんが、減額申請書には「申告納税見積額等の計算書」が組み込まれていて、これを埋める必要があるため、できる限り帳簿に記録しておくに越したことはありません。特に第1期分に関しては予定納税額の通知が届いてから納付期限までの期間が短いため、早めに準備を進めることをおすすめしますよ!

    参照:国税庁「令和5年分所得税及び復興特別所得税の予定納税額の7月(11月)減額申請書」

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