訪問看護師が利用者宅を訪れた結果、「来てほしくない」と拒絶されてしまうことがあります。なぜ、利用者は訪問看護を必要としているはずなのに、拒絶されてしまうのはなぜなのでしょうか? また、拒絶された場合にはどう対処すればいいのでしょうか? 詳しく解説していきます。
訪問看護の利用者が、訪問看護師に対して「来てほしくない」と拒絶する理由は?
まずは、訪問看護の利用者が、訪問看護師に対して「来てほしくない」と拒絶する理由をみていきましょう。
経験不足・スキル不足
看護師の訪問先が日によって変わる場合や、過去に担当だった看護師がいた場合、他の看護師と比較されて、「他の看護師がいい」「前の看護師がいい」と思われる可能性があります。訪問看護師としての経験やスキルが未熟であることからそう思われることもあれば、単純に、利用者には他にお気に入りの看護師がいるというという場合もあります。
相性が悪い
看護師としての腕やコミュニケーション力に問題があるわけではないものの、「なんとなくこの人とは合わない」という理由から拒絶されることもあります。ちょっとした日常会話が原因で、「この人は自分とは感覚が違う」「この人のセンスは好きになれない」と思われることもあるかもしれませんが、これに関しては気をつけようがないので仕方ないかもしれません。
異性・同性の別
訪問看護師は同性がいいと思っている利用者もいれば、異性がいいと思っている利用者もいます。「異性に介助されるのは恥ずかしい」というケースもあれば、たとえば「男性のほうが力があるぶん、安定した介助が期待できそう」と考える人もいるかもしれません。
マナーが悪い
利用者もその家族も、マナーが悪い訪問看護師は拒絶したいと思って当然です。たとえば、丁寧語が使えない人や下品な笑い方をする人、室内の物を断りなく勝手に動かす人、などは拒絶されやすいでしょう。
清潔感がない
着ているものが汚れていたり、靴下が臭ったりする人は、家に上がってほしくないと思われて当たり前です。口臭や体臭にももちろん気を付けたいところですし、タバコのニオイも嫌われる原因となり得ます。そもそも、訪問看護の仕事をおこなううえでは、利用者宅に菌やウイルスを持ち込まないよう、手洗いなどを徹底することが鉄則なので、清潔感に欠けている人は訪問看護師としてふさわしくありません。
家族が勝手に頼んだ
利用者本人は訪問看護など必要ないと思っているのに、家族が勝手に依頼した場合などは、「自分は頼んだ覚えはない」と拒否されることがあるでしょう。
患者に認知症症状がある
認知症症状がある患者は、自分で依頼した場合でもそのことを忘れる場合がありますし、家族が依頼した場合は、訪問看護について正しく理解できておらず拒絶されることもあるかもしれません。
患者の体調または精神状態がよくない
看護師に対してネガティブな気持ちは抱いていないものの、体調が悪くて看護師に自宅に上がられることが辛いということも考えられます。また、精神科疾患を患っている利用者に関しては、精神状態がよくないために誰とも会いたくないということもあるでしょう。
患者が訪問看護をこれ以上受けたくない、期待していたサービスではなかったと考えている
利用者が訪問看護に対して期待していたことと実際のサービスに隔たりがあった場合、「もうこれ以上訪問看護を受けたくない」と思っているかもしれません。その場合、訪問看護ステーションに連絡を入れてサービスを終了したい旨を伝えるべきなのでは? と思うかもしれませんが、我慢していた気持ちがあるとき急に爆発して、「もう来ないでくれ」という言葉に代わってしまう可能性も考えられます。
利用者に訪問看護を拒絶された場合の対処法は?
続いては、訪問看護師が利用者から拒絶された場合の対処法をみていきましょう。
利用者に理由を確認する
まずは、訪問看護を拒絶する理由を利用者に尋ねましょう。その際、利用者に対して高圧的な態度などをとることはもちろんご法度! また、理由を尋ねても教えてもらえない場合もあるかもしれませんが、その場合は無理に問いただす必要はありません。
訪問看護ステーションに連絡する
訪問看護師が利用者宅で拒絶されて、話を聞いてもらうことも難しかった場合、訪問看護ステーションに連絡を入れます。訪問看護ステーションとしては、どのような理由で拒否された場合も、基本的には代わりの訪問看護師を提案することになります。
主治医や保健師に連絡・相談する
「来てほしくない」と言ってきた利用者の様子がいつもと違ったときや違和感を覚えたときは、主治医や保健師にも早めに連絡する必要があります。利用者を観察して他にも気づいたことがあれば、つぶさに報告しましょう。
利用者の家族に確認する
利用者本人が「来てほしくない」と言っていることを、家族が把握していない場合もあります。そのため、家族に思い当たることを尋ねることで、思いがけない理由が判明することもあるかもしれません。
拒否された原因を考えて、必要であれば改める
利用者が訪問看護を拒む理由は、前述の通りさまざまです。場合によっては、利用者に理由を聞いても教えてもらえないこともあるので、その場合は自分で原因を推測するしかないでしょう。理由を教えてもらえた場合も原因をある程度推測できた場合も、もし自分に悪いところがあったのであれば、その点を改める必要があります。
訪問看護のスキルやコミュニケーション力に磨きをかける
訪問看護のケアの質やコミュニケーション力が上がると、利用者が何に不満を持っているのかに気づき、必要な声掛けや必要な対応ができるようになります。先輩看護士に話を聞いたり、訪問看護の勉強会に参加したりすることで、自分に足りていないものを理解して、磨きをかけていくことが大切です。
訪問看護ステーションおよび外部関係者との情報共有を大切にする
利用者の性格や、されてイヤなことなどは、訪問看護ステーション内の自分以外の看護師が把握していることもあれば、主治医などが気づいていることもあります。そのため、日ごろからしっかりと連携を取って情報共有しておくことで、「来てほしくない」と言われることを予防しやすくなります。
認知症について正しく理解する
認知症症状が拒否の原因となる可能性があることを考えると、訪問看護をおこなううえでは、認知症について正しく理解することが必須といえます。認知症患者への対応を含めしっかり学ぶことで、適切な対応ができるようになります。
利用者に危険行動がみられる場合などは特に注意が必要
利用者が「来てほしくない」と言っている以外に特に変わったことがなければ、まずは訪問看護ステーションに連絡をとって、その後どうするのかを決めていくことになりますが、精神疾患や認知症の症状がある利用者で、「来てほしくない」の言葉とともに危険行動がみられる場合や、要介護の利用者で明らかに体調に異変がみられる場合などは対応を急ぐ必要があります。そのなかでも特に下記の場合は注意が必要です。
希死念慮が強く表れている
利用者の自殺願望が強くなっていることから、「誰にも近づいてほしくない」というニュアンスで「来てほしくない」と発言しているとみられる場合、自傷行為などを起こす必要があります。その場合、すぐに主治医に連絡して対応する必要があります。
家族や看護師への暴力や暴言
家族や看護師への暴力や暴言がみられた場合も、すぐに主治医に連絡することが不可欠です。利用者の力が強く、看護師一人では止められない場合は、ケアマネージャーや保健師などにも連絡を入れてサポートを頼みます。
意識が朦朧としている
精神疾患や認知症の症状がみられる利用者でなくとも、誤って薬を過剰摂取したり、転倒や転落で頭部を打撲したりしたことが原因で精神状態がおかしくなることは考えられます。その場合も主治医に自足に連絡をいれます。
利用者の危険行動に備えて普段から準備しておくべきことは?
続いては、利用者の危険行動に備えて普段から準備しておくべきことを解説していきます。
トラブルが起きた場合を想定した訓練しておく
利用者に危険行動がみられた場合の対応について頭では理解していても、もしものときのための訓練をおこなっていなければ、咄嗟に対応できない可能性が高いといえます。そのため、事業所内でも定期的に「危険予知訓練(KYT)」をおこなうことが大切です。
利用者の家族と、刃物や危険物の取り扱いについて話し合っておく
精神疾患がある利用者や、認知症症状があって普段から危険な行動がみられることがある利用者に関しては、刃物や危険物の取り扱いについて、利用者の家族と話し合っておくことも大切です。
「来てほしくない」が続いて辛いときは、勤務先に相談しよう
万全な対策をとっていても、利用者から「来てほしくない」と言われることはありますし、運悪く、立て続けに同じことが起きるという可能性もゼロではありません。そうした状況は、サービスを提供する看護師にとっても辛いことなので、もしもそれによって仕事をする気力が失われそうな場合は、勤務先に相談することが大切。相談した結果、これまでにどの看護師が担当してもトラブルが起きたことがない利用者などの担当に割り振ってもらえることなどもあるでしょう。もしくは、勤め先を変えるのも一手。なぜかというと、どんな利用者が多いかは、訪問看護ステーションによって異なるからです。ただし、利用者から拒絶されるたびに転職していては自分自身も疲弊してしまうので、まずは自分にできる努力を怠らず、困ったことがあれば、勤務先や先輩看護士に相談することを心がけてくださいね。
特徴
対象規模
オプション機能
提供形態
診療科目
この記事は、2024年5月時点の情報を元に作成しています。