クリニックのオープン時には、院長もスタッフも一丸となって、「このメンバーでクリニックの運営を軌道に乗せていこう!」と意気込むものです。
しかし実際は、オープニングスタッフは早々に辞める確率が高いといわれています。はたしてその理由とは? 早速みていきましょう。
クリニックのオープニングスタッフの離職率は?
クリニックのオープニングスタッフの離職率として、正式に公表されているデータはありません。
ただ、クリニックのオープニングに携わったことのある税理士や社労士などは、自身が多くのクリニックをみてきたなかで、「半年で半数は退職しているし、1~2年後には全スタッフが入れ替わっていることも珍しくない」と体感している人が多いようです。
また、オープニングスタッフとして入職した経験のある人からは、「教育や指導がなくて不安になった」「ぎりぎりの人数で回していて休みたいときに休めなかった」などの声が上がっています。
その背景には、クリニック側に、「とにかく最初の忙しい時期を乗り越えるための人数だけでもなんとか確保したい」という思いがあるのかもしれません。
クリニックのオープニングスタッフが辞める理由
続いては、クリニックのオープニングスタッフが、オープン時以外の募集で採用したスタッフと比べて離職を考えやすい理由をみていきます。
院長の経営面のスキルが不十分である
医師が独立して開業するとなると、医師としての仕事に加えて、経営者としての仕事もこなす必要が出てきます。しかも、院長以外は看護師と事務しか雇わない小規模なクリニックであれば、総務・人事・労務・経理のすべてを院長がこなす必要があります。
そのため、必要なことは逐一インターネットなどで調べながら進めるか、開業に関する指南書などで学んだり、あるいは先輩開業医に教えてもらったりするほかありませんが、それでもうまく回せていない部分があると、スタッフから「このままここで働き続けて大丈夫だろうか?」と思われてしまう可能性があります。
労務トラブルを起こしてしまった
オープニング直後は、人事労務管理がきちんと確立されていない部分があることから、労務トラブルが起きがちです。労務に関する業務は幅広く、主な業務内容としては、給与計算、勤怠管理、社会保険の手続き、年末調整、福利厚生、安全衛生管理となり、つまり、これらに関するトラブルが起きやすいということです。
具体的には、「残業続きで労働時間が守られていない」「残業代が支払われていない」といった労働条件に関するものもあれば、スタッフに注意喚起したつもりが、「言葉による暴力・ハラスメントととらえられた」ということもありえます。
ハラスメントに関するトラブルなどはいつでも起き得るものですが、オープニング直後で院長もスタッフも試行錯誤しながら業務を進めている時期だと、お互いに余裕がなくてきつい言葉を使いやすいなどということはあるかもしれません。
クリニックの方向性が定まっていない、途中から方針が変わった
クリニック開業時には、どんな患者をメインターゲットとして、どんな医療を提供していきたいかを考え、経営理念を定めるものですが、いざ開業してみると思うように患者が集まらなかったなどの理由から、当初の計画通りに物事を進められない可能性もあります。
また、たとえば患者が増えるにつれて地域の実情がわかるようになり、訪問看護のニーズが高いことに気づき、自院でも導入を検討し始めるなどといったこともありえます。そうなった場合に、訪問看護に携わることはないと思って入職していた看護師が、「他のクリニックに転職したい」と考えるのは自然なことです。
自院との相性を考えずにスタッフを採用してしまった
スタッフ採用時には、どうしてもスキルや経験に注目しがち。特にスタッフを雇うのが初めてであれば、「仲良くなれる友だちを探しているわけじゃないのだから、性格は二の次でいい!大事なのはスキルと経験!」と考える人が多いかもしれません。
しかし実際のところ、医療はチームで行うものなので、協調性がなく我が強いスタッフがいると、それだけで他のスタッフはストレスを抱えてしまいますし、その人と働くのがイヤだという理由で他のスタッフが離職してしまうケースも多いもの。
さらに、無断欠勤が多いなどの問題がある人も言語道断。また、自院の経営理念に共感してくれる人でなければ、一緒に仕事するなかで意見が割れ、揉めてしまう可能性が高いといえます。
教育・指導不足
オープニングスタッフ採用時には、先に働いている先輩スタッフがいないため、教育・指導を行うのは院長しかいません。しかし、院長は院長で患者の診療および処置という大切な仕事があるので、スタッフに付きっ切りで指導するのは難しいでしょう。
そのため、オープニング時には、業務に関する最低限のマニュアルを用意したいところですし、できれば、看護師経験がある程度ある人をひとりは雇い、他院での経験をもとにマニュアルを刷新していってもらいたいところです。
また、看護師はひとりしか雇わないという場合や、経験の有無にこだわらず、自院と相性のいい人材を選びたいという場合は、自分でも工夫しながら成長していけるタイプの人材を選ぶことをおすすめします。
クリニックのオープニングスタッフが辞めるのを防ぐ方法は?
続いては、クリニックのオープニングスタッフが辞めるのを防ぐ方法をみていきます。
開業前に経営に関してしっかり学び、「スタッフが働きやすい環境」を構築する
まずは、院長自身が経営についてしっかり学ぶことが大切です。
たとえば、どんなマニュアルやルールがあればスタッフが働きやすいか、給与計算や勤怠管理にはどんなソフト・アプリを使えばスムーズであるか、あると喜ばれる福利厚生は?などを考えて、スタッフにとって働きやすい環境をつくることを考えましょう。
経営について学ぶ方法は、「先輩開業医に教えてもらう」「参考書を読む」「セミナーに参加する」などいくつかあります。また、広告代理店や税理士、人材紹介会社やコンサルタントなど、仕事するうえでタッグを組む職種の人たちにアドバイスを求めるのも一手。
医師のクライアントが多い人であれば、思いがけないこと、見落としがちなことなどをわかりやすく教えてくれる可能性が高いといえます。
専門外のことはなるべく人に頼る
ホームページ制作は制作会社、行政に提出する書類作成は税理士、など、難しいことは基本的に専門家に頼り、自分は医療に集中するというスタイルをとれば、スタッフからも信頼されやすくなります。
ただし、この方法のネックとしては、専門家を雇うためにそれなりにお金がかかること。ホームページ制作も広告出稿も各種手続きもすべて、自分でやろうと思えばやれないことではないため、「お金をとるか時間をとるか」という側面があります。
自分でやるのが苦手で、失敗するリスクが高い場合は、専門家を頼ることを検討することをおすすめします。
採用時にスタッフを見極める
オープニングスタッフが辞めるのを防ぐためにもっとも大切なことはマッチングです。
自院の理想をきちんと理解して、理想の医療を提供するために一緒にがんばってくれるスタッフでなければ、長くともに働くことはできません。自院に合うスタッフを見極めるためにも、採用面接時には、志望動機や働き方の理想、看護師としてどんなふうに患者を支えていきたいかなどをしっかり聞き出しましょう。
特に志望動機に関しては、オープニングスタッフだとわかって面接にきているということは、「人間関係がこじれていないフラットな状態で切磋琢磨し合える」「昇給に関してもみんな同じところからのスタート」という意識もあるでしょう。
みんなが同じ状況であるなかで、どんなふうにチームワークを高めていきたいと思っているか、チームワークを高めるために自分には何ができると思うか? などの質問を投げかけてみてもいいでしょう。
もちろん、自院とのマッチング率を高めるために、まずは自院のことを相手によく知ってもらうことは大前提!
求職票にできるだけ詳しく条件を記載するだけでなく、ホームページにも、求める人材像や自院の経営理念などをしっかり記しておきましょう。
採用後は適宜コミュニケーションをとる
採用後は、スタッフがイヤな思いをすることなく働けているか、働いていて問題だと感じていることはないかなどを聞き出すために、適宜コミュニケーションをとることが大切です。同時に、問題があるときに言いやすいよう、普段から風通しのいい環境づくりを意識することも大切です。
スタッフに辞めてもらったほうがいい場合もある
オープニングスタッフの離職はなるべく防ぎたいとしても、クリニックの方針と合わないスタッフを無理に引き止めることは、クリニックにとってもマイナスでしかありません。
協調性がないスタッフがひとりいることで、ほかの有能なスタッフが辞めてしまう可能性も考えられるので、「問題のある人材の場合は、辞めてもらったほうがいい」ということは覚えておきましょう。
特徴
対象規模
オプション機能
提供形態
診療科目
この記事は、2024年6月時点の情報を元に作成しています。
執筆 CLIUS(クリアス )
クラウド型電子カルテCLIUS(クリアス)を2018年より提供。
機器連携、検体検査連携はクラウド型電子カルテでトップクラス。最小限のコスト(初期費用0円〜)で効率的なカルテ運用・診療の実現を目指している。
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