勤務医として働いていて、将来的に開業したいと考えているドクターは、「どんなスタッフと一緒に働きたいか?」をイメージすることも多いでしょう。
イメージする際には、勤務先の看護師を基準とすることがあるかもしれません。しかし、勤務医と開業医では必要な資質が異なるのと同様、看護師に関しても、病院勤務とクリニック勤務では必要な資質が異なります。
具体的にどのような違いがあるのかを解説していきます。
病院とクリニック(診療所)の違いは?
まずは、病院とクリニック(診療所)の違いをみていきます。
ベッドの数
「医療法」第1条の5第1項および2項には、病院とクリニックの違いについて、「20人以上の患者を入院させるための設備を有するものを『病院』といい、患者を入院させるための設備を有しない、または19人以下の患者を入院させるための設備を有するものを『診療所』という」と記されています。
「患者を入院させるための設備」とはすなわち入院用のベッドのことで、20床以上であれば「病院」、1床~19床であれば「有床診療所(有床クリニック)」、0床であれば「無床診療所(無床クリニック)」ということになります。
参照: 医療法 厚生労働省「医療施設の類型」
医師とスタッフの必要人数
医療法では、病院および療養病床を有するクリニックにおいて配置すべき人員の標準が、下記の通り示されています。たとえば、一般病棟の医師に関しては、入院患者16人に対して1人の医師が必要であるという意味です。
ちなみに、患者の傷病の程度や、医療従事者間の連携などによって、望ましい医療水準を確保することが可能な場合もあるため、「基準」ではなく「標準」と表記されていますが、標準数を満たしていない場合、医療法に反することとなります。
【医療施設別、病床区分別の人員配置標準について】
病床区分 | 職種 | ||||||||
医師 | 歯科医師 | 薬剤師 | 看護師および准看護師 | 看護補助者 | 栄養士 | 診療放射線技師、事務員その他従業員 | 理学療法士/作業療法士 | ||
一般病院 | 一般 | 16:1 | 16:1 | 70:1 | 3:1 | ― | 病床数100以上の病院に1人 | 適当数 | 適当数 |
療養 | 48:1 | 16:1 | 150:1 | 4:1 | 4:1 | ||||
外来 | 40:1(耳鼻咽喉科、眼科は80:) | 病院の実情に応じて必要と認められる数 | 取り扱い処方箋の数 75:1 | 30:1 | ― | ||||
特定機能病院 | 入院 | 歯科、矯正歯科、小児歯科、歯科口腔外科の患者を除くすべての入院患者 | 歯科、矯正歯科、小児歯科、歯科口腔外科の入院患者 | すべての入院患者 | すべての入院患者 | ― | 管理栄養士1人 | 適当数 | ― |
8:1 | 8:1 | 30:1 | 2:1 | ||||||
外来 | 20:1 | 病院の実情に応じて必要と認められる数 | 調剤数80:1 | 30:1 | |||||
療養病床を有する診療所 | 1人 | ― | ― | 4:1 | 4:1 | ― | 適当数(事務員その他の従業者) | ― |
クリニックの人員配置標準に関しては、上表のような定めはありませんが、最低でも医師が1人は必要です。また、看護師や事務員などのスタッフに関しては、ミニマム開業の場合、1人も雇わないケースも多いです。
紹介状なしの場合の医療費
これは、本題であるスタッフの選定基準とはあまり関係ないことですが、病院の場合、紹介状なしで受診すると、初診では5,000円、再診では2,500円が加算されます。軽症患者はなるべくクリニックで受診するよう促すことで、病院とクリニックの役割分担を推進させるためです。
役割
病院とクリニックとでどう役割が異なるかというと、前述の通り、軽症患者や慢性疾患の治療を主に担っているのがクリニックで、病院は、難病や大病の患者や、救急搬送されてくる患者の治療を主に担っています。
施設の数
これも、本題とはあまり関係ないことですが、病院とクリニックでは施設数に大きな違いがあります。厚生労働省が公表している「令和4(2022)年医療施設(動態)調査・病院報告の概況」によると、令和4年10月1日時点における病院数は8,156施設で、これに対してクリニック数は105,182施設となっています。
参照: 厚生労働省「令和4(2022)年医療施設(動態)調査・病院報告の概況」
病院とクリニックの違いからわかる、看護師に求められる資質の違いは?
病院とクリニックの主な違いは前述の通りですが、これらの違いに起因する看護師に求められる資質の違いとして考えらえることは以下の通りです。
業務の範囲
病院にはさまざまな職種の人が勤務していて、それぞれが担っている業務や役割が定まっています。一方、小規模なクリニックの場合、手が空いた人に掃除や買い物を頼まなければならないこともあります。
そのため、「これは看護師の仕事ではないのでは?」と逐一クレームを入れてくるタイプは、クリニックには向いていないといえます。
コミュニケーション力
小さな子どもや高齢の患者が多いクリニックや、地域密着型の小規模なクリニックでは、看護師や受付事務に笑顔で迎えてもらうことを楽しみにしている患者がしばしば来院します。
そのため、いくら看護師としての腕がよくても、「あの看護師さんはいつも不愛想で話しかけにくい……」と敬遠されてしまう可能性があります。
専門的な知識・スキル
病院勤務の場合、診療科や病棟によっては、看護師でも専門的な知識・スキルが必要な場合があります。たとえば、循環器科に配属された場合、業務の一環で心電図を読むことが求められます。
一方、クリニック勤務の場合は、専門的な知識やスキルは必ずしも必要ではありませんが、たとえば小児科クリニックの場合、小児病棟に勤務した経験がある看護師がいると、医師や他の看護師は頼もしく感じるでしょう。
夜勤やオンコールに対応できる家庭環境
子育て中などの家庭の事情によって、夜勤やオンコールへの対応が難しい看護師は、日勤のみのクリニックのほうが働きやすいと考える場合があります。
ただし、夜勤がある病院も、各自の事情を考慮してシフトを組み立てている場合もあります。
看護師に選ばれるクリニックになるには?
前述の通り、病院とクリニックでは、看護師に求められる資質に違いがありますが、クリニックに向いている看護師がみんな、病院ではなくクリニックを選ぶかというとそうではありません。
看護師が病院で働きたいと考える理由は人によって異なりますが、そのなかでも主な理由は2つで、1つは、病院のほうが給与平均が高いこと。
そしてもう1つは、専門性を磨いたり、さまざまな業種の人と関わったり、幅広い疾患の治療に携われたりと、やりがいが大きいということでしょう。
この2つの点で病院より優勢を目指すのはハードルが高いといえますが、クリニックにはクリニックならではの良さがあるので、そこを“売り”にできたら、いい人材を確保しやすいと考えられます。具体的には、以下のようなポイントが挙げられます。
地域に貢献できる
地域密着型の小規模なクリニックで働いていると、地域社会に貢献していることを実感しやすいといえます。訪問看護を導入しているクリニックなども同様です。
ワークライフバランスがとりやすい
夜勤がない無床のクリニックなどは、働く人にとっては、ワークライフバランスのとりやすさが大きな魅力となります。より幅広い求職者のニーズに応えるために、時短勤務に対応することも考慮すると、求職者にとってはさらに魅力的なクリニックに映るでしょう。
クリニックの理想をスタッフも一緒に追求していける
スタッフと院長が対等に話をできる関係であれば、よりよいクリニックになるためにはどうすればいいか? を話し合って、一緒に開拓していくこともできます。
たとえば、SNSが得意な若手の看護師であれば、クリニックのSNS運営を楽しみながら集患に寄与してくれることもあるでしょう。
理想の看護師像をくっきりと思い描くためにも、まずはクリニックの理想を固めていこう!
どんなスタッフと一緒に働きたいかを思い描くためにも、まずは「どんなクリニックを開業して、どんな患者にどんな医療を提供していきたいのか」を明確にすることがとても大切。
イメージがクリアになればなるほど、実現度が高くなるものなので、最初のうちははっきり思い浮かべることができなくても、イメージトレーニングを続けて精度を上げていってみてくださいね!
特徴
対象規模
オプション機能
提供形態
診療科目
この記事は、2024年6月時点の情報を元に作成しています。
執筆 CLIUS(クリアス )
クラウド型電子カルテCLIUS(クリアス)を2018年より提供。
機器連携、検体検査連携はクラウド型電子カルテでトップクラス。最小限のコスト(初期費用0円〜)で効率的なカルテ運用・診療の実現を目指している。
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