クリニックの看護師の採用コストは、工夫次第で安く抑えることもできます。しかし、よりよい人材を求めている場合や、スピーディーに採用したい場合など、結果を出すためにお金をかけたほうがいいこともあります。
では実際のところ、多くのクリニックはどのくらいの金額を投じているものなのでしょうか? 早速みていきましょう。
採用単価とは?
スタッフ採用にかかるコストを「採用コスト」といいますが、採用コストの総額のうち、ひとりあたりにかかる平均のコストを「採用単価」といい、その平均費用を「採用単価」といいます。
採用コスト総額÷採用人数=採用単価
採用コストには何が含まれる?
採用コストは、大きく「外部コスト」と「内部コスト」に分けられます。
外部コスト
外部コストとは、人材紹介会社の利用料や求人広告の出稿費など、外部に支払うお金です。広告の作成を代理店に依頼した場合は、その費用も含まれます。
内部コスト
内部コストとは、院内の採用業務にかかったお金です。人事部門を要している病院であれば、人事部門の人件費も内部コストになりますし、採用後の研修費用も内部コストに含まれます。
一般的な採用単価はどの程度?
株式会社リクルートの研究機関「就職みらい研究所」が公表している「就職白書 2020」によると、同年度の平均採用単価は、新卒採用=93.6万円、中途作用=103.3万円とされています。
看護師の採用単価は平均より高い傾向にある
上記の平均採用単価は業界問わずのものですが、看護師の採用単価は、一般的なものよりも高い傾向にあります。理由としては、医療業界は慢性的な人手不足状態で、特に看護師が足りていないため、よりよい人材を確保するために採用コストを惜しまない医療機関が多いことなどが挙げられます。
近年は訪問看護ステーションや有料老人ホーム、幼稚園、健診センターなど、病院やクリニック以外の職場の選択肢が増えていることも、人手不足が深刻化する要因となっているようです。
看護師の採用単価はどのくらい高くなっている?
たとえば医療系専門の人材紹介会社を利用して看護師を採用した場合、紹介手数料として、採用した看護師に支払う年収の20~30%程度を支払う必要があります。
仮に看護師の年収が400万円だとすると、80万円~120万円程度の手数料がかかるのです。
さらに、この金額は「外部コスト」のうちの一部または全体(※人材紹介会社一社のみの利用で求人広告などは出していない場合)に該当するため、採用単価はこの金額よりもっと高くなります。
看護師は離職率も高い傾向にある
他業界と比べて採用単価が高い傾向にあるため、採用した看護師には長く働いてもらわないと元が取れない可能性もありますが、残念ながら看護師の離職率は高いのが現実です。
公益社団法人日本看護協会が2021年度に調査した結果、正規雇用看護職員の離職率は11.6%、新卒看護職員の離職率は10.3%にものぼることがわかっています。そのため、看護師の採用活動を行う際には、離職を防ぐための策を講じることも大切です。
参照:公益社団法人日本看護協会「2022年病院看護実態調査」結果
採用単価を下げるためにできることは?
続いては、看護師の採用単価を下げるためにできることをみていきます。
「自院で働く魅力」が伝わる求人票・求人広告を作成する
求人を開始しても理想の人材がなかなか現れず、いつまでも募集し続けなければならないとなると、そのぶんコストがかさみます。そのため、まずは求人内容を見直して、自院で働くことの魅力がきちんと伝わる求人票、求人広告を作成することが大切です。
たとえば、下記の項目などは求職者にとって重要度が高く、他の募集先の条件と比較されやすいポイントでもあるため、近隣クリニックの条件をしっかりとチェックしておくことが大切です。
給与・賞与
基本給や夜勤手当などの内訳、昇給・賞与の回数なども、求職者にとっては大切なチェックポイントです
労働時間
2交代制、3交代制、日勤のみ、夜勤のみなどの働き方や、早番・遅番、オンコールの有無もチェックされています。
休日・休暇
求職者は、休日の日数だけでなく、希望休の取得や有休の消化率も知りたいと思っています。
福利厚生・待遇
ライフステージに応じた福利厚生があるのか、福利厚生を利用する際の自己負担額はどのくらいか、退職金制度は用意されているのかなどがよくチェックされています。
仕事内容
新しいことに積極的にチャレンジできる職場であるのかをチェックする人もいれば、効率よく働けるかを知るために、導入している電子カルテなどを知りたいと思っている人もいます。
応募資格
経験年数の条件や、未経験やブランクがあっても大丈夫かどうかは、求職者にとって大切なチェックポイントです。
それ以外に、働いているスタッフがどのようなことを魅力だと感じているのかなどを聞き出すことも有効です。
アピールできるポイントや課題が明確になればなるほど、求職者の目に留まりやすい求人票を作成することができます。
求人方法の見直し
求人媒体を活用しているものの、思ったような効果が出ていないなら、求人内容の見直しと同時に、求人媒体を見直すことも必要です。
「採用コストをかけたくないから、無料の求人媒体のみを利用したい」という事情がある場合もあるかもしれませんが、その場合は、複数の求人媒体を組み合わせたり、自院のホームページに求人のランディングページを作り、SNSで募集をかけたりといった方法を検討してもいいかもしれません。
ただし、ランディングページは自院でも作成できないことはありませんが、それなりに知識が必要ですし、制作にはある程度の時間がかかります。また、SNSで募集をかけても、フォロワー数が少なければ効果が見込めないこともあるので、「何ができるか」だけでなく、「自院にはどんな方法が向いているのか」を考えることも必要です。
また、求人内容についても求人方法についても、定期的に効果の検証を行うことを心がけましょう。
求職者と自院との相性を見極めてミスマッチを防ぐ
先に述べた通り、看護師の離職率は高い傾向にあるため、誰かが辞めるたびに新たに人材を補充しなければならないとなると、そのぶん採用コストがかさみます。それを防ぐためにもっとも大切なことは、入社前後のミスマッチを防ぐことです。
では、どうすればミスマッチを防げるのか?についてですが、まずは自院のコンセプトや求める人材をしっかりと求職者に伝えることです。
主にどんな患者をターゲットにして、どんな医療を提供していきたいのか、そのためにどんな人材に入職してほしいのかがきちんと伝わっていれば、求職者が入職後にギャップを感じる可能性が低くなります。
たとえば、地域住民の健康を守ることを第一に考えていて、ゆくゆくは訪問看護も提供していきたい思いがあるなら、その考えを記したうえで、訪問看護にも対応できる看護師を優先的に採用したいことをきちんと記すことなどが大切です。
加えて、面接時に自院のよい面しか見せなかった場合、入職後に「こんなはずじゃなかった」と思われる可能性もあるので、現状の課題だと感じていることや、自院に足りていない部分についても正直に見せていくことが望ましいといえます。
また、クリニック側が求職者を見極める目を持つことも大切です。履歴書や面接時の質疑応答を通して必要な情報を得ることはもちろん、適性検査なども実施すれば、相手の意外な一面が見えてくることもあります。
費用対効果もしっかり分析していこう!
採用単価を抑えることを考えるのはとても大切ですが、求人内容などを工夫しても、なかなか成果が出ない可能性もあります。
その場合は、どうすれば低コストをキープしながら採用につなげられるのかを考えるより、人材紹介のプロに頼んだほうがスムーズに採用できて、そのぶん医療に集中できるでしょう。
バランスを考えながら、自院にとってベストな方法をみつけてくださいね。
特徴
対象規模
オプション機能
提供形態
診療科目
この記事は、2024年6月時点の情報を元に作成しています。
執筆 CLIUS(クリアス )
クラウド型電子カルテCLIUS(クリアス)を2018年より提供。
機器連携、検体検査連携はクラウド型電子カルテでトップクラス。最小限のコスト(初期費用0円〜)で効率的なカルテ運用・診療の実現を目指している。
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