クリニックスタッフの産休・育休に関するルールはどう決める?復帰希望への対応は?法律をわかりやすく解説

クリニックを経営するうえでは、産休・育休についてのルールをきちんと決めておくことがとても大切です。

看護師や医療事務は女性の割合が高く、産休・育休の取得希望の申し出がある可能性も考慮しておかなければなりません。ルールを決めていない時点で申し出があった場合、どうすべきかすぐ決められずに困ってしまうことも考えられます。

そこで今回は、クリニックスタッフの産休・育休に関するルールや、そのほか事前に考えておきたいことを解説していきます。

目次
  1. 産休とは?
    1. 産休に関する労働基準法に違反した場合は?
    2. スタッフ側から「早めに職場復帰したい」と申し出があった場合も違反になる?
    3. 労働基準法第65条はパートやアルバイトにも適応となる?
  2. 育休とは?
    1. 子どもが1歳6か月になるまで育児休業を取得可能なケース
    2. 子どもが2歳になるまで育児休業の再延長が可能なケース
  3. 男性の育休取得条件は?
  4. クリニックがスタッフに産休・育休を取得させるメリットは?
    1. 給料を払う必要がない
    2. 社会保険が免除になる
    3. 助成金を利用できる
      1. 出生時両立支援コース
      2. 育児休業等支援コース
  5. クリニックがスタッフに産休・育休を取得させるデメリットは?
  6. スタッフの産休・育休に対応できる組織作りに注力することも大切

産休とは?

まずは、産休の定義と、取得に関する詳しい要件を確認していきます。

産休の正式名称は「産前産後休業」です。具体的には、働いている女性が出産前および出産後に取得できる休業期間のことで、期間については、労働基準法第65条によって下記のように定められています。

(産前産後)
第六十五条使用者は、六週間(多胎妊娠の場合にあつては、十四週間)以内に出産する予定の女性が休業を請求した場合においては、その者を就業させてはならない。
②使用者は、産後八週間を経過しない女性を就業させてはならない。ただし、産後六週間を経過した女性が請求した場合において、その者について医師が支障がないと認めた業務に就かせることは、差し支えない。
③使用者は、妊娠中の女性が請求した場合においては、他の軽易な業務に転換させなければならない。

参照: 労働基準法

つまり、通常は産前予定日から6週間以内の女性が請求した場合、双子かそれ以上だと14週間以内に請求した場合に休業させることが必要で、産後に関しては何人出産した場合も原則8週間ということになります。

産休に関する労働基準法に違反した場合は?

労働基準法第65条に違反した場合は、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金を科せられることになります。これは、労働基準法第119条において定められています。

参照: 労働基準法

スタッフ側から「早めに職場復帰したい」と申し出があった場合も違反になる?

先に解説した通り、労働基準法第65条の2においては、産後8週間を経過しない女性への就業許可は原則禁止で、産後6週間を経過していたら、医師が支障なしと認めた業務になら復帰可能とされています。

つまり、医師が支障なしと認めない業務への復帰は禁止ということですし、原則としては産後8週間を経過しないと就業許可を出してはいけないことになっているので注意が必要です。

労働基準法第65条はパートやアルバイトにも適応となる?

労働基準法第65条においては、「6週間以内に出産する予定の“女性”」と記されています。つまり、雇用懈怠に関わらず、すべての働く女性に適応される法律ということになります。

育休とは?

育休の正式名称は「育児休業」です。育児休業については、「育児・介護休業法」において決められています。

具体的には、子どもを出産した8週間後にあたる産後業終了日の翌日から、子どもが1歳の誕生日を迎える前日までの間において、申請した期間を休むことができます。

ただし、以下の場合は例外となります。

子どもが1歳6か月になるまで育児休業を取得可能なケース

  • 保育所に入所を希望しているが、入所できない(=待機児童である)
  • 子の養育を行っている配偶者で、1歳以降に子を養育する予定だった人が死亡、負傷、疾病などの事情により子を養育することが困難になった

子どもが2歳になるまで育児休業の再延長が可能なケース

  • 1歳6ヶ月に達する時点で労働者本人または配偶者が育児休業を取得している場合
  • 保育園に入園できないなど、1歳6ヶ月を超えても休業が特に必要と認められる場合に、労働者から申し出た場合

ただし、子どもが1歳になる日まで(延長する場合は1歳6か月、再延長する場合は2歳になる日まで)に雇用契約がなくなることが明らかでないことが取得条件です。

つまり、パートやアルバイトなどの雇用形態に関わらず取得することはできますが、日雇いの場合などは取得できないということになります。

参照: 育児休業、介護休業等育児または家族介護を行う労働者の福祉に関する法律

また、「育児・介護休業法」は令和6年5月に改正となり、令和7年4月1日から段階的に施行されることが決まっています。

改正の概要は以下の通りです。

子の年齢に応じた柔軟な働き方を実現するための措置の拡充

① 3歳以上の小学校就学前の子を養育する労働者に関して、事業主が職場のニーズを把握したうえで、柔軟な働き方を実現するための措置を講じ(※)、労働者が選択して利用できるようにすることを義務付ける。また、当該措置の個別の周知・意向確認を義務付ける

※ 始業時刻等の変更、テレワーク、短時間勤務、新たな休暇の付与、そのほか、働きながら子を養育しやすくするための措置のうち事業主が2つを選択

② 所定外労働の制限 (残業免除) の対象となる労働者の範囲を、小学校就学前の子 (現行は3歳になるまでの子)を養育する労働者に拡大する

③ 子の看護休暇を子の行事参加などの場合も取得可能とし、対象となる子の範囲を小学校3年生(現行は小学校就学前)まで拡大するとともに、勤続6か月未満の労働者を労使協定に基づき除外する仕組みを廃止する

④ 3歳になるまでの子を養育する労働者に関して、事業主が講ずる措置(努力義務)の内容に、テレワークを追加する

⑤ 妊娠・出産の申出時や子が3歳になる前に、労働者の仕事と育児の両立に関する個別の意向の聴取・配慮を事業主に義務付ける

参照: 厚生労働省「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律および次世代育成支援対策推進法の一部を改正する法律の概要(令和6年法律第42号、令和6年5月31日公布)」

改正内容の1行目にある通り、今回の改正では、“措置の拡充”に重きが置かれており、これまでの「育児・介護休業法」が対象としていた子どもの年齢より広い範囲の年齢の子を持つ親に適用となる法律へとアップデートされています。

男性の育休取得条件は?

男性は出産しないため産休は取得できませんが、育休については取得を認めなければなりません。取得条件に関しては女性の場合と同じです。

また、通常子どもの1歳の誕生日前日まで取得できる育休を、パパ・ママともに取得する場合に限って、子どもが1歳2か月になるまで延長できるとする「パパ・ママ育休プラス」という制度もあります。

産後8週間以内であれば、育休を最長4週間まで取得できる「産後パパ育休(出生時育児休業)」という制度もあります。

クリニックがスタッフに産休・育休を取得させるメリットは?

続いては、クリニックがスタッフに育休を取得させるメリットをみていきます。

給料を払う必要がない

産休中および育休中や、クリニックからスタッフに給料を支払う必要がありません。

代わりに、まず産休中に関しては、赤ちゃんひとりの出産につき、健康保険から42万円の「出産育児一時金」が支給されます。

支給対象者は、妊娠4か月以上で出産する健康保険加入者もしくは配偶者の健康保険の被扶養者です。加えて、出産日以前42日(双子以上の多胎の場合は98日)から出産翌日以降56日までの範囲に会社を休んだ健康保険加入者には、健康保険組合から標準報酬日額の3分の2に相当する金額が給付されます。

育休中に関しては、育休を取得する母親や父親が加入している雇用保険から、通常1年間の「育児休業給付金」が支給されます。ただし、支給されるためには以下の条件を満たしている必要があります。

  • 雇用保険に加入している
  • 1歳未満の子どもを育てるために育休を取得している
  • 育休前の2年間で、11日以上働いた日が12か月以上ある
  • 育休中、休業前の月給の8割以上の賃金が支払われていない
  • 育休中の勤務日数が月10日(10日を超える場合は80時間)以下
  • 育休終了後に職場復帰する予定である

社会保険が免除になる

産休・育休中のスタッフのぶんの社会保険料は支払う必要がありません。ただし、社会保険料免除の申請が必要です。

助成金を利用できる

厚生労働省・都道府県労働局が発信している「両立支援等助成金」のうち、「出生時両立支援コース」「育児休業等支援コース」を利用することができます。

出生時両立支援コース

男性労働者が育児休業を取得しやすい雇用環境整備や業務体制整備を行い、育児休業を取得した男性労働者が生じた事業主に支給されます。

育児休業等支援コース

「育休復帰支援プラン」を作成して、プランに沿って労働者の円滑な育児休業の取得・職場復帰に取り組み、育児休業を取得した労働者が生じた中小企業事業主に支給されます。

参照:

厚生労働省「2024(令和6)年度 両立支援等助成金のご案内」

※「育休復帰支援プラン」の策定マニュアルは以下をご参照ください。

厚生労働省「~円滑な育休取得から職場復帰に向けて~中小企業のための「育休復帰支援プラン」策定マニュアル

クリニックがスタッフに産休・育休を取得させるデメリットは?

クリニックがスタッフに産休・育休を取得させるデメリットとしては、育児休業給付金の申請手続きなどの手間が挙げられます。

また、スタッフの産休・育休に伴い、欠員を補てんするために採用活動を行わなくてはならなく場合もあるでしょう。もしくは、最短期間で復帰する前提で、その間、残っているスタッフで業務を回す方法を考えるという手もなくはありません。

スタッフの産休・育休に対応できる組織作りに注力することも大切

働いているスタッフから産休・育休の申し出があるのは、一度とは限りません。

そのため、スタッフの産休・育休に対応できる組織作りに最初から取り組んでおけば、2度目以降、余裕が生まれやすいでしょう。

また、申出があった際に慌てることなく対応できれば、スタッフに安心してもらえますし、結果的にクリニックの評価が上がり、職場復帰後にこれまで以上にクリニックに貢献してもらえる可能性もありますよ。

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執筆 CLIUS(クリアス )

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