
医師として理想のキャリアを築いていくうえで、転職を経験する人は多いでしょう。しかし、すべての転職希望者が納得のいく転職を叶えられるというわけではありません。満足できる結果を出すためにも、まずは転職市場の現状や動向に目を向けてみましょう。
医師の転職市場の現状は?
医療業界の人手不足は常態化しています。そのため、転職市場は売り手市場。医師の転職に関しても、好条件で採用される可能性は高いといえます。
ちなみに、厚生労働省が公表している、令和6年5月の職業別有効求人・求職・求人倍率リストにおいては、医師・歯科医師・獣医師・薬剤師の有効求人倍率は1.86倍です。また、令和5年時点の産業別入職率と離職率を確認すると、医療・福祉業界の入職率は13.6%、離職者数は13.3%であることから、せっかくスタッフを採用しても、そのぶん辞めていくスタッフもいる状況であることがわかります。
参照:厚生労働省「職業別 常用計 有効求人・求職・求人倍率(令和6年5月)」
診療科によって医師の転職市場に差はある?
圧倒的人手不足であることから、医師の転職市場は活性化していますが、どの診療科の医師も同じようにニーズが高いというわけではありません。なぜかというと、風邪のように万人がかかりやすい病気もあれば、多くの人が生涯一度もかかることのない病気もあるためです。そのため、多くの人がお世話になる可能性が高い内科などはニーズが高く、小児外科や放射線科などのマイナー科はニーズが低いという考え方は一理あります。
ただし、「その地域にその診療科の医師がどの程度存在しているか」によっても医師のニーズは変わってきます。
では、地域ごとの各診療科の医師のニーズは何をチェックすればわかるかというと、人口10万人あたりの診療科別医師数を記した「医師確保計画」などによってわかります。これは、厚生労働省が公表している「医師偏在指標について」などの資料で詳しく説明されていますが、要は人口10万人あたりの医師数が理想より少ない場合は「足りない」と評価しているもので、たとえば三重県の場合、県内の地域ごとに主要診療科の人口10万人当たりの医師数を算出しているため、県内のどの地域でどの診療科の医師がもっとも必要とされているのかがわかりやすいといえます。
参照:厚生労働省「医師偏在指標について」「人口10万人あたり診療科別医師数を記載した医師確保計画等」
エリアによって医師の転職市場に差はある?
医師の転職市場は、エリアによっても状況が異なります。基本的には東京などの都市部には多くの医療機関が存在するため、求職者からの人気が高い、労働条件のよい医療機関などは、医師不足に悩まされにくいと考えられます。その一方で、医師偏在指標が低い都道府県ではかなりの好条件で採用される可能性も高いといえます。
なお、医師偏在指標が高い都道府県、医師偏在指標が低い都道府県は以下の通りです。
【医師偏在指標が高い都道府県ベスト5】
【医師偏在指標が低い都道府県ワースト5】
都道府県別医師偏在指標(2020年時点)
全国 | 239.8 |
北海道 | 224.7 |
青森県 | 173.6 |
岩手県 | 1727.7 |
宮城県 | 234.9 |
秋田県 | 186.3 |
山形県 | 191.8 |
福島県 | 179.5 |
茨城県 | 180.3 |
栃木県 | 215.3 |
群馬県 | 210.9 |
埼玉県 | 177.1 |
千葉県 | 197.3 |
東京都 | 332.8 |
神奈川県 | 230.9 |
新潟県 | 172.7 |
富山県 | 220.9 |
石川県 | 272.2 |
福井県 | 233.7 |
山梨県 | 224.9 |
長野県 | 202.5 |
岐阜県 | 206.6 |
静岡県 | 194.5 |
愛知県 | 224.9 |
三重県 | 211.2 |
滋賀県 | 244.8 |
京都府 | 314.4 |
大阪府 | 275.2 |
兵庫県 | 244.4 |
奈良県 | 242.3 |
和歌山県 | 260.3 |
鳥取県 | 256 |
島根県 | 238.7 |
岡山県 | 283.2 |
広島県 | 241.4 |
山口県 | 216.2 |
徳島県 | 272.2 |
香川県 | 251.9 |
愛媛県 | 233.1 |
高知県 | 256.4 |
福岡県 | 300.1 |
佐賀県 | 259.7 |
長崎県 | 263.7 |
熊本県 | 255.5 |
大分県 | 242.8 |
宮崎県 | 210.4 |
鹿児島県 | 234.1 |
沖縄県 | 276 |
医師が転職市場で優位に立つためには何が必要?
続いては、医師が転職市場で優位に立つためにやるべきことを考えていきます。
まず、これは医師に限ったことではありませんが、求職者が転職市場で優位に立つためには、自分の市場価値を高めることが不可欠です。では、どうすれば自分の市場価値を高めることができるかというと、次のような方法が有効です。
それぞれ詳しくみていきましょう。
自分の強みや弱みを客観的に把握して、自分の売り込み方を考えていく
転職市場で優位に立つためにまずすべきことは、自分の強みや弱み、経験、スキルなどを徹底的に洗い出して、転職を成功させるための戦略を練ることです。自分に足りない部分や自分の弱みがみえてきたら、それを補うことに努め、自分の強みやアピールポイントを把握したら、志望先に興味を持ってもらえるような売り込み方を考えることができます。
市場の需要を見極める
どんなにすばらしいスキルや経験があっても、それがニーズに合致しなければ理想の転職を叶えられる可能性が低いといえます。そのため、どのようなエリア・どのような医療機関・どのような診療科がどのような医師を求めているのかを考え、ニーズに沿ったアピール方法を考えていくことがとても重要です。
転職に有利な資格を取得する
専門的技術や知識があれば、求人サイドから注目してもらえる確率が上がります。ただし、スキルに長けていることや知識が豊富であることを客観的に証明できなければ、自分の市場価値をうまく高めることはできません。では、どうすれば自分のスキルや知識を証明できるかというと、もっともシンプルな方法が資格を取得することです。それぞれの診療科目における専門的知識やスキルを証明するために、専門医の資格を取得したり、働き方の選択肢を増やすために産業医の資格を取得したりすることが賢明です。
マネジメント経験もアピールする
医療機関の規模や組織の在り方によっては、多職種をまとめて良好な関係性を構築できるリーダーシップを有した医師を積極的に採用したいと考えるものです。そのため、診療部長をはじめとする役職に就いたことがある場合や、院内委員会長などを務めた経験がある場合、そのことを積極的にアピールすることがおすすめです。
医師が転職を成功させる秘訣は?
医師の転職市場の現状や、転職市場で優位に立つために必要なことがわかったところで、医師が転職を成功させるための秘訣を確認していきましょう。医師が転職を成功させるためには、以下の2点を意識することが有効です。
それぞれ詳しくみていきましょう。
なるべく早めに転職活動をスタートさせる
転職活動で妥協しないためにも、理想の職場探しにはある程度時間をかけたいものです。もちろん、時間をかけたからといって必ずしも理想の職場がみつかるとは限りませんが、転職先について十分に情報を収集できないまま働き始めた場合、「こんなはずじゃなかった」と後悔することも考えられます。そのため、もし転職エージェントなどを活用するなら、まずは希望の条件を伝えるなどして、理想に近い医療機関を紹介してもらいながら、比較検討を重ねていくなどするといいでしょう。
求人数が多い時期を把握しておく
医師の求人は、一般企業とは異なり、年間を通じてあるものですが、時期によって求人数に差はあります。具体的には、常勤医師に関しては8~9月に採用試験を実施する医療機関が多く、非常勤医師に関しては1~3月に試験が実施される場合が多いようです。このことを把握したうえで転職活動のスケジュールを立てれば、成功する確率がより高くなるといえるでしょう。
転職活動で焦りは禁物
ここまで解説してきた通り、転職活動を成功させるためには、市場のニーズと自分の市場価値の両方をしっかり理解したうえで、よりよい職場に自分を売り込んでいくことが大切です。十分に時間をかけて戦略を練っていたとしても採用に至らないケースはありますが、理想通りに事が運ばなかった場合に、転職先を妥協したり、転職を諦めてしまったりするのはとてももったいないことです。うまくマッチングしなかった場合は、その医療機関より条件がいい職場への入職を決めてやるぞ! というくらいの気持ちで、決して焦ることなく、確実に結果を出すことを目指していきましょう!
特徴
対象規模
オプション機能
提供形態
診療科目
この記事は、2025年2月時点の情報を元に作成しています。