
複数の応募者の中から、一緒に働きたい看護師をどう見極めて採用していくのか、一緒に考えていきましょう。
クリニックの採用の一連の流れ
大まかなステップは以下の通りです。
- 経営者のビジョンを看護師へのメッセージにまとめる
- 一緒に仕事をしたい「看護師像」を明確化
- 「看護師像」を元に、採用したい看護師の要件を整理、求人票作成
- 面接で採否判断につながる質問を事前に考える
- 面接では準備した質問をする(その場で考えた質問もOK)
- 看護師の返答内容から、採用の可否を判断する
履歴書を見て、その場で質問を考える面接では、後から「あれも聞けば良かった」「これも聞き忘れた」となりかねません。事前準備をすることで、採用の可否を判断しやすい面接に改善できます。面接での会話を通じて、看護師から業務適正を見極めるヒントを受け取れるようにするのです。複数の面接官が同席する場合は、それぞれにメモを取って、面接後に話し合うと良いでしょう。
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以下に、参考になるよう具体例を紹介します。個々の職場に応じた内容にアレンジしてください。求人票、面接用の質問リストやチェックシートは、随時見直して、改善していくと良いでしょう。
面接の事前準備で実施すること
経営者のビジョンを看護師へのメッセージにまとめる
求人票に書く医療機関の説明文は、「一緒に働いていほしい看護師」に向けた経営者からのメッセージです。経営者がどんな医療やサービスを提供したいと考えているか、そのために看護師に求める役割を具体的に書きましょう。加えて、頑張ってくれる看護師にどんな待遇を提供できるか考えます。「メッセージ」が書けたら、他の人に読んでもらい、分かりやすく書けているか意見を聞いて修正すると良いでしょう。
- Ex.
- 開業するクリニックで提供したいと考えている医療やサービス
- その医療サービスによって、患者様にどのようなメリットがあるか
- 求める看護スキルや役割の具体例(外来介助、保健指導など)
- 退職金制度や休暇制度、病後児保育料補助などのサポート体制
採用したい「看護師像」の明確化
次に、一緒に働きたい「看護師像」を具体的にイメージします。職場に必要な看護スキルや経験を全て備えている看護師を採用するのか、基本的な看護スキルがあり、それ以外は教えれば習得できる看護師を採用したいのか、などを具体的にイメージします。求める看護と給与などの待遇は一致させましょう。
- Ex.
- 師長経験3年以上で組織運営を任せられる看護師
- 必要な看護スキルを備えている経験5-10年の看護師
- 基礎看護スキルのある経験2-3年の看護師
「看護師像」の要件を整理して、求人票にまとめる
求人票は、多くの看護師に見てもらう“最初の接点”です。設定した「看護師像」を求人票の項目に分解して表現し、「経営者のビジョンを看護師へのメッセージにまとめる」で考えた内容と合わせて作成します。選ばれる求人票にするために、ここは時間をかけて取り組むことをお勧めします。求める「看護師像」の難易度に応じた待遇が必要です。開業場所によって、採用のしやすさも違いがあります。立地やアクセス等、看護師にとってのメリットは忘れずにアピールしましょう。項目が沢山あり大変ですが、1つ1つしっかり考えて具体化しましょう。
- Ex.
- 必要な経験や看護スキル(整形外科・内視鏡介助などの専門領域、リーダー経験の有無など)
- 給与・手当・福利厚生(師長経験者の月給相場、交通費上限など)
- 勤務形態(フルタイム、パートタイム、シフトの有無、休日や休暇の制度)
- クリニックの立地やアクセスのメリット(駅から近い、商店街にある、ショッピングモール内など)
職場の雰囲気が伝わる施設やスタッフの写真・動画も掲載しましょう!
面接の質問リストや看護知識・スキルのチェックシートを作る
面接の時に、応募者に質問する内容をリスト化します。職場に必要な看護知識・スキル・経験等のチェックシートを作成します。チェックシートは、職場の必要度に応じて必須条件とベター要件に分けましょう。
- Ex.
- 整形外科の看護経験3年以上は必須要件→その場合、日勤の月給や昇給テーブルはどうするのか?
- 内視鏡介助経験やプリセプターの経験はベター要件、など
履歴書・職務経歴書の内容確認
履歴書と職務経歴書を事前にしっかり読んで、面接に臨みましょう。面接では応募者から、学歴や職務経歴について説明してもらいましょう。採用したい看護師像にマッチしているか、大枠で判断します。
- Ex.
- 丁寧に分かりやすく書いているか⇒コミュニケーション能力
- 誤字脱字、抜け漏れはないか⇒自分で仕事の見直しができるか
- 志望動機は説得力があるか⇒相手のニーズを読み取れるか
- 看護師以外に業務に関連する資格があるか⇒探求心、自ら学ぶ力
- 経験した診療科、組織内の役割、専門・認定看護師→看護の力量
面接中に実施すること
免許・資格の確認
応募者が持っている免許や資格が有効かどうか、更新漏れがないかを確認することも大切です。看護師免許は、保健師助産師看護師法に基づく免許証の原本確認とその写しを取得し、しっかり確認しましょう。有効な看護師免許かどうか、確実に確認したい場合は、厚生労働省に電話で問い合わせると口頭で確認してもらえます。
*資格証の氏名変更について
結婚等で氏名変更があった方で、旧姓の看護師証を提出される場合もあります。その方を採用する場合は、公的書類で旧姓を確認した上で、氏名変更手続き後の資格証を再提出してもらう必要があります。対応に迷う場合は、厚生労働省に相談してください。
仕事を辞める理由、新しい職場を選ぶ理由
ここはしっかり聞き取りましょう。特に応募の理由は重要で、採用判断につながります。自分の考えを元に説得力のある説明ができるか、何を求めてこの仕事を選んだか、必ず質問してください。
- Ex.
- 退職理由がネガティブ過ぎる方、ポジティブ過ぎる人は要注意
- 退職理由が「キャリアアップ」の場合、どのようなキャリアアップ、スキルアップを目指しているのか確認
- この職場を選んだ理由は最重要ポイント!
※前職場にリファレンスを取る場合は、リファレンスについて応募者に説明して、同意を得てから行いましょう。
看護スキルと看護の経験について
事前準備したチェックシートに沿って、必要な看護スキルを確認しましょう。加えて、以下のような看護の経験を質問してみるのも良いでしょう。
- Ex.
- 印象に残っている看護のエピソード
- 仕事で一番嬉しかったこと、その理由
- 一番辛かったこと、その理由、など
学ぶ意欲
新しい職場で、新しい仕事のやり方や必要な看護スキルを学ぶ意欲を確認しましょう。クリニックで必要な看護スキルを採用後に習得する必要がある看護師の面接では、習得の見込みを会話の中から判断する必要があります。
- Ex.
- これまでの職場で看護知識・技術不足の場合にどう学習・解決してきたか
- 転職後に不足する知識や技術がある場合、どう補っていきたいか
コミュニケーション能力とチームワーク評価
医療機関ではチーム医療が求められるため、スキルや経験以上に、職場の雰囲気や他のスタッフとの相性が非常に重要です。面接では、応募者がどのようなチームワークの経験をしてきたか、またどのようなコミュニケーションの工夫をしてきたかを具体的に質問してみましょう。下記のような質問から、協調性や柔軟性を知ることができます。
- Ex.
- 対応の難しい患者様とのやり取りや、実際に行った工夫は何か?
- 困っている同僚や患者様を見かけた時、どのようにサポートしてきたか
- チーム内で意見が合わないとき、どのように調整してきたか
ストレス耐性
ストレスを感じた時の自分を客観的に見ることができるか、言葉を選んで相手に分かりやすく説明できるか、セルフケアできるか、は大切なポイントです。
- Ex.
- 今までで一番ストレスを感じたのはどんなことか、どのように乗り越えたか
- ストレスを感じた時、自分の言動や感情にどう変化はあったか
- ストレスを解消するために、自分でどう対処してきたか?→気分転換の工夫や、苦手な人との心理的距離の取り方など
職場について調べてきたか?
求人票や求人施設のホームぺージの内容が頭に入っているなら期待が持てます。しかし、中には、ホームページに書いてあることをいくつも質問する人もいます。下調べをどの程度してきたかは、新しい仕事への意欲の表れと言えます。
- Ex.
- 当医療機関のホームページは見たか、隅々まで読んでいるか
- ホームページを見て気付いた点や、疑問に思うことはあるか
看護師からの質問を受ける
面接が一通り済んだら、看護師に質問はないか聞いてみましょう。質問の内容から、看護師が気にかけていることや、仕事への姿勢が読み取れます。
- Ex.
- 事前に準備してきた質問か、それとも面接中に生じた質問か
- 質問が具体的かどうか(職務内容、キャリアアップ、待遇など)
- クリニックの方針や業務をしっかり理解するための質問か
面接の中で、候補者に伝えるポイント
クリニックの運営体制と求める役割
面接の際には、クリニックの運営体制やスタッフ数、1日の患者数の目安などを詳細に説明して、応募者が具体的に働くイメージを持てるようにしましょう。
応募者側にも、想定される1日の流れや混雑のピーク時間帯を説明し、業務量や求める役割について納得してもらうことで、早期退職やミスマッチを防ぐことができます。
労務管理・福利厚生について
就業規則や雇用契約の内容を応募者にしっかり提示して、条件のすり合わせをすることも重要です。残業や休日出勤の有無、シフト制の必要性、オンコール対応がある場合は頻度や手当の有無など、具体的に提示しましょう。
また、社会保険や福利厚生(育児休暇、介護休暇、託児所補助など)がどのように整備されているかを伝えておくと、応募者の安心材料や職場のプラス評価となります。
看護師のキャリアアップとクリニックの方向性
今後、診療科の拡大や新規サービスを導入予定の場合は、面接の段階で看護師に共有しましょう。看護師が自分の経験や新しい資格取得などを活かせる展望があると、働く意欲も高まりやすくなります。
また、将来的にリーダーや師長を担える看護師を探している場合は、キャリアパスとしてどのように成長できるかを示すと効果的です。
試用期間中の目標設定とフィードバック
採用後の試用期間をどのように設けるか、その間の評価基準を明確にしておくとお互いのミスマッチを防げます。試用期間の間に何を達成すればよいか、具体的な目標を設定し、定期的にフィードバックを行うことを伝えましょう。業務開始から本採用までの育成ステップが整っていることをアピールできます。
面接の場所
応募者にとっては面接場所や面接官の印象も大切で、職場の選択に影響します。面接場所は、落ち着いて話ができるようプライバシーに配慮し、清潔な個室を準備しましょう。
オンライン面接の活用について
遠方からの応募や、医師・採用担当者のスケジュールが合わない場合など、オンライン面接を行うのも一つの方法です。事前に通信環境や面接ツールを確認し、画面越しでも応募者の表情やコミュニケーションの仕方を評価できるようにしましょう。
面接後に実施すること
採用後のフォロー体制について
採用して終わりではなく、採用後のフォロー体制を整備しておくことが重要です。具体的には、試用期間中に先輩スタッフがOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)を行い、定期的に面談を行うことで、不安や疑問点を早期に解消できる環境を整えましょう。
クリニックのルールや診療方針、新たな機器の操作方法などを学ぶ研修計画を作成し、新人看護師がスムーズに業務に慣れるようサポートすると、定着率が高まります。
また、評価基準や昇給・昇格のタイミングを明確にし、看護師のキャリア形成を支援する制度を整えることで、モチベーションアップにもつながります。
まとめ
求める看護師像に合致する人材を見極めるためには、丁寧な事前準備が大切です。求人票に必要な情報を整え、面接で使う質問リストやスキルチェックシートを用意し、応募者一人ひとりに向き合うことで、より正確な採用判断ができるようになります。採用後は、定期的なフィードバックや個別の教育プランを通じてフォロー体制を整えましょう。採用後の教育やキャリア支援に力を入れることで、クリニック全体のチームワークと質の向上につなげることができます。こうした取り組みを通じて、。診療所の運営が円滑に進むことを願っています。
特徴
対象規模
オプション機能
提供形態
診療科目
この記事は、2025年2月時点の情報を元に作成しています。
執筆 株式会社リカレントスタッフ 代表取締役 | 武田晶子
一般企業にて新事業の立ち上げや事業閉鎖(リストラ)を経験後、2006年に医療法人の事業計画を書いて設立に関わり役員に就任。18年間、医療法人の人事に携わるが、採用難から医療事務を学んで受付に座り、聖路加看護大学に学士編入し2013年に看護師・保健師の資格取得。2023年、東京都ナースプラザから復職支援研修を依頼されたことをきっかけに、2024年に看護師の転職と復職を支援する派遣・紹介会社を起業。これまでの経験を活かして、医療法人の運営に関する相談に乗る経営者支援、事務長支援も行う。
株式会社リカレントスタッフ
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