看護師の労働基準法違反を防ぐ!残業や夜勤の対策

医療現場を支える看護師の労働環境は、クリニック経営においても重要な課題です。労働基準法を守り、一緒に働く看護師や職員の方々に良い職場環境を提供したいですね。万が一、労働基準法に違反してしまうと、職員の方々から信頼を失いかねません。その結果、クリニックの評判を損ない、優秀な人材の確保を難しくすることにも繋がります。

本コラムでは、看護師の労働基準法違反の防止に焦点を当て、特に残業や夜勤に関する規定、そして労使協定や就業規則の重要性について詳しく解説します。

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目次
  1. 看護師にとって重要な労働基準法の基礎
  2. 看護師の労働時間規定
  3. 看護師の残業と時間外労働に関する法規
  4. 看護師の夜勤勤務についての規定
  5. 勤務間インターバル制度の義務化検討と導入対策
  6. 看護師の休暇と有給休暇の取得方法
  7. 労働基準法違反への対処法
  8. まとめ

看護師にとって重要な労働基準法の基礎

労働基準法は、労働者の権利を守り、健康で安全な労働環境を確保するための法律です。看護師も労働者の一人として、労働基準法の保護を受けています。

医療現場では、24時間体制での勤務や緊急時の対応など、労働時間管理が複雑になりがちです。そのため、クリニック経営者として労働基準法を正しく理解し、適切な労働条件を整備することが重要です。

労働基準法では、労働時間、休憩時間、休日、賃金など、労働者の基本的な権利を保障しています。特に、看護師の労働時間管理においては、以下の点に注意が必要です。

看護師と契約を締結する際は、労働条件通知書や雇用契約書の記載に不備がないよう注意しましょう。特に勤務時間、休日、残業代支払い条件、有給休暇などの明示不足が労働基準法違反となる場合があり、トラブルの原因になります。労働関係の文書は、相手に提示する前に社会保険労務士や弁護士に確認してもらうなど、十分な準備が必要です。

  • 労働時間: 原則として1日8時間、週40時間以内です(労働基準法第32条)。
  • 休憩時間: 労働時間が6時間を超える場合は45分以上、8時間を超える場合は1時間以上の休憩が必要です(労働基準法第34条)。
  • 休日: 少なくとも週に1回の休日を与える必要があります(労働基準法第35条)。
  • 時間外労働: 原則として禁止ですが、労使協定(「時間外労働・休日労働に関する協定」いわゆる「36(サブロク)協定」)を締結することで、一定の時間外労働をさせることができます(労働基準法第36条)。
  • 割増賃金: 時間外労働や休日労働に対しては、通常の賃金に一定の割合を上乗せした割増賃金を支払う必要があります(労働基準法第37条)。

医療機関は、患者数に応じて法定の看護師配置基準を満たしている必要があります。人員不足時は一時的な派遣看護師の活用や、短時間勤務者を含め柔軟なシフトを組むことで対応しましょう。人員不足による配置基準違反は行政指導や罰則の対象になるため、注意が必要です。
これらの基準を下回る労働条件で働かせることは違法であり、使用者には罰則が科せられます。看護師の人材確保が難しい中で、シフトを守るのは至難の業です。看護師が定着して長く働いていけるように配慮しましょう。

看護師の労働時間規定

看護師の労働時間管理においては、変形労働時間制の活用が一般的です。変形労働時間制とは、1ヶ月など、一定期間を平均して週40時間以内になるよう労働時間を設定できる制度です。

※常時10人未満の従業員数の場合など、クリニックでは週44時間の変形労働時間が認められる場合もあります。44時間の変形労働時間の適用を検討する場合は、就業規則や雇用契約書なども含めて、一定の条件を満たす必要があります。労働基準局や社会保険労務士と事前に確認し、必要な書類を整えてから実施してください。

(参考)11か月単位の変形労働時間制の採用方法 2 労使協定または就業規則などに定める事項|厚生労働省

変形労働時間制には、1ヶ月単位変形労働時間制、1年単位変形労働時間制、1週間単位変形労働時間制の3種類があります。1ヶ月単位と1年単位の変形労働時間制は、所定労働時間を超える時間外労働が発生した場合、割増賃金を支払う必要があります。

ただし、変形労働時間制を採用する場合でも、1日あたりの労働時間の上限は10時間まで、1週間の労働時間の上限は52時間までと定められています(労働基準法第32条の2)。

それぞれの制度のメリット・デメリットを理解し、病院の規模や診療科目、看護師の働き方などを考慮して、適切な制度を選択することが重要です。

また、オンコール待機時間は原則として労働時間には含まれませんが、拘束の程度や行動制限が強い場合、裁判所が労働時間と認定することがあります。オンコール待機の際は明確な運用ルールを策定し、就業規則や労働条件通知書に明記しておくことが重要です。

看護師の残業と時間外労働に関する法規

看護師に限らず、職員に残業をさせる場合、必ず労使協定(36協定)を締結し、労働基準監督署に届け出る必要があります。36協定では、時間外労働の上限時間、割増賃金率などを明確に定める必要があります。

時間外労働の上限時間は、労働基準法で厳格に定められています。原則として、1ヶ月あたり45時間、1年間で360時間までです。ただし、特別な事情がある場合、労使協定で定めることで、1ヶ月あたり100時間未満(複数月平均80時間以内)まで延長することができます。

また、時間外労働に対しては、25%以上の割増賃金を支払う必要があります。深夜(午後10時から午前5時まで)の時間外労働に対しては50%以上の割増賃金が必要です。

勤務記録が不適切だと未払い残業代請求につながるリスクがあります。クリニックでは、電子カルテ連携型の勤怠管理システムを導入するなど、残業時間や休憩時間を正確に記録する仕組みを整えましょう。

(参考)時間外労働の上限規制 わかりやすい解説|厚生労働省
(参考)36協定で定める時間外労働及び休日労働 について留意すべき事項に関する指針 (労働基準法|厚生労働省

(参考)月60時間を超える時間外労働の 割増賃金率が引き上げられます|厚生労働省

看護師の夜勤勤務についての規定

夜勤は、看護師の心身に大きな負担をかけるため、労働基準法では夜勤回数や夜勤明けの休息時間について規定があります。

日本看護協会のガイドラインでは、16時間夜勤(2交代)の休憩時間は2時間以上の休憩・仮眠が推奨されています。3交代の場合は勤務時間は8時間なので、休憩時間は1時間となります。

夜勤に従事する看護師に対しては、健康診断の実施、健康相談窓口の設置など、健康管理を徹底する必要があります。

勤務間インターバル制度の義務化検討と導入対策

厚生労働省は勤務間インターバル制度(勤務終了後から次の勤務開始までに一定時間の休息を設ける制度)の義務化を検討しており、将来的に中小規模の医療機関でも導入が必須となる可能性があります。夜勤がある職場では、11時間以上のインターバル設定を推奨し、勤務スケジュールや就業規則への明記を早期に進めておく必要があります。

看護師の休暇と有給休暇の取得方法

看護師も、他の労働者と同様に年次有給休暇を取得する権利があります。年次有給休暇は6か月以上継続勤務し、出勤率が全労働日の8割以上の場合に10日間付与されます。その1年後に11日、2年後に12日、3年後に14日、4年後に16日、5年後に18日、6年後に20日、以降毎年20日間付与されます。

クリニックは、看護師が有給休暇を取得しやすい環境を整え、計画的な休暇取得を促進する必要があります。有給休暇の取得を促進することは、看護師のワークライフバランスを改善し、離職防止にも繋がります。

また、看護師には、産前産後休業、育児休業、介護休業などの特別休暇制度も適用されます。これらの制度を適切に運用することで、看護師が安心して働き続けられる環境を整備することができます。

(参考)年次有給休暇の付与日数は法律で決まっています|厚生労働省 年次有給休暇パンフレット

労働基準法違反への対処法

労働基準法に違反した場合、病院は是正勧告や罰則の対象となる可能性があります。

労働基準監督署からの是正勧告を受けた場合は、速やかに改善策を講じる必要があります。また、悪質な違反の場合は、罰金刑や懲役刑が科せられることもあります。

労働基準法違反を未然に防ぐためには、以下の取り組みが重要です。

  • 労務管理体制の整備
  • 労働時間管理の徹底
  • 就業規則の整備・周知
  • 従業員への教育
  • 定期的な内部監査の実施
  • 相談窓口の設置

パワハラ防止法により、医療機関にもパワハラ・ハラスメント防止措置が義務付けられています。経営者は防止方針の策定、相談窓口の設置、職員への周知を行い、適切な対応を図ることが求められます。
看護師の長時間残業や過重労働が原因で精神疾患や過労死等が起きると、労災認定のリスクが生じます。経営者は労働時間管理の徹底だけでなく、職員の健康状態把握や定期面談を実施し、リスクを予防する責任があります。
看護師の勤務状況によっては定期面談まで待たずに、必要に応じて臨時の面談を設けることをお勧めします。労務上の違和感や周囲との認識のズレがあると感じた場合は、早めに話し合うことで問題を小さくできる場合があります。

まとめ

看護師の労働基準法違反を防ぐためには、病院経営者として労働基準法を理解し、適切な労働時間管理、休暇管理を行うことが不可欠です。労使協定、就業規則、労働条件通知書の内容を定期的に見直し、法令遵守を徹底しましょう。

また、単に法令を遵守するだけでなく、看護師が働きがいを感じ、長く活躍できるような職場環境づくりを目指しましょう。そのためには、看護師の意見を積極的に聞き取り、職場環境の改善に努めることが重要です。

    その他

  • 労働基準法は改正されることがありますので、常に最新の情報を確認するようにしましょう。
  • 労使協定、就業規則、労働条件通知書の内容を随時確認し、必要に応じて見直しましょう。
  • 看護師等の意見を参考に、職場環境の改善に努めましょう。
  • 労働基準監督署や弁護士、社会保険労務士など、専門家に相談することも有効です。
  • 厚生労働省のホームページや、労働問題に関する書籍などを参考に、より深く労働基準法を理解しましょう。

(参考)看護管理者のための労働基準法のポイント:厚生労働省 都道府県労働局 労働基準監督署
(参考)労働基準法 e-Gov法令検索-電子政府の総合窓口

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武田晶子

執筆 株式会社リカレントスタッフ 代表取締役 | 武田晶子

一般企業にて新事業の立ち上げや事業閉鎖(リストラ)を経験後、2006年に医療法人の事業計画を書いて設立に関わり役員に就任。18年間、医療法人の人事に携わるが、採用難から医療事務を学んで受付に座り、聖路加看護大学に学士編入し2013年に看護師・保健師の資格取得。2023年、東京都ナースプラザから復職支援研修を依頼されたことをきっかけに、2024年に看護師の転職と復職を支援する派遣・紹介会社を起業。これまでの経験を活かして、医療法人の運営に関する相談に乗る経営者支援、事務長支援も行う。
株式会社リカレントスタッフ


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