
看護師資格を取得したら、病院やクリニックで看護師として働くことはもちろんできますが、それ以外にも活躍できる職場はいくつかあります。
しかも、医療機関と比べてワークライフバランスをとりやすい職場も多いので、ライフステージが変化しても自分らしく働けるよう、転職先を探している人に向いているかもしれません。
そこで今回は、看護師資格や看護師としての経験を活かして働ける職場について詳しく解説していきます。
看護師が有している資格、看護師の種類とは?
看護師資格を活かして働ける職場について解説する前に、看護師が有している資格について今一度確認します。
まず、「看護師」とひとことで言っても、必要な資格によって4種類に分けられます。具体的には、「正看護師」「准看護師」「助産師」「保健師」の4種類です。
看護師の種類 | 必要な免許 | 受験資格を得るには? |
正看護師 | 看護師免許(国家資格) | 高校卒業後、3年生の看護学校や大学などで学んで受験資格を得る |
准看護師 | 准看護師免許 | 中学卒業後、養成学校や高等学校の衛生看護科で学んで受験資格を得る |
助産師 | 看護師免許(国家資格)助産師免許(国家資格) | 看護師免許取得後、助産師過程を修了するか、厚生労働大臣が指定した助産師養成所を卒業する※性別が女性であることも受験資格とされています |
保健師 | 看護師免許(国家資格)保健師免許(国家資格) | 看護師免許取得後、保健師養成課程を修了する。または、大学で看護師、保健師それぞれの受験に必要な単位をとってW受験する |
正看護師として働くためには、厚生労働大臣が発行する「看護師免許」を取得する必要があります。なお、看護師免許は国家資格となります。一方、准看護師として働くためには、都道府県知事が発行する「准看護師免許」を取得する必要があります。こちらは国家資格ではありません。
続いて、助産師として働くためには、「看護師免許」と「助産師免許」の2つの国家資格を取得する必要があります。なお、助産師試験の受験資格は女性のみにあるとされています。
助産師同様、保健師として働くためには、「看護師免許」と「保健師免許」の2つの国家資格を取得する必要があります。
看護師の資格は「一生モノ」
前述の「看護師免許」「准看護師免許」「助産師免許」「保健師免許」は、一度取得すると永続的に有効です。また、更新の必要もありません。ただし、結婚や離婚によって姓名に変更が生じた場合と、本籍地の都道府県に変更が生じた場合の2つのケースに関しては更新が必要です。
更新手続きは管轄の保健所で行います。
また、看護師免許の原本を紛失した場合には、保健所・保健福祉センターにて更新と同時に再発行の手続きを行えます。
看護師の資格や経験を活かせる、病院・クリニック以外の職場は?
続いては、「看護師免許」「准看護師免許」「助産師免許」「保健師免許」の資格や経験を活かせる、病院・クリニック以外の職場について解説していきます。
- 訪問看護ステーション
- 介護老人保健施設をはじめとする介護施設・高齢者向け施設
- 保健所
- 美容クリニック
- 保育園
- 医療機器メーカー
- 一般企業
- 治験支援を行う機関
- 検診・健診センター、献血ルーム
- 助産所
- 産後ケアセンター
- テーマパーク
- ホテル
- フリーランス
それぞれどんな働き方ができるのか解説していきます。
訪問看護ステーション
看護師免許または准看護師免許を有していれば、訪問看護ステーションで働けます。訪問看護ステーションは、病院やクリニックなどとは異なり、基本的に看護師1人で利用者宅を訪問して看護することになるので、職場の人間関係に悩んで転職を検討している看護師などにもおすすめです。
ただし、准看護師に関しては、24時間体制のオンコールには対応できません。
介護老人保健施設をはじめとする介護施設・高齢者向け施設
看護師免許または准看護師免許があれば、介護保険施設や介護保険サービスの事業所で働けます。介護分野の施設や事業所での仕事に関しては、正看護師と准看護師で大きな違いはなく、いずれの場合も「看護職員」として働くことになります。
保健所
看護師免許、准看護師免許、保健師免許のいずれか1つ以上があれば、保健所で働けます。ただし、保健師免許を有していない場合は、看護師として保健所に勤めることはできても、保健所で保健師としての仕事はできません。
保健所で看護師として働く場合、利用者の健康管理や疾病予防、健康相談、健康診断や医師の診療サポートなどに携わります。医療機関勤務とは異なり、残業や夜勤なしで土日祝日休みなので、ライフワークバランスを保ちやすいといえるでしょう。
なお、助産師資格を有している場合は必然的に看護師免許も有しているため、助産師も保健所で働けます。
美容クリニック
看護師免許または准看護師免許を有していれば、美容クリニックで働けます。ただし、クリニックによっては准看護師不可の場合もあるので、事前の確認が必要です。美容クリニックでの看護師の仕事内容は、患者のカウンセリングや注射、専用機器での施術、患者のアフターケアおよび電話受付、予約管理などです。
一般的な医療機関と異なり、ケガや病気の治療に訪れる患者はいないため、急患対応の残業などが発生することがありません。
保育園
看護師免許または准看護師免許または保育士免許があれば保育園で働けます。2015年3月31日までは、准看護師は保育園では働けませんでしたが、同年4月1日より、看護師、准看護師、保健師であれば配置が認められることとなりました。
ただし、保育園看護師(保健師含む)の配置は公立保育園においては義務化されていないため、すべての保育園で働ける可能性があるわけではありません。
なお、保育園看護師は業務において医療行為を行うことがほとんどなく、子どもの健康管理が主な仕事となります。夜勤や残業はほとんどないため、ワークライフバランスを保ちながら働きたい人に向いています。
医療機器メーカー
医療機器メーカーに勤めて、臨床的・専門的な視点から自社の営業担当者の販売活動をサポートする「クリニカルスペシャリスト(別名:フィールドナース、クリニカルエデュケーター)」は、看護師としての経験を活かせる仕事です。
看護師免許または准看護師免許の保有は必須条件ではありませんが、業務を遂行するうえでは豊富な医療知識が求められるため、資格保持者は優遇される傾向にあります。また、メーカーによっては看護師免許の保有を応募の必須条件としている場合もあります。
一般企業
看護師免許または保健師免許があれば、産業看護師・産業保健看護師として、一般企業の医務室・健康管理室で働けます。ただし、保健師免許保有者のほうが優遇される傾向にあるため、将来的に一般企業の医務室や健康管理室に勤めたいという願望があるなら、早い段階で保健師免許を取得するといいかもしれません。
治験支援を行う機関
治験の準備や被験者のケア、医師のサポートなどを行う「治験コーディネーター(CRC)」は、准看護師または正看護師として働いた経験のある人におすすめの仕事です。
看護師資格または准看護師資格の保有が必須ではありませんが、医学に関する知識が不可欠な仕事であるため、資格があると業務への理解が深まり、仕事のやりがいも実感しやすいでしょう。
検診・健診センター、献血ルーム
検診・健診センターや献血ルームは、看護師免許もしくは准看護師免許があれば働けます。これらの職場における業務は、いずれもルーティンワークが中心となるため、日々の仕事を淡々とこなし続けられる人には向いているといえます。医療機関とは異なり緊急対応が少なく、残業もほとんどありません。
助産所
助産所とは、医療介入の少ない自然なお産を望む妊産婦や利用する施設で、助産師が開設して管理しています。助産所で働くためには、助産師免許が必要です。
助産師免許を取得した後、病院やクリニックで経験を積んだ後、自身の助産所・助産院を開設したいと考えて、早い段階から準備を進めている助産師も多いかもしれません。
産後ケアセンター
産後ケアセンターや、産後の母親と赤ちゃんのための宿泊型ケア施設です。主な業務は出産後の育児支援で、看護師や助産師が母子のサポートを担当しているため、看護師免許または助産師免許があれば働けます。
テーマパーク
テーマパークの救護室で、ケガをした人の応急手当や、具合が悪くなった人の看護を行う看護師を「ナースキャスト」といいます。
ナースキャストとして働くことに憧れのある看護師は多いですが、もっとも人気が高いのが、ディズニーリゾートなどで働く、通称・ディズニー看護師です。ディズニーリゾートのナースキャストの応募要項は「正看護師免許を保有していること」であるため、准看護師免許では応募できません。
ホテル
看護師または准看護師の免許があればホテルの医務室でも働けます。ただし、正社員での募集は少ないため、非常勤やアルバイトとしてしか働けない可能性があります。
なかには、宿泊客が増える夏休みや春休み、年末年始のみ求人を募集しているホテルもあります。
フリーランス
特定の企業や組織、団体などに所属せず、案件ごとに施設や企業などと業務委託契約を結んで働く、フリーランス看護師という生き方もあります。
フリーランス看護師の働き先はさまざまで、前述した介護施設や一般企業などで週に何日・月に何日などの契約で働きつつ、空いている日にイベントナースなどとして稼いだり、フィットネスクラブなどの利用者の健康管理を担当したりと、さまざまなことにチャレンジできます。また、ライター業や講師業を請け負っているフリーランス看護師も多いようです。
フリーランス看護師にとっては、資格の有無より、「自分で自分を売り込んで仕事を取って来られるか」のほうが重要です。
どんな仕事をとってくるかも自分次第で、その仕事にどんな資格が必要であるかがまちまちであるため、正看護師免許がなければならないということはなく、准看護師免許のみでもフリーランスとして成功する可能性は考えられます。
看護師の資格にプラスして保有しておくと転職に有利な資格はある?
続いては、「看護師免許」「准看護師免許」「助産師免許」「保健師免許」の4種類の資格のうち1つ以上の資格に、プラスで保有しておくと転職に有利な資格について解説します。
看護師が、看護師資格に加えて、別途取得しておくと転職に有利な資格としては、主に以下が考えられます。
- 認定看護師
- 専門看護師
- ケアマネジャー(介護支援専門員)
- 公認心理師
- 救急救命士
- 歯科衛生士
それぞれどんな資格なのか簡単に解説していきます。
認定看護師
認定看護師とは、特定の看護分野において熟練した看護技術と知識を有することが、日本看護協会から認定されている看護師のことです。
「特定の看護分野」は19分野にわけられています。
- 救急看護をはじめとする「クリティカルケア」
- がん性疼痛看護をはじめとする「緩和ケア」
- 「がん薬物療法看護」
- 「在宅ケア」
- 「生殖看護」
- 「腎不全看護
- 「小児プライマリケア」
などの分野があり、そのなかから自分が極めたい分野で資格を取得するといいでしょう。
認定看護師の資格があると、勤務先によっては資格手当がつくため、給与や待遇がよくなる可能性が高いので、就職に有利であるといえます。
専門看護師
専門看護師とは、特定の看護分野における高度な知識と技術を持ち合わせており、その分野での看護実践能力に長けている看護師のことです。「特定の看護分野」は14分野にわけられています。たとえば、「がん看護」「精神看護」「地域看護」「老人看護」「慢性疾患看護」「感染症看護」などが挙げられます。
専門看護師の資格がある場合も、認定看護師同様、勤務先によっては資格手当がつきます。また、地域医療や教育機関などより広い領域で専門性を活かした活動ができるため、働く環境や役割の選択肢が広がります。
ケアマネジャー(介護支援専門員)
ケアマネジャー(介護支援専門員)は、介護保険法によって定められた専門職で、要介護者や要支援者が必要とするサービスを受けられるよう、ケアプランの作成や、市町村・サービス事業者・施設などとの連絡調整を行います。
看護師がケアマネジャーの資格を取得するためには、5年以上の実務経験を積んだうえで、介護支援専門員実務研修受験試験に合格することが必要なので、まずは看護師として鍛錬する必要があります。
ただ、資格を取得してケアマネジャーとして働き始めると、医療現場で長く働いてきた経験があるがために医師との連携がスムーズにいきやすく、転職市場での市場価値が上がることが期待されます。
公認心理師
公認心理師は、2017年に国家資格として新設された、心理職唯一の資格です。心の問題を抱えた人を、心理学の知識と技術によってサポートする専門家であることを認定する資格で、臨床心理士と似ているように思えますが、臨床心理士は国家資格ではなく民間資格です。
公認心理師の受験資格を得るためには、原則としては、心理学に関する大学や大学院などで学ぶ必要がありますが、看護師として5年以上の実務経験がある場合などは、これが免除となる可能性があります。
また、資格を取得すると給与や賞与がアップする可能性があるほか、専門知識を有した看護師として書籍やコラムを手掛けるチャンスなどもつかめるかもしれません。
救急救命士
救急救命士とは、緊急度の高い患者が乗せられた救急車などに同乗して、救急車が医療機関に到着するまでの間に救命処置を行う専門家のことです。看護師とは異なり、医師の指導のもと、心肺停止や呼吸停止状態の重篤患者に対して、一部の特定行為を行えます。
看護師資格と救急救命士の資格のダブルライセンス保持者は、救急救命処置が必要な現場で活躍できる可能性が非常に高いといえます。
歯科衛生士
看護師と歯科衛生士のダブルライセンスを目指す人は多くはないかもしれません。しかし、総合病院には、口腔外科を有している病院も多く、ダブルライセンスを保有していれば、看護師としても歯科衛生士としても働けるため、業務の幅が広がります。
なお、歯科衛生士として働く場合、夜勤がないため、不規則なシフトに悩まされないのが大きなメリットです。
ブランクからの再就職でも、看護師資格があればうまくいきやすい?
続いては、看護師のブランクからの再就職について考えていきます。
まず、もともと医療機関で働いていた看護師が、出産や育児、もしくは介護などを経て医療機関に再就職する場合、本人が希望するなら、ブランク前と同じような条件で働くことも可能であると考えられます。
一方、出産や育児、もしくは介護などによるブランクではなく、病院以外の職場への勤務を経て医療機関に再就職する場合、職種によっては、採用担当者から「看護師のキャリアが一時中断されていた」とみなされて、以前よりよい条件での採用には至らない可能性があります。
そのため、医療機関以外への就職を経て、病院・クリニック看護師に復帰したい場合は、志望動機を工夫するなどして、志望先にとって有益な人材となり得ることをアピールするよう心掛けることをおすすめします。
医療機関以外への勤務を経て医療機関に復帰する看護師は少なくない
なお、事実として、医療機関以外への勤務を経て医療機関に復帰を希望する看護師は少なくありません。理由としては、「予想以上に収入が減った」「仕事にやりがいを感じられなかった」「人間関係がうまくいかなかった」「他の業種を経験したことで、看護師の仕事の魅力に気づいた」などが考えられます。
そのため、看護師の資格を活かして働ける場所は医療機関以外にもいくつもあるとはいえ、実際に臨床の現場を離れるかどうかについては、じっくり考えてから答えを出すことが賢明であるといえます。
看護師資格を活かした仕事は副業でも経験できる
看護師の資格を活かして転職するかどうか迷っているなら、副業で臨床以外の現場を経験してみて考えるのも一手です。『株式会社Donuts』が独自にとったアンケートでは、次のような副業を経験したことがあるという看護師がいました。
医療系ライター・ブロガー
医療系ライターの仕事なら出勤する必要がなく、空き時間を利用して執筆できるため、平日の仕事終わりの時間や休日に稼ぐことが可能です。アフィリエイトで稼ぐブロガーも、医療系の記事が書ける医療従事者であれば、特定のニーズに対応できるでしょう。
イベントナース
イベントナースの仕事は単発で請けることもできるため、まずは登録だけでも済ませておいて、タイミングよく空いている日に募集があれば挙手してみるのもいいかもしれません。
訪問看護
訪問看護の仕事も、登録しておいて空いた日に請けているという看護師は多いようです。訪問看護ステーションへの転職を検討しているなら、一度は副業として経験してみることをおすすめします。
看護師の資格があれば可能性が大きく広がる
ここまで解説してきた通り、「看護師免許」「准看護師免許」「助産師免許」「保健師免許」があるとチャレンジできることはとてもたくさんあります。プラスアルファで資格をとればさらに選択肢が増えるので、資格を武器にどんどんキャリアアップしていきたい人は、やりがいを持って仕事や勉強に励めるでしょう。
ただし、資格の有無と仕事の充実度は比例するというわけではないので、新しい資格を取得することにとらわれることなく、自分が本当にやりたい仕事はなんなのか、キャリアにおいて大切にしたいことはなんなのかをしっかり考えて、進むべき道を選択していけるといいですね。
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診療科目
この記事は、2025年4月時点の情報を元に作成しています。
執筆 CLIUS(クリアス )
クラウド型電子カルテCLIUS(クリアス)を2018年より提供。
機器連携、検体検査連携はクラウド型電子カルテでトップクラス。最小限のコスト(初期費用0円〜)で効率的なカルテ運用・診療の実現を目指している。
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