
待ち時間に対する不満は、患者が医療機関に対して抱く不満のなかでも上位にランクインしています。そのため、“患者から選ばれる病院・クリニック”を目指すためには、待ち時間の発生を極力抑えることや、患者に待ち時間を快適に過ごしてもらうための工夫が不可欠です。そこで今回は、患者の待ち時間に対する不満を防ぐために、医療機関がとるべき対策を中心に解説していきます。
- 待ち時間に不満のある患者はどのくらいいる?
- 医療機関で待ち時間が長くなる理由は?
- 患者が苛立ちを感じる待ち時間はどのくらい?
- 【SNSのネガティブ投稿】医療機関で待ち時間が発生することを患者はどう思っている?
- 「なぜ待つのか」を伝え、患者の納得感を高めるコミュニケーション戦略とは?
- 医療機関が患者の待ち時間を減らすために導入すべきものは?
- 患者の待ち時間対策への投資においては、費用対効果を見極めることが大切
- 患者に待ち時間を快適に過ごしてもらうためにできることは?
- 患者から待ち時間に対するクレームが入った場合の対処法は?
- 対策を講じてもクレーム数が減らない場合は運用全体を見直そう
待ち時間に不満のある患者はどのくらいいる?
『日本医師会総合政策研究機構(日医総研)』が2023年11月に実施した「第8回 日本の医療に関する意識調査」における「受けた医療の満足度」アンケートにおいて、満足していない患者がもっとも多い項目は「待ち時間」という結果が出ています。
具体的には、「医療を受けた医療機関での待ち時間に満足しているか?」の問いに対して、「あまり満足していない」もしくは「満足していない」と回答した人の割合は36.8%を占めています。
なお、待ち時間の次に不満が大きい項目は「治療費」で17.6%、その次が「診察日・診療時間」で16.1%となっています。
つまり、患者満足度を上げるためにまず対策を講じるべきは、待ち時間に対する不満を回避するための対策であるといえます。
医療機関で待ち時間が長くなる理由は?
続いては、医療機関における待ち時間が長くなる理由を確認していきましょう。病院やクリニックでの待ち時間が長くなる主な理由としては以下が考えられます。
【キャパに対して患者数が多いケース】
【体制に問題があるケース】
【医療DXに対応できていないケース】
【その他】
それぞれ詳しくみていきましょう。
患者数が多い
「医師の腕がいい」と評判でることなどから患者数が多い医療機関では、必然的に待ち時間が長くなりがちです。仮に1人あたりの診察時間が5分だとして、患者が10人待っていれば10人目の患者が診察を受けられるのは50分後、20人待っていれば20人目の患者が診察を受けられるのは1時間40分後ということになります。
そのエリアに医療機関が少ない
「標準化医師数÷(地域の人口÷10万×地域の標準化受療率)」によって算出される「医師偏在指標」が少ないエリアでは、地域住民に対して医師の数が不足していることから、患者が特定の医療機関に集中するケースがあるでしょう。
参照:厚生労働省「医師確保計画を通じた医師偏在対策について 医師偏在指標」
患者1人あたりの診察時間が長い
一人ひとりの患者に丁寧に対応する医療機関は、「きちんと話を聴いてもらえる」「細かく検査をしてくれる」などといった観点での評価は高い一方、「なかなか自分の順番が回ってこない」と患者からイライラされてしまうことも。その結果、かえって患者満足度が低くなる可能性もあり得ます。
スタッフ数が足りていない、スタッフのスキルが不足している
医療業界は根本的に人手不足といわれていますが、それでも各医療機関はなんとか自院を回しています。しかし、スタッフの急な離職などによってさらに人手が足りなくなると、受付から会計までスムーズに流せなくなる場合もあるでしょう。また、新人教育がうまくいっていないことなどが原因で、スタッフの人数としては基準に満ちているものの、うまく機能できていない場合もあるでしょう。
業務効率化ツールを導入していない
問診システムや診療予約システム、自動精算機をはじめとする業務の効率化につながるツールを導入していなければ、スタッフが一つひとつ対応していかなければならないため、手間も時間もかかります。
業務効率化ツールが未導入であることは、「医療機関が待ち時間を減らすための努力をしていない」ともいえます。
電子カルテを導入していない、電子カルテをレセコンなどと連携させていない
電子カルテを導入していなければ、患者が受付するたびに該当する紙カルテを探す手間がかかります。さらに、診察室で医師が入力したカルテを受付まで運ぶ業務が必要になりますし、記入自体も、紙カルテに手書きですべて書き出すのと、電子カルテでセット機能などによって効率的に入力するのでは、かかる時間に差が出ます。
加えて、電子カルテをレセコンや検査機器などと連携させると、業務効率が格段にアップします。
急患などが入って順番が入れ替わることがある
急患を受け付けている医療機関では、診察の順番が入れ替わったことで、先に受付していた患者の待ち時間が長くなってしまうことがあります。なお、「急病」とまではいかなくても、症状が重い患者を優先することは小規模なクリニックや小児科などでも当たり前なので、それによって待ち時間が長くなった側の患者からするとストレスが大きくなるかもしれません。
検査などの結果が出るまでに時間がかかる
検査の種類によっては、結果が出るまでに時間がかかります。たとえば、採血したら、血液を遠心分離器にかけて測定装置にのせてから結果が出るまでに30分から1時間程度要します。そのため、検査結果が出るのを待って、そこから再度診察室に呼ばれて説明を受けるとなると、患者は待ちくたびれてしまうでしょう。
患者が苛立ちを感じる待ち時間はどのくらい?
続いては、どのくらいの時間を待たされると、患者が苛立ちを感じる可能性が上がるのかを確認しましょう。
少々古いデータですが、2006年に公開されている『待ち時間と満足度を組み合わせた外来患者調査』によると、待ち時間と満足度を組み合わせた外来患者調査の結果、許容できる待ち時間の平均は、受付=18分、診察待ち=37分、検査=23分、会計=10分、医療機関滞在時間=68分とされています。
参照:日本医療マネジメント学会雑誌「待ち時間と満足度を組み合わせた外来患者調査」
また、2013年に一般ユーザーを対象におこなわれた別の調査では、診察待ち時間の限界は「50~60分」(18.6%)と考える人がもっとも多いという結果が出ています。しかし、時点の回答が「20~30分」(16.0%)であることから、より多くの患者の満足度を得るためにも、待ち時間を30分前後に収めることを目指すのが望ましいといえるでしょう 。
【SNSのネガティブ投稿】医療機関で待ち時間が発生することを患者はどう思っている?
医療機関で待ち時間が発生すること、していることに対して患者がどう感じているのかについてXで声を拾ったところ、次のようなポストが見受けられました(個人の特定防止のために言葉遣いは変えています)
総合すると、多くの人が「なぜこんなに待ち時間が長いのか」という疑問(=「もっと早く回せるだろう」という不満)を抱えていることと、「待ち時間がヒマで辛い」と感じている人が多いことがわかります。
なお、上記ポストはすべて同じ日のほぼ同じ時間に投稿されているもの。それだけたくさんの人が病院の待ち時間に不満を抱いていることがわかります。
【SNSのポジティブ投稿】待ち時間が少ない医療機関に通院する患者はポジティブな意見をポスト
しかし一方で、同じ時間帯のポストのなかに、「私が通っている病院は待ち時間が最小限だから今日も早く終わって助かった」という投稿も一定数あることから、患者の待ち時間を減らすための努力を怠らない医療機関が多いこともわかります 。
「なぜ待つのか」を伝え、患者の納得感を高めるコミュニケーション戦略とは?
続いては、医療機関が待ち時間削減のためにできることをみていきましょう。医療機関が待ち時間削減のために最低限講じたい対策は次の通りです。
それぞれ詳しくみていきましょう。
待ち時間が発生する理由の明示
「当院では、お一人おひとりの話を丁寧にお伺いするため、診察時間が長くなる場合がございます」「急患や重症度の高い患者様を優先するため、順番が前後することがございます。ご理解いただけますと幸いです」といった具体的な理由や自院のスタンスを、院内掲示、webサイト、予約完了メール、待合室のデジタルサイネージなどで積極的に伝えることによって、患者の理解を得やすくなります。
透明性の確保
予約システムや待合室のモニターで、現在の診察状況(何番の患者を診察中か、おおよその待ち人数など)を可視化させます。併せて、「待ち時間の理由」も表示すると患者に納得してもらいやすくなります。
患者1人あたりにかける診察時間を意識する
最初に考えるべきは、患者1人あたりにかける診察時間です。ただし、診察時間を短くすればそれでいいというわけではありません。患者の話をきちんと聴くことは必要ですし、医師の見解や治療方針についても、患者に納得してもらえるよう時間をかけて説明することが大切です。
では、どうすれば現状より短くできる可能性があるかというと、たとえば、患者が自分の症状についてうまく説明できずに時間がかかっているなら、患者の意図をくみ取って医師側から確認することや、検査画像の判断力を磨くことなどが挙げられます。
言い換えると、「患者とのコミュニケーション能力」「診断スキル」をあげることを意識することが大切だということになります。
現状、患者1人あたりにどのくらいの時間をかけているのかを把握していない場合は、まずは1日かけて統計をとってみることからはじめてもいいかもしれません。
スタッフの導線や業務の効率化を考える
スタッフとの連携がうまくいかず、導線に無駄が発生している場合は、どうすれば業務を効率化できるか考えてみることが大切です。現状、どのような無駄が生じているかについては、スタッフ一人ひとりにも意見を求めることで、よりよい改善策がみつかりやすくなります。また、次のような施策を実施することも有効です。
多能工化とタスクシフト/シェア
受付、診療補助、検査、会計などの複数の業務をこなせるスタッフを育成(=多能工化)したり、医師の業務の一部を看護師や事務スタッフに移管(=タスクシフト/シェア)したりすることで、ボトルネックとなっている業務の解消および全体の流れをスムーズにすることにつながります。
情報共有の仕組み化
電子カルテや院内SNSなどを活用して、患者情報や混雑状況、スタッフ間の連携事項などをリアルタイムで共有する仕組みを構築していきます。これによって、無駄な確認作業や伝達ミスを減らすことができます。
定期的な研修とOJT
電子カルテや各種システムの操作スキル、患者対応スキル(特にクレーム対応スキル)、コミュニケーションスキルなどを向上させるために、定期的な研修やOJTを実施することも大切です。
業務マニュアルの整備と見直し
標準的な業務フローを明確にして、定期的に見直すことによって、新人スタッフでもスムーズに業務を遂行することが可能となり、属人化を防ぐことができます。
混雑状況をSNSなどで発信する
院内の混雑状況については、専用のシステムを導入すると、患者は随時アプリなどで確認することができますが、「今すぐ改善したい」という場合、まずはSNSを活用して、特に混雑しているときだけでも発信するようにすれば、患者側はポストを確認して時間帯をずらして来院してくれる可能性があります。
比較的空いている日時を患者に知らせる
会計後などに、患者に対して比較的空いている日時を伝えるようにすれば、次の来院時は混雑しやすい時間帯を避けてくれる可能性があります。一人ひとりに伝えるのが手間だと考えられるなら、受付や院内に、混雑しやすい時間帯などを知らせる張り紙をしておくのも一手です。
受付時に待ち時間に関する状況を伝えて期待値をコントロールするる
順番待ち患者数が多く、混みあっているときは、患者の受付時に「30分ほどお待ちいただく可能性があります」「今日はいつもより混んでいます」などの正直かつ具体的な情報を提供することが大切です。診察待ちに時間をか掛けたくない患者は、その時点で「後日に出直す」などの選択肢をとることもできるため、患者が無駄なイライラを抱かずに済みます。また、出直さず待つことに決める場合も、事前にどのくらい待つことになるかがわかっていれば、心構えできるため、必要以上にイライラしにくいといえます。
診療時間・曜日を拡張する、オンライン診療を導入する
診療時間・曜日を拡張することで患者の分散を図れる場合、拡張することによってスタッフの業務負担の分散にもつながるため、医療機関にとってもメリットは大きいといえます。時間や曜日の拡張に対応できるスタッフがいない、もしくは少ない場合、医師ひとりでも対応可能なオンライン診療を導入するという手もあります。「オンライン診療は専用のシステムが必要だからすぐには導入できないのでは?」と思う人もいるかもしれませんが、スマホのテレビ電話機能でも診療できなくはないので、薬を処方してもらうためだけに来院している患者などが多い場合、診察時間後の時間をオンライン診療にあてると、患者の来院が集中することを防ぎやすくなります。
医療機関が患者の待ち時間を減らすために導入すべきものは?
続いては、医療機関が患者の待ち時間を減らすために導入すべきものをみていきましょう。
電子カルテ
現状、紙カルテを試用しているなら、早めに電子カルテに切り替えることをおすすめします。前述の通り、紙カルテから電子カルテに切り替えると、患者の来院時にカルテを棚から出す工程や、看護師がカルテを受付から診察室、診察室から受付に運ぶ工程を削減することができます。また、必要なデータの呼び出しもワンクリックなので、業務効率が大幅にアップします。
ただし、電子カルテ導入からしばらくは、これまでとは業務の進め方が変わることから、「慣れていなくて却ってやりにくい」「今まで以上に時間がかかる」とストレスを感じる場合もあります。しかし、スマホやパソコンと同じで、慣れればスムーズに使いこなすことができますし、快適さを実感して、「もっと早く切り替えればよかった」と感じるでしょう。
なお、電子カルテを導入するにあたっては、自院で使っているシステムやレセコンなどと連携可能なものを選ぶことが大切です。各種システムと連携させることができれば、患者データや会計データを別途引き出す必要がないため、業務効率が格段に上がります。
予約システム
時間予約システムまたは順番受付システムなどを導入すると、医療機関側が患者数を把握できることに加えて、患者側が待ち状況を確認できることから、混雑時を避けてくれる可能性があります。もしくは、混雑していたとしても納得のうえで診察を待ってくれることから、クレームが出にくくなります。
【導入事例】予約システムを導入した医療機関の声は?
実際に予約システムを導入したクリニックからは、「予約システムを導入したことによって、診療時間帯ごとの患者の数が安定している 」「電子カルテと連携させたことで業務効率が大幅に改善された 」などの声が上がっています。
web問診システムを導入する
web問診システムを導入すれば、患者が予約時や受付後にスマホやPC、タブレットから入力した回答を医師が事前に確認できるため、診察までの流れがスムーズになります。
【導入事例】web問診システムを導入した医療機関の声は?
web問診システムを導入した医療機関からは、「禁忌チェックを含めた内視鏡専用の問診をweb問診に移行させて、内視鏡の同意書も電子署名で済ませるようにしたら、内視鏡のオペレーションを自動化できた 」などの声も上がっています。
自動精算機
セルフレジ、セミセルフレジを導入すれば、スタッフが会計で対応する時間を減らすことができます。また、クレジットカードや電子マネーにも対応している機種を選べば、患者満足度向上にもつながりやすくなります。
【導入事例】自動精算機を導入した医療機関の声は?
実際に自動精算機を導入したクリニックからは、「クレジットカード決済を導入できたことで会計スピードが速まった 」「締め作業で金額が合わないことがなくなった 」などもメリットだったとの声が上がっています。
電話自動応答システム
電話予約や各種問い合わせを自動で処理できる自動応答システムを導入すれば、スタッフが電話対応に時間をとられなくなるため、そのぶん、受付や会計のスピードが上がると考えられます。
【導入事例】電話自動応答システムを導入した医療機関の声は?
電話自動応答システムを導入した医療機関からは、「留守電に残されたメッセージをAIが文字起こしして内容を要約してくれる機能がついているから、要件を確認する時間も削減できた 」などの声が上がっています。
その他
そのほか、患者が診療履歴や検査結果、予約情報をオンラインで確認することができるポータルサイトを導入したことで、電話予約の負担が50%削減した事例や、医療事務にRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を導入したことによって、患者データや保険請求に関するデータ入力の事務作業時間を40%削減、入力ミスを90%削減できたという事例もあります 。
患者ポータルサイトやRPAの導入を検討する医療機関は多くはないですが、医療DXへの関心が高く、さまざまな施策をおこなってみたいと考えているなら、導入を検討してみてもいいかもしれません。
患者の待ち時間対策への投資においては、費用対効果を見極めることが大切
上記に紹介したようなシステムを導入するにあたっては、費用対効果を見極めることが非常に重要です。具体的には、次のポイントをチェックするといいでしょう。
コストの概算
各種システム導入にかかる初期費用や月額費用、保守費用などの概算を出して、それに見合う効果が得られるのかどうかを考えます。
期待される効果の定量化
システム導入によって削減が見込める人件費(受付・会計業務の工数削減など)、向上する業務効率(カルテを探す時間、問診時間の短縮など)、患者満足度向上による増患効果(口コミ改善やリピート率向上など)を定量化して考えます。たとえば、「自動精算機を導入することによって会計業務を何パーセント減らせるか?」「電話自動応答システムを導入することによって電話対応の時間を何分減らせるか?」などといった具合です。
長期的な視点での費用対効果の試算
費用対効果を考えるにあたっては、長期的な視点を持つことも大切です。たとえば、初期費用が高いとしても、人件費削減と患者満足度向上によって数年で回収可能だと考えられる場合も多いためです。
補助金の活用
国や自治体が提供しているIT補助金をはじめとする補助金を活用すれば、初期費用を安く抑えることも可能です。
患者に待ち時間を快適に過ごしてもらうためにできることは?
1日に来院する患者数や、院内で実施している検査の内容などによっては、ある程度の待ち時間が発生するのは仕方がないといえます。そのため、できるだけ待ち時間を短縮させるための対策を講じることに加えて、患者に待ち時間を快適に過ごしてもらうための対策も講じることが望ましいといえます。具体的にどんな方法が考えられるかというと次の通りです。
【役立つシステムを導入する】
【空間作りにこだわる】
【スタッフの対応を改善・向上させる】
それぞれ詳しくみていきましょう。
wi-fiを導入する
患者に待ち時間を快適に過ごしてもらうためにまず導入すべきはwi-fiです。今の時代、ほとんどの人は「外出先での暇つぶし=スマホ」です。LINEでのやりとり、ゲーム、SNS閲覧、動画視聴などのためにスマホを触っているだけであっという間に1時間経っていることも多いため、wi-fiを導入するだけでも、患者の待ち時間ストレス削減に大きな成果を出せるといえます。
患者呼び出しシステムや待ち時間管理システムを導入する
専用の受信機を患者に渡す患者呼び出しシステムを導入すれば、患者が院内のカフェテリアなどで過ごすことができるため、待合室でじっと待っていることに比べてストレスを感じづらいといえます。また、スマホやパソコンからリアルタイムで、自分の順番まであと何人かを確認できる待ち時間管理システムを導入すれば、患者は院内に待機している必要がなく、待ち時間を院外で過ごせるため、より気分的に楽であるといえます。血液検査の結果待ちに時間がかかる甲状腺のクリニックなどは 、体調が悪いわけではなく数値管理のために通院している患者が多いため、待ち時間を外で過ごすことができたら、ウインドウショッピングなどの予定と組み合わせて通院できるのでメリットが大きくなります。
【導入事例】患者呼び出しシステムを導入した医療機関の声は?
患者呼び出しシステムにはいくつか種類がありますが、活用できる機能としては共通しています。
また、実際に導入したクリニックからは、「完全予約制にすると、web予約が不慣れな人にとっては受診のハードルが高くなり、地域医療に貢献できなくなるため、直接来院される患者にも配慮できる呼び出しシステムを選択した 」などの声が上がっています。
そのほか、「待合室で待機してもらう必要がなくなったことから、二次感染の対策につながった 」との声も。
ウォーターサーバーやフリードリンクを設置する
ウォーターサーバーや無料ドリンクサーバーを導入しておけば、患者がリラックスして過ごしやすいだけでなく、採血後の水分補給にも役立ててもらいやすくなります。
待合室の家具や照明、BGMにこだわり、快適に過ごせる環境を作る
待合室のソファの座り心地にこだわるだけでも、患者の待ち時間のストレス軽減に役立ちます。見た目の美しさや拭き掃除のしやすさなどを優先して、「長時間座っても疲れないか」の視点を持たずにソファを選ぶと、患者の不満が大きくなる可能性があります。照明やBGMに関しても、「患者にくつろいで過ごしてもらうには?」の視点を持って選ぶことが大切です。
家具のレイアウトを工夫する
患者同士の視線が合いやすいレイアウトでソファや椅子を配置すると、お互いに目線がぶつからないよう意識しなければならなくなり、要らぬストレスを与えることになります。
また、ソファや椅子の設置数が多すぎて通路が狭い場合などは、患者が名前や順番を呼ばれたときにストレートに診察室や受付に進めないため、そのぶん一人ひとりの診察や会計が遅れて、さらに待ち時間が長くなってしまいます。
バリアフリーに配慮する
ベビーカーや車椅子、もしくは骨折して杖をついている患者などが院内を移動しにくい状態であれば、身体的に負荷のかかっている患者本人が疲れやすいのはもちろん、周りで見ている患者も気になってストレスを感じやすいといえるでしょう。こうした状況を防ぐためにも、車椅子やベビーカーがスムーズに移動できるだけのスペースを確保することなどが大切です。小規模なクリニックで全体的にスペースが狭い場合は、受付からの移動が少なくて済む位置に専用席を設けるなどの工夫を考えるといいでしょう。
快適な温度・湿度を保つ
快適な温度・湿度のキープも大切なポイントです。空調機に加えて、空気清浄機にこだわることも望ましいといえます。
観葉植物や水槽などを設置する
体調が芳しくない患者や、不安な気持ちを抱えている患者は特に、無機質な空間より、活き活きとした植物やゆったりと泳ぐ魚が視界に入るとリラックスして過ごしやすくなります。
【導入事例】水槽を導入した医療機関の声は?
水槽を導入した医療機関からは、「水槽の前の席はいつも子どもたちに人気です」「殺風景になりがちな待合室が明るい雰囲気になりました」「季節のディスプレイが患者様に好評です」 などの声が上がっています。
キッズスペースを設置する
小児科や、子どもの患者も多い内科や歯科の場合、キッズスペースがあるとないとでは、子どもがおとなしく待てるかどうかに大きな違いが出てきます。子どもがぐずることがなければ、付き添いの親御さんも安心して過ごすことができます。
キッズスペースを設置するだけのスペースを確保できないなら、子どもを飽きさせないために、絵本や動画を導入するなどの工夫が大切です。また、兄弟で来院した際など、診察時間が別々になって余計に待たなければならないことを防ぐために、予約システムで兄弟同時の予約を受け付けることや、親御さんに丁寧に声掛けすることなども重要です。
【導入事例】キッズスペースを導入した医療機関の声は?
キッズスペースを導入した医療機関からは、「笑顔があふれる夢のある空間を演出できた。地域住民から愛される、頼りになる医院を目指せます」などの声が上がっています 。
デジタルサイネージを設置する
デジタルサイネージを設置するするクリニックは、ここ数年でぐっと増えています。テレビとは異なり、音量の調整が簡単であることから、「音がうるさい」というクレームにつながる心配もなく、自院の患者ターゲットの関心の高い情報を効率よく提供することができます。
美容皮膚科や美容クリニックであれば、診察メニューの情報を流すことによって、新規予約が入りやすくなるというメリットもあります。ただし、テレビと比べると導入コストが高いというデメリットはあります。
【導入事例】デジタルサイネージを導入した医療機関の声は?
実際にデジタルサイネージを導入した医療機関からは、「医療費削減に役立つ補助金や支援金の制度などの情報は、ポスターやパンフレットで周知しても患者に届きにくかったが、デジタルサイネージで流すと気に留める人が増えた 」などの声が上がっています。
スタッフから患者に対して、待ち時間に関する声掛けをおこなう
待ち時間が長くなる可能性がある場合などは、スタッフから患者に対して、状況を説明することを徹底するといいでしょう。現在何人待ちであるか、何分程度待つ可能性があるかなどを事前に伝えられているかいないかで、待ち時間を快適に過ごせるかどうかが違ってきます。
患者にアンケートを実施する
患者が待ち時間に対してどんな不満があるのか、どんな改善があればストレスを感じにくくなるのかについて、患者の生の声を聴くことは、患者満足度を上げるための一番の近道です。アンケートの作成方法はアナログでもデジタルでも構いませんが、スマホから回答してもらえるフォームを作成しておけば、手書きで紙に記入することと比べて匿名性が担保されるため、より多くの患者から回答してもらえる可能性が高いといえます。
無料webアンケートフォーム作成ツールはいくつかありますが、とりわけ、Googleが提供している「Google Forms」などは初心者でも使いこなしやすいでしょう。
患者から待ち時間に対するクレームが入った場合の対処法は?
続いては、患者から待ち時間に対するクレームが入った場合の対処方法を考えていきます。患者から待ち時間に対するクレームが入った場合、次のような対処をとることが考えられます。
それぞれ詳しくみていきましょう。
事実確認のためにまずは患者の話を傾聴する
まずは、患者からのクレームに真摯に耳を傾け、患者がどんなことに不満を抱いているのかをきちんと最後まで聴くことが大切です。そのうえで、待たせてしまっていることを謝罪して、不快な思いをさせて申し訳ないと思っているものの、あともう少し待ってもらう必要があること、もしくは、空いている日に来院しなおしてもらうことなどを提案しましょう。
なお、「患者の機嫌がこれ以上悪くなると面倒だ」などの理由でクレームを入れてきた患者を優遇してしまうと、他の患者からのクレームに発展する場合があります。もしくは、他の患者はクレームを入れてこなかったとしても、「クレームを入れた患者の診察を先に回した」などと口コミに書き込まれる可能性があります。
残りの待ち時間の目安を伝える
患者は、待ち時間が長いことに加えて、あとどれくらい待てばいいのかわからないことにストレスを抱えている場合も多いです。そのため、待ち時間を可視化させることは非常に大切です。一人ひとりにかかる診察時間に差があり、残り時間が何分程度と考えられるかわからない場合、「あと何人」と伝えるといいでしょう。
次回以降の予約時には、比較的待ち時間が少ない時間帯などを伝える
クレームを入れてきた患者の会計時には、再度、謝罪の言葉を述べるとともに、次回以降の予約日時に、比較的待ち時間が少ない時間帯を伝えるといいでしょう。
対策を講じてもクレーム数が減らない場合は運用全体を見直そう
上記で紹介した対策を一度にすべて実施するのは予算的にも難しいですが、できることから少しずつ改善していくことで、クレームの数は減っていくと考えられます。万が一、対策を講じてもクレーム件数がまったく減らない場合は、待ち時間に関連する別の要因がネックとなっていることも考えられます。たとえば、「待ち時間は平均より短めだが、受付スタッフの態度が悪いことから患者が最初からイライラしている」などの可能性もあり得るので、スタッフ全員で意見を出し合いながら、自院の改善ポイントを探してみることをおすすめします。
特徴
対象規模
オプション機能
提供形態
診療科目
この記事は、2025年5月時点の情報を元に作成しています。