日本では診療所の医師の平均年齢が60歳を超えており、診療所を次世代にスムーズに承継していくことが問題になっています。クリニックを開院しようと考える医師の中には承継案件を選択する人もいらっしゃるでしょう。承継案件もいろいろありますが、「不動産付き」という売り案件も少なくありません。今回は、このような「不動産付きの承継物件」についてご紹介します。
「不動産」が付くと承継にかかる金額も上がる
「不動産付きの承継案件」は、個人事業、医療法人を問わず、自身の所有する物件で開業したというケースです。クリニックの土地・建物が賃貸ではない場合です。
前所有者が、土地・建物付きで営業権を譲渡することを希望すると、承継する人が用意しなければならない資金も高額になってしまいます。土地は経費になりませんし、建物も減価償却が進んでいるはずですから経費性はほとんどありません。
それを購入することになると、資金調達も大変な上に経費性がありませんから資金繰りを圧迫することになります。
「賃貸」になるようお願いする
資金繰りが大変になるので、承継案件を選ぶ際には不動産付きの案件は避けたいところなのですが、昔自己所有物件で開業したというクリニックはけっこうあって、「不動産も一緒に譲渡したい」という希望も強くあるのです。
このような場合には、その売り主に「少なくとも一定期間は賃貸にしてもらえる」ようにお願いするのが一つの解決策になります。つまり、営業権を購入しクリニックを承継した後は、売り主に不動産の賃貸料(いわば家賃)を支払う、という形にするわけです。
このようにできれば、土地・建物の所有者は変わらず、承継した医師は月々の家賃を支払いますが、当然これは経費になります。
ですので、例えば「軌道に乗るまでの一定期間はすみませんが賃貸にしてください。経営が軌道に乗れば買い取ります」という交渉を行い、これを譲渡契約のオプションに入れるのです。これがうまくいけば、「売り主」と「承継する買い主」でお互いに納得する取引となります。
ただし「不動産付き案件」には注意しましょう
ただし、不動産付きの案件の場合、「どうしても不動産も一緒に買ってほしい」という売り主さんには注意が必要なことも確かです。資金繰りに困っているかもしれないからです。例えば「土地・建物の売却目的で承継を考えている」というようなケースもあり得るのです。この場合は、それで得た資金で何か清算したい債務があることが考えられます。
賃貸にしてもらう交渉も駄目で、一括売却にこだわるような場合には、再度その承継案件の細部、貸借対照表などを確認しましょう。「少なくとも3年分の貸借対照表は確認する」。この原則を忘れないようにしてください。また、売り主の個人的な経済状況まで調べる必要も出てくるでしょう。無理に事を進めてもクリニックが継続しなければ意味がありません。危ないなと感じたら引くことです。
まとめ
「不動産付きの承継案件」では、「少なくとも一定期間は賃貸にしてもらえないか」という交渉が有効で、うまく合意できれば資金調達も楽にすることが可能です。このような交渉やどうすれば節税になるかその方法を見つける、といったことは医師には専門外の重荷です。承継案件については、長い経験を持つプロの仲介者を立てることを強くお薦めします。
いろんなコンサルタントがいますし、業者も多数ありますが、良い仲介のプロは必ず「売り主」「承継する買い主」のお互いがWin-Winになるような最善手を見つけてくれるものです。承継案件を考慮するのであれば、まず信頼できるプロを見つけるのが先だといえるでしょう。
特徴
対応業務
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診療科目
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この記事は、2021年4月時点の情報を元に作成しています。