
「看護師は転職するなら3年目がおすすめ」と聞いたことがある人は多いかもしれません。実際、3年目に転職を考える看護師も多いですが、いったいなぜなのでしょうか?
入職して3年目で転職する場合のメリットやデメリット、注意点、転職の成功の秘訣なども併せて解説していきます。
看護師3年目が転職にベストタイミングな理由は?
「看護師は転職を考えるなら3年目に動くべき」とされるもっとも大きな理由は、多くの医療機関や施設が、「臨床経験3年以上」を応募条件にしていることです。つまり、正確にいうと「3年目を終える節目で転職できるよう準備を進める」のがベストだといえます。
もちろん、3年目の年度途中でも転職できないということはありませんが、丸3年を終えて4月から、もしくは4月以降の入職を狙えば、より幅広い選択肢から転職先を選べるということになります。
看護師3年目での転職について、実際の看護師の声は?
続いては、『株式会社Donuts』が実施した、キャリア3年目の看護師の転職に対するイメージについてのアンケート結果と、賛成/反対それぞれの声を紹介していきます。
看護師3年目での転職・賛成派の声
- 「3年目には、リーダー業務や新人の指導も任されるようになるので、そこまで学んだ段階での転職ということは、計画的だったんだろうなと思います」
- 「3年あれば基礎を学べるので、3年経ってからならよい選択」
- 「環境を変えることで今まで気づけなかったことに気づけることがあるのでよいと思う」
- 「石のうえにも3年のイメージがあるから、2年目よりポジティブに思われる」
賛成派は、3年である程度の基礎を固めることができるので、そこから先は新しいことに挑戦してもいいのでは?という意見が大半でした。
看護師3年目での転職・反対派の声
- 「転職自体は応援したいが、3年目前半での転職の場合、プリセプター業務の経験が先延ばしになる可能性があるのが残念」
- 「3年目の途中での転職ではなく、3年終わってからのほうがいいと思う」
転職自体は問題ないとするものの、3年目の途中ではなく、3年間きっちり勤めてからの転職をすすめる人が多い結果となりました。
看護師3年目での転職・賛成反対どちらでもない人の声
また、ネガティブな印象もポジティブな印象も特に持っていないという声もありました。
- 「3年目には委員会や新人教育を任されることが多く、荷が重く辞める看護師が多い。まず委員会を外してもらえるよう相談するのがおすすめだが、実際はなかなか受け入れてもらえないと聞く」
- 「3年目での転職は美容関係というイメージ」
看護師としての基礎を固めたところで、看護師の経験やスキルを活かせる業界に足を踏み入れる人もいるのかもしれません。
看護師3年目で「転職したい」と思う理由の例
働き始めて3年目の看護師が転職したいと考える理由としては、主に以下が考えられます。
- お礼奉公が終わる
- 職場や勤務条件に不満がある
- キャリアアップしたい
- 今の職場でこのまま働き続けている将来を想像するとネガティブな感情になる
- 結婚や出産などでライフステージが変わる
- 責任のある仕事を任されることが増える
それぞれ詳しくみていきましょう。
お礼奉公が終わる
お礼奉公の期間は、卒業から3年間と設定されているケースが多いため、社会人になる時点から「3年目が終わったら、本当に働きたい医療施設に転職しよう」と考えている人は多いかもしれません。
職場や勤務条件に不満がある
職場の人間関係や、勤務時間などの働く条件に不満があって転職を考える人も多いです。この理由はキャリア3年目に限ったものではありませんが、「辛いけど、少なくとも3年はがんばって働き続けよう」と考える人は一定数いるのではないでしょうか。
キャリアアップしたい
冒頭で述べた通り、多くの医療機関や施設は、「臨床経験3年以上」を看護師の応募条件としています。その理由は、看護師が一通りの知識や技術を身に着けるのには3年かかるためです。
つまり、3年勤めたら多くの医療機関や施設で「即戦力」とみなされるということです。そのため、憧れていた職場に入職して、即戦力としてバリバリ働いていきたいと考える看護師も多いです。
先輩として新人看護師の教育係を務める「プリセプター業務」、チーム全体をまとめる「チームリーダー業務」などはその代表格といえる業務でしょう。
3年目の看護師が主体となって看護研究を実施する施設も多いので、これらの業務を一通り終えたら、次のステップに進もうと考える看護師も少なくありません。
今の職場にネガティブな感情がある
3年間の臨床経験を経て、「これからは自分も一人前の看護師としてやっていける」と自らのキャリアを見つめなおしたとき、「このままここで働き続けてもいいのだろうか?」と自問自答したくなるケースも多いでしょう。
その結果、「このまま同じ職場に居続けたら、納得のいく未来を迎えられない」と感じるのなら、転職を実現するために動き始めるのが正解です。
結婚や出産などライフステージの変化
結婚や出産のタイミングは人それぞれですが、一人前の看護師の目安とされる3年間の臨床期間を終えたことで、次のライフステージに進みたいと考える人は多いです。
堅実な人なら、「30歳までに〇人ほしい」「20代のうちに育児を終えて仕事の復帰したい」などのプランを確実に実践できるよう、早い段階で婚活にも力を入れているでしょう。
看護師3年目で転職するメリットは?
キャリア3年目の看護師が転職することによって得られる主なメリットとしては以下が考えられます。
- 第2新卒として扱ってもらえる場合がある
- 新しい職場になじみやすい
- ストレスから解放される
- だらだら働き続けて時間を無駄にするのを避けられる
それぞれ詳しくみていきましょう。
第2新卒として扱ってもらえる場合がある
「第2新卒」とは、一般的には「新卒で入社して3年未満の求職者」を指します。ただし、定義は割と曖昧。「4年制大学を卒業していれば25歳前後」などおおよその目安となります。
一般的な定義に則っていうと、丸3年働いていなければ第2新卒ということになるので、3年目の途中であれば第2新卒の採用枠を狙うことができます。
新しい職場になじみやすい
キャリア3年目で若いと、大御所と比べると経験ははるかに少ない一方、体力や柔軟性があることが強みです。
採用する側としても、「凝り固まった考えがないぶん、自院のやりかたをすんなり受け入れてくれるだろう」と考えてくれる可能性があります。
ストレスから解放される
現在の職場で働き続けることに大きなストレスを感じている場合は、キャリア何年目であるかに関わらず、転職することでストレスから解放されるのは大きなメリットだといえます。
だらだら働き続けて時間を無駄にするのを避けられる
3年目ともなると仕事にも慣れてくるため、ある意味、だらだらと働き続ける人が出てきがちです。
「最低限生活費を稼げたらそれでいいから、ずっとこのままでいたい」という考え方もありますが、キャリアもプライベートも充実させたいなら、ことあるごとに気を引き締めることが大切。そのための手段として、転職を検討するのも一手であると考えられます。
看護師3年目で転職するデメリットは?
看護師がキャリア3年目で転職する主なデメリットとしては次のようなことが考えられます。
- 給料が下がる可能性がある
- 3年目の年次途中では経験不足と判断される場合がある
- 退職金が支給されない場合がある
それぞれ詳しくみていきましょう。
給料が下がる可能性がある
看護師の給料は、一般的に実務経験に応じて上がっていきます。つまり、転職によって勤続年数がリセットされると、基本給や手取り額が下がる可能性があるということになります。
ただし、キャリア3年目の看護師はもともと給与水準が高くはないので、給与水準が同程度の職場への転職であれば、さほど大きく下がるということはないでしょう。
経験不足と判断される場合がある
前述した通り、看護師の求人は「3年以上の経験」を応募条件としていることが多いため、3年目の年次途中での転職の場合、応募条件を満たしていないということになります。
また、3年以上の経験を応募条件として掲げていなくても、経験不足とみなされることがあるかもしれません。
退職金が支給されない場合がある
退職金の支給要件は医療機関によりますが、「勤続3年以上」とされている場合が多いです。そのため、3年目の年次途中に退職した場合、退職金が支給されない可能性があります。
なお、退職金制度は必ず導入しなくてはならないというものではないので、医療機関によっては退職金制度そのものがありません。
看護師3年目におすすめの転職先は?
続いては、キャリア3年目の看護師におすすめの転職先をみていきましょう。主なおすすめの職場としては以下が考えられます。
- 無床クリニック
- 大学病院・大学総合病院
- リハビリテーション病院
- 急性期病院
- 訪問看護ステーション
- 美容クリニック
- 治験関連企業
- 小中高校
それぞれ理由を解説していきます。
無床クリニック
激務に耐えかねて転職を検討している人、ライフステージの変化に備えてライフワークバランスを考え直したい人などにおすすめは、無床のクリニックです。
個人開業医が院長を務めている小規模なクリニックであれば、診療科数が少なく、覚えなければならないことも多くはないので、プライベートの時間を充実させやすいと考えられます。
同じ理由で、健診センターもおすすめです。
大学病院・大学総合病院
一人前の看護師に必要な知識やスキルを習得したところで、ここからは着実にキャリアアップしていきたいと考えているなら、大学病院や大学総合病院がおすすめです。
これらの職場は教育体制が整っているうえ、大学の公開講座を受講できる場合もあるため、知識を深めていきたい人にはうってつけです。実際、モチベーションが高く、専門看護師や認定看護師の資格を取得している看護師も多数在籍している傾向にあります。
また、診療科や病棟の数が多いため、異動希望が叶えば、興味のある分野での知見を深めていくことができます。
リハビリテーション病院
患者やその家族と長期にわたって関わりながら看護を提供できるリハビリテーション病院は、患者とのコミュニケーションが好きな人、もしくはコミュニケーション能力を磨きたい人に向いています。
理学療法士や作業療法士、言語聴覚士などのリハビリ専門職との連携が不可欠なので、多職種で連携して患者を支えていきたいという看護師にもおすすめです。
急性期病院
急性期病院は最新の治療法・再診の医療器材が導入される機会が多いため、看護師3年目程度の体力・記憶力ともに衰えていない若い世代を歓迎する傾向にあります。
さらに、患者の身体状況を的確にアセスメントする能力も必要とされるため、転職を通して看護師としての市場価値を高めていきたい人にはぴったりの職場であるといえます。
アセスメント能力の高さ、医療機器管理のスキルの高さが求められる職場としては、救命救急センター、救急外来もおすすめです。
訪問看護ステーション
訪問看護の仕事は、看護師がひとりで利用者宅を訪問してサポートするものであることから、基礎的な知識・スキルをしっかりと身に着けている、臨床経験3年以上の看護師が歓迎されます。
ただし、訪問看護の現場は基本的に人手不足であるため、訪問看護ステーションによってはキャリア3年未満の若手も積極的に募集しています。
しかも、若手のほうが体力面では勝っているため、利用者をしっかりサポートしてくれることを期待する事業所も多いです。
なお、在宅医療や緩和ケア医療そのものに興味がある場合は、介護老人保健施設や看護小規模多機能型居宅介護、緩和ケア病棟もおすすめです。
美容クリニック
美容への関心が高いなら、美容クリニックへの転職はぴったりです。
キャリア3年目ともなれば、年齢的にも肌悩みが増えてくるので、働きながら最先端の美容法について学べることは、人によっては大きなメリットであると感じるでしょう。
治験関連企業
転職を機に給与アップを狙いたいなら、治験関連企業で「CRC(治験コーディネーター)」として働くことを検討してもいいかもしれません。
ただし、募集先によっては語学力を応募の必須条件としていたり、入社後も自主的に勉強しないと業務をこなせなかったりと課題が多いため、学ぶことが好きな人でなければ続けることも難しいかもしれません。
小中高校
看護師以外の仕事に興味があり、かつ、看護師としての経験を活かしたいと考えているなら、養護教諭の資格を取得して、小学校・中学校・高校などの保健室で働くのも一つです。
ただし、養護教諭の免許を取得したうえで採用試験にパスする必要があるため、再就職までには時間がかかります。
看護師3年目での転職成功の秘訣は?
看護師3年目で転職を成功させるためには、次のポイントが大切です。
- 3年目の途中ではなく、年度末に退職する
- 転職の目的をはっきりさせる
- 自分の看護師としての能力を客観的に確認する
- 面接対策を入念に行う
- 長く働けそうな職場を選ぶ
- 看護師専門の転職サイトおよび転職エージェントを活用する
- ワークライフバランスやライフプランを考える
それぞれ詳しくみていきましょう。
3年目の途中ではなく、年度末に退職する
ここまで述べてきた通り、多くの医療機関は「3年以上の臨床経験」を求人への応募要件としているため、3年間勤めあげてからの転職のほうが、応募できる先が多くなるということになります。そのぶん、成功の確率が上がると考えられます。
転職の目的をはっきりさせる
キャリアアップのための転職なのか、給与アップのための転職なのか、もしくは自分らしいペースで働くための転職なのかなど、目的をはっきりさせることはとても大切です。
単に「今の職場で働くのに飽きたから」などの理由で転職すると、「やっぱり元の職場のほうがよかった」という結果も招きかねません。
自分の看護師としての能力を客観的に確認する
「3年の臨床経験によって大きく成長できたから次のステップに進むべきときだ」。自分ではそのように感じていたとしても、客観的にみると、キャリア3年にしては能力が低い場合もあります。
そうなると、求人先が求めている看護師像と大きなズレが生じて、なかなか転職活動がうまくいきません。それを防ぐためにも、自分の看護師としての能力を客観的に確認することは非常に大切です。
確認方法としては、段階的にランクづけされた看護師の能力のうち、自分がどのランクに該当するのかを確認できる「クリニカルラダー」などの活用が有効です。
ただし、クリニカルラダーで自分のランクを確認するためには、自己評価に加えて他社評価も必要となるため、信頼できる先輩看護師などにお願いするといいかもしれません。
また、転職エージェントの無料相談を活用して、自分の市場評価がどれくらいだと推定されるのかを確認することもおすすめです。
面接対策を入念に行う
志望する職場からいい返事をもらうためには、先方がどんな人材を求めているのかを研究し、自分が何を提供できるのか?のアピールが重要です。
そのためにも、面接時に志望動機を聞かれたら、履歴書の志望動機欄にしたためた文章をそのまま読み上げることなく、自分らしい言葉で答えられるよう、繰り返し練習しておきましょう。
自分の思うように働ける職場を選ぶ
転職の成功は「採用」ではありません。採用された結果、「この病院は自分には向いていなかった」「前より仕事がきつくて辛い」などの理由で再度転職することになっては時間のロスですし、再度の転職によって給料をもらえない期間が発生すれば、金銭的にも大きなロスになります。
そのため、「休み希望が通りやすい」「残業は月に10時間まで」などの「自分の理想通り」に働けるのか?という目線を持って職場を選ぶことも非常に大切です。
看護師専門の転職サイトおよび転職エージェントを活用する
転職先は、ハローワークやタウン情報誌などでも探すことができなくはないですが、看護師専門の転職サイトや転職エージェントを活用したほうが選択肢が増えるので、より自分に合った職場を選びやすいといえます。
また、転職エージェントの無料相談を活用して、自分の市場価値を客観的に知れば、よりよい条件で転職できる可能性が高くなります。
ワークライフバランスやライフプランを考える
仕事は人生の一部です。プライベートと切り離して、仕事のことだけ考えて転職先を決めると、プライベートに支障が出てくる可能性があります。
キャリア3年目の時点では、「自分は仕事人間だからそんな心配は無用」と思っていたとしても、5年後、10年後にはライフステージが変わり、仕事以外のことにも時間を割いていかなければならない可能性は大きいといえます。
そのため、ワークライフバランスやライフプランについても視野に入れながら転職先を決めていくことが望ましいと考えられます。
看護師3年目で転職する際の注意点は?
看護師3年目で転職するにあたっては、主に次の点に注意する必要があります。
- ボーナスの支給時期
- 退職金をもらえる条件
それぞれ詳しくみていきましょう。
ボーナスの支給時期
多くの人は、退職する場合、ボーナスが支給された直後に退職できるよう調整します。ボーナスが支給される直前に退職するのは非常にもったいないことなので、退職を検討しているなら、ボーナス支給の時期を確認しておくといいでしょう。
退職金をもらえる条件
退職金に関しては、ここまでにも述べてきた通り、丸3年の勤務が支給条件であるケースが多いので、ボーナス同様、金銭的に損をすることのないよう、退職のタイミングを調整するようにしましょう。
看護師3年目での転職・よくあるQ&A
続いては、キャリア3年目の看護師が転職するにあたって抱きがちな疑問とその答えをみていきましょう。
Q. キャリア3年目より転職に適したタイミングは?
A. 転職に適したタイミングは人によって異なります。
結婚や出産などのライフイベントのタイミングも人それぞれですし、経験年数などの求められる応募要件が転職先によって異なるためです。
また、そもそも「ベストなタイミングはいつだろう?」と有利な時期にばかり目を向けていると、「転職したい」という気持ちが薄れてきて、「今のままでもまあいいか」と惰性で働き続けてしまう可能性も出てくるので、自分にとってのベストなタイミングを逃さないよう注意しましょう。
Q. 転職サイトや転職エージェントを利用しなくても転職が可能?
A. 可能ですが、転職が難航する可能性が高いといえます。
先に述べた通り、ハローワークなどでも求人情報を見つけられますが、看護師専門の転職サイトや転職エージェントを利用した場合と比べると、求人の質にばらつきがあります。
転職サイトや転職エージェントは多くが無料で利用できるので、まずは試しに登録だけでもしてみるといいかもしれません。看護師向けの転職サイトとしては、たとえば、次のようなサイトがあります。
節目にはキャリアを見つめなおそう
ここまで解説してきた通り、キャリア3年目は、一通りの知識やスキルを習得し終える“節目の年”となります。
この重要なタイミングには、転職の意向のある・なしに関わらず、キャリアとライフプランを固めるために、自分にとって大切なことは何か?将来のことやお金のことはどうしたいのか?などをしっかり考えていくことがとても大切です。
一度ゆっくり時間をとって自分と向き合うことによって、より自分らしく生きるためには今、何が必要であるのかが見えてくるはずですよ。
特徴
対象規模
オプション機能
提供形態
診療科目
この記事は、2025年5月時点の情報を元に作成しています。
執筆 CLIUS(クリアス )
クラウド型電子カルテCLIUS(クリアス)を2018年より提供。
機器連携、検体検査連携はクラウド型電子カルテでトップクラス。最小限のコスト(初期費用0円〜)で効率的なカルテ運用・診療の実現を目指している。
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