診療圏調査のやり方や見方は?注意点とおすすめの代行業者もご紹介!

この記事をご覧いただいている方は、おそらく「クリニックの開業時には診療圏調査が必要だ」と聞いたことがあるのではないでしょうか。

確かに、開業前の準備の1つとして診療圏調査を行っておくと、開業候補地にどのくらいの集患が見込めるかの予測が立てやすくなるなどのメリットがあります。

開業地を選ぶうえでも、重要な指標となるでしょう。

そんなん診療圏調査について、具体的な方法や注意点に加えて、調査時に便利なツールや専門家もご紹介します。

診療圏調査とは?

診療圏調査とは、「その場所にクリニックを開業した場合、1日当たりどのくらいの患者数を見込めるのか」を把握するための調査です。

算出された推定患者数が大きければニーズが高く、数値が小さければ既にそのエリアの人口に対して医療機関が十分あるということになります。

開業した結果、ほとんど患者が来なければ廃業へと追い込まれる可能性もあるので、事前にしっかりと診療圏調査を行うことが理想です。

一般的な手順は以下の7工程となります。

開業地を中心とした「診療圏」を設定する

診療圏の広さは診療科目によって異なります。

【一般内科の場合】

一般内科は、体調が悪くなったときにすぐに行きたいと考える人が多いことから、ほとんどの人は、家や勤務先の最寄りのクリニックを選びます

そのため、電車で移動する人が多い都市部であれば駅徒歩3分以内郊外であれば車で5~10分以内を診療圏ととらえるといいでしょう。

【耳鼻科、精神科など特定の疾患に対応しているマイナー科の場合】

耳鼻科や精神科など、特定の疾患に対応しているマイナー科は、急を要する患者は少ないと考えられます。

しかし、何度も通うことになる場合が多いため、遠すぎたら選んでもらえません

都市部なら半径500mから1km前後郊外なら半径2kmから4km前後が診療圏と考えるといいでしょう。

【産婦人科(婦人科)、泌尿器科、美容皮膚科などの超マイナー科や、下肢静脈瘤などの手術を行うクリニックの場合】

マイナー科と比べてさらに来院間隔が空く超マイナー科であれば、さらに広い範囲を診療圏ととらえることができます

都市部で急行や特急などが止まる主要駅なら駅徒歩3分各駅停車しか止まらない駅なら駅徒歩1分が目安。

ただし、婦人科であってももっと気軽に利用してほしいなら範囲を狭めたほうがよいですし、不妊治療を専門とするクリニックであれば、クリニックの評判次第ではさらに遠くからも来院してもらえる可能性はあります。

診療圏内の競合のクリニック情報を地図上に記す

同じ診療圏内に競合クリニックがあれば、患者さんが競合クリニックに流れる可能性もあります。

そのため、診療圏内にどのくらいの数の競合クリニックがあるかを把握することが大切ですし、競合クリニックの数は診療圏調査の結果にも影響します。

統計情報を元に診療圏内の人口を把握する

診療圏内の人口は、市区町村などが発表している統計情報を参照します。

ただし、オフィス街であれば、居住人口よりも昼間の人口をベースとしたほうがよい場合もあります。

推定患者数を算出する

推定患者数は、以下の基本式によって算出可能です。

≪推定患者数を割り出すための基本式≫

エリア人口×受療率÷(科目別競合医院数+1(=自院))=推定患者数

上記の方法でおおまかに患者数の予測を立てられます。

しかし、特別な処置や高度な治療を求めている患者でなければ、駅からの距離を第一条件にクリニックを選ぶ場合も多いため、「どちらのクリニックがより駅から近いか」が判断基準となる場合もあります。

そうした要素も考慮しながらより正確な数値を出すことはとても困難なもの。そのため、より確かな予測を立てたい場合には、診療圏調査のプロに頼むのが得策といえるでしょう。

診療圏調査に必要なことは?

続いては、診療圏調査をする場合にはどんな情報を用意すればいいかについて説明します。

調査地点の住所

まずは診療圏の中心となる、開業地を決めましょう。

可能であれば、住所は番地まであるとより確かな計算ができるでしょう。

もしも調査地点が更地で番地まで設定されていない場合、場所を特定できる目印を目安に診療圏調査を行うことになります。

診療科目、物件情報、経済情報、院外処方の有無など

診療科目や開業時期、物件条件、経済情報、院外処方の有無な度も考慮したいところです。

同じ診療科が近く(診療圏内)にあるかどうか、本当にその物件で臨むような診療ができるのか、資金面はどうか、近くに処方箋薬局があるかどうか……などなど、どれもクリニックを開業・運営していく上では大切な要素です。

これらの情報をもとに自院でもある程度の精度で調査を行うことは可能ですが、データは日々変化しているため、最新の情報をもとによりリアルな数字を割り出すことは簡単ではありません。

診療圏調査の注意点

続いては診療圏調査において、注意しておきたい点について解説していきます。

「夜間人口」と「昼間人口」の差を考える

診療圏調査では国勢調査の人口を使用して患者数を割り出すことが一般的ですが、通常、この場合の人口は「夜間人口」を指しています

夜間人口は居住地における人口を調査した統計であるため、住宅地に開業する場合の診療圏調査に用いるには最適といえます。

しかし、就業者は日中、勤務先へ移動していることが多いため、駅前やオフィス街など、居住人口の少ない開業予定地について夜間人口を用いた診療圏調査を実施しても、思うような予測来院患者数にならないことがあります。

このような事態を回避するためには、「昼間人口」を用いた診療圏調査を行う必要があります。

「昼間人口」は夜間人口を元に、就業者等の移動を加味した統計データですので、就業者は勤務先のエリアに算入されており、前述の駅前・オフィス街などの調査に最適な統計といえます。

開業予定のクリニックの立地や、どのような患者層をターゲットとするのかに応じて診療圏調査に用いる人口統計データに気を配る必要があります。

競合の数や強度を調べる

診療圏調査では、診療圏内の患者数を競合クリニックで按分し、自院への来院患者数を算出しています。

一般的な診療圏調査では患者数は均等に按分されている場合が多いのですが、現実では競合の集患力は一定ではありません。

「評判の良い医師がいる」「最新の医療機器を備えている」など、集患力の強い競合クリニックがある一方、跡継ぎがいなくて閉院予定のクリニックをはじめ集患力の弱い競合も存在するため、診療圏調査を実施するためには競合の集患力を考慮する必要があります

競合の集患力を設定するには、現地に赴き自身の目と足で確かめることが一番ですが、競合の「駐車場の有無」「専門医資格」「外来患者数」「診療時間」など、競合医院の集患に関連する情報も参考になるでしょう。

また、競合情報が何年も前のものであった場合、「診療圏内に思わぬ競合が居た」ということもありえます。

そうならないよう、診療圏調査の際には競合情報の鮮度についても確認することが重要です。

人口世帯特性を見る

開業後安定した集患を実現するためには、患者ターゲット層の選定や、自院のコンセプトの検討が重要です。

そこで活用できるのが人口・世帯特性表です。

診療圏によっては、同程度の人口総数であっても、年代や世帯の構成が異なることがあります。たとえば、子供や若年層が多いエリアであれば、明るい内装にすることや駐車場を設置することなどの対策が考えられます。

また、医師の経歴にもよりますが、開業予定の科目に合わせて小児科を標榜することなども来院患者増加につながる可能性があります。

一方、高齢者の多いエリアであれば、バリアフリーで高齢者に優しい内装にすることや送迎を実施するなどのエリアの人口特性に応じたサービスにより、来院患者数の増加が見込めます。

診療圏調査の結果、同程度の予測来院患者数の物件があった場合、自院のコンセプトに合う開業地を選択すること、また開業後の集患対策を検討する際にも診療圏内の人口・世帯特性表が役に立つでしょう。

地域住民の心理的障壁

市町村合併でひとつの街になったものの、それぞれの地域の住民がもともと街の中で生活を完結していた場合など、その地に住んでいなければわからない心理的障壁もあります。

これに関して自分で調べるには限界がありますが、インターネットの検索や役場の人に話を聴くことなどはできるでしょう。

簡単に診療圏調査できるアプリやwebサイトはある?

療圏調査を自分で行う際には、以下のアプリやサービスが役立つでしょう。

日経メディカル開業サポート 簡易診療圏調査機能

「候補地の住所」「診療科目」「調査範囲(半径500m、半径1,000m、半径1,500m、半径2,000m、半径3,000mから選択)」の3つを入力するだけで簡単な調査が可能です。

参照:日経メディカル開業サポート 簡易診療圏調査機能

MEDIVAスマートフォンアプリ「診療圏調査」

日本全国の外来患者の簡易市場調査を、住所の入力のみで実施できます。

昼間人口、夜間人口をもとに算出した推定患者数を得ることができます。

加えて、検索地域の競合となる医療機関もチェックすることができます。

ダウンロードすれば登録不要で無料で使えます。調査結果が履歴として保存されるため、いくつかの候補地を比較検討したいときにも役立ちます。

参照:MEDIVA スマートフォンアプリ「診療圏分析」

MiSol (マイソル)「クラウドASPサービス」診療圏分析

日本全国の商圏分析が可能なクラウドASPサービスのコンテンツのひとつ「診療圏分析」なら、既存医療機関の推定患者数と実績データ比較が行えます。

5年ごとの市町村別将来推計患者数も取得可能です。

参照:MiSol クラウドASPサービス 診療圏分析

専門家に依頼するならどこがいい?

続いては、診療圏調査を行っている業者を紹介します。

シャープファイナンス株式会社

医療系のリースも行っているシャープファイナンス株式会社の診療圏調査は、無料で行ってもらうことができます。

調査希望地の住所(2か所までOK)や開業予定日などを記してメールするだけで実施してもらえるので、利用しない手はありません。

参照:シャープファイナンス株式会社

株式会社日医リース

医療専門リースの日医リースは、推定患者数のほかに競合先の情報一覧、診療圏地図なども提供してくれます。

そのほか、開業無料相談にも応じてくれるので、頼れるパートナーとして覚えておくといいでしょう。

参照:株式会社日医リース

富田薬品株式会社

調査エリアは九州7県のみ。

推定患者数および競合院数を除した1日平均来院予測数、診療圏内の年代別人口構成、分析結果地図を提供してもらえます。

参照:富田薬品株式会社

株式会社ケーエスケー

開業支援や診療サポートも行う株式会社ケーエスケーは、競合施設の状況なども考慮しながら推定患者数を算出するシステムを導入しています。

参照:株式会社ケーエスケー

まとめ

診療圏調査は、自分で行う場合もプロに頼む場合も、ひとつの結果のみで満足することなく、いくつかの結果を照らし合わせることがおすすめです。

算出された結果が大きく異なるなら、どの条件が違うために差が出たのかを確認したり、算出しなおしたりするのが正解。

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執筆 コラム配信 | クリニック開業ナビ

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