クリニックで納める消費税は原則課税と簡易課税どちらで計算するとお得?

クリニックで消費税を納める場合、「原則課税」または「簡易課税」の計算方式で、納めるべき金額を算出する必要があります。では、この2通りの計算方法にはどのような違いがあるのでしょうか? また、どちらのほうがお得度が高いのでしょうか? 詳しくみていきましょう。

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目次
  1. クリニックが課税事業者となる基準は?
    1. 基準期間の課税売上高が1,000万円を超えている
    2. 特定期間の課税売上高または給与等支給額の合計額が1,000万円を超えている
  2. 自由診療の売上が1,000万円未満でも課税事業者になったほうがいい場合とは?
    1. 医療機器代などの総額が高額である場合
    2. 事業者宛てに課税売上の請求書や領収書を出す必要がある場合
  3. 免税事業者が課税事業者になるためにはどうすればいい?
  4. クリニックで消費税を納める際の2種類の計算方法とは?
  5. 原則課税
  6. 簡易課税
  7. 原則課税と簡易課税のどちらがお得?
  8. 自由診療費や医療機器購入費以外にも課税対象となる取引がある
  9. 課税事業者となるべきなのかも含めてよく考えよう

クリニックが課税事業者となる基準は?

まずは、クリニックが課税事業者となる基準をみていきます。

基準期間の課税売上高が1,000万円を超えている

医療機関における社会保険診療には消費税がかかりません。労災保険や自賠責保険の対象となる医療も消費税の対象外となります。では、どうすればクリニックが課税事業者となるかというと、基本的には、自費診療の売上などの課税売上高が1,000万円を超えた場合です。課税売上高が1,000万円を超えた場合は、必ず課税事業者として消費税を払わなくてはなりません。

ただし、これはその年の売上高のことではなく、個人開業医であれば前々年、法人であれば前々事業年度を「基準期間」として、“基準期間の課税売上高が1,000万円を超えている場合”ということになります。

特定期間の課税売上高または給与等支給額の合計額が1,000万円を超えている

また、特定期間の課税売上高または給与等支給額の合計額が1,000万円を超えた場合も、課税事業者となります。「特定期間」とは、個人開業医の場合は前年の1月1日から6月30日までで、法人の場合は前事業年度の開始の日以降6カ月間となります。

自由診療の売上が1,000万円未満でも課税事業者になったほうがいい場合とは?

続いては、自由診療の売上が1,000万円未満でも課税事業者になったほうがいい場合について説明します。

医療機器代などの総額が高額である場合

医療機器の購入などに充てる金額が大きい場合、課税事業者となることがおすすめです。なぜかというと、免税事業者のままだと、購入費としてとられた消費税が戻ってこないからです。

たとえば、医療機器の総額が1億円だとすると、消費税として1,000万円がかかりますが、免税事業者の場合は消費税が還付されないので、1,000万円がクリニックの負担となります。一方、課税事業者であれば10%の消費税に該当する1,000万円はまるごと還付されます。

事業者宛てに課税売上の請求書や領収書を出す必要がある場合

健康診断や予防接種などは自費診療扱いとなります。これらを事業者から委託しておこなっている場合、その事業者からインボイスの発行を求められる可能性があります。自由診療の売上が1,000万円に満たない場合は、インボイス発行の義務はないので、対応しなくても法的には問題はないのですが、自費診療の委任先医療機関として選ばれなくなる可能性は十分にあります。

また、小児科での乳幼児健診や予防接種は医師会からの委託の場合がありますが、これに関しても、医師会側が仕入れ税額控除を受けるために、インボイス制度に対応している医療機関を選択する可能性が高いといえます。

免税事業者が課税事業者になるためにはどうすればいい?

免税事業者が課税事業者になるためには、「消費税課税事業者選択届出手続」をとる必要があります。具体的には、納税地を所轄する税務署長宛てに、「消費税課税事業者選択届出書」を出すことが必要です。ちなみに、一度課税事業者になると、その後、2年間は免税事業者に戻ることはできないので、2年後以降も課税事業者でいるメリットが大きいかどうかをよく考えることをおすすめします。

参照:国税庁「消費税課税事業者選択届出手続」

参照:国税庁「消費税課税事業者選択届出書」

また、消費税課税事業者となることを選択した場合は、インボイス制度にも対応する必要があります。

参照:国税庁「インボイス制度」特設サイト

クリニックで消費税を納める際の2種類の計算方法とは?

続いては、クリニックで消費税を納める際の2種類の計算方法について説明していきます。

原則課税

「原則課税」とは、「患者や取引先事業者から預かった消費税」から、「医薬品や消耗品などの購入のために支払った消費税」を差し引いて計算する方法です。

ただし、「保険診療収入を含む総収入に占める課税売上の割合」によって、差し引くことができる消費税の額が変わってくるため、計算方法が単純ではありません。

なお、差し引くことができる消費税額は「控除対象仕入税額」と呼びます。

簡易課税

「簡易課税」とは、「控除対象仕入税額」が、預かった消費税のうちあらかじめ定められた一定の割合であるとみなして計算する方法です。この「割合」を「みなし仕入率」といいますが、医業の場合、みなし仕入率は50%と定められているため、自院の場合いくらになるのかを細かく計算する必要がありません。

たとえば、1年間の自由診療収入が1,100万円だった場合、消費税分の100万円のうち、50%である50万円を控除した金額=50万円を消費税として納税することになるというわけです。

原則課税と簡易課税のどちらの計算方法を選択するかは各クリニックの自由ですが、簡易課税を選択したい場合、前事業年度の末尾までに届出書を出す必要があります。

原則課税と簡易課税のどちらがお得?

原則課税と簡易課税のどちらがお得であるかは、クリニックによります。そもそも、どちらがお得であるかが決まっているのなら、2通りの方法から自由に選択できるということはあり得ないでしょう。

具体的な比較方法としては、実際の控除対象仕入れ税額を計算して比較するほかないため少々手間がかかりますが、クリニックは非課税仕入れとなる人件費が占める割合が高いことから、簡易課税のほうが有利である場合が多いとされているので、人件費が少ない場合は原則課税のほうが有利な可能性があると覚えておくといいでしょう。

また、先に説明した通り、高額の医療機器を導入する予定、設備投資に大金がかかる予定がある場合なども、原則課税が有利になる可能性が高いといえます。

自由診療費や医療機器購入費以外にも課税対象となる取引がある

前述の通り、健康診断などを含む自由診療費や、医療機器購入費は課税対象となりますが、それ以外にも課税対象となるものはあります。

たとえば、院内で販売する歯ブラシなどもその一例です。ただし、「医薬品」「医薬部外品」の表示がされていない栄養ドリンク、服薬の補助として利用するためのゼリー飲料、経口補水液、特定保健用食品などは軽減税率の対象となるため、税率が10%ではなく8%なので注意しましょう。

また、差額ベッド代、診断書発行手数料、治験収入、医療機器売却に伴う収入なども課税対象となります。

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課税事業者となるべきなのかも含めてよく考えよう

インボイス制度がスタートした現在では、既存のクリニックのほとんどが、課税事業者となるべきかどうかは考慮済であるはずですが、これから開業を検討しているドクターは、まずは課税事業者となるべきかどうかから考えることになります。どちらが自院にとってメリットが大きいのかを、よく考えて比較検討してくださいね。

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提供形態

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