医療とICTは切っても切れない関係になりつつあります。例えば、現在医療の現場では医事システム・レセコンの使用はもはや常識です。実際、診療報酬の請求は約95%が電子レセプトによって行われています。また、今や電子カルテを導入していないクリニックの方が少数派です。ICTは医療現場の効率化、マンパワーの軽減、時間短縮に大きな効果を上げています。
医療の現場に浸透するICTとは?
ICTをどのように医療の現場に導入するか、ICTと医療の融合という問題は喫緊のテーマといえるでしょう。
ICTは、「Information and Communication Technology」の略で「情報通信技術」と訳されます。すなわち、全世界を覆うインターネットのネットワーク、これを用いてテキスト・画像・動画データをやりとりする技術、さらにはAI(人工知能)などもこの中に含むことがあります。
ICTの医療現場への投入はすでに始まっており、加速度をつけながら進化しています。
「全てのものをインターネットに接続せよ!」というのが「IoT」(Internet of Thingsの略)ですが、この流れは医療現場でも起こっています。
「電子カルテ」「レセコン」「オンライン診療」の導入
すでに一般的となっている「電子カルテ」「レセコン」は医師・クリニック院長、またクリニックスタッフの時短に役立っています。患者さんのカルテを電子的にデータベース管理することで、閲覧しやすくし、カルテを整理するといった時間をなくします。
また、レセコンは手間のかかる診療点数の作業をより簡単にし、間違いをなくします。明細書・処方せんの発行、診療報酬の請求も電子的に行えるため、かつてのような時間はかからなくなっています。
また、コロナ禍で注目されている「オンライン診療」は、来院しなくてもビデオチャットで患者さんの診療を行うというものですので、患者さんは来院までの移動時間をなくすことが可能です。また、「オンライン診療」では診療代金の精算もオンラインで決済されますので、クリニックスタッフの応対時間が必要ありません。
「問診システム」の導入
問診をネット経由で行えるシステムはすでに登場しています。実際の診察の前に必要な問診を先に行っておこうというわけです。これを患者さんに自分で行ってもらえれば医師・スタッフの時短につながります。患者さん側からしても、自分の好きな時間、好きな場所(スマホ対応であれば)で行え、診察に集中できます。医師・クリニック院長と患者さん双方にメリットがあるのです。
また、実はこれは「オンライン診療」を実現するためにも必要な部分です。「オンライン診療」を行うには、「オンライン診療」可能な症状なのかをまず判断しなければりません。
そのためにはどうしても問診を行い、問診票を作成する必要があるのです。
また、さらに踏み込んで問診をAIにやってもらおうというシステムも登場しています。患者さんの質問への応答からある程度大まかな診断まで終えておこうというわけです。医師としては賛否両論あるかもしれませんが、このようにICTは人間の負担を極力減らす方向で進化を続けています。
24時間計測しデータを記録するデバイス
すでに使われ始めていますが、血糖値を24時間計測しデータを記録するデバイスがあります。糖尿病患者の増加は日本でも問題になっていますが、これまで糖尿病患者は通院して血液検査を行い、血糖値について医師の診断を受けていました。
しかし、これではその日、その時の血糖値しか分かりません。このデバイスは、患者さんに1週間装着してもらいますが、24時間 × 7日間の普段の生活で血糖値がどのように変動しているのかを知ることができるのです。
蓄積されたデータは、医師のパソコンにUSB接続されたデバイスから瞬時に読み取ることが可能で、血糖値の変動がすぐにグラフとして表示されます。これなどはICTによる血液検査時間を短縮する良い例です。
※医療現場にも投入されていますが、実はこの種のデバイスはAmazonなどでも一般に購入可能です。
読影をAIにやらせよう!
AI関連技術が現在最も進化しているのは間違いなく中国ですが、例えば、MRIなどの画像診断をAIにやらせようという試みがすでに始まっています。現在、人間の目で読影を行って患者さん、医師にフィードバックしているわけですが、これでは人の負担が大きく、また重要なポイントを見逃す可能性もあります。
これをAIに任せることができれば、人間の負担は大きく軽減できます。
また読影が完了したら、そのデータをネットワークを通じて医師に送信すれば、いち早く患者さんにフィードバックすることが可能です。これなどもまさにICTによる時短の例。精度が上がり、それが実証されれば日本でも導入が進むと期待されています。
ICTは確実に医療現場のこれまでの常識を変えていきます。また、それによって医師・クリニック院長は、自分にしかできないことに注力できるようになります。患者さんにより良い医療を提供することにつながりますから、患者さんの満足度を上げることになるというわけです。ぜひ、自分のクリニックに活用できるICTについて一考してみてください。
データ引用元:『社会保険診療報酬支払基金』「令和2年7月診療分」
特徴
対象規模
オプション機能
提供形態
診療科目
この記事は、2020年11月時点の情報を元に作成しています。