(1)【セミナーレポ】クリニックEXPO「地域医療におけるクリニックの役割と経営」

2020年10月15日、株式会社リード エグジビション ジャパンが開催する、第一回クリニックEXPO 東京にて、クリニックの地域医療実現に関するセミナーが行われました。

当セミナーでお話しされた今村 聡 氏は、東京都・板橋区の医療法人社団聡伸会 今村医院の理事長を務めるほか、2012年より日本医師会・副会長に就任し様々な活動をされています。今回は、日本医師会としても必要性を強調している「地域医療」という視点から、これからのクリニック開業・経営に求められる要素をお話しいただきました。

本記事は、当セミナーの要点をまとめた内容となっています。

<セミナー概要>
・日時:2020年10月14日(木)15:00〜16:30
・会場:千葉県:幕張メッセ(第一回 クリニックEXPO[東京]セミナーにて)
・費用:無料
・プログラム:『地域医療におけるクリニックの役割と経営』
・登壇者:公益社団法人 日本医師会 副会長 今村 聡

はじめに

今回私は、これからの医療体制の中で、診療所が果たさなければいけない役割について話していきます。診療所を開業する方も、リスクを軽減したいはずですから、まずは日本の医療の特徴について理解していただき、その理解を持った上で開業・経営に関する計画を立てていただければと思います。

これからの日本の医療

日本は、超高齢社会でかつ少子化という問題があります。特に私が注視している点は、高齢化率が上がることよりも、少子化の方です。

日本が抱える課題:高齢化率の推移と将来推計
画像提供:公益社団法人 日本医師会 副会長 今村 聡

なぜかというと、社会保障を支えている世代が圧倒的に減っていくからです。そうすると必然的に税金も下げられなくなり、社会保険料も負担しきれなくなります。
さらに、若い人たちは一つの病気に対して治療を受ければ治りますが、高齢者は複数の病気を抱え、治療を施しても元どおりにならなくなってきます。
このような状況に対応するには「治す医療」ではなく「支える医療」に大きくシフトし、医療を含めた社会の構造を大きく変えていく必要があります。
医療は医療、介護は介護、福祉は福祉と分けるのではなく、ひとつの地域で、住まいも含めて一体的に提供していくのが超高齢社会のあり方です。

以上のような日本全体の問題をまずは覚えていただければと思います。

医療界の問題に移ると、日本の医師は不足していると言われています。地域や診療科で不足する医師をどう増やし医療提供するのかという点は、今後の課題のひとつです。
医師不足に伴って、診療科、地域ごとに医師が偏在している特徴もあります。地方は医師が少なければ当然医師の労働時間が長くなる可能性があり、それが非効率な労働につながります。コロナ禍によって医療崩壊の危機も起きていますので、有事の際にも対応できる医療提供体制を整えておくことも大切だとわかりました。
しかし、人やモノをどの程度提供すればいいのかといった指標がありません。財務的な問題もあります。

現在の日本は自由開業制を採っているため、医師になると、プロフェッショナルオートノミーに基づいた上で、場所も診療科も自由に選んで開業できます。すでに開業されている先生方も、できるだけ患者さんが集まって、自分の経営が上手くいくように場所を選定されたはずです。
すると、日本の人口が都市部に集まることから、開業する地域も自然と都市部が増えてしまい、地方の医療供給が手薄になりかねません。

このような状況を改善するために、厚生労働省は、医師偏在対策というものを提唱しています。(参考:厚生労働省:第35回医師需給分科会 【参考資料3】医師確保計画等を通じた医師偏在対策
さらに、この対策としては、2014年に医療法改正によって生まれた「地域医療構想」が関係してきます。例えば有床診療所を含む医療機関が、ベッドの機能を高度急性期、急性期、回復期、慢性期の4つに分け、医療機関ごとに病棟単位でどの機能を果たすベッドをいくつ持っているのか報告する。そして、地域の中での高齢化率や医療需要を見ながら、それぞれの役割ごとのベッドをどの程度整備すべきかを適正に構築していくということも解決法のひとつです。

しかし、現状は簡単ではありませんので、まずは経営理念をもとに、病床の機能をどのように地域で生かすのかを考える必要があると思います。
以上のような問題がある中で、新規開業を希望する先生たちには、これから話すような役割を担っていただきたいと思います。

外来機能の明確化・かかりつけ医機能の強化

まずは、地域でどういった医療を担うかを考えていただきたいです。ここでの「医療」とは、自分の専門性のことではなく、学校医が不足していれば学校医をする、予防接種や健康診断を積極的に行う等のことです。地域で不足する医療を何らかのかたちで担っていただきたいと思っています。
また、診療所として、外来機能・かかりつけ機能をしっかりと持っていただきたいです。医療の提供状況を入院患者と外来患者の合計で見た場合、現在は約8割が外来です。外来患者のうち、診療所を受診する人が約7割、そして病院が3割となっていることからも、外来医療の担い手は圧倒的に診療所が多いことが分かります。

外来医療の提供状況(診療所が7割)
画像提供:公益社団法人 日本医師会 副会長 今村 聡

都道府県別に見ると、医療機関の多い都道府県であればあるほど外来患者数が多い傾向にあり、小児や高齢者の外来受診率が非常に多くなっているというのが実態です。
外来需要は、北海道や東北地方、四国地方など、都市部以外の地域であればあるほど高まっており、供給が追いつかない状態です。(参考:厚生労働省「第19回医療計画の見直し等に関する検討会(令和2年3月13日)資料1」)
つまり、先ほど話した、地域ごとの医師の偏在化が影響していると言えます。

さらに、政府は、大病院は充実した人員配置や施設設備を必要とする入院、専門外来の対応に努める必要があるといった話をしています。(参考:「全世代型社会保障検討会議 中間報告(令和元年12月19日)(抄)」)つまり、大病院は、外来については紹介患者を基本とする程度に止めるわけですから、これでますます外来を診る役割は診療所に傾きます。

そして、厚生労働省は、今後の医療のあるべき姿として、病院・診療所における外来機能の明確化と、地域におけるかかりつけ機能の強化をすべきだと表明しています。このような状況を見ながら、開業場所を見極める必要があります。

しかし現状、外来に関する医療情報の可視化ができていないことから、厚生労働省は「外来医療計画」というものを作り、クリニックの新規開業を考える医師たちに、開業して5年後、10年、20年、30年後までを見通した情報提供ができる体制を目指しています。そのためには、地域の医師数、人口比率や高齢化率を加味した上で、未来を予測した現実的な情報提供が求められています。その部分はこれから詰めていくことになっています。
(参考:厚生労働省「外来医療に係る医療提供体制の確保に関するガイドライン 」)

新型コロナウイルス感染症の感染拡大と地域医療

さらに今回、新型コロナウイルスの関係で、医療機関はクラスター発生や医療需要の逼迫などがありました。世界はこれから、新型コロナウイルス感染症と共存していかなければなりませんし、コロナウイルス感染症とは違った感染症が蔓延するかもしれませんから、医療提供体制を考えていかなければなりません。

特に、緊急事態宣言が発動した頃は、医療機関に行くことが危険だと考えている人も多く、健診・検診の受診率が下がったり、予防接種の数が減るようなことが一時的に起こりました。
数字的にも、病院に行くことを不安に思う人はとても多いことが分かっています。また、2020年の4月〜6月にかけての入院・外来は、ともに非常に減っていることも判明しました。

日本医師会の調査でも、4月〜5月にかけて大体平均すると15%〜16%の医業収入が減っており、特に耳鼻科、小児科の減少が著しいです。

医療収入対前年同月比(コロナにより2020年4/5/6月が減少)
画像提供:公益社団法人 日本医師会

この状況を鑑みて、「新型コロナウイルス緊急包括支援交付金」をはじめとする、補助事業や税制上の手当がなされることとなりました。しかし、開業医の皆さんは、補助金や制度をどのように活用できるのかあまり把握しきれておりません。本日セミナーに参加されている方は、コンサルティングや医師のサポートをされる方が多いようですので、ぜひ適切なアドバイス、補助の案内をしていただければと思います。

そして日本医師会では、患者さんに安心して医療機関に来院していただけるよう、院内における新型コロナウイルス感染症対策チェックリストを満たした場合に「感染症対策実施医療機関 みんなで安心マーク」を発行する取り組みにより、各医療機関に、感染防止対策の徹底を呼びかけています。

私が運営する、板橋区の今村医院の入り口にも貼らせていただき、患者さんには「安心して受診してください」とお伝えしています。日本医師会では、新しい生活様式に合致した医療提供体制を整えるべく、さまざまな医療機関で安心マークの提示をしていただけるようアナウンスしています。

申請は医師会のサイトから可能ですので、多くの医療機関にご活用いただければと思います。

まとめ

最後に、本日話したことをまとめますと、地域医療におけるクリニックの役割としては、かかりつけ医機能を十分に発揮してほしいです。
大きく分けると、まず自分が専門的に持っている医療的な機能を発揮する。そしてもう一つは社会的な機能、つまり行政や保健所との連携や、予防接種や、子供たちの健康を守るための学校医をやっていただくといったことです。
そういったことをしっかり果たしていただくことで、先生が地域に信頼されて、患者さんが集まってくるという流れになると思います。

これからのクリニック経営では、病院から地域、医療から介護といった今後の医療提供体制の流れを意識する必要があります。自身の専門性のみで地域医療を行っていくことは困難です。地域の中で連携をとりながら、地域にとって有益な医療提供を行うことが経営安定化につながるということをご理解いただければと思います。

Mac・Windows・iPadで自由に操作、マニュア ルいらずで最短クリック数で診療効率アップ

特徴

1.使いやすさを追求したUI・UX ・ゲーム事業で培って来た視認性・操作性を追求したシンプルな画面設計 ・必要な情報のみ瞬時に呼び出すことが出来るため、診療中のストレスを軽減 2.診療中の工数削減 ・AIによる自動学習機能、セット作成機能、クイック登録機能等 ・カルテ入力時間の大幅削減による患者様と向き合う時間を増加 3.予約機能・グループ医院管理機能による経営サポート ・電子カルテ内の予約システムとの連動、グループ医院管理機能を活用することにより経営サポート実現 ・さらにオンライン診療の搭載による効率的・効果的な診療体制実現

対象規模

無床クリニック向け 在宅向け

オプション機能

オンライン診療 予約システム モバイル端末 タブレット対応 WEB予約

提供形態

サービス クラウド SaaS 分離型

診療科目

内科、精神科、神経科、神経内科、呼吸器科、消化器科、、循環器科、小児科、外科、整形外科、形成外科、美容外科、脳神経外科、呼吸器外科、心臓血管科、小児外科、皮膚泌尿器科、皮膚科、泌尿器科、性病科、肛門科、産婦人科、産科、婦人科、眼科、耳鼻咽喉科、気管食道科、放射線科、麻酔科、心療内科、アレルギー科、リウマチ科、リハビリテーション科、、、、

今村 聡

取材協力 日本医師会 副会長 | 今村 聡

秋田大学医学部卒業。三井記念病院、神奈川県立こども医療センター等で勤務の後、浜松医科大学講師を経て、1991年に今村医院を開設し、現在は医療法人社団聡伸会 今村医院 理事長。板橋区医師会理事、東京都医師会理事等を歴任し、2012年より日本医師会 副会長。


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執筆 CLIUS(クリアス )

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