ここ数年で無料公衆無線LAN、いわゆるフリーWi-Fiを導入する医療施設が増えています。待合室で診察を待つ患者さんは、データ通信量を消費せずにインターネットが利用できますから、導入を検討している医師も多いでしょう。今回は、この「フリーWi-Fi」の導入についてまとめてみました。
まずはインターネット環境を整備
フリーWi-Fi環境を構築する前に、まずはインターネット環境の見直しを行いましょう。インターネット環境が悪ければ、フリーWi-Fi環境を整えても意味がありません。
待合室にフリーWi-Fiを導入する場合は、病院内の機器に加え、複数の患者さんも同時に接続するため、通信速度が不安定になりがちです。もし通信速度が遅いインターネット回線と契約をしているのなら、通信速度の高いサービスに切り替えるなど、フリーWi-Fi環境導入の際に見直してみるといいでしょう。
料金は高くなりますが、複数の機器を同時に接続する場合は、通信速度が安定する「占有型」のインターネット回線がおすすめです。また、法人向けのインターネットサービスには複数の機器を同時接続することを想定したプランもあり、クリニックの規模(どれだけの集患を予想しているかなど)とコストを踏まえて検討するといいですね。
フリーWi-Fiサービスを選ぶ際のポイント
インターネット環境を整えたら、次はフリーWi-Fi環境の構築です。家電量販店でWi-Fiルーターを購入して自分で環境を整える……というのもできなくはありませんが、法人向けのサービスを活用するほうがコストや使い勝手を考えると得策です。
フリーWi-Fiサービスを選ぶ際のポイントとなるのが、
- 料金(初期費用/月額料金)
- 通信速度
- 同時接続数
の3点です。
料金は業者やサービス内容によって大きく異なり、初期費用も機器を購入するかレンタルするかなどでも変わってきます。例えば、「NTT東日本」が提供している「ギガらくWi-Fi」の「ハイエンド6プラン」というサービスは、最低利用期間24カ月という縛りはありますが、すでにインターネット回線がある場合は初期費用は不要、月額4,180円(税込)で利用できます。
また、機器を購入するサービスでは「BUFFALO」の「FREESPOT」が挙げられます。こちらは23,800円~39,800円(税抜)の機器購入費が必要ですが、購入後はインターネット回線の利用料金のみでWi-Fiの月額使用料金はなし。中には通信速度や接続台数は少ないものの、料金は安いというプランもあります。
料金に大きく関わるのが通信速度(利用できる通信規格)と同時接続数です。Wi-Fi区間の最大通信速度や接続数の上限(推奨機器数)は機器によって異なり、当然ながら高性能な機器になるほどレンタル時の月額利用料金や本体購入費用も高くなります。
現在の最新通信規格は「IEEE802.11ax」と呼ばれるもので、先の「ギガらくWi-Fi」で提供している「ハイエンド6プラン」がこの通信規格に該当します。非常に速く安定した通信が可能で、5GHz帯(速度は早いが障害物に弱い)と2.4GHz帯(速度は5GHzより遅く干渉を受けやすいが遠くまで届く)という、特徴の異なる帯域を使い分けられます。これから導入するのであれば、今後主流になる「IEEE802.11ax」のサービスを選ぶといいでしょう。
同時接続数は安価なプランだと20台ほど。グレードの高いプランの場合は200台以上の同時接続が可能です。こちらはクリニックの規模や想定する接続台数によって決めるといいですね。ただ、通信が不安定で「あのクリニックのWi-Fiは使えない」と患者さんにネガティブな印象を持たれるのは避けたいところですから、余裕のあるプランを選ぶほうがいいかもしれません。
ほかにも、「インターネットがよく分からない」「Wi-Fi機器の設定が不安」という場合は、設置補助やアフターケアなど、サポート面が充実しているプランを優先して選ぶのもいいでしょう。
患者さんには分かりやすく利用方法を説明しましょう
せっかくフリーWi-Fiを導入しても、使ってもらえないと意味がありません。Wi-Fiが利用可能であることはもちろん、セキュリティー対策としてパスワードや登録が必要な場合もあるので、利用方法についても分かりやい説明を掲示しておきましょう。また、どんなに通信速度の高い機器を導入したとしても、インターネット回線そのものの影響や、接続台数、また複数の人が動画を見るなど負荷が大きな場合は通信が不安定になることも少なくありません。余計なトラブルを避けるためにも、そうした注意書きも添えておくといいかもしれませんね。
待合室へのWi-Fi導入は、診察を待つ患者さんのストレスを減らすことにもつながります。法人向けサービスと契約し、機器を設置する必要はありますが、メリットも大きいため、ぜひ検討してみてはいかがでしょうか。
特徴
診療科目
この記事は、2020年12月時点の情報を元に作成しています。