2021年3月から「オンライン資格確認」がスタートします。従来は患者さんから保険証を預かり、スタッフが確認システムに番号を入力することで資格確認を行いますが、これをオンラインで行うのがこのシステム。スタッフが患者さんの保険証番号を入力して確認する手間が省けるため、作業効率の向上につながると目されています。では、この「オンライン資格確認」を導入するにはどうすればいいのかご存じでしょうか?
オンライン資格確認導入に向けての4つのステップ
オンライン資格確認システムを導入する方法は、大きく4つのステップに分かれています。以下に、ステップごとの解説と注意点をまとめてみました。
ポータルサイトに登録してカードリーダーを申し込む
オンライン資格確認に参加する場合は、最初に「医療機関向けポータルサイト」に登録する必要があります。ポータルサイトに登録することで、オンライン資格確認に必要なカードリーダーの申し込みやオンライン資格確認の利用申請、また補助金の申請などが行えるようになります。
登録は、ページの「初めてご利用になる方」から行います。メールアドレスを登録すると、そのアドレス宛てに「アカウント登録用URLを記載したメール」が届くので、登録用URLにアクセスして必要事項を入力。これで登録は完了です。
次にオンライン資格確認に必要な「顔認証付きカードリーダー」の申し込みを行います。今回のオンライン資格確認導入に際して、病院は最大3台、診療所は1台まで無償で顔認証付きカードリーダーの提供を受けることができます。機器は受注生産のため、オンライン資格確認がスタートする3月に導入したい場合は、早期に申し込みをしておかないと間に合いません。
ポータルサイトに利用できる顔認証付きカードリーダーのカタログがあります。機器の性能比較もされているので、こちらから利用したいカードリーダーを選びましょう。
システムベンダーへ見積もり依頼・発注
オンライン資格確認は、レセプトのオンライン請求システムと同じ閉域網のインフラを用いて行われます。そのため、オンライン請求システムを利用していない場合は、同時にオンライン請求システムも導入しないといけません。ポータルサイトでは、同時にレセプトのオンライン請求の利用申請が可能です。
また、レセプトのオンライン請求システムを導入している場合でも、機器やネットワークの設定の見直しをする必要があります。必ずシステムベンダーに見積もりを依頼するようにしましょう。見積もり内容に問題がなければ、そのまま発注します。NTT東日本の「オンライン資格確認スタートパック」など、オンライン資格確認の導入をサポートするための専用サービスを利用するのもいいでしょう。
導入・運用準備
システムベンダーと相談して、ネットワーク環境などに問題がなく、オンライン資格確認システムの導入が可能であれば、次はポータルサイトで「オンライン資格確認の利用申請」と「電子証明書発行申請」を行います。
オンライン資格確認の利用申請は「利用申請・補助申請される方」という項目の中にあるので、そのページから申請を行います。申請が受理されると、登録したメールアドレスにマスタアカウント(ログインID)が送られてきます。
また、電子証明書発行申請も同じく「利用申請・補助申請される方」という項目の中にあるので、そこから申請を行いましょう。電子証明書は、利用者がデータを安全に送受信するために必要なものです。登録が終わると電子証明書のダウンロードに必要なIDとパスワードが送られます。また、電子証明書の発行は1枚当たり1,500円の費用が必要です。
その後、機器が納品されたら、システムベンダーが設定や運用テストを実施し、使用開始の準備をします。その際、医療機関側も受付業務の変更点確認や患者さんへの案内準備など、機器導入に向けての準備を行いましょう。導入当初は問い合わせの増加や、機器操作の説明に時間を要するなど混乱が予想されます。トラブルを未然に防ぐためにも、あらゆる事態を想定して用意しておく必要があります。
補助金の申請
令和3年3月までに顔認証付きカードリーダーの申し込みを行った場合は、導入費用の補助を受けることができます。補助金の申請はポータルサイトの「利用申請・補助申請される方」の項目から行えます。2020年12月9日時点ではまだ準備中ですが、令和3年2~3月にはポータルサイトから申請できるようになる予定です。
オンライン資格確認の導入は大きくこうしたステップで行われます。ポータルサイトにも導入方法が案内されているので、まずは登録して、そこから案内に従って手続きを進めていくといいでしょう。
オンライン資格確認の導入費用は?
オンライン資格確認を導入するに当たり、やはり気になるのは「費用」だと思います。ここでは、導入費用や補助金など、オンライン資格確認に関する「お金」についてまとめました。
診療所は上限42.9万円を実費補助
先述のように、令和3年3月までに顔認証付きカードリーダーの申し込みを行った医療機関・薬局は、カードリーダーの無償提供、導入費用の補助を受けることができます。補助金額などの詳しい内容は以下のとおりです。
病院の場合
カードリーダー台数 | 補助内容 |
カードリーダーを1台導入する場合 | 基準とする事業額210.1万円を上限に、実費補助 |
カードリーダーを2台導入する場合 | 基準とする事業額200.2万円を上限に、実費補助 |
カードリーダーを3台導入する場合 | 基準とする事業額190.3万円を上限に、実費補助 |
診療所・薬局(大型薬局、それ以外の薬局全て)の場合 | 基準とする事業額42.9万円を上限に、実費補助 |
上記のように、診療所の場合は、カードリーダーの無償提供に加えて、42.9万円の実費補助となります。例えば、オンライン資格確認に必要なパソコンの購入費、レセコンのシステム改修費、ネットワーク環境の整備費用に対する補助が受けられるのです。
以前は病院・大型チェーン薬局(グループで処方箋の受付が月4万回以上の薬局)の場合はかかった費用の2分の1、診療所・薬局(大型薬局以外)の場合は4分の3までしか補助を受けることができませんでしたが、補助内容の見直しがあり、現在の実費補助となりました。
補助金の対象や、より詳しい内容は以下のページからご確認ください。
「医療提供体制設備整備交付金実施要領」に関するQ&Aについて
オンライン資格確認導入の費用は?
いくら機器の無償提供や補助が受けられるといっても、システム改修やネットワーク導入費用があまりに高額すぎると話になりません。では、システム改修やネットワーク導入の費用はどうなっているのでしょうか?
基本的にはシステムベンダーに見積もり依頼をして、どのくらいの金額になるのかを調べてもらうことになります。業者や医療機関の規模や要望などで金額は左右されるため、医療機関側が負担する費用は40万円ほどになると見られています。
実際、NTT東日本の「オンライン資格確認スタートパック」の場合は、既設の回線を利用する場合、新たに回線を敷設する場合でも約30万円(回線敷設費、パソコンやルーター代、設置設定費用を含めた金額)となっています。
診療所の場合は、事業額42.9万円を上限に実費補助となりますから、例えばイニシャルコストが40万円だった場合は全てを補助で賄うことができます。レセプトのオンライン請求の導入など、ネットワーク環境の整備にもつながるでしょう。導入を検討しているのなら、補助が受けられるタイミングで申し込むのが得策かもしれません。
もちろん、回線の使用料や保守サポートなどは、別途月額費用が発生する場合がほとんど。通信費と保守費はだいたい月に1万円ほどになるのが一般的です。こうしたランニングコストについても考える必要があります。
2021年3月から導入される予定の「オンライン資格確認」について、導入のプロセスや必要となるコストをご紹介しました。オンライン資格確認にはレセプト返戻の削減や事務の効率化などさまざまなメリットがありますが、クリニック側の負担も少なくありません。補助が受けられることは魅力的ではありますが、導入するかどうか悩んでいる場合は、デメリットも踏まえ、慎重に検討するといいですね。
この記事は、2021年1月時点の情報を元に作成しています。