クリニック院長は医師であると同時に経営者でもあります。経営者はある程度は税制についての知識も持っていなければなりません。というのは税理士もピンキリで、ギャラに見合った仕事をしてくれない先生もいるからです。クリニックの経営を軌道に乗せ、利益を確実に出すためにできる限りの節税を行うのは当然です。
医師の長時間労働に配慮した税制改革が行なわれた
クリニックの医師・院長の皆さんは1カ月に何時間ぐらい働いていらっしゃるでしょうか? クリニックスタッフの先頭に立って率先して時間外労働もこなしているのではないでしょうか。
『厚生労働省』の「医師の働き方改革について」(令和元年6月)によれば、月に80時間以上の時間外労働を行う医師は「40.5%」に達します(ただし勤務医の場合)。今回のコロナ禍によって、医師の過剰労働についてあらためて取り上げられていますが、勤務医だけではなく、労働時間が多くてなかなか休めないというクリニックの医師・院長もいらっしゃるはずです。
医師の労働時間短縮を行うことは焦眉の急であるという認識の下、2019年4月1日にいわゆる「働き方改革」として、時間外労働がこの上限を超えてはならないという規制が敷かれました。2024年4月からは、診療従事勤務医は年960時間/月100時間未満(例外あり/休日労働含む)、地域医療確保暫定特例特別水準(医療機関を特定)としては年1,860時間/月100時間未満(同上)などとなります。
「地域医療確保暫定特例水準」というのは、救急医療現場などの特別に認められる場合で、基本的に医師の時間外労働が認められるのは原則年間960時間/月100時間未満です。
この労働時間短縮に合わせて、税制改革が行われたので、それについて知っておきましょう。
参照・引用元:『厚生労働省』「医師の働き方改革について」
「特別償却」は短期的に有利!
医師の労働時間短縮に効果のある資産を購入すると、その資産の減価償却がよりお得になる税制が導入されました。通常の減価償却の限度額にプラスして、その資産の取得金額の15%相当額を特別償却限度額まで利用できるのです。
つまり、減価償却枠が大きくなるのでその分税金を安くすることができるのです。
この労働短縮に効果のある資産は、ソフトウエアでもハードウエアでも該当します。例えば、電子カルテやパソコン、MRI、CTなど、労働時間短縮に役立つものならいいのです。勤怠管理に役立つICカード、タイムカード、勤怠管理ソフトウエアもOKです。
『厚生労働省』の資料によれば、書類作成時間を短縮するための「AIによる音声認識ソフト」、バイタルデータの把握のための設備「ベッドサイドモニター」「患者モニター」などもこの時短用資産(勤務時間短縮用設備等)になります。
ただし、この「勤務時間短縮用設備等」は、2019年4月1日から2021年3月31日までに取得、製作されたもので、また1台または1基の取得額が30万円以上のものでなければいけません。
期限が近いので早く利用したいところですが、この税制はあくまでも短期的にお得という話であることに注意してください。
減価償却は結局その資産の取得金額までしか行えないので、長期的に見れば同じということです。先々の減価償却分を先取りして行えるというのに過ぎません。しかし、「今期は税金を減らしたい」といった希望があるのであれば、使わない手はありません。税理士が何も言わなかったらこちらから提案をしてみてください。
参照・引用元:『厚生労働省』「地域における医療提供体制の確保に資する設備の特別償却制度(医療機器に係る特別償却の拡充・見直し)」
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この記事は、2021年2月時点の情報を元に作成しています。