医師が求められるコミュニケーションスキルとは

医療もサービス業の一つですので、当然患者さんとのコミュニケーションは重要です。特にこれからクリニックを開業しようという医師には高いコミュニケーションスキルが求められます。クリニックも過当競争の時代です。患者さんから必要な情報を引き出し、信頼を得るのみならず、クリニック経営を軌道に乗せるための集患、リピーターを増やすためにも、コミュニケーションスキルが必要だからです。

では、医師・クリニック院長に求められるコミュニケーションスキルとは、どのようなものでしょうか。

医院を変えたい理由の6割がコミュニケーションスキルによる問題

これからクリニックを開院する医師にぜひ参照してほしいデータがあります。『株式会社メディアコンテンツファクトリー』が公表している「医療機関受診に関する意識調査報告」というリポートです。

同リポートでは、「かかっていた医療機関を変えたいと思った経験のある方にお聞きします。医療機関を変えたいと思ったきっかけを教えてください」というアンケートを行っています。結果の一部を抜粋すると以下のようになります。

医療機関を変えるきっかけ

第1位待ち時間が長い34%
第2位医師の対応・態度が不快だった27%
第3位症状が改善しなかった26%
第4位自宅や職場が変わり遠くなった23%
第5位医師から満足な説明が得られない21%
第6位診断結果に疑問を感じた15%
第7位治療方針に疑問を感じた14%
同7位期待したほどの治療結果が得られなかった14%
同7位診察の予約が取りにくい14%
第10位医師が自分の話を十分に聞いてくれない13%

参照・引用元:『株式会社メディアコンテンツファクトリー』「医療機関受診に関する意識調査報告」p.30

どれも患者さんにとってみれば当然の回答ですが、第2位は「医師の対応・態度が不快だった」です。また、第5位に「医師から満足な説明が得られない」、第10位には「医師が自分の話を十分に聞いてくれない」が入っています。

これは医師のコミュニケーションに「不備」があれば、患者さんがクリニックから去ってしまうことを如実に示しています。患者さんはすぐによそのクリニックにかかりますし、それだけならまだしも、ネットの掲示板に「あのクリニックでこんなことを言われた」などと医院の悪口を書かれる可能性だってあります。そうなるとクリニックの評判は非常に悪くなり、集患も困難になるでしょう。誰でもネットが使える時代になって、医師にはよりいっそうコミュニケーションスキルが求められているというわけです。

「1人ぐらい患者さんを逃したっていい」という考え方は間違っています。その1人の心をつかむことが重要なのです。「医療もサービス業の一つ」という考え方が大事です。サービス業では顧客とのコミュニケーションを重視するのは当然のことです。

コミュニケーションスキルに問題があると悪い口コミが入りやすい

患者とのコミュニケーションを重視しなかったら、患者が離れていきやすくなるだけでなく、「悪い口コミが入りやすくなる」というデメリットもあります。

「あのクリニックの医師はしっかり話を聞いてくれない」「医師が看護師に対しても患者に対しても不愛想でクリニックの雰囲気が悪い」「問診票に詳しく記載しても目を通してくれないから二度手間になる」などのネガティブな意見を書き込まれると、それを目にした他の潜在患者からも、「あのクリニックに行くのはやめておこう」と思われてしまいます。

つまり、今いる患者が離れていくだけでなく、今後来院してくれる可能性があった人からも避けられてしまうということです。

信頼を得る医師のコミュニケーションとは?

患者さんの信頼を得るために、医師のコミュニケーションとはどうあるべきでしょうか?

宮城惠子氏(社会医療法人仁愛会浦添総合病院)と伊佐雅子氏(沖縄キリスト教学院大学)の研究論文(『KYUSHU COMMUNICATION STUDIES』Vol.10,2012,pp.14-36)によれば、「信頼できる医師の条件上位21項目」を挙げており、特にポイントの高かったものは以下の4項目になります。

  1. 医師が治療の選択についての充分な情報を与えること
  2. 治療に関して、医師の腕が優れていること
  3. 医師が分かりやすく説明すること
  4. 医師が治療に関するいろいろなアドバイスをしてくれること

参照・引用元:論文「患者の視点からみた医療不信とコミュニケーション」p.22

「2」は技術的なことですが、「1」「3」「4」はまさにコミュニケーションについてです。信頼できる医師だと患者さんに思われるためには、「十分な情報」を「分かりやすく」説明し、かついろいろなアドバイスも行うよう留意することが基本なのです。

医師に不信感を持つ対応事例

逆に、不信感を持たれる場合、医師は患者さんとどのようなコミュニケーションを取っているのでしょうか。上記論文では医師に不信感を抱く対応事例について実際に患者さんに聞き取り調査を行っています。以下に一部を引用し、紹介します。

関係拒否

患者Aさんは40歳代の男性で運転手である。2年前に会社の健康診断で肝疾患と診断され通院し、入院歴はない。知人の紹介で医者を選んだ。小さなお子さんが2人いる。

Aさんは、インタビューの中で、「頭にきていますよ」と応え「質問内容も忘れた」「完治するか、……しないか」と語り「不安にする医者ですよ」と思いを吐きだした。続いて、私は、この先生はどうでもいいと言う感じで通っています。検査してくれるし、数字で体のことを表してくれるから通院はしていますけど……

医者の上から目線

患者Cさん、現在30歳代で事務職として勤務。16歳の時に、骨疾患を発症し、最近再発し、入退院を繰り返している。

患者Cさん16歳の時、診察の日に病気のことが気になりあれこれ医者に質問すると、その医者は「質問が多すぎる」「患者のくせに」と言った。そのあとから、「外来に行く日になるといつも不安が募り、胸がどきどきして普通ではなかったですよ」と当時を語った。

相手無視の会話

患者Fさんは、60歳代で、定年退職後、ボランティアをしている。生活習慣病で主治医が複数いる。通院歴7年で入院歴があり、医療機関や医者の情報収集をするタイプである。

患者Fさんはいろいろ医者の評判や専門を調べて病院をさがした。評判のよい医者を選んで診察を受ける準備をしたのにもかかわらず、外来で3時間待たされた。診察が始まったが3時間待った私の気持も考えず、いきなり「診ないと分からないでしょう」と言われ不快な感情になった。「診察が婦人科と同じだったんです。」「診察が嫌という私の気持ち」「そうですね」と理解してほしかった。「3時間も待ったのに、接し方が冷たすぎ……」と語った。

意味の取り違い

患者Gさんは60歳代の主婦、生活習慣病で通院中。4名家族である。娘の診察の場面での会話である。

患者Gさん、15年前に、長女のお腹が痛くなり「病院へ、連れて行ったんですよ」レントゲンの検査を終わって「盲腸や腸炎でもありません」と説明されたので、患者Gさんは、娘のことが心配で思わず「ほんとうに大丈夫ですかね」と念をおした。それを聞いたその医師は腹をたて、カルテを投げたという。患者Gさんは、母親として、本当に心配だったと語った。

カルテを投げるようなひどい実例もあります。このように「関係拒否」「医者の上から目線」「相手無視の会話」「(医師・患者間の)意味の取り違い」があるとき、患者さんは医師への不信感を募らせるのです。他山の石として、あらためて患者さんとのコミュニケーションがいかにあるべきかを考えてみてください。

上述参考:論文「患者の視点からみた医療不信とコミュニケーション」

コミュニケーション能力を磨く方法

続いては、コミュニケーション能力を磨く方法を説明していきます。

問診票にきちんと目を通して、なおかつ患者の話にしっかり耳を傾ける

まずは、患者がどんな症状に悩んでいるのか、どこが痛いのか、いつから痛いのかなどをしっかり聞くことが大切です。前述したように、医師のなかには、「患者が何を訴えようが、結局は診てみないとわからない」という態度がにじみ出ている人がいますが、不安な気持ちを抱えている患者は、まずは不安な気持ちに寄り添って話を聞いてほしいと思っています。

患者の訴えのなかには、あまり病気と関係ないと思われることもあるかもしれません。それでも、患者が不安に思っていることには違いないので、「病気とは関係なさそうだ」とスルーするのではなく、一度は耳を傾けましょう。

ただしもちろん、ひとりあたりに避ける診療時間には限度があるので、「とことん寄り添って話を聞く」ということは現実的に難しいので、「傾聴の姿勢を忘れない」ということを念頭に置きつつも、診療はサクサクと進めていくことが大切です。

柔和な表情を心がける

医師の表情が険しいと、それだけで威圧されて「感じが悪い先生だな」と思われる可能性が高いです。特に、小さい子どもや高齢の患者からは、「怖い」「とっつきにくい」と思われる可能性が高いですし、メンタルクリニックの場合も患者から敬遠されやすいでしょう。

「不愛想にしているわけじゃなく真面目に診察しているだけだ」「もともとこういう顔なんだ」と反論したくなる人や、やわらかな表情を浮かべることに抵抗感を覚える人もいるかもしれませんが、ほんのちょっと意識を変えるだけで集患・増患効果も期待できるのなら、試してみない手はないと思いませんか?

ハキハキとしゃべることを心がける

早口や小声でしゃべられると、患者が聴き取りにくくて苦労するだけでなく、「この先生に診てもらい続けて大丈夫だろうか?」と思われてしまいます。

普段からボソボソと話すクセがある人は、「話し方を変えるなんて難しい」と思うかもしれませんが、しゃべり方のクセは、練習によって改善することが可能です。

しかも、多くの場合、声が小さく聞き取られにくい人は喉だけを使ってしゃべっているので、腹式呼吸を身に着けることで発生が変わりますし、腹式呼吸が身に着けば、「代謝が上がる」「姿勢がよくなる」「お通じがよくなる」などいいことがたくさん。

患者から、「ハキハキしていて気持ちのいい先生だな」と思われるだけでなく、体調まで整うとなれば今すぐ実践すべきといえるでしょう。

まとめ

ホームページには「患者さんのために真心を持って」なんて書いてあるのに、実際には「関係拒否」「上から目線」といった態度で患者さんに接するクリニックもあります。

怖いことに当の医師は自分がそのような姿勢であることに気付いてもいないのです。最近ではネットなどを通して、このタイプの医師の悪いうわさはすぐに広まってしまいます。

クリニックを開業し、うまく経営を軌道に乗せたいのであれば、コミュニケーションスキルを向上させることに気を使ってください。人とうまくいかなければ医師としてもうまくいくわけはありません。

我々は医療経営に特化した経営コンサルティング会社です

特徴

①先生から真っ先に相談してもらえるパートナー。 ②診療所の発展段階に応じたコンサルティング。 ③多角的な視点によるコンサルティング。

対応業務

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