高齢者施設勤務経験をもとに、看護師が医師にお願いしたいこと

私は看護師になって初めて就職した病院で3年ほど働いたあと、もっといろんな現場を知りたいと考えるようになり、高齢者施設で働くことにしました。病院と違って急変等はあまりないものの、利用者が全て高齢者ということもありさまざまなエピソードがありました。その施設はクリニックを併設しており、常に近くに医師が居る環境です。そこで疑問に思った医師の言動もあれば、もっとこうしてほしいなどたくさんのことを感じた経験をもとに、看護師が医師に対して求めることをご紹介していきたいと思います。

目次
  1. 高齢者施設で働くことにした理由
    1. 先代の院長を慕って
    2. 自宅でのインシデントを放置?
    3. 特別扱い
    4. ずさんな対応
  2. きちんと患者に寄り添う姿勢が大切
  3. えこひいきしない医師
  4. 定期的に施設に顔を出す医師
    1. まとめ

高齢者施設で働くことにした理由

私が働いていた施設は通所型の高齢者施設で、通称「デイサービス」と呼ばれています。曜日ごとに利用者が決まっており、全体で60名近くの方が通所されていました。私が入職したとほぼ同時に、既に居た看護師が産休に入ることになり、実質看護師は私1人という状況でした。

1日平均40名程の方が来所。主な業務はバイタル測定、服薬管理、簡単な処置。人員不足のときは、介護スタッフと共にさまざまな介助をおこないます。デイサービスはすぐ近くの別の建物にクリニックを併設しています。そこの院長が、施設全体の理事長を務めており、理事長の母親は看護師であり、デイサービスの社長でもある、いわゆる家族経営の施設でした。

私がこの施設で働くことに決めた理由の一は、母体がクリニックで、すぐそばに病院があることです。利用者からすると、充分な医療を受けながらもデイサービスに通うことができるという点を魅力に感じ、その施設に決めたのです。ですが、働き始めて3ヶ月が経とうとしていたころ、施設にもクリニックにも違和感を覚えるようになってきたのです。

先代の院長を慕って

デイサービスでは、高齢者に多いさまざまな皮膚トラブルが日々発生していました。私1人では対応が難しい状態の場合は、クリニックで受診していただいていました。ですが、院長がクリニックにいるところをあまり見たことがなく、ほとんどが外部のドクターによる診察でした。それは無理もなく、私が居る施設とは別の場所にも特別養護老人ホームもあることから、院長は2つの施設の往来に加え、講演会などで出張に出かけることも多かったのです。

そして、このことが原因で数々のトラブルが起きることになるのです。デイサービスには、現在の院長の父である先代の院長を慕って利用を決めたという利用者が非常に多く、先代の院長に絶大の信頼を持っている方もいました。ですが、先代の院長が亡くなり息子である現院長になった途端、「今の院長になってから病院は変わってしまった」という声も多くなっていました。院長は多忙で現場に顔を出すことが難しいということを知っていた私は、利用者たちの声を聞き驚いたと同時に、それだけ先代の院長が慕われていた事実を知ることになりました。

自宅でのインシデントを放置?

本当はタブーとされているのですが、そのデイサービスには社長の母、院長の祖母にあたるAも通所しており、かといって私たちスタッフに「丁重に扱え」というような指導などは全くなかったので、働くうえでは何の支障もありませんでした。

Aは社長宅で同居しており、そこから通所していました。Aは重度の認知症で、周辺症状も酷く、皮膚損傷などよく起こっていました。通常の場合、インシデントとして大事なはずですが、社長は私たちスタッフを攻めるようなことはもちろんなく、「またか」というような様子。正直、実の母であるAに対して、施設でだけでなく自宅でももう少し配慮していただきたいという思いでした。

ある日、Aが夜間トイレに行こうとしたときに転倒して顔面打撲。さらに、足に皮膚損傷がある状態で来所してきました。なぜすぐ病院に連れて行かなかったのか疑問に思いましたが、社長も高齢ということもあり、夜間にAを連れて病院へ行くのは難しかったのかなとも思いました。

とりあえず、Aが来所してすぐに他の利用者は介護スタッフにお任せして、Aを近くの病院へ連れて行くことになりました。顔の骨は折れておらず、諸々の処置をされて施設へ戻ることに。しかし、戻ってから更に驚くことが起きたのです。

特別扱い

昼頃、Aとともに施設へと戻り、そこから大急ぎで介護スタッフでは出来なかった業務を片づけていると、社長がAの様子を見にフロアへやってきました。状態などを報告して、「大事じゃなくてよかった」と言っていましたが、正直ここまでの怪我をしたAを高齢の社長が看病するのは難しいと思いました。しかし、とりあえず医師から言われたことを全て伝えて業務に戻りました。

15時を回り営業も終盤に差し掛かって居たころ、なんとフロアに院長がやってきたのです。

前述したように多忙で自身のクリニックにも顔を出すことが難しい院長がなぜいるのか驚きましたが、社長がAのことを相談するとすぐに来てくれたそうです。この時点で身内を特別扱いしているようであまり良い印象はなく、他の利用者にもそのように思われても仕方がないと思いました。Aは久しぶりに孫である院長に会えたことが嬉しかったようで、周りにいた利用者に向かって自慢げに紹介していました。

ですが、当然ながらA以外の利用者は院長に対してあまり良い顔はせず、「おばあさんのことなら飛んでくるのね」と皮肉交じりに言う利用者もいました。この件がきっかけとなり、その後どんどん、院長、クリニック、施設全体のイメージダウンが加速していきました。

ずさんな対応

評判が右肩下がりになり、それまで以上に利用者、そしてその家族に対しての対応を特に注意する必要になったこと、また事件が起きたのです。

デイサービスの利用者Bが入浴後に体の痒みを訴えてきたので、私の目で確認したところ少し赤い斑点が出てきていました。冬場だったため、乾燥や服の摩擦などの可能性もありましたが、大事をとってクリニックへ受診してもらうことになりました。

併設しているクリニックとはいえ、外来の患者も来るのですぐに受診することが難しいこともあります。しかも、その日はちょうど院長がいる日でしたが外来患者が多く、「午後の空いている時間にまた来て」と院長より言われたので、クリニックからの連絡を待つことにしました。

ですが、16時には全員送迎されるのに一向にクリニックからの連絡がこないのでこちらから連絡をすると、「あー! とりあえずかゆみ止め出しとくから後で取りに来て!」とだけ言われる始末。いかにも忘れていた様子で、結局診察すらしてもらえませんでした。Bはお優しい方だったので、「先生も忙しいね。とりあえず薬を塗ってみます」と言っていただけましたが、普通だったらクレームになりかねない対応です。正直、母体と言えどずさん過ぎる対応に驚きました。

数日後、Bはかかりつけの病院で帯状疱疹と診断されたといいます。うちのクリニックで処方されたかゆみ止めは帯状疱疹とは相性が良いものではなくかったのですが、Bはその薬を塗れば治るという一心で使っていたため、余計に症状を悪化させてしまったとのことでした。私はその話を聞いて、「なんてことをしてしまったのだろう」と寒気さえ覚えました。

その件はもちろん、スタッフ全員、社長、院長にも報告され、今後再度このようなことがないよう充分に注意するよう言われましたが、そのとき院長の口から「帯状疱疹だったらもっと痛がるはずなんだけど、Bさんそんな感じもなかったしびっくりだね」となんだか他人事のような発言があり、Bに対して申し訳ないという様子は全く感じられませんでした。

高齢者の帯状疱疹は発見が遅れるケースが多く、そのことから最悪死に至ってしまうこともあることを院長は知らないのかとさえ思いました。幸い、BからもBの家族からもクレームはありませんでしたが、病院だったら大問題になりかねない事件なのにトップである院長の対応のずさんさに驚き、その頃から施設全体に不信感を持ちはじめ、2年経つ頃に退職を決意しました。

ご紹介した話以外にもさまざまな事件がありましたが勉強になりましたし、今では良い経験だったなと思っています。

きちんと患者に寄り添う姿勢が大切

ご紹介した事例も含めて感じたことですが、この医師は高齢者の話を右から左に流すことが多いように感じました。認知症の方も年々増加傾向にある中、家族引率の元患者ならまだしも、1人で受診している高齢者に対しては特に対応がずさんになりがちなことが多いです。なぜかというと、特に月曜日の午前中などは外来患者が多いことから、回転率が非常に重要になるためです。

そのような状況下で、ただ定期薬をもらいに来たはずが、ここが痛いどこが痛いなど専門科ではない部位の相談をされたりなどがよくあると、ただでさえたくさんの患者を待たせているため、余裕がないのでしょう。ですが「またこの人か。その話か」のような先入観をはじめから持ったまま診察をすると、重大なことを見落とすことも充分に考えられます。現に上記でご紹介したBのような事件も起きています。余裕のないときでも、患者の思いにしっかり寄り添うことが大切だと痛感させられます。

特に高齢者は症状に気づきづらく、病気の発見が遅れることが多々あります。家族と同居している方はまだしも、1人暮らしの高齢者は病院に来ること自体にとても大変な思いをしている人がほとんどです。たまにしか行くことのできない病院でずさんな対応をされ、病気の発見が遅れては元も子もありません。そのようなことがないよう、医師には年代問わずきちんと患者に寄り添ってほしいです。

えこひいきしない医師

これも上記でご紹介したAの話に関連しますが、医師の中には病院の評判を気にするあまり、議員や医療関係の方にだけ丁寧な対応する方もいます。病院の規模が大きくなればなるほどよくある話ですが、患者たちは私たちスタッフの対応をよく見ていることから、結果的に評判は良くなるどころか悪くなる一方なのです。そのことに気づいていない病院側や医師が多いことも事実です。

実際に私が働いていた病院で、多くの患者が順番待ちしているなか、医師が来たばかりの患者を診察室に通したという話が周辺地域に出回っており、聞くところによると先に通された方は院長の甥にあたる方だったようで、更にその病院の評判は地に落ちてしまいました。私がそこで働いているということを近所に知られたら白い目で見られるから、できれば転職してほしいと両親に言われた程です。

このようなことが慢性的になってしまうと、安心して入院することも新しく受診することもできなくなってしまいます。なので、えこひいきのような特別扱いをしないことが大切です。そうすることで、結果的に病院の評判、そしてそこで働いているスタッフへの評判にもつながることを理解していただければと思います。

定期的に施設に顔を出す医師

これは施設あるあるなのかもしれませんが、医師である院長がイベントなどのときだけ顔を出して、話したこともない利用者に選挙活動のように練り歩くということがあります。患者からはそのようなときだけ手を握ったり声かけされるより、定期的に施設に顔を出して話したりする方が何倍も嬉しいと話しているのを、何度も聞いたことがあります。

看護師である私たちからしても、たまにしか顔を出さない院長を信用できず、受診したくないという患者がいるなど、業務に支障がでてくることも少なくないため、医師には定期的に施設へ顔を出していただくことを強く求めます。高齢者は特に信頼関係を大切にされている方が多いこともあり、定期的に顔を出すことで利用者との信頼関係にも繋がるのでぜひおこなっていただきたいポイントでもあります。

まとめ

全て実践することは非常に困難なことであると思いますが、きちんとしている医師であれば看護師も安心して共に働くことができますし、患者も安心して身を委ねることができると思います。ぜひ意識して取り組んでいただきたいと思います。

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菊池

執筆 現役看護師 ライター | 菊池

医療に携わる仕事がしたいと思うようになり小学生にして医者を志すも、学んでいく中で最も患者さんに寄り添うことができる看護師を志すように。現在は宮城県にて看護師として働いている。


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