クリニック内に薬局を設け、調剤を行って患者さんに薬を渡すのが「院内処方」。クリニックで処方せんを発行して患者さんに渡し、調剤薬局で薬を購入してもらうのが「院外処方」です。クリニックを開業する際には「院内処方」「院外処方」、どちらを選ぶのか悩みどころです。「院内処方」「院外処方」のメリット・デメリットについてまとめました。
院内処方には「患者さんのメリット」が多い
院内処方には以下のようなメリット・デメリットがあります。
院内処方のメリット
- 患者さんに安価に薬を提供できる
- 患者さんの会計が一度で済む
- 薬の変更などが容易
院内処方のデメリット
- クリニック内に薬の在庫を置くスペースが必要
- 調剤のための人件費がかかる
- 患者さんが薬を待つ時間がかかる
院内処方のメリットは主に患者さんにあるといえます。院外処方は、調剤薬局を通すためどうしてもその分のコストが乗ってきます。院内処方と院外処方での診療点数の基礎部分だけを比較しても以下のようになります。
院内処方
診療項目 | 点数 |
処方料 | 42点(内服薬6種類まで) |
調剤料 | 11点(内服薬1処方につき) |
調剤基本料 | 14点(月1回) |
小計:67点(670円)
院外処方
診療項目 | 点数 |
処方せん料 | 68点 |
調剤料 | 28点(7日分以下/1剤につき3剤まで) |
調剤基本料 | 42点 |
小計:138点(1,380円)
※「2020度診療報酬改定」による
また、クリニックと調剤薬局の2カ所に足を運ぶ必要がありません。医師に相談して薬の変更などが簡単に行えるのも良い点です。
一方の院内処方のデメリットですが、そもそも『厚生労働省』が「医薬分業」を推奨しており、これは院外処方が主となるような指針です。上記のとおり、処方せんを出すと「68点」で、院内処方の「処方料:42点」より高いのです。
かつては薬価差益(薬の販売価格から仕入価格を引いたもの:つまり医療機関のもうけになる)が大きい時代もあったのですが、現在では薬価差益でもうかることはほとんどないのが現状です。また、調剤のために人を雇用しなければなりませんし、薬の在庫を保管するスペースが必要です。期限の切れた薬を廃棄するなどの管理も行わなければなりません。
院外処方にはメリットが多いが…
院外処方には以下のようなメリット・デメリットがあります。
院外処方のメリット
- 処方せんを発行する方が診療点数が高い
- 薬局を設ける必要がない
- 患者さんが薬を待つ時間がない
- 調剤薬局はジェネリック薬の品揃えが豊富
院外処方のデメリット
- 患者さんの負担が大きい
- 患者さんにとっては医・薬で二度手間になる
院外処方のメリット・デメリットは院内処方のそれの裏返しになります。処方せんを出す方が診療点数が高く、クリニック内に薬局を設ける必要がないので、人件費や在庫の管理などで煩わされることがありません。また、患者さんが1つの調剤薬局で薬を購入している場合には、複数の医療機関で発行された処方せんをそこで一括チェックできます。これは患者さんにとってのメリットといえるでしょう。
一方のデメリットで最も大きいものは、患者さんにとっての薬代の負担が大きくなることです。上記は基本部分のみで比較しましたが、薬の種類が増え、服用期間が長くなるほど院内処方との差は大きくなります。また医療機関と調剤薬局の両方に足を運ばなくてはならず、これが面倒という患者さんも少なくありません。
まとめ
というわけで、クリニックにとっては院外処方の方が楽ですし、経営という視点から見ても理にかなっているかもしれません。現在院内処方を行っている病院、診療所は患者さんのメリットを優先し、あえてそうしているといえるのではないでしょうか。
ただし、『厚生労働省』は「医薬分業」の方針に沿って院外処方を進めてきたのですが、院内処方に戻す、あるいは院内処方と院外処方を併用する※という病院・診療所もあります。これもまた患者さんのメリットを優先しての対応です。
そもそも院内処方を実施するためのスペースがない、といった場合は仕方ありませんが、院内処方・院外処方のどちらを取るかは、患者さんのメリットをどこまで優先できるのかという問題に関わっているのです。
※例えば診療科目で院内処方と院外処方を分けるなどの運用です。
特徴
対象規模
オプション機能
提供形態
診療科目
この記事は、2021年2月時点の情報を元に作成しています。